フワフワの花が咲くスモークツリー! 育て方や楽しみ方をご紹介
初夏にふわふわとした花茎を伸ばして、木が煙っているようにも見えるスモークツリー。花姿のユニークさもさることながら、黄系、青系、ブロンズ系の葉色が揃い、カラーリーフプランツとしても人気の高い落葉樹です。この記事では、庭木として注目度の高いスモークツリーについて幅広くご紹介します。
目次
スモークツリーの基本情報
スモークツリーは、ウルシ科ハグマノキ属の高木で、学名はCotinus coggygria。原産地はヨーロッパやヒマラヤ、中国などです。暑さにも寒さにも強く、放任してもよく育ちます。逆に生命力が強いために、枝葉を旺盛に伸ばして樹形を乱しやすいので、適した剪定をして風通しよく管理するひと手間が必要です。自然樹高は4〜5mになるので、庭で栽培する場合は、剪定によって2〜3mの高さに抑えるとよいでしょう。ちなみにスモークツリーは、雌木と雄木がある雌雄異株。ガーデニングで一般に栽培されているのは、雌株です。冬にはすっかり葉を落とす落葉樹で、秋には赤く色づく紅葉を楽しめます。
名前の由来にもなったスモークツリーの花! 詳しい特徴は?
スモークツリーの開花期は、6〜8月。花穂を立ち上げて3mmほどの花を咲かせます。花後に花茎が長く伸びて羽毛のような姿を現し、フワフワと煙がかかっているように見えることから、「スモークツリー」という名前がつけられました。ケムリノキ、カスミノキという別名も持っています。花茎の色は、白、ピンク、赤など。
スモークツリーには花や葉の色が違ういくつかの種類がある!
スモークツリーはカラーリーフとしても活躍する人気の花木で、さまざまな葉色の品種が出回っています。カラーリーフで有名な品種は、黄色みの強い明るい葉色の‘ゴールデンレデイ’、黒みを帯びたワインレッドの葉を持つ‘ロイヤルパープル’や‘ベルベットクローク’など。
また、鮮やかな赤い花茎の‘ワインカラー’、ピンクの‘ピンクボール’、白の‘ホワイトボール’、花茎がピンクからグリーンのグラデーションになる‘グリーンボール’などもあります。
スモークツリーは育てやすい? 育て方のコツをご紹介
スモークツリーは生命力旺盛なので、放任してもよく育ちます。一方で、繁茂しすぎる一面もあるので、適したメンテナンスも必要。ここでは、スモークツリーの育て方のコツを詳しくまとめました。
スモークツリーに適した環境は?
スモークツリーの栽培には、日当たり、風通しのよい場所が最適です。ただし根が浅く張る性質があり、風の通り道など強風が吹きつけやすい場所などは、倒伏の原因になるので避けたほうが無難です。
栽培適地は北海道南部〜沖縄で、暑さにも寒さにも強い性質です。真夏や真冬などの厳しい季節に鉢上げして養生させる必要はなく、地植えしても放任で育てることができます。また、スモークツリーは成長スピードが速く、枝葉を旺盛に茂らせるので、自由に枝葉を広げられるように広めのスペースを確保しておくとよいでしょう。
過湿を嫌うので、粘土質の土壌や水場に近くて低い場所など、水はけが悪くてジメジメとした環境には向きません。庭に植え付ける場合は、水はけのよい場所を選び、腐葉土や堆肥などの有機質資材をすき込んで、腐植質に富むふかふかとした土壌づくりをしておきましょう。
スモークツリーに適した土は?
【地植え】
植え付けの2〜3週間前に、直径、深さともに50cm程度の穴を掘りましょう。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきます。粘土質などの水はけの悪い土壌であれば、腐葉土や堆肥を多めにすき込んで土壌改良し、土を盛って周囲よりも高くしておくとよいでしょう。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
樹木用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。自身で配合用土を作りたい場合は、赤玉土5、腐葉土3、川砂2の割合でブレンドするとよいでしょう。
スモークツリーの植え付け方法
スモークツリーの植え付け適期は、5〜9月です。
【地植え】
土りづくをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、軽く根鉢をほぐして植え付けます。しっかりと根づくまでは、支柱を立てて誘引し、倒れるのを防ぐとよいでしょう。最後にたっぷりと水を与えます。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、10号以上の大鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから樹木用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗木をポットから取り出して軽く根鉢をくずし、鉢に仮置きして高さを決めたら、少しずつ土を入れて植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。しっかりと根づくまでは支柱を立てて誘引し、倒伏を防ぎましょう。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えます。
乾燥気味を好むスモークツリー! 水のやりすぎには注意
水やりの際は、木の幹や枝葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。真夏は気温が上がっている昼間に水やりすると、温まった水により木が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。反対に、真冬は気温が十分に上がった日中に行います。夕方に水やりすると凍結の原因になるので避けてください。
【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、晴天が続いてひどく乾燥する場合は水やりをして補いましょう。
【鉢植え】
日頃から水やりを忘れずに管理します。ただし、スモークツリーは多湿を嫌うので、水の与えすぎには注意。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。また、茎葉がややだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。冬は生育が止まり、表土も乾きにくくなるので控えめに与えるとよいでしょう。
スモークツリーはどのくらい肥料を必要とする?
スモークツリーに肥料を与えるのに適したタイミングは、12〜3月です。
【地植え】
スモークツリーは生育スピードが速く、旺盛に枝葉を伸ばすので、肥料を与えすぎると持て余すことになりかねません。地植えの場合、肥料は基本的には不要と捉えておくとよいでしょう。あまり生育に勢いがないようであれば、適期に肥料を与えて様子を見てください。
【鉢植え】
適期に、緩効性化成肥料を施します。
スモークツリーは毎年剪定しよう!
スモークツリーの剪定適期は、落葉期の11〜2月です。樹高が高くなりやすいので毎年剪定し、家庭で栽培する場合には2〜3m以内に樹高をキープしておきたいものです。
特に若木のうちは生育が早く、庭植えにすると1年で2mほども枝を伸ばすことがあるので、徐々に成長して落ち着くまでは、放任せず適期に剪定することが大切です。
スモークツリーは、直立した太くて強い徒長枝を、数本長く伸ばします。この徒長枝を残すと、この枝の上部からさらに強い徒長枝が伸びて樹形を乱すので注意。強い徒長枝は、樹高の1/2〜1/3までを目安に、外向きに伸びている細い枝の少し上で切り取ります。内向きに伸びて、明らかに将来込み合う原因になるような徒長枝は、根元から切り取ってかまいません。徒長枝を切り取った後は、細い枝を剪定します。内向きに伸びる枝、込み合っている枝の間引き剪定をして風通しをよくしてください。若木のうちは、地際から発生するひこばえが多く出るので、根元から切り取ります。
生育が落ち着いてきたら、枝の先端につく花芽を落とさないよう、込み合っている部分を間引く剪定を基本にするとよいでしょう。
スモークツリーを育てるうえで気をつけたい病気や害虫
スモークツリーは強健な性質で、病害虫の心配はほとんどありません。しかし、まれに下記の病害虫が発生することがあるようです。
【病気】
スモークツリーに発生することがある病気は、うどんこ病です。
うどんこ病は、発生すると葉の表面に白い粉が吹いたようなカビが見られます。光合成を阻害されたり、葉から養分を吸収されたりして、生育が悪くなります。放置してひどくなると枯れてしまうこともあるので注意。木の勢いがなくなり、見た目もよくないので、兆候が見られたら早期に殺菌剤などを散布して対処しましょう。梅雨の時期に発生しやすい傾向にあるので、水もち、水はけのよい土壌づくりと、適切な水やりの管理が回避のカギです。チッ素成分の多い肥料を与えすぎるのも、発症のきっかけになります。
【害虫】
スモークツリーに発生しやすい害虫は、カイガラムシ、ハダニです。
カイガラムシは、ほとんどの庭木に発生しやすい害虫です。枝や幹などについて吸汁し、だんだんと木を弱らせていきます。硬い殻に覆われ薬剤の効果があまり期待できないので、ハブラシなどでこすり落として駆除するとよいでしょう。
ハダニは、乾燥が続くと発生しやすい小さな虫で、葉裏などについて吸汁します。大発生すると株が弱ることがあるので、葉の表や裏に水のシャワーを勢いよくかけましょう。小さな虫なので、水の勢いで押し流すことができます。
スモークツリーの植え替えはどうする?
【地植え】
暑さや寒さに強く、真夏や真冬などの厳しい気候下でも育つので、鉢上げなどの作業は不要。植地えの場合は、一度植え付ければそのまま放任してもかまいません。
【鉢植え】
鉢植えで楽しんでいる場合、スモークツリーは生命力旺盛なために成長とともに根詰まりしてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替えの適期は、落葉期の11月〜3月上旬。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から木を取り出してみて、根が詰まっていたら、根鉢をくずして古い根などを切り取りましょう。根鉢を1/2〜1/3くらいまで小さくして、元の鉢に新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢を崩す程度にして植え替えてください。
スモークツリーの増やし方は?
スモークツリーは、種まき、株分け、挿し木の方法で増やすことが可能です。ここでは、増やし方について詳しく解説していきます。
スモークツリーは種まきで増やせる!
スモークツリーが結実していたら種子を採取し、その種子を播いて増やすことができます。9〜10月に種子を採取し、黒ポットに新しい培養土を入れて十分に水で湿らせます。種子をまき、薄く土をかけて明るい日陰で管理。発芽後は日当たりのよい場所に置いて育苗します。本葉が3〜4枚ついたら勢いのある苗を1本のみ残し、ほかは間引きます。根が回るくらいに成長したら、植えたい場所に定植しましょう。
ひこばえから株分けする方法も!
スモークツリーは、若木のうちは地際からたくさんのひこばえを発生させます。本来は剪定適期に地際でカットして処分するものですが、このひこばえを利用して株分けすることも可能です。ひこばえが1mほど伸びたら、掘り上げて根を落とさないように株分けし、植えたい場所に植え付けます。
成功率は低いが品種によっては挿し木でも増やせる
挿し木とは、枝を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物の中には挿し木ができないものもありますが、スモークツリーは成功率は低いものの、挿し木で増やすことができます。
挿し木の適期は、4月中旬〜6月中旬です。スモークツリーの挿し木は成功率が低いので、多めに挿し木をしておくとよいでしょう。その年に伸びた新しい枝を10cmほどの長さで切り取り、採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を2〜3枚切り取ります。3号(直径9cm)くらいの鉢を用意してゴロ土を入れ、新しい培養土を入れて水で十分に湿らせておきます。培養土に植え穴をあけ、挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて管理します。その後は日当たりのよい場所に置いて育苗し、大きく育ったら植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
スモークツリーの楽しみ方は?
スモークツリーは、フワフワとした花姿がユニークな花木です。花をカットしてインテリアに飾っても素敵ですし、ドライフラワーにすることもできます。
また、スモークツリーの葉は丸くて可愛らしく、色も青みがかったグリーン、黄味がかったグリーン、赤紫色などのバリエーションがあるため、カラーリーフプランツとしても利用できます。グリーンと赤紫色の葉を対比させて植えるのもいいですね。樹高が高くなるので、その家の顔となるシンボルツリーとして仕立てることもできますよ!
フワフワで可愛い人気のスモークツリーを庭に!
丸い葉が愛らしいスモークツリーは、開花期以外でもカラーリーフとして庭で活躍する樹木です。暑さ寒さに強く、大変丈夫なので、毎年の剪定さえ忘れずに行えば、ビギナーでも簡単に育てられます。花も葉も観賞価値が高いスモークツリーを、ぜひ取り入れてはいかがでしょうか。
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
参考文献
上条祐一郎『切るナビ! 庭木の剪定がわかる本』NHK出版 (2017年第17刷)
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