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オリジナリティのある庭づくりや、ファッショナブルな植物を求める人に近年選ばれているオーストラリア原産の植物グループ「オージープランツ」。なかでもグレヴィレアは、関東以西では庭木として植える人が増えています。自宅の庭で100種以上のオージープランツを育てているガーデンプロデューサーの遠藤昭さんに、グレヴィレアの人気の背景や新品種、取り木による増やし方などについて教えていただきます。

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庭木としてグレヴィレアの人気が近年急浮上

グレヴィレア

当サイト『Garden Story』がスタートした2017年にグレヴィレア‘ロビンゴードン’グレヴィレア‘ムーンライト’をご紹介してから4年が経過した。

この4年という期間に、オーストラリア原産の植物グループである「オージープランツ」は日本で急速に普及した。特にコロナ禍のガーデニングブームによって、庭木としてもアカシア・ブルーブッシュやユーカリ・ポポラス、メラレウカ類が大人気で、まさにオージープランツブームの到来だ。そして、群を抜いて人気なのがグレヴィレアだ。

1年程前から品不足が始まり、ガーデニング業界では「オージーバブル」と冗談半分にいわれるほど価格も高騰してしまった。

グレヴィレア‘ムーンライト’
グレヴィレア‘ムーンライト’(Grevillea ‘moonlight’)

私は細々とガーデンレッスンや植栽の仕事もしているが、コロナ禍で在宅勤務の男性層がガーデニングに興味を持ち始めている。この男性層がオージープランツ人気を牽引していると感じている。個性的な姿が多いオージープランツは、男性受けするようだ。

4年前は、まだグレヴィレアは一般的ではなく、2種しか記事では取り上げなかったが、現在は流通する品種も増えたので、今回は新品種を追加して改めてご紹介しようと思う。

素晴らしい花を咲かせる新品種たち

グレヴィレア‘ピーチ&クリーム’
グレヴィレア‘ピーチ&クリーム’

まず、最近インスタなどで多く見かける注目の筆頭が「グレヴィレア‘ピーチ&クリーム’(Grevillea ‘Peach&cream’)」だ。

ネーミングも見た目も美味しそうで、オージー特有の野生味はなく、都会の風景にフィットする花色だ。オーストラリアで作出された新しい品種で、樹高が1~2mと小型。長さ15cm程の豪華な花を咲かせる。クィーンズランド原産の品種グレヴィレア・バンクシー(Grevillea banksii)と西オーストラリア原産の品種 グレヴィレア・ビピンナティフィダ( Grevillea bipinnatifida )とのハイブリッド種だ。

グレヴィレア‘サパーブ’
グレヴィレア‘サパーブ’

‘ピーチ&クリーム’と似ているが、やや赤みを帯びた花を咲かせるのが、やはり最近人気で今後も注目株の「グレヴィレア‘サパーブ’(Grevillea ‘Superb’)」だ。名前通り、素晴らしい花を咲かせる。

前出の ‘ピーチ&クリーム’と似ている理由は、交配親がグレヴィレア・バンクシー’アルバ’ Grevillea banksiiAlbaと グレヴィレア・バンクシーのため。‘サパーブ’も樹高1~2m程と小型に育つ。

グラヴィレア ‘ココナッツ・アイス’
グレヴィレア ‘ココナッツ・アイス’

もう一種、紛らわしいが上記と同じ両親のハイブリッドで選別された品種で、やや古い品種に‘ココナッツ・アイス’(Grevillea.‘Coconut Ice’)がある。

こちらも、グレヴィレア・バンクシー‘アルバ’と グレヴィレア・バンクシーの種子から選別されたハイブリッドで、ややこしい。

グレヴィレアをもっと知りたい! 4種を比較

以前ご紹介したロビンゴードンを含め、違いが分かりやすいように一覧表にして比べてみよう。

*環境・開花時期等は個体差がある。

G.’Robyn Gordon’
ロビンゴードン
G.’Coconut Ice’
ココナッツアイス
G.’Peach&cream’
ピーチ&クリーム
G.’Superb’
スパーブ
花色 レッド ピンクレッド アプリコット オレンジレッド
葉色 グリーン グリーン やや淡いグリーン やや淡いグリーン
樹形の印象 しっかり引き締まっている やや高さがある 優しくしなやか スラリとしなやか

かなり似た4種だが、育ててみるとそれぞれに違いがあり魅力的で、関東以西では庭木として重宝するのも利点。

グレヴィレアの新品種を作った交配親

グレヴィレア・バンクシー

前述した品種の親である、グレヴィレア・バンクシーをご紹介しておこう。

クィーンズランド原産の亜熱帯花木で、低木ではあるが現地では樹高7m程にも達する。日本ではおそらく、その半分程度に収まると思う。赤花と白花品種があり、それぞれ親木としてさまざまなハイブリッド品種が誕生する元となった品種だ。

グレヴィレア・バンクシー

前出4種の園芸品種ほど多花性ではないが、シルバーリーフが魅力的でシンボルツリーなどに適しているかもしれない。

赤花のグレヴィレアと葉の魅力

グレヴィレア・エレガンス
グレヴィレア・エレガンス

最近人気の赤花品種をご紹介しよう。グレヴィレア・エレガンス(Grevillea elegance)だ。

名前の通りエレガントな佇まいを見せる。大きな赤い花と細く繊細な葉が魅力で、樹高3~4mに成長する。関東以西では、目を引くシンボルツリーとして、これから人気が出るかもしれない。

グレープ・グレヴィレア
グレープ・グレヴィレア

グレヴィレアは個性的な花が魅力であるが、葉も同様に個性的だ。

グレープ・グレヴィレア(’Grape’ Grevillea)の葉は、見ていて飽きない。鮮やかな緑と真っ赤な花が異国情緒を醸し出す。

グレヴィレア・ロブスタ
グレヴィレア・ロブスタ

グレヴィレアは個性的な花が魅力で人気だが、日本では観葉植物的に使われている品種もある。グレヴィレア・ロブスタ(Grevillea robusta/robustaは強健なという意味)は、もともと生産者が台木に使用していた成長力が旺盛で強健な品種だ。大木にならないと花を付けないので、日本ではなかなか花は見られない。鉢植えで観葉植物として使用したり、庭木としては美しいので広い庭におすすめだ。

黄花のグレヴィレア‘カンタベリー・ゴールド’

グレビレア‘カンタベリー・ゴールド’
グレヴィレア‘カンタベリー・ゴールド’

最後に黄花品種をご紹介しよう。グレヴィレア‘カンタベリー・ゴールド’(Grevillea cv. ‘Cantabery Gold’は匍匐性があり、日本の狭い庭での栽培に向いている。四季咲き性で、やや寒さに弱い性質だが、冬でも花を見かけたことがある。

匍匐性があるグレビレア・カンタベリーゴールド。
匍匐性があるグレヴィレア‘カンタベリーゴールド’。

グレヴィレアには、まだ取り上げていない他の品種があるが、これらは別の機会にご紹介するとしよう。

グレヴィレアの取り木にチャレンジ!

「取り木」とは、株の増やし方の一つで、グレヴィレアは、実生(種子)や挿し木で増やすのが一般的だが、品種によっては挿し木は成功率が低い。

そこで、確実に増やせる方法かどうかを検証するため、‘ピーチ&クリーム’と‘ムーンライト’の取り木にチャレンジしてみた。

取り木する時期は、3月頃が適期だと思われるが、私は挿し木に失敗した後の6月に実施した。

グレヴィレアの取り木

【手順1】取り木をする枝先から30cm程度の位置をカッターなどで表皮だけ剥がす。

グレヴィレアの取り木

【手順2】サランラップなどの透明フィルムに湿らせたミズゴケを乗せ、表皮を剥がした場所にミズゴケが密着するように巻き付ける。

グレヴィレアの取り木

【手順3】透明フィルムの上下を紐でしっかり結んで固定する。

グレヴィレアの取り木

【手順4】約2カ月で発根するので、透明フィルムを外し、枝を切り取る。ミズゴケを、その中に伸びた根が切れないように軽く取り除いて、鉢に植え付ける。

グレヴィレアの取り木

【手順5】さらに1カ月もすると新芽が伸び、挿し木に比べて大きな苗木が出来上がった。

日本の庭での活躍が期待されるグレヴィレア

グレヴィレア

オーストラリアにおいてグレヴィレアは、日本で例えるなら「ツツジ」のようにポピュラーな存在である。品種も多種多様なことを考えると、日本では、まだまだこれから大きな可能性を秘めているオージープランツの一つだ。

グレヴィレア

これまでも私がデザイン・植栽する庭には、さまざまなグレヴィレアを使用してきた。ご近所や道ゆく人から「わあ~、見たことがない素敵なお花!」「何という植物ですか?」などと、注目を浴びることは間違いなし!

個性的で先進的グレヴィレアを、あなたの庭にも植えてみませんか? 1株のグレヴィレアで、一気にお洒落な雰囲気になりますよ。

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