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春蘭とは? 春蘭の特徴・育て方について分かりやすくご紹介!

春蘭とは? 春蘭の特徴・育て方について分かりやすくご紹介!

goriyan/Shutterstock.com

春蘭(しゅんらん)は日本を代表する人気の野生ランの一つです。洋ランとしても人気のシンビジウムの仲間ですが、独特の清楚なたたずまいが魅力で、日本だけでなく中国、韓国などでも人気のランです。また現在はそれらを東洋ランというカテゴリーでまとめ、世界から注目を集めています。この記事では、春蘭の特徴と育て方について解説します。

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春蘭の基本情報

春蘭
goriyan/Shutterstock.com

植物名:シュンラン
学名:Cymbidium goeringii
英名:Riverstream orchid
和名:春蘭
その他の名前:ジジババ、ホクロ、ゲンコツバサミ(拳骨挟み)、テングバナ(天狗花)など
科名:ラン科
属名:シュンラン属(シンビジウム属)
原産地:北海道~九州、中国
形態:常緑多年草

春蘭はラン科シュンラン属の多年草。学名をシンビジウム・ゴエリンギー(Cymbidium goeringii)といいます。洋ランとして親しまれているシンビジウムの仲間で、東洋ランと呼ばれ古くから愛されています。

英語圏ではリバーストリームオーキッド(Riverstream orchid=谷間のラン)と呼ばれる通り、山あいでひっそりと咲くランです。

日本と中国が原産地で、3〜5月に開花期を迎えます。

春蘭の花や葉の特徴

髙尾山
goriyan/Shutterstock.com

園芸分類:山野草、ラン
開花時期:3月下旬~4月
草丈:10~30cm
耐寒性:普通
耐暑性:普通
花色:緑、黄、朱金、褐色

春蘭は北海道から九州の山地に広く分布しています。里山の雑木林など、広葉樹の林床に自生していることが多く、春の雪解けと共につぼみを膨らませます。野趣のある素朴で可憐な花と、甘く爽やかな香りがあり、山菜として食したり、塩漬けにしてお茶にするなど、昔から人々の暮らしの中にある植物でした。ジジババ、ホクロなどの地域名もあります。

花の色が違ったり、葉に斑が入っているなど通常とは異なる個体は珍重され、増やされてきました。現在でも古典園芸植物として人気があり、春になると多くの場所で品評会が開催されています。

春蘭の名前の由来と花言葉

春蘭
chasou_pics/Shutterstock.com

春蘭は、その名の通り春に咲く蘭であることから名づけられました。

春蘭の学名(Cymbidium goeringii)は、Cymbidiumがギリシャ語で船を意味するcymbeと形を意味するeidso、goeringiiは植物採集家のグーリングが由来です。

代表的な別名であるホクロは、唇弁の斑をあらわした呼び名です。なお一説にはハクリと呼ばれる薬草に用途がよく似ていたことから、ハクリと混同して呼ばれ始め、やがてホクロに変化したとされています。

春蘭は、素朴で美しい花姿から「控えめな美」、うつむき加減で横向きに咲き、主張が少ないことから「飾らない心」、また林床部の薄暗い中でもしっかりと存在感を漂わすことから「気品」などの花言葉が与えられています。

春蘭の代表的な種類

春蘭
yoshi0511/Shutterstock.com

春蘭は基本的にシンビジウム・ゴエリンギーを指しますが、コラン・カンラン・スルガラン・ナギラン・ヘツカラン・アキザキナギランなどたくさんの仲間がいます。カンランをはじめとする仲間は育て方も似ており、春蘭に近似のグループとして扱われます。

同じラン科でも少し違うのがエビネランです。エビネランはエビネ属(カランセ属)で、春咲きと夏咲きがあります。春蘭が1茎に1つの花を咲かせるのに対し、エビネは1茎に10~30輪の小ぶりな花を、穂のように咲かせます。野生のエビネランはほかのエビネ類と交わりやすく、交雑種が多数存在するのも特徴です。

エビネラン
エビネラン。High Mountain/Shutterstock.com

なお、エビネランは春蘭と同じく、偽鱗茎(バルブ)と呼ばれる、水分や栄養を蓄える部位を持っています。このバルブがエビの背に似ていることからエビネと名づけられました。

このグループに含まれるものにはいくつかの種類があります。代表的な種は、以下になります。国内のシュンラン属は樹上着生のヘツカランを除き、ほかは土壌に根を張る地生ランです。また亜種や変種、シュンラン属同士の自然交雑種などもあります。

なかには根に共生した菌類から栄養をもらって成長する菌従属栄養植物(腐生植物)というカテゴリーに分類されるものもありますが、これは栽培に向きません。

国内のシュンラン属

  • ホソバシュンラン
    Cymbidium goeringii var. angustatum
  • カンラン
    Cymbidium kanran
  • ナギノハヒメカンラン
    Cymbidium × nomachianum
  • スルガラン
    Cymbidium ensifolium
  • コラン
    Cymbidium koran
  • ヘツカラン
    C.dayanum Reichb. fil. var. austro‐japonicum
  • オオナギラン
    Cymbidium lancifolium
  • ナギラン
    Cymbidium lancifolium
  • アキザキナギラン
    Cymbidium javanicum var. aspidistrifolium
  • ホウサイラン
    Cymbidium sinense
  • マヤラン
    Cymbidium macrorhizon
  • サガミラン
    Cymbidium macrorhizon f. abberans
  • ハルカンラン
    Cymbidium × nishiuchianum

春蘭の栽培12カ月カレンダー

春蘭
muhummhad siddik noppaka/Shutterstock.com

開花時期:3月下旬~4月
植え替え適期:4月下旬~5月中旬
肥料:4月下旬〜6月
植え付け:4月下旬~5月中旬

春蘭の栽培環境

春蘭の鉢植え
yoshi0511/Shutterstock.com

日当たり・置き場所

春蘭は、地植えと鉢植えどちらでも栽培可能です。

鉢植えの場合は、水はけ・通気性のよい鉢を用意しましょう。素焼きの鉢で、鉢底穴が大きなものがおすすめです。春蘭は根が太く長いので、深めの鉢を選ぶ必要があります。春蘭専用の鉢も市販されているので、鉢選びに迷ったら活用してみましょう。

【日当たり/屋外】半日陰を好みます。

【日当たり/屋内】基本的には屋外で管理します。

【置き場所】通常は30~50%、夏場は70~75%の遮光下で管理しましょう。地植えの場合は木陰がおすすめです。

耐寒性・耐暑性

春蘭の耐寒性・耐暑性のレベルは普通です。年間を通して屋外での管理が可能ですが、冬にマイナス5℃を下回る場合は、屋内に移動しましょう。

春蘭の育て方のポイント

用土

春蘭

用土は、保水性と水はけのよさを重視し、粗めの軽石を主体とするか、赤玉土を混ぜた混合土にしましょう。東洋ラン専用の培養土を利用するのもおすすめです。

水やり

水やり
Osetrik/Shutterstock.com

用土が乾いたら鉢底から流れ出すまで水を与えます。その際は、鉢の表面だけでなく、内部の用土までしっかりと乾いていることを確認しましょう。春蘭は水を与えすぎると根腐れしやすいので、乾いているときと水やり後の鉢の重さを把握しておき、水やりのタイミングの参考にしましょう。

また冬期は鉢内部の乾燥が緩やかになるので、水やりは控えめに行います。暖かい日の午前中に、表土が濡れる程度の水やりをすればよいでしょう。

肥料

肥料
Ihor Matsiievskyi/Shutterstock.com

施肥は、4月頃と9月頃に緩効性肥料を与えるようにしましょう。また新芽が成長し、翌年の花芽を形成する4~6月と、花芽充実期の9~11月には、液体肥料を2週間に1回を目安に与えるのがよいでしょう。緩効性肥料は、できるだけ株から離して置くことで肥料焼けを予防できます。

注意する病害虫

春蘭
shyshechka/Shutterstock.com

【病気】

被害として一番挙げられるのはウイルス病です。その多くが株分け時などに使った刃物から感染するというものです。葉に斑点ができたり、かすり模様が出てきた場合は、ウイルス病の可能性があります。一度ウイルスに感染してしまうと薬などでは対処できないので、処分するしかありません。使う刃物の消毒をしっかりと行い、予防に努めましょう。

また高温多湿の時期は根腐病や軟腐病、低温多湿の環境であればカビ病にも注意が必要です。そのような時期は水やりに気をつけ、風通しのよい場所で管理し、定期的な薬剤散布で予防しましょう。

ウイルス病
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【害虫】

風通しの悪い場所などではハダニやナメクジが発生することがあります。また花芽形成時にアブラムシが付くこともあります。見つけ次第、捕殺や薬剤散布を行うなどして対処しましょう。地植えの場合は野生動物による食害もあるため、心配なら防護ネットを張るなどの対応をしましょう。

春蘭の詳しい育て方   

苗の選び方

苗を選ぶ際には、バルブや葉、株立ちを見ましょう。バルブが大きく、葉が多いものは、元気な苗の特徴です。株から立ち上がっている茎が多いかどうかも、勢いのある苗を見分ける目安になるでしょう。

根の状態を見ることができる場合は、なるべく根が大きなものを選ぶのがおすすめです。 

なお、春蘭は基本的に苗から育てます。種子を発芽させるためには専用の設備が必要なので、一般的には行われません。

植え付け・植え替え

春蘭の植え替え
shyshechka/Shutterstock.com

春蘭の植え付けの適期は、花が終わった後もしくは秋です。植え付けをする前には、バルブや根の状態をチェックしておきましょう。傷んでいるバルブや根、葉は剪定し、切り口を清潔にしておきます。

植え付ける際には、バルブが1~2cm埋まるくらいを目安にしましょう。

植え替えの適期は、4~5月の花後です。おおよそ3年ごとに植え替えると、根詰まりを防げます。

鉢を株から外したら、根の土を落とし、枯れた根があれば取り除いておきます。株が込み入っていたり、傷ついている場合は、バルブごと切り離しましょう。

根やバルブ、葉を切る際は、切り口から病原菌が入らないように注意が必要です。使う刃物は、アルコール消毒あるいは火であぶる消毒を行いましょう。

日常のお手入れ

春蘭

春蘭の日常的なお手入れは、主に古葉外しと花がら摘みです。

春蘭の葉は2~3年で新しくなるので、古い葉は摘み取りましょう。また、花が咲き終わったら、しぼんだ花を摘み取ります。

夏越し・冬越し

春蘭は夏場も戸外で育てられます。しかし、強い日差しで葉焼けする恐れがあるので、真夏は70~75%以上の遮光ネットを張りましょう。

また、春蘭はランのなかでは珍しく、屋外でも冬越しが可能です。ただし、凍結による葉や根の傷みを避けるため、真冬は無加温ハウスや棚下で管理しましょう。また、マイナス5℃を下回る場合は室内に移動するのもおすすめです。ただし、花の生育のためにはある程度の低温が必要になります。室内で管理する場合は、凍結しない程度の寒さに一定時間あてましょう。

増やし方

春蘭を増やしたいときは、株分けを行いましょう。株分けとは、小木や多年草の株を分割して、数を増やすことを指します。植え替え時に株が大きくなっていたら、株分けのタイミングです。

株分けをする際は、まず春蘭の株を土から引き抜き、根に付着した土を落とします。次に、バルブ2~3個を目安に、新しい芽がついていることを確認して、刃物で株を切り分けます。切り口は清潔に保ち、病気や雑菌が侵入しないようにしましょう。

春蘭を育ててみよう

春蘭
chuyuss/Shutterstock.com

春蘭は古典園芸植物として多くの品種があります。通常種を地植えにして素朴で可憐な花を愛で、春の訪れを感じるもよし、さまざまな品種をコレクションしたり、自分で交配してオリジナル品種を作出するもよし、春蘭の楽しみ方は多岐にわたります。この機会に美しい春蘭を育ててみましょう。

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