皆さんもよくご存じの樹木の一つ、イチョウは、紅葉シーズンには鮮やかな黄色に染まります。秋の風物詩ともいえる美しいイチョウ並木に感動したことがある方も多いのではないでしょうか。ここではイチョウという植物について、花言葉や種類などの基本的な情報から栽培方法までを徹底的に解説します。
目次
イチョウの基本情報
イチョウはイチョウ科に属する樹木で、原産は中国です。成長すると約30mものすらりとした高木になり、晩秋に黄色く色づいた姿は大変美しく圧巻です。冬になると落葉します。
「イチョウ」という名前の由来は、中国名の一つである「鴨脚(ヤーチャオ)」から。中国ではイチョウの特徴的な形の葉を、カモの水かきのある脚に見立てて名付けられたといわれています。
イチョウには雄木と雌木があり、それぞれ雄花か雌花か、どちらかのみを咲かせます。雌花は咲いた後に「ギンナン」とも呼ばれる種子をつけ、秋になると悪臭を放ちながら熟します。雄木には種子はつきません。
また非常に成長が早く環境の変化にも強いため、街路樹や公園樹としてさまざまな地域で植えられています。
東京都・神奈川県・大阪府では都府県の樹に制定されています。
イチョウの花と実
イチョウの樹高が20~30mになると、4~5月頃に花が咲き始めます。
イチョウは花粉を出す花を咲かせるオスの木と、実がなるメスの木に分かれている雌雄異株です。メスの木は、受粉した後に、銀杏(ギンナン)と呼ばれるオレンジ色の実をつけます。
樹木の成長が早いことや、燃えにくく寒さにも強いことから、その園芸植物としての歴史は古く、室町時代には栽培されていたという記録もあるほどです。
このように、非常に古くから人々を楽しませてきたイチョウですが、安産や子育ての祈願の対象としての側面もあります。
イチョウを長い年月をかけて育てていると、古い枝からつららのような枝が伸びてくることがあります。
このつららのような枝は、乳房のように見えることから「ちち」と呼ばれ、お寺などでは安産・子育て祈願のために、境内にイチョウを植えることがしばしば見受けられます。
イチョウの花言葉
イチョウの花言葉は「長寿」「荘厳」「鎮魂」など。
「長寿」はイチョウが大きく育ち、長生きするという特徴からつけられました。また前項でも記したとおり、イチョウは神社やお寺のご神木となっていることが多いため、「荘厳」や「鎮魂」という花言葉もあります。
特に「長寿」という花言葉をそのまま生かして、年配の方へ長寿祝いのプレゼントとしてもおすすめです。
イチョウの種類
イチョウは「生きた化石」とも呼ばれる植物で、その仲間は約2億年も前から存在していたといわれています。
太古から世界中で自生していたとされていますが、現生するのは中国原産の1種のみとなっています。
生物学的には1種のみのイチョウですが、見た目が通常とは異なる品種はいくつか存在します。
ここでは代表的なものをいくつかご紹介します。
オハツキイチョウ…葉の上に緑色の実をつける品種。
フイリイチョウ…葉に白やクリーム色の筋状のまだら模様(=斑:ふ)が入る突然変異をもった品種。
シダレイチョウ…枝が垂れ下がる品種。
オチョコイチョウ…葉の両端がくっつき、お猪口のような形になっている品種。
イチョウの育て方
育てやすく綺麗なイチョウですが、実際に栽培するときには、どのようなことに注意すればいいのでしょうか。ここからはイチョウの育て方を、さまざまな角度から詳しく説明します。
日当たり
イチョウを育てるには、どのような場所がよいのでしょうか。
まずは日当たりについて。イチョウは中国原産の落葉樹。日当たりのいい場所を好みます。
乾燥や暑さ寒さにも強いため、日当たりが十分か否かがイチョウがよく育つかどうかを左右するカギになります。
ただし成長するとかなり大きな木になるため、庭や花壇などに植える際は、近くの構造物や近隣との距離を広くとることが必要です。
水やり
植えた後の日々の管理、水やりについて説明します。
鉢植えの場合は、季節によって水やりの頻度が変わります。基本は鉢の表土が乾いたときにたっぷりと。ただし夏場は土が乾きやすいため、1日に1回は与えるようにしてください。
冬場は夏とは異なり、2〜3日に1回のペースで十分です。
イチョウを地植えにしている場合は、しっかり根付いたあとは下から上がってくる水で育ちますので、人の手で直接水を与える必要はありません。
追肥・肥料
イチョウは非常によく根が張る植物です。広範囲にわたって土から栄養分を吸収することができるため、肥料を頻繁に与える必要はありません。
1年か2年に1回程度、12~2月の冬期にリンやカリ、あるいはリン酸を主体とした肥料を与えれば十分に育つことができます。
逆にチッソ過多になってしまうと、秋に葉が綺麗に色づかなくなり、せっかくの黄葉が楽しめなくなってしまうので注意が必要です。
植え替え・植え付け
イチョウの苗を植え付ける時期は、3~4月が適しています。
植え場所を決めたら、土をやや山高に盛って、その中心に植え付けます。その後は支柱を立てて、イチョウがまっすぐ育つようにサポートしてください。
イチョウで生け垣を作ることもできます。
生け垣を作る際は、あらかじめ30cmほどの苗木を何本か育てておきます。育てた苗木を十分に間隔をあけて植えていき、好みの高さまで育ったらイチョウの幹の頂上を切る「摘心」を行い、高さを抑えます
鉢植えでイチョウを育てる場合は、成長の早い植物なので1~2年に1回植え替える必要があります。植え替えの際は、鉢のサイズを1~2回り大きくして、前述の植え付けと同様の方法で植え替えます。
増やし方
育てたイチョウを増やしたい時の方法についてご紹介します。
イチョウは3~4月に種まき・挿し木・接ぎ木の方法で増やすことができます。この中で初心者の方に最もおすすめなのが「挿し木」です。
挿し木をする場合は、ある程度太い枝を使います。直径2cmを超えた枝を15~20cmの長さで切り取り、切り口は斜めに切り落とします。土に埋まる部分となる切り口に近い葉は切っておきましょう。1.5号~2号の大きさの鉢に赤玉土を入れて、切った枝を挿します。
種から育てる場合はイチョウから秋に熟した実を採取します。
秋に播く場合は果肉を取り除いて「ギンナン」の状態にしてから播きます。
翌春に播く場合は、チャック付きのビニール袋などに湿らせた砂と一緒に入れて、冷蔵庫などに保管しておきます。
果肉は独特のにおいがしますし、触れるとかぶれることがあるので、収穫したら春まで地面に埋めておくと、種まきの時期までに果肉が取れています。
芽吹いたばかりのイチョウは、2〜3年は植え替えずにそのまま育てましょう。
収穫
自家製のギンナンを収穫するのを楽しみにイチョウを育ててみたいという方も多いのではないでしょうか。
イチョウの果実であるギンナンは、メスの木から9~10月に収穫することができます。
実は熟すと自然に落ちるので、落ちたものを収穫します。果肉に触れると皮膚がかぶれることがあるので、収穫する際は、必ずビニール袋などで手を保護しましょう。
ギンナンを食べるためには、果肉を取り除いて硬い種の部分だけにする必要があります。方法は、収穫後数日間果実を水に漬けて、果肉を腐らせます。その後、よく洗浄して綺麗に果肉を落としてから乾燥させます。
ギンナンにはいくつかの品種があり、「金兵衛」は他の品種よりも早い7月から収穫できます。また味わいのいい「久寿」などもあります。
イチョウの活用方法
イチョウから収穫できるギンナンには、さまざまな用途や効能があります。
まず一般的な食用としての用途は、焼いたり、煮たり、炊き込みご飯など幅広く料理に用いられます。
さらに、漢方薬としても使われています。煎じて飲むことで滋養強壮や鎮咳、去痰の効果があり、頻尿に対しても有用といわれています。また、ギンナンを練って虫歯に貼ると歯痛を抑え、葉の部分を煎じて飲むと血小板が活性化するなどの効果が期待できます。他にも動脈硬化や肩こりといった血管の障害から起こる症状を防いだり、糖尿病や頭痛などの症状を改善するなど、非常に多くの効能があります。
しかし、副作用として胃腸障害や頭痛を起こすこともあります。生のギンナンを大量に摂取すると中毒を起こすことも知られており、摂取量には特に注意が必要です。
秋を彩る植物の一つであるイチョウを栽培してみよう
この記事では、秋を彩る有名な植物、イチョウの基本情報から詳しい育て方までご紹介しました。最後までお読みいただいた皆さんは、きっとイチョウについて以前より詳しくなり、興味を持たれたのではないでしょうか。イチョウは街路樹や公園樹としての印象が強い植物ですが、じつは庭でも栽培できるということもお分かりいただけたと思います。
育て方をしっかりチェックして、ご自宅でイチョウ栽培にチャレンジしてはいかがでしょうか?
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
Photo/ 1) PixHound 2) v.apl 3) EQRoy 4) jurgal 5) OHishiapply 6) Kasefoto 7) Yury Stroykin 8) Osetrik 9) Criniger kolio 10) pundapanda 11) Studio Light and Shade 12) thewet nonthachai 13) jreika 14) wassei /Shutterstock.com
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