春菊(シュンギク)の育て方! 栽培のポイントや失敗しないコツを大公開

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冬の鍋物料理に欠かせない存在といえば、春菊を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。独特の香りとほのかな苦みが魅力の葉物野菜ですが、じつは家庭でも簡単に育てることができます。もちろんプランターでの栽培も! この記事では、春菊の基本情報や育て方について、詳しくご紹介していきます。
目次
春菊の基本情報
春菊は日本のハーブともいえる野菜で、さわやかな香りがあります。鍋物やすき焼きに入れると臭み消しにもなり、味に深みが増すことは知っている…「だけど春菊って、ほんとはどんな野菜だっけ?」と、もやっとしている方に向けて、ここではその基礎知識をガイドします。
春菊はどんな野菜?

春菊は、キク科シュンギク属の葉物野菜で、地上部の葉を収穫します。葉物野菜といえば、害虫がつきやすいというイメージがありますが、キャベツやハクサイ、ブロッコリーなどのアブラナ科の植物とは異なり、害虫がつきにくい傾向にあります。原産地は地中海沿岸で、比較的冷涼な気候を好みます。
春菊を野菜として食べているのは、日本、中国、東南アジア、インドなどの東アジアのみ。原産地のヨーロッパでは、観賞用の草花として栽培されています。キク科らしいマーガレットに似た花が咲くので、トウ立ちして収穫できなくなった後は、観賞用として楽しむのもいいですね。
春菊の栄養素

春菊は、βカロテン、ビタミンC、ビタミンK、カリウム、鉄、食物繊維などを含む、栄養価の高い緑黄色野菜です。
自分で育てられる! 春菊栽培の基本
育てやすい野菜の春菊について、栽培をスタートするのに適した時期や、すくすくと生育する環境、種類について解説していきます。植える前にしっかり把握しておくと、よりスムーズに管理できますよ!
栽培時期

家庭菜園で春菊を育てる際には、春に種を播く「春まき」と、秋に種を播く「秋まき」があり、年に2回の栽培が可能です。一般地を基準にすると、「春まき」は4月中旬〜5月中旬に種を播き、6月頃に収穫。「秋まき」は8月下旬〜9月に種を播き、10月〜12月上旬に収穫します。
栽培環境

日当たり、風通しのよい場所を好みます。生育適温は15〜20℃で冷涼な気候を好むため、夏の栽培には向きません。27〜28℃を超える環境では、生育不良になります。一方で寒さには比較的強く、簡易的なビニール被覆のトンネル栽培で冬越しできます。
春菊に適した土壌酸度はpH5.0〜5.5です。必要であれば植え付けの2〜3週間以上前に苦土石灰を散布して土壌改良をしておくとよいでしょう。肥沃で水はけ、水もちのよい、ふかふかとした土壌を好みます。
春菊の種類

春菊は、葉に入る切れ込みの形で分類することができます。葉に厚みがあり、切れ込みが浅いのが「大葉種」です。苦味が少ないのが特徴で、中国・九州地方で主に栽培されています。最もポピュラーな「中葉種」は葉の切れ込みがほどほどで、「株立ちタイプ」と「株張りタイプ」があります。葉の切れ込みが深い「小葉種」もありますが、収穫量が少なくトウ立ちしやすいことから、ほとんど栽培されていません。
実際に育ててみよう
ここまで、春菊の基礎知識についてご紹介してきました。ここからは家庭菜園の実践編として、詳しい育て方について掘り下げていきます。菜園・プランター栽培に分けて、育て方を解説していきますよ!
土作り

【菜園】
種まきの2〜3週間以上前に、苦土石灰を1㎡当たり100〜150g散布し、よく耕して土に混ぜ込んでおいてください。さらに植え付けの1〜2週間前に、1㎡当たり堆肥約2㎏、緩効性化成肥料(N-P-K=8-8-8)約100gを均一にまいて、よく耕しましょう。次に、幅約60cm、高さ10cmほどの畝を作ります。畝の長さは作りたい量や広さに応じて自由に決めてかまいません。表土は平らにならしておきましょう。土作りは植え付け直前ではなく、事前に行っておくことで、分解が進んで土が熟成し、植物の生育がよくなります。
【プランター栽培】
野菜の栽培用にブレンドされた市販の培養土を利用すると便利です。
種まき〜発芽まで

種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなりますね。ただし、春菊の苗は花苗店やホームセンターなどで入手できます。手軽にスタートしたいなら、苗の植え付けからがおすすめです。「2〜3株あれば十分だから、苗の植え付けから始めたい」という方も、次項に進んでください。
春菊の種まき適期は、「春まき」が4月中旬〜5月中旬で、「秋まき」が8月下旬〜10月上旬です。
【菜園】
土作りを済ませた畝に、20cm間隔を取って種を播くための溝を作ります。畝の幅と平行になるように園芸用の支柱などを表土に軽く埋め込んで、1〜2cmほどの深さの溝にしましょう。まき溝に、種を約1cm間隔で播きます。春菊は好光性種子といって、発芽に光を必要とする性質を持っています。そのため、かぶせる土はごく薄くしておくことがポイントです。最後に、たっぷりと水やりをしておきます。種が流れ出すのを防ぐため、はす口をつけたジョウロでやわらかな水流となるように高い位置から水を与えましょう。発芽までは乾燥させないように管理します。
【プランター栽培】
標準サイズのプランターを準備します。底穴に鉢底ネットを敷き、底が見えなくなるくらいまで鉢底石を入れ、その上に野菜用にブレンドされた培養土を入れます。水やりの際にあふれ出さないように、ウォータースペースを鉢縁から2〜3cm残しておきましょう。10〜15cmの間隔を取り、2本のまき溝を作ります。プランターの幅と平行になるように園芸用の支柱などを表土に軽く埋め込んで、1〜2cmほどの深さの溝にしましょう。まき溝に、種を約1cm間隔で播きます。春菊は好光性種子といって、発芽に光を必要とする性質を持っています。そのため、かぶせる土はごく薄くしておくことがポイントです。最後に、たっぷりと水やりをします。種が流れ出すのを防ぐため、はす口をつけたジョウロでやわらかな水流となるように高い位置から水を与えましょう。発芽までは乾燥させないように管理します。
間引き・追肥と土寄せ

間引きながら育成し、十分な株間を取ります。抜き取った間引き菜は、サラダや汁物の具などに利用できますよ!
【菜園】
間引きは2回行います。
1回目は、本葉が1〜2枚ついた頃に、約3cm間隔になるように間引きます。葉が傷んでいるものや、弱々しく生育が悪い苗を選んで抜き取りましょう。根が浮いてしまったら、土を株元に寄せておきます。
2回目は、本葉が4〜5枚ついた頃に、10cm間隔になるように間引きます。この時、緩効性化成肥料(N-P-K=8-8-8)を1㎡当たり30gを目安にばらまき、クワで土によく混ぜ合わせて株元に土を寄せておきます。
【プランター栽培】
間引きは3回に分けて行います。
1回目は、本葉が1〜2枚ついた頃に、3〜4cm間隔になるように間引きます。葉が傷んでいるものや、弱々しく生育が悪い苗を選んで抜き取りましょう。根が浮いてしまったら、土を株元に寄せておきます。
2回目は、本葉が3〜4枚ついた頃に、5〜6cm間隔になるように間引きます。この時、緩効性化成肥料(N-P-K=8-8-8)約10gを苗の周囲にまんべんなくばらまき、土によく混ぜ合わせて株元に土を寄せておきます。
3回目は、本葉が6〜7枚ついた頃に、10〜15cm間隔になるように間引きます。2回目の間引きの時と同量の追肥を施しておきましょう。
苗の植え付け

この項目は、苗の植え付けからスタートする方に向けた解説です。種まきからのスタートを選んだ場合は、次項に進んでください。
苗は花苗店やホームセンターなどで入手できます。本葉が4〜5枚ついた、節間が詰まって勢いのある苗を選びましょう。
【菜園】
土作りをして設けた畝に、株間(株と株の間)・条間(隣の列との間)ともに約15cmの間隔を取って苗を植え付けます。最後に、たっぷりと水やりをしておきましょう。
【プランター栽培】
標準サイズのプランターを準備します。底穴に鉢底ネットを敷き、底が見えなくなるくらいまで鉢底石を入れ、その上に野菜用にブレンドされた培養土を入れます。水やりの際にあふれ出さないように、ウォータースペースを鉢縁から2〜3cm残しておきましょう。10〜15cmの間隔を取って苗を植え付け、最後に底から流れ出すまで、たっぷりと水やりをしましょう。
摘心・摘蕾

【摘心】
草丈が20cmくらいになったら、先端を10cmほど切り取る「摘心」の作業をします。こうすることで、下から新たにわき芽が出てきて、茎葉の数を増やすことができます。この「摘心」の作業を繰り返して株をこんもりと茂らせ、収穫量を多くしましょう。
【摘蕾】
つぼみがつくと茎葉がかたくなって老化が進むので、つぼみを見つけたら摘み取っておきます。
水やり

【菜園】
発芽後は、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、雨が降らず乾燥が続く場合は水やりをして補いましょう。
【プランター栽培】
日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。冬は、気温が十分に上がった昼ぐらいに与えましょう。夕方以降に水やりすると凍結の原因になるので注意します。
病害虫

【病気】
春菊がかかりやすい病気は、べと病です。
べと病は糸状菌が原因で、3〜6月、9月下旬〜11月の気温15〜20℃の条件下、かつ気温差が大きい時に発生しやすくなります。葉に黄色みがかった斑紋が現れ、だんだんと広がって枯れ上がっていきます。気温などの条件が揃うと2〜3日で全体に広がってしまうので注意。チッ素成分が多い肥料を与えすぎると発生しやすくなります。
【害虫】
春菊に発生しやすい害虫は、アブラムシ、ハモグリバエなどです。
アブラムシは、3〜10月頃に発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目も悪いので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。
ハモグリバエは、葉の中に潜りこんで食害し、葉に白い線が浮き出てくるので発見しやすい害虫です。見つけたら葉の上から潰すとよいでしょう。
せっかく家庭で栽培するのなら、できるだけ無農薬で管理したいですよね。そんな時は、園芸用資材を上手に利用する方法があります。用意するのは、不織布と防虫ネット、園芸用支柱です。
不織布は、種を播いた直後に、畝にべた掛けにして四方に土を盛って固定しておくと、幼苗を虫から守ることができます。ある程度苗が育ってきたら、不織布を外して防虫ネットの設置に切り替えましょう。園芸用支柱を畝の両端と中央あたりにアーチ状にして深く差し込み、防虫ネットを被せます。畝の両端で防虫ネットを結んで固定し、四方の裾に土を盛ってしっかりと固定。これで物理的に虫の侵入を抑えられるというわけです。プランター栽培でも同様に管理できます。虫が苦手な方は、園芸用資材を上手に使って防除するのがおすすめです。「秋まき」で栽培する場合は、冬の寒さ対策にもなりますよ!
収穫

収穫の適期は、「春まき」が6月頃、「秋まき」が10〜12月上旬です。
春菊の収穫は、「抜き取り収穫」と「摘み取り収穫」があります。
「抜き取り収穫」は、草丈が20cmくらいまで成長したら、株を抜き取って収穫する方法です。節間が成長せず、株元から側枝がたくさん出てくるタイプの品種に向いています。
「摘み取り収穫」は、茎の途中で切り取る方法です。しばらくするとわき芽が出て再び茎葉を茂らせるので、長く収穫し続けることができます。つぼみがついてトウ立ちする頃までが収穫の目安。トウ立ちするとかたくなって質が落ちます。茎の節間が伸びる株立ちタイプの品種を選ぶとよいでしょう。家庭菜園では、長く収穫し続けられる「摘み取り収穫」がおすすめです。
春菊を家庭栽培してみよう!

この記事では、春菊の基礎知識から育て方まで、幅広く取り上げてきました。春菊は、「摘み取り収穫」をすれば、長く収穫し続けることができますよ! ビギナーでも失敗が少ないので、ぜひ菜園やプランターで育ててみてはいかがでしょうか?
参考文献/
『やさしい家庭菜園』 監修者/藤田智、加藤義松 発行/家の光協会 2006年3月1日第1刷
『別冊やさい畑 野菜づくり名人 虎の巻』発行/家の光協会 2009年2月1日発行
『甘やかさない栽培法で野菜の力を引き出す 加藤流絶品野菜づくり』著者/加藤正明 発行/万来舎 発売/エイブル 2015年5月25日発行第2刷
『はじめての野菜づくり コンテナ菜園を楽しもう』著者/藤田智 発行/日本放送出版協会 2007年5月25日発行
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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