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手軽にできる苔(コケ)栽培! 苔植物の基礎知識・育て方を理解しよう

Hanahstocks/Shutterstock.com
「苔(コケ)」と聞くと、皆さんはどんなものを想像しますか? 苔はとてもありふれた植物ですが、特有の趣があります。日本庭園の苔むした風景は、静かで独特な風情が感じられます。また、伝統的な盆栽でも、苔をあえて木の株元に張って楽しみます。今回の記事では、癒やしの風景を作る苔について、種類や育て方、驚きの効果などを詳しくご紹介していきます。
目次
苔ってどんな植物?

苔植物という生き物は、陸上にすむ「非維管束植物」の総称で、生物の分類上「苔植物門」に属するものを指します。胞子で繁殖するという特徴をもち、国内では約1,700種、世界では約18,000種もの苔が、さまざまな環境の地域に自生しています。苔類は匍匐(ほふく)性を持っており、地面を這うように広がって生育します。「苔」という名前は「木毛」に由来するという説があり、木の株元や幹などに生えることから名付けられたといわれています。
苔にはどのような種類があるの?

苔という植物は、分類上「苔類(たいるい)」「蘚類(せんるい)」「ツノゴケ類」という3つのグループに分けられます。
また、苔の形を大きく分類すると、根っこや葉がきちんと分かれていない葉状体という形状と、一般的な植物の茎や葉にあたる部分が分かれている茎葉体があります。葉状体の苔は苔類またはツノゴケ類で、茎葉体の苔は蘚類のほとんどが属します。
苔類は丸みを帯びたものが多く、身近によく見かけるゼニゴケやジャゴケが属しています。日本には約620種が自生しています。
蘚類は茎葉体で、よく見ると葉の中心に中肋という葉脈があります。種類がとても多く、群生して繁殖します。
ツノゴケ類は葉状の苔類と似た、尖ったツノのような胞子体を持つことが特徴です。藍藻というバクテリアが共生しており、国内では17種類しか見つかっていません。
苔栽培におすすめの種類は?

屋外での栽培におすすめの種類は、一般にスギゴケと呼ばれるものやエゾスナゴケと呼ばれるものです。これらは半日陰でも育つため、日のあまり当たらない場所での野外栽培に適しています。シノブゴケも半日陰を好みます。シッポゴケは風通しのいい場所に定着成長しやすいため、初心者向けの種類です。ハイゴケは横に這うように育つ種類で、これも育ちやすい種類ですので初心者の方におすすめです。
苔の育て方

独特の見た目が魅力の苔ですが、正しい育て方や処置を施さなければ残念ながら綺麗に育ちません。実際にどのように育てればよいのか、どのようなことを意識して育てればいいのか分からない方が多いのではないでしょうか? そこで、ここからは苔の育て方について詳しく説明します。
栽培環境

苔は種類ごとに必要な明るさや湿度が異なります。苔を購入する場合は、育てたい場所の日当たりをよく考慮して、それに合ったものを選びましょう。
また、苔は湿度が高いほうが生育がよくなるものが多いです。こうした苔を育てる場合は、乾燥に注意して、直接風が当たる場所は極力避けるようにしましょう。
苔を植える場所は、水はけのよい土壌にします。湿度を好む苔でも水がたまるような環境は苦手なので、庭植えの際には、植え付けたい場所の土に川砂を混ぜ込み、鉢植えにする際は、小粒の赤玉土などに川砂や竹炭を混ぜ込んで、水はけのよい土作りに徹しましょう。ガラス容器などに入れて育てるときは、腐葉土などの有機物を入れるとカビが生えやすくなるので注意しましょう。
肥料

苔は光と空気、適度な水分があれば育つ植物です。そのため、基本的に追加の肥料はほとんど必要ありません。逆に肥料を与えすぎると枯れてしまいます。盆栽や寄せ植えなど、ほかの植物とともに育てている場合は、ほかの植物にだけ液体肥料を与えて、苔には肥料が極力いかないようにします。
増やし方

苔の増やし方には「張り苔法」「移植法」「まき苔法」と、大きく分けて3つあります。
「張り苔法」は、3つの増やし方で最も簡単です。これはマット状の苔をそのまま庭や培養土に張るように植え付けるという方法で、短時間で広範囲に植え付けることが可能です。苔のシートを地面にしっかりと密着させることが大切です。
「移植法」は、1本ずつ土に挿すように植え付ける方法です。これは手間がかかりますが成功率は高く、ヒノキゴケやスギゴケなど広範囲に大型の苔を植え付ける際に適しています。また、苔テラリウムの場合も、この方法で1本ずつ植え付けていきます。
「まき苔法」は、ほぐした苔を種のように播いて植える方法です。この方法のメリットは、少ない手間かつ少量の苔でたくさん増殖させることが可能である点で、最もポピュラーな増やし方です。苔は株ごとにほぐしたもののほか、細かく刻んだものを播いても生えてきます。
苔が持つ驚くべき効果とは?

苔は空気中から水分や栄養分を吸収することができ、さらに苔の細胞壁が金属を蓄積することから、抗菌・消臭効果があるとされています。
また数々の研究や実験から、苔を見ていることでストレス解消や癒やしの効果が得られるといわれています。苔のもつ独自の芳香に土の香りが混ざると、よりその効果が増し、さながら静かな森の中にいるかのようなリラックスした心理状態になることが期待できます。
さらに、苔は水分を吸収するだけでなく、蒸散することもできます。そのため大気の湿度や温度を調整することが可能であり、吸収した二酸化炭素を蓄積したまま泥炭層を構築するので、環境保護にもつながるといわれています。園芸用土として使われるピートモスは、苔が堆積したピート(泥炭)が原料ですが、近年は長年にわたって二酸化炭素を蓄積している泥炭をみだりに掘り起こして活用することに対する批判も巻き起こっています。
苔の活用方法とは?

苔といえば、まず挙げられるのは苔玉です。土を丸く固めて周りに苔を張って仕立てた苔玉を鑑賞して楽しみます。この際、置き場所は風通しのよい棚の上などにして、しっかりと外気を吸わせましょう。
また透明なガラス容器の中に入れて独特の世界を表現できるテラリウムも、インテリアとして生かすことができて人気です。苔を主体とした独特の雰囲気を醸し出すことができ、気軽に世話を楽しめるので、おすすめの活用法です。
さらに、盆栽の株元に敷くと土がむき出しにならず、苔のグリーンで一気に雰囲気を変えることもできます。美観だけではなく、保湿や土の流出を防ぐといった効果もあり、こちらも人気の活用方法です。
さまざまに活用できる苔を自宅で気軽に楽しもう

この記事では苔についての基本情報から、育て方、活用法などについてご紹介しましたが、苔についての疑問は解消できたでしょうか?
苔にはご紹介したようにいくつもの楽しみ方がありますが、うまく活用できるかどうかは、どのように栽培していくかで決まります。苔の特性を理解して、正しい育て方で苔を楽しみましょう。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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