オリジナリティのある庭づくりや、ファッショナブルな植物を求める人に近年選ばれているオーストラリア原産の植物グループ「オージープランツ」。春到来を知らせる花咲くワックスフラワーもオージープランツの一つです。自宅の庭で100種以上のオージープランツを育てているガーデンプロデューサーの遠藤昭さんに、ワックスフラワーの基本情報や、自生地の環境から知る育て方のポイントなどについて教えていただきます。
目次
ワックスフラワーのプロフィール
今回ご紹介するオージープランツは、ワックスフラワーです。春の園芸店に並ぶオージープランツの中でも、愛らしく、華やかな雰囲気があるのがワックスフラワーです。針状の柔らかな細葉が茂る低木で、花は4月から咲き始めます。
科名:フトモモ科 常緑低木
学名:Chamelaucium uncinatum
俗名:ジェラルトンワックスフラワー、ジェラルトンワックス
原産地:西オーストラリア州
樹高:1~4m
開花期:4~6月
花色:白またはピンク
蜜を含む花とハーブのように香る葉
植物名にもあるように、ロウのような光沢のある花が密集して華やかに咲き、花が比較的長もちするので、切り花として人気があります。蜜が多く、芳香性がある花は小鳥やミツバチを魅了します。
葉は柑橘系の香りがして、ローズマリーのように料理にも使用できます。
ワックスフラワーの故郷
俗名に、ジェラルトンワックスフラワーとありますが、ジェラルトン(Geraldton)とは都市の名称で、西オーストラリア州の州都パースから、北に420kmの地点に位置します。
私の記事でも度々お伝えしてきましたが、オージープランツと一口に言っても、オーストラリアは広大な国土で、地域によって気候や環境はさまざまに異なります。例えば、西オーストラリア州だけでも、日本の国土の6倍以上もあるのです。上記で説明したジェラルトンを示す「北に420km」とは、東京からの距離で例えれば、岩手県盛岡市にあたります。オーストラリアの場合は南半球なので、北に行くほど暖かくなりますが、東京と盛岡では気候がかなり異なりますよね。
ジェラルトンの夏は暑く、12~3月までは最高気温の平均が30℃を超えますが、夜温は20℃以下。そしてほとんど雨が降りません。この4カ月間の降雨量は、ひと月に10~20mm程度です。砂漠に似た気候ですから、随分と日本とは異なります。ワックスフラワーは、そんな環境に原生する植物なのです。
ワックスフラワーの栽培のヒント
現地の園芸書によると「ジェラルトンワックスフラワーは比較的丈夫で、水はけのよい砂質土壌と日当たりのよい地中海性気候で育ちます。東海岸のシドニーやメルボルンなどの湿度の高い地域でも栽培できますが、短命になる傾向があります」と解説されています。
ということは、高温多湿の日本の梅雨越しは難しいというのが実際です。半面、冬の霜や雨不足の干ばつには強いので、ほかの西オーストラリア原産の植物同様に、“雨に当てず、風通しのよい場所で乾かし気味”にすれば、日本の夏越しも可能です。雨に当てないという条件をクリアするためには地植えは厳しく、鉢植えで育てます。
ワックスフラワーの育て方ポイント
【置き場所】
秋または冬の間は、周囲が湿っていないような環境で、太陽の当たる明るい場所に置きます。初夏から夏は、半日陰の風通しのよいところで育てます。
【施肥】
春に、緩効性肥料を与えますが、もともと肥料分の少ない土地で育っているので、少なめにします。
【水やり】
過湿を嫌うので、鉢土の表面がよく乾いていることを確認してから水やりします。
【剪定】
剪定には強く、花が終わったら樹形を整えるとよいでしょう。現地では生け垣に仕立てられているワックスフラワーも見られますが、日本では難しいですね。
【増やし方】
挿し木で増やすのが一般的です。一般の挿し木と同じ方法で大丈夫です。花後の剪定で出た剪定枝を10cm程度の長さで切り、植物活力剤のメネデールなどに1時間ほど浸けます。挿す前に、枝の切り口に、発根促進剤のルートンを付けると、より成功率が上がります。挿し木の用土は、鹿沼土や川砂を使用します。
オージープランツを育てる楽しみ
育てるにはちょっとコツがいるオージープランツの一つ、ワックスフラワー。ですが、気難しいからこそ、大株に育って開花したときの喜びもひとしおです。ぜひ、花が咲く苗も手に入りやすいこの時期に、ワックスフラワーを育ててみましょう。
Credit
写真&文 / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -
えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
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