頭上から降り注ぐように咲く姿が非常に幻想的な藤は、多くの方が見頃を楽しみにしている花の一つではないでしょうか。そこでこの記事では、藤の花の見頃となる時期などはもちろん、知っておくとより観賞が楽しめる藤の花の基礎知識や種類、育て方についてもたっぷりとご紹介します。
目次
藤の花とは?
見た目も独特で美しい藤の花は、どのような植物かご存じでしょうか? まずは藤の花の特徴についてご紹介します。
藤の花の基礎知識
藤はマメ科フジ属に分類される植物で、学名は Wisteria floribundaです。英語での名前はJapanese wisteriaで、日本原産の落葉つる性木本です。
「藤」という名前の由来は、花が風に吹かれて舞い散る様子から「吹き散る」が変化して「ふじ」となったという説や、茎に節があることから「ふし」と呼ばれ「ふじ」に変化したという説など、諸説あります。
花は蝶のような小花が房状に垂れ下げるように咲きます。つる植物である特性を生かして、公園や観光地などで日除けのために藤棚が作られることが多い植物です。
藤の花の花言葉や贈るときの注意点
藤の花言葉は「優しさ」「歓迎」「決して離れない」「恋に酔う」「忠実な」など。藤の花は女性を象徴する花とされてきたため、女性らしい言葉が多くなっています。日本ではかつて藤を女性、松を男性に見立てて、2つを並べて植える風習もありました。
見た目の美しさから贈り物にもぴったりの藤の花は、「ふじ」という音の響きが「不死」を連想させて縁起もよいとされています。しかし、「不治の病」を連想させることもあるため、病気の方への贈り物にはあまり好ましくないともいわれています。
紫だけじゃない! 藤の花色
藤の花といえば紫色を思い浮かべる方が多いと思いますが、じつは他にもさまざまな花色があり、淡い紫や淡い赤紫、ピンク、淡いピンク、白、黄などが知られています。色によって花言葉が異なり、紫では「君の愛に酔う」、白色では「可憐」などがあります。
藤の花が見頃を迎える季節
藤の花の開花時期は、4〜5月。最も見頃となるのは5月で、ゴールデンウィークには各所で藤まつりなどが開催されます。
色によって若干開花時期が異なり、薄紅、紫、白、黄の順に開花していきます。
同じ頃にはツツジやシャクナゲなども見頃を迎えます。
藤の花の種類
じつは藤にはさまざまな種類があります。
ここからは藤の代表的な品種についてご紹介します。
ヤマフジ
ヤマフジは日本原産の藤で、本州や四国、九州に自生しています。
花序と呼ばれる房状の花の部分は10~20cm、木の全長は20mを超すほどの大きさになります。つるが右肩上がりの右巻きになっているところで、後述のノダフジと見分けられます。
ノダフジ
ノダフジは日本原産の藤で、本州を中心に山野に自生しています。
花序は30~60cmでヤマフジよりもやや長く、木の全長はヤマフジと同じく20mを超すほどの大きさになります。つるはヤマフジとは逆の、左肩上がりの左巻きです。
シナフジ
シナフジは中国原産の藤で、中国では「紫藤」と呼ばれています。花序は15~30cm、全長は10~20mになります。シナフジは別名ニオイフジとも呼ばれ、バニラのような甘い香りがあるのが特徴です。
アメリカフジ
アメリカフジはアメリカ原産の藤です。花序は10cm程度、全長も5m未満と、他の藤と比較すると小ぶりなのが特徴です。つるがそれほど長く伸びないので、棚づくりにせず一般的な樹木のような育て方もできます。
藤の花を自宅で育てることはできる?
花が頭上から降り注ぐような、美しい藤の花を自宅で楽しみたいと考えている方も多いのではないでしょうか。
じつは藤棚を作るスペースがなくても、鉢植えや庭植えで育てることができます。鉢植えのほうが根の成長が制限されて花つきがよくなり、何もしなくても咲くといわれるほど育てやすいのが藤の特徴です。盆栽仕立てにして楽しむこともできます。
藤の花を育てる方法
では、藤の花を家で咲かせるにはどのように育てればよいのでしょうか。
藤の花は、ポイントを押さえれば綺麗に咲かせることができます。ここからは藤の花を育てる方法について、詳しく解説していきます。
苗を植える
藤は種子と苗から育てられますが、新品種を作るのでない限り、種子からはまず育てません。花が咲くまでに早くて3年はかかるからです。通常は育てやすく、早く花を楽しめる苗から育てます。
苗を植える場合、植え付けの適期は11〜3月です。鉢植えでも地植えでも育てられますが、地植えの場合は日当たりのよい場所を選びましょう。
鉢植えの場合、植え付け後は2〜3年に1度植え替えをします。
水やり・肥料を与える
肥料は、株の周りに施肥のための溝を掘り、冬には寒肥として堆肥などの有機物に草木灰を混ぜたものを施します。花後にはお礼肥として同じように施肥溝を作り、油かすなどを施します。
生育や花付きを悪くしないために、水切れしないよう注意が必要です。鉢植えの場合は土の表面が乾いてからたっぷりと水やりをします。目安として春や秋は1〜2日に1回、夏は1日に1〜2回、冬は土が乾いたら水やりをしましょう。
剪定する
藤は初夏の花後と冬の落葉後に剪定が必要です。つるがどんどん伸びていくため、剪定せずそのままにしてしまうと幹に日が当たらず、花が咲かなくなってしまいます。
初夏の花後剪定では、混み合っている不要な枝や、伸びすぎた枝の先端を切ります。
冬の剪定では、花芽がついていない不要な枝や、枯れた枝を切ります。
初夏の花後剪定から冬の剪定までの間は、一切剪定をしません。つるが邪魔になった場合は、つるを巻いてまとめておきましょう。
挿し木や接ぎ木をする
藤は挿し木や接ぎ木で増やすことができます。
挿し木や接ぎ木には春の3~4月か、秋の9月頃が適しています。
挿し木の場合は、太くて元気のよい枝を15~20cm切り取って挿し穂とします。植えてから1カ月ほどで発根するので、根が育ったら鉢上げ、または定植しましょう。
接ぎ木は種子から2〜3年育てた藤の苗を台木として行いますが、さまざまな技術が必要なので、一般家庭ではあまり行われない方法です。
春は幻想的な藤の花を楽しもう
藤は4~5月に花を咲かせ、5月に見頃を迎えます。ぜひ満開の藤の花に囲まれて、幻想的な雰囲気を味わってみてはいかがでしょうか?
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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