ヨーロッパで人気の高い花、アストランティアをご存じでしょうか。楚々とした花は愛らしく、風にふわふわと揺れる繊細な草姿がナチュラルガーデンで重宝されています。この記事では、そんなアストランティアの基本情報や種類、花言葉や栽培方法など、さまざまな角度からご紹介します。
目次
アストランティアの基本情報
アストランティアは、セリ科アストランティア属の多年草です。冬になると落葉しますが、毎年春になると新芽を出し、初夏には開花する息の長い植物なので、枯れたと判断して処分しないでくださいね。原産地はヨーロッパで、寒さには強いのですが、日本の厳しい夏が苦手なので、夏越し対策が栽培のポイントになります。アストランティアの草丈は40〜80cmで、野趣感のあるナチュラルな表情が魅力です。
アストランティアの花にはどんな特徴がある?
アストランティアの開花期は5月中旬〜7月中旬で、花色は白、ピンク、赤、淡いグリーンなど。花茎を長く立ち上げた頂部に開花します。花弁に見える部分は総苞で、よく見ると中央に小さな花が集まって咲いています。
ロマンチックな花言葉を持つアストランティア
花言葉は、「愛の乾き」「知性」「星に願いを」など。「星に願いを」は、アストランティアの学名Astrantia majerから。「Aster(アストラ)」はギリシャ語で「星」を意味し、萼の部分が星のような姿をしていることに由来するとされています。
アストランティアの品種とカラーバリエーション
アストランティアは約10種があるとされていますが、日本で栽培されているもは、主にマヨール種とマキシマ種の2種類。ここでは、この2種のアストランティアについてご紹介します。
メジャーな品種のマヨール種は、カラーバリエーションも豊富
日本で流通しているアストランティアのほとんどが、マヨール種です。園芸品種も多く、ワインレッドの‘ベニス’、白の‘スノースター’、ピンクの‘ローマ’、淡いピンクの‘フローレンス’など多彩に揃います。比較的耐暑性に優れるものや、四季咲き性が強いものなど、品種改良も進んでいます。
マヨール種よりも少し大きな花を咲かせるマキシマ種
流通の少ないマキシマ種は、マヨール種よりも花が大きく、総苞の数が少なめなのが特徴です。花色はピンクと白があります。葉姿にも違いがあり、マヨール種が5枚葉なのに対し、マキシマ種は3枚葉です。
アストランティアの栽培に適した環境は?
アストランティアは寒さに強く、暑さに弱い性質を持っています。寒冷地であれば日当たりのよい場所で放任してもよく育つのですが、熱帯夜が続くような地域では、暑さ対策がポイントになります。暑さが厳しい地域では、涼しい半日陰に植え付けるのがよく、一日中強い日差しが照りつける場所や西日が強く当たる場所は避けてください。
また、極端に乾燥するのを嫌います。株元にマルチングを施して乾燥を防ぎ、適切に水やりをするといったひと手間が大切です。
アストランティアの管理の仕方
ここまで、アストランティアの基本情報や花の特徴、品種、適した環境などについてご紹介してきました。では、ここからはガーデニングの実践編として、アストランティアの栽培方法について、詳しく解説します。
アストランティアに適した土づくり
【地植え】
植え付けの2〜3週間前に、腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで耕しておきます。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
草花用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。
アストランテイアの植え付け・植え替え
アストランティアの植え付け・植え替えの適期は3月中旬〜4月中旬、10月中旬〜11月中旬です。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、軽く根鉢をほぐして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えます。
地植えで育てている場合、環境に合えば植え替える必要はありません。ただし暑さに弱いので、夏に大変暑くなる地域や直射日光が照りつける場所では、夏前に鉢に植え替えて涼しい所へ移動し、夏越しさせるのが無難です。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、7〜8号鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから草花用の培養土を半分くらいまで入れましょう。ポットから取り出して軽く根鉢をくずし、鉢に仮置きして高さを決めたら、少しずつ土を入れて植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりしてくるので、2〜3年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出してみて、根が詰まっていたら、根鉢をくずして古い根などを切り取りましょう。根鉢を1/2〜1/3くらいまで小さくして、元の鉢に新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢を崩す程度にして植え替えてください。
アストランティアの水やり頻度はどのくらい?
株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏に水やりする場合は、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。気温の高い昼間に行うと、すぐに水がぬるま湯のようになり、株が弱ってしまいます。
また、真冬に水やりする場合は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になるので、十分に気温が上がった昼間に与えるようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、アストランティアは乾燥を嫌うので、雨が降らない日が続くようなら、水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。アストランティアは乾燥を嫌うので、水切れしないようにすることが大切です。ただし、いつもジメジメした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。また、茎葉がしおれそうにだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。
アストランティアには肥料をいつ・どのように与える?
【地植え・鉢植えともに】
3月頃と9月下旬に緩効性化成肥料を株の周囲にまき、スコップなどで軽く耕して土に馴染ませましょう。
アストランティアの花がら摘み
【花がら摘み】
アストランティアは次々に花が咲くので、終わった花は花茎の根元から摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも終わった花を残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
アストランティアを夏越しさせるときの注意点は?
【地植え】
夏の暑さが苦手なので、猛暑日が続く地域や強い日差しが一日中当たるような場所では、朝のみ日が差す東側か、木漏れ日がチラチラと差すような半日陰の場所に植え替えるとよいでしょう。乾燥しやすい場所ではバークチップなどでマルチングを施し、雨が降らない日が続いたら、水やりをして補います。鉢に植え替えて、風通しがよく涼しい場所で管理してもよいでしょう。
【鉢植え】
暑さを嫌うので、風通しがよく涼しい半日陰に移動して管理しましょう。朝夕の水やりを忘れず行い、乾燥させないようにします。ただし、いつもジメジメとした多湿な状態にするのはNGです。
アストランティアの栽培で注意したい病害虫
【病気】
アストランティアの栽培ではほとんど病気の心配はありませんが、まれにうどんこ病や灰色かび病が発生することがあります。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放置するとどんどん広がるので注意。対処せずにそのままにしておくと光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。チッ素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用する殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほどの多湿の環境下で発生しやすい病気です。ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪く込み合っていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合っている場合は、間引いて風通しよく管理しましょう。
【害虫】
アストランティアの栽培で発生しやすい病害虫は、アブラムシ、アザミウマ、ケムシなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目も悪いので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
アザミウマは花や葉につき、吸汁する害虫です。スリップスの別名を持っています。体長は1〜2㎜ほどで大変小さく、色は緑や茶、黒の昆虫で、群生して植物を弱らせるので注意しましょう。針のような器官を葉などに刺して吸汁する際にウイルスを媒介するので、二次被害が発生することもあります。被害が進んだ花や葉は傷がついてかすり状になるなど異変が見られるので、よく観察してみてください。花がらや枯れ葉、雑草などに潜みやすいので、株まわりを清潔に保っておきます。土に混ぜるタイプの粒剤を利用して防除してもよいでしょう。
ケムシ類は蛾の幼虫で、いも虫のような姿をしており、多数の細かい毛に覆われています。ケムシの種類は多様ですが、主に体長は20〜30mmくらい。葉裏などに幼虫が大発生することがあり、見た目もよくないので、見つけ次第市販のスプレー薬剤などを用いて駆除しましょう。
アストランティアの増やし方
アストランティアは、株分けと種まきで増やすことができます。ここでは、増やし方について解説します。
株分けして増やす
アストランティアの株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら株の老化が進むので、「株分け」をして若返りを図ります。株分けの適期は4月か10月頃です。株を掘り上げて数芽ずつつけて根を切り分け、再び植え直します。それらの株が再び大きく成長し、株が増えていくというわけです。
種まきして増やす
種まきするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなります。
アストランティアの種まきの適期は10〜1月頃です。発芽率が低いので、多めに種まきしておくとよいでしょう。種を播く際は、種まき用のセルトレイに草花用にブレンドされた市販の培養土を入れ、1穴当たり1〜2粒ずつ播きます。種が隠れる程度に土を薄くかけ、はす口をつけたジョウロで優しい水流で水やりをしましょう。乾燥しないように管理し、過保護にせずに冬の寒さにあわせるとよいでしょう。発芽後は日当たりがよく、風通しのよい場所で管理してください。本葉が2〜3枚出始めたら、黒ポットに植え替えて育苗します。ポットに根が回ってしっかりした株に育ったら、植えたい場所に定植しましょう。
アストランティアの楽しみ方
アストランティアは、少しの風にもふわふわと揺れる繊細な草姿をしているので、ナチュラルガーデンで活躍します。草丈は40〜80cmで、花壇の中段あたりに向いています。個性が強すぎず、他の植物とも調和しやすいのも魅力です。
また、花もちがいいので、切り花にしてインテリアに飾ってもよく映えます。風通しのよい場所に逆さに吊しておけば簡単にドライフラワーにできるので、長く飾って楽しむことも可能です。
多彩な楽しみ方ができるアストランティアを育ててみよう!
優しい表情をもつアストランティアは、ナチュラルガーデンに欠かせない花として人気があります。他の草花と調和しやすく、ほんのりと芳香を漂わせるのも魅力。切り花やドライフラワーにしても楽しめるアストランティアを、ぜひ庭に迎え入れてはいかがでしょうか。
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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