畑はもちろんプランターでも育てられる! ショウガの栽培方法を解説

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爽やかな香り、独特の辛みをもつショウガは、香味野菜として日本では暖地を中心に古くから利用されてきました。スーパーや青果店で一年中手に入るショウガですが、家庭でも簡単に育てることができます。この記事では、ショウガの基本情報や栽培方法など、詳しくご紹介していきます。
目次
ショウガはこんな野菜! まずは基本情報と特徴を押さえておこう

ショウガは、ショウガ科ショウガ属の根菜類で、原産地はマレーシア、インドを中心とした熱帯アジア。暑さには強いものの、寒さに弱い性質を持っています。
日本では奈良時代から栽培されてきたとされ、古くから親しまれている野菜の一つです。煮魚の香りづけや麺類の薬味、味噌漬けや甘酢漬け、生姜湯など、さまざまな用いられ方をして、常備野菜として欠かせない存在となっています。
ショウガを栽培するのに適した環境は? 連作障害には気をつけよう

ショウガは熱帯地方が原産の植物で、生育適温は25〜30℃。暑さに強い一方で寒さに弱く、10℃以下になると根が腐ってしまいます。そのため、植え付けは遅霜の心配がなくなる頃が最適。本来は越年する多年草ですが、日本の寒さに耐えられないため、霜が降りる前に収穫する一年草として扱われています。
また、ショウガは連作を嫌う野菜の一つで、連作するとネコブセンチュウが発生しやすくなったり、加食部分の塊茎が腐ってしまう根茎腐敗病を発症したりします。ショウガを植え付ける際は、4〜5年はショウガ科の植物を栽培していない場所を選んでください。毎年植えたい場合は、植える場所を年ごとに変えていくローテーションを組み、作付計画を立てるとよいでしょう。
栽培するショウガを選ぶポイント! 種類は大きく分けて3つ

ショウガの種類は、主にサイズによって大・中・小の3つに分けることができます。大ショウガはスーパーや青果店で一般的に販売されているもので、栽培期間が長く大型なのが特徴。代表品種は近江生姜です。中ショウガは大ショウガよりも栽培期間は短く、やや小ぶりで繊維が少なめ。房州が代表的な品種です。小ショウガは、主に焼き魚などに添えられるはじかみとして利用されるもの。主な品種は、生のまま食べておいしい三州や辛みの強い金時、葉ショウガとして需要のある谷中などがあります。
ショウガを植えるための土作りと準備!

野菜を栽培するには、植え付け前の土づくりが大成功につながります。植え付け前のひと手間を惜しまず、まずは準備に取りかかりましょう。
菜園で育てる場合
植え付ける場所に畝幅を約60cm取り、園芸用支柱や割りばしなどで畝幅の目印を四隅に立てておきます。畝の長さは、環境や作りたいショウガの量に合わせて決めてかまいません。
植え付けの2〜3週間前に、苦土石灰を1㎡当たり約100g散布し、よく耕して土に混ぜ込んでおきます。耕している際に、小石や木片などの異物が見つかったら取り除き、全体にふかふかとした土壌づくりを目指します。植え付けの1〜2週間前に、畝幅の中央に約20cmの深さの溝を掘り、1㎡当たり堆肥約2kg、緩効性化成肥料(N-P-K=8-8-8)約100gを溝全体に均一にまき、土を戻しておきます。さらに高さ10cmほどの畝を作り、地表を平らにならしておきましょう。土づくりの後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
プランターで育てる場合
幅60〜70cm、奥行き20cmくらいの標準的な長方形タイプのプランターを準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから市販の野菜用にブレンドされた培養土を入れます。土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、水やりの際にすぐにあふれ出さないように、ウォータースペースを取るとよいでしょう。
種ショウガの植え付け方
種ショウガの植え付け適期は、4月下旬〜5月中旬です。花苗店やホームセンターなどで入手しますが、ショウガの生育初期は、種ショウガの良し悪しに影響されるので、きれいな芽がついていて皮に張りがあり、充実したものを選ぶとよいでしょう。購入した種ショウガは、植え付け前に芽が2〜3芽ずつ付くように包丁で切り分けておきます。
【菜園】
1〜2週間前に土作りしておいた畝が少しくずれていたら、幅約60cm、高さ約10cmになるようにもう一度クワを入れて調整し、表土を平らにしておいてください。
畝幅の中央に植え穴を掘り、芽を上にして種ショウガを入れ、約5cm覆土して平らにならします。種ショウガ同士の間隔は、20〜30cm取りましょう。最後に、たっぷりと水を与えておきます。
【プランター栽培】
培養土を入れたプランターに、植え穴を掘り、芽を上にして種ショウガを入れ、3〜5cm覆土して平らにならします。種ショウガ同士の間隔は、約20cm取ってください。最後に、たっぷりと水を与えます。
ショウガを上手に育てるためのポイント

種ショウガの植え付けが終わったら、あとは収穫適期が来るのを待つばかり……というわけにはいきません。充実したショウガを収穫するためには、日頃の手入れも大切です。ここでは、収穫までに手をかけておきたい作業についてご紹介していきます。
乾燥を防止する

ショウガは多湿を好み、乾燥を嫌います。また、根が浅いところに分布して乾きやすいので、敷きワラをして乾燥防止をすることがポイントです。
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。真夏に水やりする場合は、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。気温の高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がり、株が弱ってしまいます。
【菜園】
根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、シヨウガは乾燥すると株が弱るので、真夏の乾燥する時期は水やりをして補います。
【プランター栽培】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ショウガは乾燥を嫌うので、水切れしないようにすることが大切です。ただし、いつもジメジメした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。
また、植え付けから1カ月ほど経ち、表土のかさが減ってきたら乾燥防止のために土を足しておきましょう。
肥料切れを起こさないように2度追肥を行う

【菜園】
1回目の追肥は、植え付けから1カ月半くらい経った6月頃、芽が出て本葉がつき始めた頃を目安に行います。1㎡当たり約30gの緩効性化成肥料を、株の周囲に均一になるようにばらまきましょう。
2回目の追肥は、1回目の追肥から1カ月くらい経った7月頃に、1回目と同様に1㎡当たり約30gの緩効性化成肥料を、株の周囲に均一になるようにばらまいてください。2回目の追肥は、遅くとも8月までには済ませておきます。
【プランター栽培】
1回目の追肥は、植え付けから40日後くらいの発芽した頃を目安に緩効性化成肥料を株の周囲にばらまき、スコップなどで軽く土に馴染ませます。
2回目の追肥は、植え付けから2カ月経った頃を目安に、緩効性化成肥料を株の周囲にばらまき、スコップなどで軽く土に馴染ませます。
中耕と土寄せを行う

【菜園・プランター栽培ともに】
1回目、2回目の追肥を行う際、同時に中耕と土寄せもしておきましょう。
中耕とは、降雨などによって固く締まった状態になった畝やプランターの土を、スコップやクワなどで軽く耕すことです。株を傷めることのないように作業してください。株の周囲の土を耕すことでふかふかになって通気性が改善され、土中の根にも酸素が送り込まれるので根張りがよくなります。株の真下などすぐそばである必要はなく、植物の根は周囲に広がっているので、畝の端や外側などを中耕します。プランターの場合は、鉢縁あたりを軽く耕します。
土寄せとは、中耕などで耕したふかふかの土を、育てている作物の株元に寄せる作業をいいます。降雨などによって土が流れ出し、株元の土が減ってしまうことがあるので、株元に十分に土を寄せて、根元が露出するのを防いだり、株が倒れないようにします。ショウガは土の浅い部分で塊根が生育するので、むき出しになることのないように、土寄せは大切な作業です。
ショウガの栽培で気をつけておきたい病気と害虫

【病気】
ショウガが発症しやすい病気は、根茎腐敗病です。
根茎腐敗病は、塊茎や根、幼い芽などが侵される病気です。ショウガの場合は収穫する加食部分の塊茎に発生しやすく、白い糸状の菌に覆われたり、侵された部分がやわらかくなって腐ったりします。地温が15〜20℃で感染しやすくなり、5月下旬以降に雨量が多い環境下で多く発生するようになります。発病が見られたら、周囲に蔓延するのを防ぐために病株を抜き取り、土ごとビニール袋に入れて土壌とは離れた場所へ運んで処分してください。発生を防ぐためには連作を避け、花苗店やホームセンターなどで販売されている無病の種ショウガを植え付けることが大切です。
【害虫】
ショウガに発生しやすい害虫は、ハスモンヨトウ、アワノメイガなどです。
ショウガには、蛾のハスモンヨトウの幼虫がついて、葉を食害することがあります。褐色の幼虫は大きくなると4cmほどになり、旺盛に葉を食い荒らすので注意が必要。卵は葉裏に産みつけられ、幼いうちは葉裏に群がって食害を始めます。葉にかすり状の穴があいていたら、めくって葉裏のチェックを。大きくなると駆除が難しくなるので、まだ幼齢のうちに見つけ次第捕殺しましょう。
アワノメイガは、トウモロコシの大敵といわれますが、ショウガにも発生しやすい害虫です。主に被害を与えるのは幼虫で、葉裏に産みつけられた卵から孵化した後、新葉を食害します。葉がかすり状になっていたら、被害が疑われるので入念にチェックして捕殺してください。ここで駆除できないと、茎内に侵入して食い荒らし、枯らしてしまいます。アワノメイガはトウモロコシに寄り付きやすいので、トウモロコシを栽培している近くにショウガを植えないことも一案です。
いよいよ収穫! ショウガは収穫時期によって名前が変わる
ショウガは、秋の根生姜の収穫を待たずに、夏に若い状態で収穫して調理に利用することができます。それぞれの生育ステージで味わいも変わるので、違いを楽しむのもいいですね。このような味比べができるのも、家庭栽培ならではの醍醐味です。
まだ若いうちに収穫する「筆ショウガ」

筆ショウガは、7〜8月、葉が3〜6枚ついた新芽の頃に手で引き抜いて収穫し、まだ小さいショウガを食べるものです。矢ショウガともいわれています。きれいに洗って、塩を振ったり味噌をつけたりしていただきます。焼き魚に添えられることも多く、天ぷらや糠漬けにしてもおいしいですよ!
根元が赤くなり始めた頃に楽しめる「葉ショウガ」

葉ショウガは、葉が7〜8枚つき、根元が赤くなって太り始めた7月下旬から収穫します。水分が多く、辛みがやや少ないのが特徴です。そうめんやそばの薬味や甘酢漬けなどに向いています。葉ショウガ用に出回っている品種が、谷中生姜です。
一般に目にすることが多い根茎部分は「根ショウガ」

根ショウガは、10月下旬〜11月上旬に収穫します。ショウガは寒さに弱いので、霜が降りるまでには収穫を終えましょう。株元から10cmほど離れたところにスコップの刃を差し込み、掘り上げて株を抜き取ります。収穫と同時に地上部の茎葉は切り取っておきましょう。植え付けた親ショウガ(種ショウガ)、新ショウガともに食材として利用可能。親ショウガは辛みが強いのが特徴です。
収穫後に保存して寝かせたものが「囲いショウガ」

囲いショウガは、収穫した根ショウガを貯蔵しておいたもののことです。ひねショウガとも呼ばれ、主に2カ月ほどかけて保存したものをいい、表皮が飴色になって辛み・香りが増してさらにおいしくなります。貯蔵するには、あまり湿度が高くない15℃以上の環境が好適。家庭ではショウガの土を払って、もみがらなどを入れた発泡スチロール製の箱に入れ、温度変化が少ない部屋で貯蔵するとよいでしょう。
収穫時期によって違った味わい方ができるショウガを育ててみよう

この記事では、ショウガの性質や特徴などの基本情報に始まり、家庭での栽培方法などについて解説してきました。ショウガは収穫する時期によって調理の仕方や味わいも異なり、さまざまな楽しみ方ができるのが魅力。ぜひ庭やプランターなどに植え付けて、家庭栽培ならではの味わいを楽しんでみませんか?
Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
参考文献/
『別冊やさい畑 野菜づくり名人 虎の巻』発行/家の光協会 2009年2月1日発行
『週刊 ベランダでも楽しめる野菜づくり 花づくり』8号 発行/朝日新聞出版 2010年4月25日発行
『だれでもできるプランター栽培』発行/ブティック社 2019年5月10日発行
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