星形の花を咲かせ、白や紫の花色は涼しげで古くから親しまれてきた桔梗(キキョウ)。育ててみたいなと考えている方も多いのではないでしょうか。この記事では、桔梗のプロフィールや基本情報、種類のほか、育て方のポイントについて詳しくご紹介していきます。

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桔梗とは

秋の七草として親しまれている桔梗。秋に咲く花としてイメージされがちですが、実際の開花期は初夏から秋にかけてなんです! 改めてどんな花かと問われても言葉に詰まる方が多いのではないでしょうか。ここでは、桔梗の基本情報についてガイドしていきます。

花の特徴

キキョウ

桔梗は、学名Platycodon grandiflorus、キキョウ科キキョウ属の落葉性多年草です。原産地は日本、東アジア。昔から日本の原野に自生してきたことからも分かるように、暑さ寒さに強く、日本の気候によく馴染み、初心者でも育てやすい花です。いにしえの時代から愛され、万葉集にも歌が残されています。

桔梗は花茎を伸ばした先端に、星形の愛らしい花を咲かせます。開花期は6~10月です。花色は淡い紫、白、淡いピンク、複色があり、清楚な雰囲気。花姿も一重咲き、二重咲き、三重咲き、四重咲きのほか、花弁を多数重ねるものがあります。草丈は20〜150cmで、種類や品種によって幅があります。

花言葉

キキョウ

桔梗の花言葉は、「永遠の愛」「変わらぬ愛」「誠実」「清楚」「従順」「気品」など。いずれも、上品な桔梗の佇まいに由来するものと思われます。

桔梗の種類

キキョウ

桔梗は、昔から愛されてきた花であるがゆえに、古典園芸の頃から品種改良が盛んに行われ、種類も多様です。代表的な園芸品種は、早生種で早くも5月頃から開花を始める‘五月雨’、草丈が低く抑えられた矮性種の‘ポップスター’、二重咲きの‘ハコネホワイト’や‘ハコネブルー’などがあります。

桔梗のライフサイクル

キキョウ

桔梗は落葉性多年草に分類されています。4月頃から新芽を出し、旺盛に茎葉を伸ばして生育期に入り、6〜10月に開花。寒さが厳しくなると、地上部を枯らして休眠します。越年して再び春になると新芽を出します。この繰り返しで、一度植え付ければ毎年開花を楽しませてくれる、息の長い植物です。

桔梗の育て方のポイント

ここまで、桔梗の基本情報や種類、見頃などについてご紹介してきました。ここからはガーデニングの実践編として、栽培方法について詳しく解説していきます。

適した環境

キキョウ

日当たり、風通しのよい場所を好みます。日当たりがよくないと花つきが悪くなったり、ヒョロヒョロとか弱い茎葉が茂って草姿が間のびしたりするので注意。

土壌は、水はけ、水もちがよく、有機質に富んだ状態を好みます。じめじめとした環境を嫌うので、水はけの悪い場所では土壌改良資材を施し、盛り土をして周囲より高くしておくとよいでしょう。

真夏の暑さが苦手なので、西日が強く当たる場所を避け、朝のみ光が差す東側などがベターです。鉢栽培の場合は、風通しのよい涼しい場所で管理しましょう。一方で、冬の寒さには強く、凍結しない場所であれば戸外で越冬できます。凍結の心配がある場合は、腐葉土やバークチップなどでマルチングをして対策しておきます。鉢栽培の場合は、軒下やベランダなど凍結しない場所に移動しましょう。

種まき

種まき

桔梗は、種まきから育てられます。種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなりますね。

ただし、桔梗の苗は花苗店で容易に手に入ります。手軽に栽培したいなら、苗の植え付けからのスタートがおすすめです。「1〜2株あれば十分だから、苗の植え付けから始めたい」という方も、次項に進んでください。

種まきの適期は、4月上旬頃です。

まず、セルトレイに草花用にブレンドされた市販の培養土を入れます。中央に植え穴をあけて種を2〜3粒ずつ播き、薄く土をかぶせましょう。最後に浅く水を張った容器に入れて、底から給水させます。これはジョウロなどで上から水やりすると水流によって種が流れ出してしまうことがあるからです。発芽までは明るい半日陰で管理し、乾燥しないように適度に底面から給水させましょう。

発芽後は、日当たりのよい場所で管理します。発芽したら、勢いがあって元気のよい苗を1本のみ残し、ほかは間引きましょう。ヒョロヒョロと伸びて弱々しい苗や、葉が虫に食われている苗、葉が黄色くなっている苗などを選んで間引きます。本葉が3〜4枚ついたら黒ポットに培養土を入れて植え替えましょう。10日に1度を目安に薄い液肥を与えて育苗し、十分に成長したら花壇や鉢などに植え付けます。

土作り

土

【地植え】

植え付けの1〜2週間前に、腐葉土や堆肥などの有機質資材を投入し、よく耕してふかふかの土をつくっておきます。土作りはこのように事前に行うことで、分解が進んで土が熟成します。

【鉢植え】

草花の栽培用に配合された園芸用培養土を利用すると便利です。

植え付け・植え替え

ガーデニング

桔梗の植え付け・植え替えの適期は3月か10月ですが、この時期以外でも花苗店で苗を入手できます。購入する際は、節間が短く茎ががっしりと締まって丈夫なものを選んでください。苗を入手したら、すぐに植え付けましょう。

【地植え】

土作りをしておいた場所に、苗よりも一回り大きな穴を掘り、根鉢を崩さずに植え付けます。複数の苗を植え付ける場合は、20cmほどの間隔を取りましょう。最後に、たっぷりと水やりします。

2〜3年に1度は掘り上げ、株分けして株を更新し、植え直します。

【鉢植え】

鉢の大きさは、6〜7号鉢を準備しましょう。

用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。桔梗の苗を鉢に仮置きし、高さを決めます。苗をポットから出し、根鉢を崩さずに植え付けましょう。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。寄せ植えの素材として、大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。

生育旺盛で根詰まりしやすいので、1年に2度は植え替えます。根鉢をくずして古い根を整理し、株分けして植え直します。

水やり

水やり

株が蒸れるのを防ぐために、株全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。真夏は気温が上がっている昼間に水やりすると、水がすぐにぬるま湯になって株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。冬は休眠するので、控えめに与えます。また、夕方に水やりすると凍結の原因になるので、気温の高い昼間に行いましょう。

【地植え】

しっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、水切れしないように管理しましょう。根付いた後は、地植えの場合は地中から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続いて乾燥しているようなら、水やりをして補います。

【鉢植え】

日頃の水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。成長期を迎えてぐんぐん茎葉を広げ出すと、水を欲しがるようになります。気候や株の状態に適した水やりを心がけましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。

肥料

肥料

【地植え】

植え付け、植え替えの際に十分に土作りをしていれば、追肥は不要です。

【鉢植え】

花が咲いている時期に、2週間に1度を目安に、開花促進用の液肥を与えます。

花がら摘みと切り戻し

剪定

【花がら摘み】

桔梗は花つきがよいので、終わった花は早めに摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも花がらを残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなるので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。

【剪定(切り戻し)】

桔梗は開花期間が長く、ある程度咲きそろった後は、徐々に草姿が乱れてきます。夏には草丈の半分くらいまで切り戻し、風通しよく管理しましょう。すると秋から再び勢いを取り戻して生育し始め、晩秋まで開花を楽しめます。

増やし方

種まき

桔梗は、株分け、挿し芽、種まきで増やすことができます。種まきについては前項を参照してください。

【株分け】

桔梗の株分け適期は、休眠後、春の新芽を出す少し前の2〜3月頃です。大株に育っていたら株を掘り上げ、2〜3芽つけて根を切り分けます。切り分けた根を植え直すと、株が若返ってその後の生育がよくなります。株数が増える分、数カ所に場所を分けて植え込んでもいいですね。新しい植え場所に堆肥や腐葉土をすき込んで水はけをよくし、根鉢より一回り大きな穴を掘り、植え直すとよいでしょう。

【挿し芽】

挿し芽とは、茎葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。たくましいですね! 植物の中には挿し芽ができないものもありますが、桔梗は挿し芽で増やせます。

桔梗の挿し芽の適期は、5〜6月です。新しく伸びた枝を節以上つけて、切り口が斜めになるように切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、水の吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を2〜3枚取ります。3号くらいの鉢を用意してゴロ土を入れ、新しい培養土を入れ、水で十分に湿らせておきます。培養土に3カ所の植え穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。十分に育ったら、植えたい場所へ定植しましょう。挿し芽のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。

病害虫

害虫

【病気】

桔梗がかかりやすい病気は、立ち枯れ病、茎腐病です。

立ち枯れ病は、土壌から感染しやすい病気です。根や地際の茎から発症しやすく、黄色く枯れ込んできて、放置すると茎葉全体が茶色く変色し、やがて立ち枯れてしまいます。多湿の環境で発生しやすい病気です。

茎腐病は、地際から上の茎の部分に茶褐色の病斑が現れて、表面から内部にまで広がります。葉も下から枯れ上がるようになり、やがて枯死する病気です。密植を避けて、風通しよく管理するようにしましょう。病気にかかった株を見つけたら、株を抜き取って周りの土ごと処分してください。

【害虫】

桔梗につきやすい害虫は、アブラムシ、ハダニ、ヨトウムシです。

アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目も悪いので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒剤を利用するのがおすすめです。

ハダニは、乾燥が続くと発生しやすい小さな虫で、葉裏などについて吸汁します。大発生すると株が弱るので、葉の表や裏にシャワーを勢いよくかけましょう。小さな虫なので、水の勢いで押し流すことができます。

ヨトウムシは蛾の幼虫で、夜に活動して葉を食い荒らします。食欲旺盛で、一晩のうちに丸裸にされてしまうことも。葉の裏に卵を産み付けるので、孵化直後の幼齢のうちに退治するのがポイントです。または、植え付け時に、土に混ぜ込んで防除するタイプの殺虫粒剤を利用してもよいでしょう。

桔梗を楽しめる場所

キキョウ

自分で栽培するだけでなく、桔梗を楽しめるスポットもありますよ!

京都にある、安倍晴明を祀る「晴明神社」は、約2,000株の桔梗の花が咲き乱れることで知られています。社紋のモチーフであることから、桔梗が植栽されているそうです。見頃は6月中旬から。

京都に建つ「東福寺」も、桔梗の有名なスポットです。敷地内にある塔頭の一つ「天得院」は、通常は非公開ですが、桔梗が開花する時期に合わせて、特別に公開されます。杉苔に覆われる枯山水と桔梗の共演を楽しめます。

京都の「廬山寺」は、源氏物語を執筆した紫式部の邸宅跡とされ、本堂前の「源氏の庭」には、約1,000株の桔梗が植栽されています。

和風な美しさのある桔梗を楽しもう!

キキョウ

楚々とした風情に趣があり、古来から日本人に愛されてきた桔梗。日本の野山に自生してきたことから、庭に植えても環境に馴染みやすく、ビギナーにも育てやすい草花の一つです。花が咲いたら、和の器やシンプルなフラワーベースに活けるなど、インテリアとしてもおすすめ。夏から秋までよく咲く桔梗を、ぜひ庭やコンテナなどに植えてみてはいかがでしょうか。

Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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