エキゾチックで愛らしいオージープランツ「フェアリーピンク」
ファッショナブルでオリジナリティのある植物を求める人々の間で人気の高い、オーストラリア原産の植物グループ「オージープランツ」。その一つ、フェアリーピンクという植物をご存じでしょうか? 綿毛に覆われた白銀の茎葉に、白やピンクの花をつける、とても魅力的な植物で、オーストラリアのジギタリスとも呼ばれています。自宅の庭で100種以上のオージープランツを育てているガーデンプロデューサーの遠藤昭さんに、フェアリーピンクの魅力や育て方について教えていただきます。
目次
鮮やかなピンクの花が愛らしいフェアリーピンク
春先になると、園芸店の店頭にはさまざまなオージープランツが並ぶ。なかでもこの2~3年人気なのが、フェアリーピンクと呼ばれるオーストラリアン・フォックスグローブ(Australian Foxglove)、つまり、オーストラリアのジギタリス(Foxglove)だ。オーストラリアではネイティブフォックスグローブとも呼ばれている。ジギタリスはゴマノハグサ科の多年草だが、このフェアリーピンクはシソ科の常緑低木の園芸品種である。花の形は、確かにジギタリスに似ている。
日本では、学名がPityrodia terminalisと表記されていたり、ピティロディア・ターミナリスの名前で店頭に出回っていることが多い。しかし、じつは近年、Dasymalla属に分類が変更され、Dasymalla terminalisが現在の学名となっている。
西オーストラリアが原生地で、白い綿毛で覆われた葉と茎を持ち、春に白やピンクの花をつける、とても魅力的な植物だ。オージープランツのうち、白い綿毛に覆われた葉を持つものは、まず西オーストラリアの乾燥地帯が原生地。見るからに雨に弱そうな姿だ。本来は、常緑低木で1mほどの株立ちになるが、日本の蒸し暑い夏を越すのが難しく、一年草として扱われている。
エキゾチックな雰囲気を演出
フェアリーピンクは見た目のインパクトも強く、ストレリチアやハーデンベルギアと並べると、とてもエキゾチックな庭風景が出来上がる。
庭のテーブルに一鉢置くだけでも、存在感がある。この白銀色の葉と鮮やかなピンクの花の取り合わせが、独特のオーラを発しているのかもしれない。背景のオーストラリアの木生シダともよく似合う。
原産地の気候
フェアリーピンクという名前で流通しているが、もともと‘フェアリーピンク’は園芸種の品種名。野生のDasymallaは、乾燥した過酷な気象条件の原野に育つ。
上2枚の写真は、西オーストラリアで撮影した原生種だ。
そして、これは原生種が生息している西オーストラリアの原野。こんな荒涼とした乾燥地帯が原産地なのだ。
これまで度々、一口にオージープランツといっても、東オーストラリア原産の品種は日本でも育てやすいが、西オーストラリア原産は夏越しが難しいと書いてきた。今回、その気候の違いについて少し触れておこう。東京、東オーストラリアのメルボルン、西オーストラリアのパースの気候について、夏と冬の気温及び降水量を比較してみよう(データは拙書『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版社)より引用)。
東京 | 約1,600mm |
メルボルン | 約680mm |
バース | 約775mm |
東京の降水量は倍以上ある。
都市 | 最高気温 | 最低気温 | 降雨量 |
---|---|---|---|
東京(8月) | 30.8℃ | 23.0℃ | 168.2mm |
メルボルン(2月) | 25.8℃ | 14.6℃ | 48mm |
パース(2月) | 31.9℃ | 17.5℃ | 15mm |
夏の西オーストアリアがいかに乾燥しているかが想像できると思う。西オーストラリア原産植物の日本での夏越しのコツは、絶対に雨に当てずに、極力水を控えることだ。
都市 | 最高気温 | 最低気温 | 降雨量 |
---|---|---|---|
東京(2月) | 10.4℃ | 1.7℃ | 56.1mm |
メルボルン(8月) | 15℃ | 6.7℃ | 50mm |
パース(8月) | 18.4℃ | 8.0℃ | 117mm |
西オーストラリアのパースは、冬は温暖で、雨も降る地中海性気候。
気候の違いをご理解いただけただろうか?
今回は、以下に述べる育て方の参考になるよう気候の違いを示したが、植物の育て方の基本は、原産地の気候・土壌と育つ環境に近づけること。植物を栽培する際は、ぜひ原産地の気候を確認してほしい。
フェアリーピンクの育て方
【植え付け】
ビニールポットに植わった苗を購入した場合は、根を崩さないようにして一回り大きな鉢(スリット鉢・テラコッタなど通気性のよい鉢)に植え替える。地植えは夏越し・冬越しが難しいため、鉢植えで育てるとよい。
【用土】
水はけのよい土を使用する。例えば赤玉土4:小粒軽石2:鹿沼土1:腐葉土3など。
【水やり】
表面が乾いて1日後、特に夏・冬は控え目に。
【置き場】
日当たりのよい雨の当たらない場所。夏は風通しのよい半日陰の涼しい場所に置く。冬は屋内に取り込む。
【施肥】
リン酸の少ない肥料を使用。
【剪定】
花後に切り詰め、混雑した枝を透かし風通しのよい状態にして夏越しに備える。
【病害虫】
特になし。
ポイントは夏に涼しい場所で乾燥気味に管理すること。うまくいくと夏越しできる。冬越しは窓辺の日当たりのよい場所で、水を控えめにして育てると比較的成功しやすい。
ちょっと夏越しが難しいフェアリーピンクですが、2年目に大きな豪華な株が開花したときの喜びはひとしおです。一度、挑戦してみませんか?
Credit
写真&文 / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -
えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
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