皆さまはシャコバサボテンをご存じですか? 寂しい冬に花を咲かせてくれる嬉しい存在であると同時に、ある程度の乾燥にも耐えるので育てやすい植物です。品種によって花色もさまざまで、自分好みの色を集めて育てるのもおすすめです。この記事では、そんなシャコバサボテンの特徴と育て方について解説します。
目次
シャコバサボテンってどんな植物なの?
シャコバサボテンはサボテン科カニバサボテン属の一種で、学名をシュルンベルゲラ(Schlumbergera、またはジゴカクタスZygocactus)といいます。多年生の多肉植物(サボテン)で、原産地はブラジルをはじめとする南アメリカ大陸。「森林性サボテン」と呼ばれるタイプで、比較的標高の高い場所の樹木や岩場に着生して育ちます。自生地での草丈は15~40cm。冬に花を咲かせることからクリスマスカクタス、品種改良の盛んなヨーロッパから日本に入ってきたことからデンマークカクタスと呼ばれることもあります。分類上はサボテンですが、一般的にイメージされる乾燥地に生えているトゲトゲのサボテンとは生育環境が異なり、湿度が高く、遮光された環境を好みます。
シャコバサボテンの特徴とは?
シャコバサボテンはサボテンの一種ですが、その葉の形は平たく、茎の節ごとに一部が尖り、まるでシャコのハサミを連ねたような形をしています。似た仲間でカニバサボテンという種類もありますが、近年品種が交雑し、中間的な特徴を持つ交配種なども多く見受けられるようになりました。
シャコバサボテンの開花期は11~3月で、枝の先端に花をつけます。日が短くなるのを感じ取って花を咲かせる「短日植物(たんじつしょくぶつ)」なので、太陽の光が当たっている時間が短くなると花芽をつけ、冬になると華麗な花を咲かせます。花言葉は「美しい眺め」「ひとときの美」など。
シャコバサボテンの育て方
サボテンといわれると「乾燥に強い」「日光によく当てる」などのイメージがあるかもしれませんが、シャコバサボテンは湿度が高い森林に生えている植物なので、そこまで乾燥にも強光にも強くありません。ここでは実際にシャコバサボテンを栽培する場合、何に気を付ければよいのか、上手に栽培するためにはどうしたらいいのかについて解説します。
栽培環境
シャコバサボテンの自生地は高山帯の森の中です。空中湿度が高く、霧が立ちこめるような場所に着生して生育しています。南米でありながらも極端に高温になったり、乾燥することはありません。そのため栽培環境下では、置き場所と温度に気を付けることが大切です。
まず置き場所です。太陽光の当たる時間によって花芽形成が決まるため、4~10月までは屋外管理でしっかりと日に当て、成長を促します。ただし梅雨明けから9月上旬までは直射日光が当たらないよう明るい日陰に移したり、遮光するなど、強い日差しを遮る工夫をしましょう。秋以降は再び日光によく当てます。ただし耐寒性も高いとはいえず、低温期が続くと花芽を形成しない場合があるので、最低気温が10℃を下回るようになったら室内に入れるなどの防寒対策をしてください。その際も日光にはできるだけ当てるようにしましょう。
前述のように、シャコバサボテンは日が短くなると花を咲かせる性質があります。そのため、夜に煌々と光が当たるような場所に置いておくと、長い昼が続いていると勘違いして、花を咲かせません。秋分の日を過ぎたら、夜は人が出入りしない部屋に置くか、後で説明する「短日処理(たんじつしょり)」を行う必要があります。
植え付け・植え替え
もともとは水が停滞しない木に着生して育つ植物なので、根の周りにふんだんに空気がある状態を好みます。用土は水はけと通気性のよいものを選びましょう。市販されているサボテンや多肉植物用の培養土、あるいはシャコバサボテン用の土を使うとよいでしょう。自分で用土を作る場合は、赤玉土と軽石を1:1で配合したところに、ピートモスやバーミキュライト、ゼオライトなどを混ぜるのがおすすめです。
植え付けや植え替えは、生育期である4~6月に行いましょう。大きくなるにつれて鉢内に根が張り、根詰まりを起こしてしまうので、1~3年に1回は植え替えをします。
水やり
自生地では木に着生して生きているので、根の周りに常に水がある状態でなくても生育します。葉にも水を蓄えているので、ある程度の乾燥には耐えることができるわけです。しかしながら、根の乾燥により生育が阻害されるとうまく吸水できず、葉が赤くなってきます。葉の色が変わってきたら水分不足の可能性があるので、日々の様子を観察しながら定期的な水やりを行いましょう。4~10月は用土の乾き具合を見て、土の表面が乾いたくらいで水やりを行います。秋になって気温が下がってきたら、水やりの頻度を減らしていきましょう。冬には室内に取り込みますが、室温が18℃以上あるようであれば、生育期同様に定期的な水やりをします。
肥料
春から夏の間は定期的に緩効性肥料を施し、併せて3~6月は液肥を与えておくと効果的です。夏以降の追肥は必要ありません。肥料は鉢栽培用、あるいは観葉植物用のものを選びましょう。肥料過多になると、肥料焼けを起こして根を傷めてしまうことがあるので、施肥をする際は規定量、あるいは規定量より少なめに与えて様子を見ましょう。
葉摘み
シャコバサボテンの管理として大切なことの一つに「葉摘み」があります。ピンチや摘心ともいわれるこの作業は、草姿を整えるためと花を咲かせるために、春と秋の2回行います。
春の葉摘みは4月頃に行いましょう。冬越しをして樹形が崩れた株を整え、枝数を増やすため、上から見て円形に葉が整うよう、乱れた葉は先端から1〜3節を指で捻って摘み取ります。この摘み取った部分は挿し芽に用いることもできます。
秋の葉摘みは9月頃で、新芽を摘み取ります。シャコバサボテンは新芽には花芽が付かないという特徴があるため、すべての枝の成長を止めることで、花芽形成を促し、また花の咲く時期を揃えることができます。秋の葉摘みのポイントは、葉摘みの後は2週間ほど水やりを止め、その後に再開させること。こうすることで体を大きくする「栄養成長」がストップして子孫を残す「生殖成長」に切り替わり、花が咲きやすくなります。
増やし方
シャコバサボテンは種まきと挿し芽で増やせますが、一般的によく行われるのは挿し芽での増殖です。挿し芽の場合、一つの茎節からでも増やすことができますが、通常は活着後の生育の速度を上げるために2節ほど挿します。春に葉摘みをした際の茎節を2節挿すことで、効率よく増やすことができます。用土は、挿し木用のものや赤玉土にバーミキュライトを混ぜたものがよいでしょう。鉢を使う場合は、鉢の縁に沿って挿すことで、成長後も綺麗な株を作ることができます。挿した後は用土を乾かさないように管理しましょう。
注意すべき病害虫
基本的に病害虫の心配はありませんが、梅雨時期にナメクジや毛虫が付いて、柔らかい部分の葉を食害されることがあります。害虫の活動する夜に見回りし、見つけ次第駆除しましょう。また見つからない場合は根元に潜んでいることもあるので、注意深く観察し、必要に応じて薬剤を散布しましょう。
シャコバサボテンの花をたくさん咲かせるには?
シャコバサボテンの花を咲かせるためには、一年の管理の工夫が必要となります。まずは生育期にしっかりと日光に当て、十分な光合成をさせましょう。そして花芽を形成させるためには、10月以降に気温が20℃を下回ったら、日の当たる時間を12時間未満にする「短日処理」が大切になります。短日処理の際は、夜は電灯の光が当たらない場所で管理するか、夜を含めた12時間以上の間、段ボールで覆うなど、一定時間暗い環境にして、花芽を作らせます。室内のライトの明るさにも反応してしまうため注意が必要です。
シャコバサボテンを上手に育てて彩りを!
見事な花を咲かせるためには一年を通した管理が大切になりますが、その分整った姿で一斉に咲いたシャコバサボテンは、寒い冬を明るくしてくれることでしょう。また一年の栽培の成績表として開花という結果がついてくるため、とても育て甲斐のある植物です。自分の好みの花色を集め、色とりどりのシャコバサボテンで自宅を彩ってみませんか?
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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