柑橘系の香りがするレモンバーム! レモンバームの育て方・利用方法とは?

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レモンバームは、葉にレモンのような爽やかな香りがあり、ミントと同様に生命力旺盛なためビギナーでも失敗なく栽培できるハーブです。生葉を摘んで、手軽にハーブティーに利用できるのもいいですね。この記事では、レモンバームの基本情報や育て方、利用の仕方などについてご紹介します。
レモンバームとは
ハーブの一種として人気の高いレモンバームは、どんな植物なのでしょうか。ここでは、基本情報や名前の由来、花言葉についてご紹介します。
レモンバームの基本情報

レモンバームは、シソ科コウスイハッカ属の多年草です。原産地は南ヨーロッパ、西アジア北部、北アフリカ西部で、暑さ寒さに強い性質を持っています。日本の気候にも馴染み、放任してもよく育ちます。
人気の高いハーブの一種で、葉にはレモンのような柑橘系の香りがあり、手軽にハーブティーなどに利用できます。草丈は30〜60cmで、枝葉をたくさん出してよく茂るため、たくさんの収穫が可能。1cmに満たないほどの小さな白い花が咲き、ミツバチが好んでやってきます。
一度植え付ければ、毎年収穫や開花を楽しめる多年草で、コストパフォーマンスが高いのも魅力の一つです。春になると新芽を出して生育し、開花は6〜7月頃。晩秋になると地上部を枯らして姿を消しますが、枯死したわけではなく休眠しているだけ。越年して翌春を迎えると再び新芽を出すというライフサイクルを繰り返す息の長い植物です。
レモンバームの名前の起源や花言葉

レモンバームは、英名「Lemon balm」で、balmには香油という意味があり、レモンに似た香りがすることに由来しています。学名はMelissa officinalisで、「Melissa」はラテン語で「ミツバチ」の意味。レモンバームの花にミツバチがよく集まることに由来しています。「Officinalis」は、「薬用になる」という意味を持ち、古くから薬用のハーブとして用いられてきたことが分かります。
レモンバームの花言葉は、「思いやり」「共感」「同情」など。薬用ハーブであったことから、病に苦しむ人へ寄り添うような言葉が与えられているようです。
レモンバームの基本的な育て方
ここまで、レモンバームの特徴や花言葉、名前の起源など基本情報についてご紹介してきました。では、ここからはガーデニングの実践編として、適した栽培環境や植え付け、水やりや施肥、手入れなど日頃の管理、増やし方など、育て方について詳しく解説します。
レモンバームに適した栽培環境

レモンバームは、基本的には日当たり・風通しのよい場所を好みます。しかし、真夏の強い日差しにさらされると、葉が茶色くなる葉焼けを起こすことがあるので、朝のみ日が差す東側などが向いています。
レモンバームは水はけ・水もちのよい土壌を好みます。やや湿り気のある環境を好み、極端な乾燥を嫌うので、適度な水分管理が必要です。乾きやすい場所では、株元にバークチップなどを敷いてマルチングをしておくとよいでしょう。また寒さには強く、マイナス5℃くらいまでは耐えるので、寒冷地以外の平地なら戸外で越冬させても特に防寒の必要はありません。
レモンバームに適した土づくり

【地植え】
植え付けの約2週間前に、腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んでよく耕してください。土づくりの後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
ハーブ用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。
レモンバームの植え付けと植え替え

レモンバームの植え付け・植え替えの適期は、4〜5月か、10月頃です。ただし、ほかの時期にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、軽く根鉢をほぐして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。複数の苗を植える場合は、30cmくらいの間隔を取ってください。
庭で育てている場合、環境に合えば植え替える必要はありません。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、6〜7号鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてからハーブ用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗をポットから取り出して軽く根鉢をくずし、鉢の中に仮置きして高さを決めたら、少しずつ土を入れて植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出してみて、根が詰まっていたら、根鉢をくずして古い根などを切り取りましょう。根鉢を1/2〜1/3くらいまで小さくして、元の鉢に新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢をくずす程度にして植え替えてください。
レモンバームの水やり

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏に水やりする場合は、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。気温の高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がり、株が弱ってしまいます。
また、真冬に水やりする場合は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。特に真夏の気温が上がって乾燥しやすい時期は、ハダニが発生しやすくなるので、茎葉全体や葉裏などにもシャワーをかけて防除するとよいでしょう。
【鉢植え】
レモンバームは、極端に乾燥するのを嫌うので、日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつもジメジメした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、冬に地上部が枯れても、カラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。
レモンバームの肥料

【地植え・鉢植えともに】
やせ地で育つほど強健な性質なので、1年目は植え付け時に元肥として緩効性肥料を施してあれば、追肥の必要はありません。
2年目以降は、5〜6月に切り戻しや収穫をした後と、気温が落ち着く10月頃に、液肥を与えておくとよいでしょう。
レモンバームの摘心・切り戻し

【摘心】
レモンバームは、苗が幼いうちに茎の先端を切り取る「摘心」を繰り返すと、よく分枝してこんもりと茂ります。枝葉が増えることで、収穫量も増えるので、ひと手間かけておくことをおすすめします。
【切り戻し】
6月頃に開花期を迎えると、葉がかたくて小さくなるうえに、香りも弱くなってしまうので、一度切り戻して株の若返りを図ります。地際から草丈の半分の高さを目安に、深めにカットしましょう。
レモンバームを育てるときに注意すべき病気

レモンバームが発症しやすい病気は、すす病です。
すす病は、植物に寄生して吸汁するコナジラミやカイガラムシ、アブラムシのベタベタした排泄物が葉などに付着し、それに黒いカビが生えた状態のことです。見た目に悪いばかりではなく、レモンバームのように収穫して楽しむハーブの場合、ベタベタして黒くなった葉を見ると利用する気が萎えてしまいますね。まずは、その原因となるコナジラミなどの害虫対策をしっかり行うことが大切。白い羽虫などが行き交っていたら、早めに捕殺してください。
レモンバームを育てるときに注意すべき害虫

レモンバームに発生しやすい害虫は、ハダニ、コナジラミなどです。
ハダニは、葉裏に寄生して吸汁する害虫です。体長は0.5mmほどと大変小さく、黄緑や茶色い姿をしています。名前に「ダニ」がつきますが、クモの仲間。高温で乾燥した環境を好み、梅雨明け以降に大発生しやすいので注意が必要です。繁殖力が強く、被害が大きくなると、葉にクモの巣のような網が発生することもあります。ハダニは湿気を嫌うため、予防として、高温乾燥期に葉裏にスプレーやシャワーなどで水をかけるとよいでしょう。
コナジラミは、植物の葉裏について吸汁する害虫です。体長は1mmほどで大変小さいのですが、白いので意外と目にとまりやすいです。繁殖力が旺盛で、短期間で卵から幼虫、成虫になり、被害が拡大しやすいのが特徴。吸汁によってウイルスを媒介するほか、排泄物にすす病が発生しやすく、二次被害を呼びやすいので要注意。冬は卵やサナギの状態で雑草の中に潜み、春になると周囲に移動して活動を始めるので、雑草や枯れ葉を残さずに処分しておきましょう。
レモンバームの増やし方

レモンバームは、種まき、挿し芽、株分けで増やすことができます。
【種まき】
種まきするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなります。レモンバームはこぼれ種で増えるほど強健な性質なので、種まきは容易です。
種まきの適期は4月頃か9月下旬〜10月中旬で、発芽適温は20℃くらい。種まき用のセルトレイにハーブ用にブレンドされた市販の培養土を入れ、1穴あたり1〜2粒ずつ播きます。種が隠れる程度に土を薄くかけ、はす口をつけたジョウロで高い位置から優しい水流で水やりをしましょう。発芽までは10〜14日ほどかかりますが、乾燥しないように適度な水管理をしてください。発芽後は弱々しい苗を間引いて1本立ちにし、日当たりがよく、風通しのよい場所で管理します。本葉が2〜3枚出始めたら、植えたい場所に定植します。
【挿し芽】
挿し芽とは、茎葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物のなかには挿し芽ができないものもありますが、レモンバームは挿し芽で増やせます。
挿し芽の適期は、4〜5月か10月頃です。新しく伸びた枝を2節以上つけて切り口が斜めになるように切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、水の吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を2〜3枚切り取ります。セルトレイを用意して新しい培養土を入れ、水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。根が回ってきたら植えたい場所へ定植しましょう。挿し芽のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
【株分け】
レモンバームは株分けして増やすことができ、適期は4〜5月か10月頃です。株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら株の老化が進むので、「株分け」をして若返りを図ります。株を掘り上げて数芽ずつ付けて根を切り分け、再び植え直しましょう。それらの株が再び大きく成長し、株が増えていくというわけです。
レモンバームの利用方法
レモンバームは、生葉のままでも、ドライにしても利用できます。ここでは、レモンバームの利用法についてご紹介します。
生葉の利用方法

生葉は、春から秋までの成長期間なら、いつでも摘み取って利用できます。摘み取った葉をきれいに洗い、ティーポットに入れて熱湯を注いでハーブティーを楽しみましょう。ゼリーやアイスクリームなどのトッピングに利用しても素敵。だしパックに入れて湯船に浮かべれば、ハーバルバスとなります。生葉のまま密閉袋に入れて冷凍保存し、早めに使い切るのもおすすめです。
乾燥させる方法

レモンバームは開花すると香りが弱くなるので、開花前に刈り取ることがポイント。束ねて風通しのよい場所で逆さに吊し、乾燥させます。乾燥したらしごいて葉のみをとり、密閉容器に乾燥剤とともに入れて冷蔵庫で保管を。使いたい時に取り出して利用します。
レモンバームを育てて香りを楽しもう

フレッシュな香りが魅力のレモンバームは、ハーブティーやお菓子のトッピング、ハーバルバスなど、さまざまなシーンで活用することができます。強健で育てやすいので、初めてハーブの栽培にチャレンジする方におすすめ。ぜひ庭やベランダに迎え入れてはいかがでしょうか。
Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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