日本では、春に開花する花木といって真っ先に思い浮かべるのは、桜の代表品種のソメイヨシノでしょう。そのソメイヨシノから少し遅れて咲く、花木のハナカイドウも、昔から春の花木として人気です。この記事では、ハナカイドウの特徴や種類、育て方などについて詳しくご紹介していきます。

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ハナカイドウの概要

ハナカイドウ
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ハナカイドウは、バラ科リンゴ属の落葉低木で、原産地は中国です。学名はMaulus haliliana。栽培適地は北海道南部〜九州で暑さにも寒さにも強く、放任してもよく育ちます。丈夫で育てやすいため、庭木はもちろん盆栽としても古くから親しまれてきました。自然樹高は4mほどになるので、家庭で栽培する場合は剪定によって2mまでに樹高を抑えるとよいでしょう。冬にはすっかり葉を落とす落葉樹で、秋には小さな赤い実がつき、紅葉も楽しめます。

ハナカイドウの別名や名前の由来

ハナカイドウ
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ハナカイドウは漢字で「花海棠」と書きます。「棠」は梨という意味をもっており、「海棠」は海外から伝えられた梨という意味があるそうです。中国では「海棠」の名で通っており、日本にもそのまま伝えられてカイドウとも呼ばれています。また、別名にスイシカイドウ(垂糸海棠)があり、花茎を長く伸ばして垂れ下がるように咲く様子から名づけられたようです。

ハナカイドウの花言葉

ハナカイドウ
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ハナカイドウの花言葉には、「艶麗」「美人の眠り」「温和」「友情」などがあります。ハナカイドウは、中国では昔から親しまれてきた花で、牡丹と並んで美人の代名詞となっています。唐の時代には、玄宗皇帝が酔って眠る楊貴妃をこの花にたとえたことから、「美人の眠り」という花言葉が与えられたようです。

花の特徴や開花時期

ハナカイドウの開花期は4月中旬〜5月上旬で、花色は淡いピンクです。花茎を長めに伸ばし、径3〜4㎝ほどの花が半開状態で下向きに開花。種類によって一重咲き、半八重咲きがあります。大変花つきがよく、木を埋め尽くすように咲いて見応えがあるので、人気の高い花木です。

ハナカイドウとミカイドウ

ハナカイドウとミカイドウ
左は下向きに咲くハナカイドウ、右は上向きに咲くミカイドウ。walkdragon&guan zhe/Shutterstock.com

ハナカイドウの近縁種に、ミカイドウ(実海棠)があります。江戸時代にはミカイドウをカイドウと呼んでいたため、混同されがち。ハナカイドウは花が下向きに咲きますが、ミカイドウは上向きに咲くので、これが見分けるポイントです。また、ミカイドウは秋に2cm前後のリンゴのような果実がつき、食用できます。

ハナカイドウの種類

ハナカイドウ
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ヤエカイドウは、花が八重咲きになるタイプで、より華やかな魅力をもっています。シダレカイドウは枝が下にしだれるタイプで、たおやかな雰囲気。ウケザキカイドウは、別名ベニリンゴ、リンキとも呼ばれ、花茎を立ち上げて咲くのが特徴です。ミツザキカイドウは、別名ズミ、コナシなどと呼ばれ、北海道〜東北中北部に自生しており、白い花を咲かせます。斑入りカイドウは葉に白い斑が入り、個性的です。

ハナカイドウの育て方

ここまで、ハナカイドウの基本情報について、幅広く掘り下げてきました。では、ここからはガーデニングの実践編として、ハナカイドウの栽培テクニックについて、詳しく解説していきます。

栽培に適した環境

ハナカイドウ
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ハナカイドウの栽培には、日当たり、風通しのよい場所が最適です。日当たりの悪い場所では、花つきが悪くなるので注意。また、西日が強く当たる場所も避けてください。

ハナカイドウの栽培適地は北海道南部〜九州で、暑さにも寒さにも強い性質です。真夏や真冬などの厳しい季節に鉢上げして養生させる必要はなく、地植えしても放任して育てることができます。

ハナカイドウは乾燥を嫌うので、庭に植え付ける場合は腐葉土や堆肥などの有機質資材をすき込んで、水はけ、水もちがよく腐植質に富むふかふかとした土壌作りをしておきましょう。

土作り

土
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【地植え】

植え付けの2〜3週間前に直径、深さともに50cm程度の穴を掘りましょう。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきます。砂質土などの水はけがよすぎる土壌であれば、腐葉土や堆肥を多めにすき込んで土壌改良しておくとよいでしょう。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。

【鉢植え】

樹木用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。自身で配合土を作りたい場合は、赤玉土4、腐葉土3、黒土3の割合でブレンドするとよいでしょう。

植え付けと植え替え

植え付け
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ハナカイドウの植え付け適期は、落葉期の12〜3月です。

【地植え】

土作りをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、軽く根鉢をほぐして植え付けます。しっかりと根づくまでは、支柱を立てて誘引し、倒伏を防ぐとよいでしょう。最後にたっぷりと水を与えます。

生育適地の北海道南部以南なら、日本の暑さや寒さに耐え、鉢上げして養生する必要はないので、そのまま植えっぱなしにしてかまいません。

【鉢植え】

鉢で栽培する場合は、8〜10号鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから樹木用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗木をポットから取り出して軽く根鉢をくずし、鉢の中に入れて仮置きして高さを決めます。少しずつ土を入れて、植え付けていきましょう。水やりの際にあふれ出さないよう、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。ハナカイドウがしっかりと根づくまでは支柱を立てて誘引し、倒伏を防ぎきましょう。最後に、鉢底から水が流れ出すまで、十分に水を与えます。

鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりしてくるので、2〜3年に1度は植え替えることが大切です。植え替えの適期は、1〜2月。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から木を取り出してみて、根が詰まっていたら、根鉢をくずして古い根を切り取るなどして小さくし、元の鉢に新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢を崩す程度にして植え替えてください。

水やり

水やり
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水やりの際は、木の幹や枝葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。真夏は気温が上がっている昼間に水やりすると、水がすぐにぬるま湯になって木が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。反対に、真冬は気温が十分に上がった日中に行います。夕方に水やりすると凍結の原因になるので避けてください。

【地植え】

植え付け後にしっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、晴天が続いてひどく乾燥する場合は水やりをして補いましょう。

【鉢植え】

日頃から水やりを忘れずに管理します。ハナカイドウは乾燥を嫌うので、水切れには注意。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまでたっぷりと与えましょう。また、茎葉がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチして対処することが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。冬は生育が止まり、表土も乾きにくくなるので控えめに与えるとよいでしょう。

肥料

肥料
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【地植え・鉢植えともに】

休眠から目覚めて生育が始まる前の1〜2月頃に、緩効性肥料を施します。この時期に肥料を与えることで、新芽を吹き出すためのエネルギー源となります。

また、開花が終わった5月頃に緩効性肥料を与え、土によくなじませます。たっぷりと花を咲かせることで、木がエネルギーを消耗するので、体力を回復させる目的で与える肥料で、「お礼肥(おれいごえ)」といいます。「たくさんの花を咲かせてくれてありがとう」という気持ちを込めて、肥料をあげてくださいね。

かかりやすい病気

農薬
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ハナカイドウの栽培でかかりやすい病気は、赤星病、うどんこ病などです。

赤星病は、葉の表面にオレンジ色の斑点が現れ、次第に大きくなって葉が枯れていき、樹勢も衰えます。見つけ次第葉を処分し、殺菌剤を散布して防除しましょう。ハナカイドウを栽培する際には、近くにカイヅカイブキなどビャクシン類の植物を植えないようにしてください。なぜならカイヅカイブキは赤星病の中間宿主となる植物で、病原菌は冬に葉や枝に潜んで春になると胞子を飛ばし、近くのハナカイドウなどの木に寄生して発病するからです。

うどんこ病は、発生すると葉の表面に白い粉が吹いたようなカビが見られます。光合成を阻害されたり、葉から養分を吸収されたりして、生育が悪くなります。放任してひどくなると枯れてしまうこともあるので注意。木の勢いがなくなり、見た目としても不愉快になってしまうので、兆候が見られたら早期に殺菌剤などを散布して対処しましょう。乾燥する時期に発生しやすい傾向にあるので、水もち、水はけのよい土壌作りと、適切な水やりの管理が回避のカギです。窒素成分の多い肥料を与えすぎるのも、発症のきっかけになります。

ハナカイドウは病気が発生しやすい庭木なので、予防として定期的に殺菌剤などを散布しておくとよいでしょう。

害虫

アブラムシ
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ハナカイドウの栽培で発生しやすい害虫は、アブラムシ、ハマキムシなどです。

アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついてしまうほどに。植物の茎葉について吸汁し、株を弱らせてしまいます。見た目にも不愉快なので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒剤を利用する方法もあります。

ハマキムシは蛾の幼虫で、葉や花を食害します。葉をくるくると巻いたり、重ね合わせたりした中に生息して葉を食害し続け、見た目にもよろしくないので、見つけ次第除去しましょう。

ハナカイドウは害虫が発生しやすい庭木なので、予防として定期的に薬剤散布をしておくとよいでしょう。

剪定方法

剪定
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ハナカイドウの剪定適期は、休眠期の12〜2月です。

ハナカイドウは、樹木の中では生育スピードが速いほうです。毎年剪定を行って、2mほどの樹高をキープし、すっきりとした樹形に整えましょう。

ハナカイドウは、台木からひこばえが発生しやすい性質を持っています。幹は1本のみにして、ひこばえは全て切り取ってください。また、枝がかたく絡みやすいので、込んでいる部分を切り取る「すかし剪定」を基本とします。込んでいる部分があれば、内側に向かって伸びている枝や交差している枝、垂直に立ち上がっている枝、下へ向かって伸びている枝など、樹形を乱す枝を選んで間引いていきましょう。花つきをよくするには、木の内部にまで光が差し込むように剪定することが大切です。

また、ハナカイドウは勢いよく長く伸びている枝には花が咲かず、短い枝に花を咲かせる特徴があります。長く伸びている枝を半分くらいまでを目安に切り取りましょう。すると、生育期に花芽をつける短い枝がたくさん出てきます。

増やし方

ガーデニング
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ハナカイドウは挿し木で増やすことができます。

挿し木とは、枝を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物のなかには挿し木で増やせるものとそうでないものもありますが、ハナカイドウは成功率は低いものの、挿し木で増やすことができます。

ハナカイドウの挿し木の適期は、6〜7月です。その年に伸びた新しい枝を10〜15cmほどの長さで切り取ります。ハナカイドウは容易に挿し木で増やせるというわけでもないので、多めに挿し木をしておくと成功率が上がります。採取した枝(挿し穂といいます)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を数枚切り取ります。3号くらいの鉢を用意してゴロ土を入れ、新しい培養土を入れて水で十分に湿らせておきます。培養土に3カ所の穴を開け、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて管理します。その後は日当たりのよい場所に置いて育苗し、大きく育ったら植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。

ソメイヨシノより長く春を楽しめるハナカイドウ

ハナカイドウ
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ハナカイドウは、ソメイヨシノが終わる頃から開花し始め、満開時には爛漫な咲き姿を楽しめる華やかな花木です。ソメイヨシノと一緒に植えて、開花リレーを楽しむのもいいですね。開花、新緑、結実、紅葉と、季節によって表情を変えるハナカイドウを庭に取り入れ、四季の移ろいを感じられる演出をしてはいかがでしょうか。

Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

参考文献/
上条祐一郎『切るナビ! 庭木の剪定がわかる本』NHK出版 (2017年第17刷)

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