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リナリアを美しく咲かせるポイントや注意すべき病害虫を徹底解説

リナリアを美しく咲かせるポイントや注意すべき病害虫を徹底解説

花穂を立ち上げて華やかに咲く春の草花、リナリア。そよ風にゆらゆらと揺れる姿はたおやかで野趣感があり、ナチュラルガーデンには欠かせない存在です。この記事では、そんなリナリアの特徴や基本情報、種類、詳しい育て方など、深く掘り下げてご紹介していきます。種から育てるなら、9月下旬〜10月上旬が播き時です。

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リナリアの特徴

リナリア

日本のガーデニングでは、リナリアといえば、姫金魚草(ヒメキンギョソウ)の別名を持つ一年草が最もポピュラーですが、越年して毎年開花する宿根リナリアも認知度が上がってきています。ちなみに姫金魚草という名は、「金魚草を小さくしたような花」という意味合いですが、花姿が似ているだけで実際はリナリアと金魚草は近縁種ではありません。

リナリアは細長くて小さい葉が密につき、枝分かれしやすくこんもりと仕立てることのできる草花です。一つひとつの花は小さいのですが、花穂を長く立ち上げて鈴なりに開花するので色の塊となってよく映え、庭を華やかに彩ります。開花は一年草が主に4〜5月で、宿根草は5〜7月。花色は赤、ピンク、黄、紫、複色などがあります。

リナリアの基本情報

リナリア

リナリアは、オオバコ科(ゴマノハグサ科)ウンラン属の一年草、または宿根草で、北半球の温帯に150種ほどが分布しています。日本で主に流通している一年草のリナリア(姫金魚草)の原産地はヨーロッパで、宿根リナリアは地中海沿岸など。いずれも寒さに強い性質を持っています。草丈は一年草のリナリアが30〜40cm、宿根リナリアが40〜100cmほど。こぼれ種で増えるほど強健で、ビギナーでも栽培しやすい植物です。

リナリアの種類

日本で主に流通しているリナリアの種類についてご紹介します。

グッピーシリーズ

リナリア グッピー

リナリア・マロッカナの園芸品種‘グッピー’(Linaria maroccana ‘Guppy’)で、一年草。草丈が20〜25cmに抑えられた矮性種です。草丈が低くまとまるので、寄せ植えなどで重宝します。花色は濃いピンク、淡いピンクの中心に濃いピンクが入る2色咲き、淡い青紫、黄、白など。

リナリア・プルプレア(パープレア)

リナリア・プルプレア(パープレア)

宿根リナリア(Linaria purprea)で、草丈は40〜70cm。特に寒さに強い性質を持っています。花色は淡い紫で、花穂を長く立ち上げて咲き、一年草のリナリアとは少し花姿が異なります。葉色もシルバーがかった爽やかなグリーンで、パステル調の紫の花色ともよく調和し、楚々とした風情を醸し出します。一年草のリナリアと同様に、こぼれ種でよく増えます。

リップルストーン

リナリア リップルストーン

‘リップルストーン’と呼ばれていますが、学名はリナリア・アエルギネア‘ネオンライト’(Linaria aeruginea ‘ Neon light’ )で、ちょっとまぎらわしいですね。草丈が15cmほどに抑えられた矮性種です。明るいシルバーリーフが美しく、茎葉が匍匐する性質を持っています。花色は茶、淡い紫、黄、ピンクなど。

リナリアの育て方のポイント

ここまで、リナリアの基本情報や種類など、幅広くご紹介してきました。ここからはガーデニングの実践編として、リナリアの育て方について解説。種まきや苗の植え付けからスタートし、水やりや肥料などの日頃のメンテナンス、健やかに育てるためのポイントや気をつけたい病害虫など、細かくガイドしていきます。

栽培環境・日当たり

リナリア

日当たり、風通しのよい場所を選びます。日照不足だと花つきが悪くなったり、ヒョロヒョロとか弱い茎葉が茂って草姿が間のびしたりするので注意しましょう。

土壌は、水はけや通気性のよい環境を好みます。地植えする場合は、植え付け前に腐葉土や堆肥などの有機質資材を投入してよく耕し、ふかふかの土作りをしておくとよいでしょう。多湿を苦手とする傾向があるので、土を盛って周囲よりも高くしておくのも一案です。水はけの悪い場所では、川砂やパーライトなどの土壌改良資材を投入しておくとよいでしょう。また、酸性に傾いた土壌を嫌うので、土作りの際に苦土石灰を散布して土壌の酸度調整をしておきます。

秋に種を播いて冬越しさせる場合、寒さ対策としてバークチップなどを株元に施してマルチングをしておくとよいでしょう。

土壌

土

【地植え】

酸性に傾いた土壌を嫌うので、植え付ける3〜4週間前に苦土石灰を散布して土に混ぜ込んでおきましょう。さらに1〜2週間前に腐葉土や堆肥などの有機質資材と緩効性化成肥料を投入し、よく耕してふかふかの土をつくっておきます。水はけの悪い場所では、川砂やパーライトなどを施し、周囲より土を盛って土壌改良しておくとよいでしょう。このように事前に土作りをしておくことで、分解が進んで土が熟成します。

【鉢植え】

草花の栽培用に配合された園芸用培養土を利用すると便利です。

種まき

種まき

リナリアは、ビギナーでも種まきから育てられますよ! 種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなりますね。

ただし、リナリアの苗は春から花苗店に出回り始めます。手軽に栽培したいなら、苗の植え付けからのスタートがおすすめです。「1〜2株あれば十分だから、苗の植え付けから始めたい」という方も、後ろの「植え付け」の項に進んでください。

リナリアの発芽適温は15〜20℃。種まき適期は、一般地で9月下旬〜10月上旬です。

まず、種まき用トレイに草花用にブレンドされた市販の培養土を入れ、種を3〜5粒ずつ播きます。リナリアの種はごく小さく、発芽の際に光を必要とする「光好性種子」のため、土は薄くかける程度にしましょう。最後に浅く水を張った容器に入れて、底から吸水させます。これはジョウロなどで水やりすると種が流れ出してしまうことがあるからです。発芽までは明るい半日陰で管理し、乾燥しないように適度に底から吸水させましょう。7〜10日で発芽します。

発芽後は日当たりのよい場所で管理します。本葉が2〜3枚ついた頃、黒ポットに植え替えて育苗しましょう。その際、水やりのしすぎに注意し、乾かし気味に管理することがポイントです。1カ月ほど育苗し、苗が充実したら花壇や鉢などに植え付けます。

植え付け・植え替え

ガーデニング

リナリアの植え付け適期は、種から育てて育苗した場合は10月下旬〜11月上旬、花苗店で苗を購入する場合は3〜4月です。その際は、節間が短く茎ががっしりと締まって丈夫なものを選びましょう。

【地植え】

土作りをしておいた場所に苗よりも一回り大きなを穴を掘り、根鉢を崩さずに植え付けます。複数の苗を植え付ける場合は、15〜20cmの間隔を取りましょう。最後に、たっぷりと水やりします。

【鉢植え】

鉢の大きさは、5〜6号鉢を準備しましょう。

用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。リナリアの苗を鉢に仮置きして高さを決めたら、ポットから出し、根を傷めないように植え付けましょう。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。寄せ植えの素材として、大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。

水やり

水やり

株が蒸れるのを防ぐために株全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。

【地植え】

地植えの場合は地中から水が上がってくるので、根付いた後はほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続いて乾燥し、茎葉がしおれそうにだらんと下がってきたら水やりをして補います。

【鉢植え】

日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、多湿にすると株が弱るので、水の与えすぎには注意。土の表面が乾いてから、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと与えましょう。成長期を迎えてぐんぐん茎葉を広げ出すと、水を欲しがるようになります。気候や株の状態に適した水やりを心がけましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。冬は夕方に水やりすると凍結の原因になるので、十分に気温が上がった真昼に水やりしましょう。

肥料

肥料

【地植え・鉢植えともに】

一年草の場合は、植え付けの際に肥料を施してあれば、必要ありません(鉢植えで使用する市販の培養土には、ほとんどの場合肥料が配合されています)。しかし葉色が冴えなかったり、株に勢いがない場合などには、液体肥料を施して様子を見ましょう。

多年草の場合も同様ですが、越年した後は、毎年春の生育期を迎える少し前に、緩効性化成肥料を株の周囲に均一に施し、土に馴染ませます。

摘心・花がら摘み・切り戻し

剪定

【摘心】

しっかり根付いて株が充実してきたら、茎の頂部を切り取りましょう。するとわき芽が伸び出します。この作業を繰り返すと茎葉の数が増え、こんもりと茂って倒れにくくなるとともに、花数も多くなります。

【花がら摘み】

リナリアは次から次へと花が咲くので、終わった花は花茎の元から摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも花がらを残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。

【切り戻し】

リナリアは開花期間が長く、ある程度咲きそろった後は徐々に草姿が乱れてきます。草姿が繁茂しすぎてきたら草丈の半分くらいまで刈り取って、風通しよく管理しましょう。すると再び勢いを取り戻して生育し始め、二番花を楽しめます。

病害虫

害虫

【病気】

リナリアの栽培では、苗立枯病に注意します。

苗立枯病は、種まき後のまだ幼い苗に発生しやすい病気で、全体が黒ずんでやがて枯死します。土壌に生息する病原菌が原因で、高温多湿の条件下で感染しやすくなります。

【害虫】

リナリアの栽培では、アブラムシやイモムシなどの発生に注意します。

アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目も悪いので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。

イモムシはチョウやガの幼虫で、葉を旺盛に食害します。幼虫が大きくなると丸坊主にしてしまうほど被害が甚大になり、また薬剤が効かなくなることもあるので、発見次第対処することが大切です。割り箸などでつまんで取り除くか、適応する薬剤を散布するとよいでしょう。スプレータイプの薬剤を利用すると便利です。

増やし方

ガーデニング

リナリアは、種まきと株分けで増やすことができます。

【種まき】

前項を参照してください。

【株分け】

一年草は越年せずに枯死するので、株分けができるのは多年草のみです。

リナリアの株分け適期は、4月頃。大株に育っていたら株を掘り上げ、2〜3芽つけて根を切り分けます。切り分けた根を植え直すと、株が若返ってその後の生育がよくなります。株数が増える分、数カ所に場所を分けて植え込んでもいいですね。新しい植え場所に堆肥や腐葉土をすき込んで水はけをよくし、根鉢より一回り大きな穴を掘り、植え直すとよいでしょう。

リナリアで庭を彩ってみては?

リナリア

春に開花するリナリアは、花色が豊富で庭やベランダを華やかに彩ってくれる草花の一つです。ほかの花とも相性よくまとまり、寄せ植えや切り花の花材としても重宝。こぼれ種で増えるほど生命力が強いので、手入れの手間がかからず初心者にも育てやすい花です。ぜひ春に向けて迎え入れる準備を始めてはいかがでしょうか?

Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
Photo/ 1) zzz555zzz 2) V. Tarasenko 3) tamu1500 4) zzz555zzz 5) Linda Harms 6) Matt Hopkins 7) Nokzd 8) funnyangel 9) Montana Isabella 10) AlenKadr 11) Osetrik 12) Sarycheva Olesia 13) mihalec 14) nechaevkon 15) Nataly Studio 16) tamu1500/Shutterstock.com

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