初心者でも育てやすい! アブチロンを育てて南国気分を味わおう

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アブチロンという花をご存じでしょうか? トロピカルな雰囲気をもつ、熱帯性の植物で、夏の暑さにもへたらずに長い期間にわたって開花を繰り返します。鮮やかな花色は目を引き、ガーデンのアクセントとして重宝する植物です。この記事では、そんなアブチロンについて、基本情報から花名の由来・花言葉などの豆知識、詳細な栽培方法などをご紹介していきます。
目次
アブチロンの基本情報

植物名:アブチロン
学名:Abutilon
英名:Flowering maple、Parlor maple、Chinese lantern、Chinese bellflower
別名:ショウジョウカ、ウキツリボク、チロリアンランプ
科名:アオイ科
属名:イチビ属(アブチロン属)
原産地:熱帯から亜熱帯
分類:常緑低木
アブチロンは、アオイ科イチビ属(アブチロン属)の常緑花木です。原産地は世界中の熱帯から亜熱帯で、160種類が分布しており、特に南アメリカで多種類が見つかっています。原産地から分かるように熱帯植物に分類され、寒さには弱いのが特徴です。樹形は種類によって、低木、半つる性、つる性と異なり、樹高も30cmくらいのものから、つるを3〜4m伸ばすものまであります。苗を購入する際はラベルなどで樹形や樹高、つるの長さなどを確認し、植えるスペース合うものを選びましょう。
日本でガーデニング用として一般的に流通しているのは、ショウジョウカ(Abutilon pictum)とウキツリボク(Abutilon megapotamicum)です。
ショウジョウカは、「猩猩花」と書きます。熱帯アメリカ原産の低木で、樹高は1mほど。花茎を長く伸ばした先に、ハイビスカスに似た4〜5cmほどの花が下向きに咲きます。花のサイズが小さいので、華やかながらも楚々とした雰囲気を持ち合わせるのが魅力です。花色は赤、ピンク、オレンジ、黄、白など。さまざまな園芸品種が生まれており、選ぶ楽しみがあります。
ウキツリボクは、「浮釣木」と書きます。流通名の「チロリアンランプ」のほうがよく知られているかもしれませんね。ブラジル原産でやや寒さに耐え、ほとんど霜や凍結の心配がない暖地なら庭植えでも越冬し、冬も花を見ることができます。直立せずにつるを伸ばす種類は、フェンスやオベリスクなどに仕立てるのも一案です。つるの長さは1.5〜2m。花姿はユニークで、ベル形のガクの先に黄色い花が咲き、その先に茶色のしべがのぞきます。花のサイズは3〜4cmで、赤×黄色のコントラストが目を引きます。花もちはよくありませんが、次々とつぼみをあげ、長い期間にわたってたくさんの花を咲かせてくれます。
アブチロンの花名の由来

アブチロンの名前は、学名のAbutilonから来ています。ギリシャ語でAは「無い」、Bousは「牛」、tilosは「下痢」を意味し、これらを合わせた言葉が語形変化したものです。昔から家畜の腹下しに下痢止めとして与えていたことに由来するとされています。
アブチロンの開花時期

アブチロンの開花時期は、4月中旬〜11月上旬です。比較的寒さに強いウキツリボク(チロリアンランプ)は、霜や凍結の心配がない温暖な地域では冬でも花を見せてくれます。
アブチロンの花言葉

アブチロンの花言葉には、「よい便り」「恵まれた環境」「尊敬」「真実は一つ」などがあります。温暖な気候に恵まれた地域で、原産地では一年中開花することから「恵まれた環境」という言葉が与えられたとか。いずれもポジティブなものばかりなので、花言葉を添えてプレゼントしても素敵ですね。
アブチロンの育て方
ここまで、アブチロンの基本情報や花名の由来、花言葉など多岐にわたってご紹介してきました。ここからはガーデニングの実践編として、庭植えや鉢栽培のポイントをご紹介していきましょう。苗の植え付けからスタートし、水やりや肥料、病害虫対策などの日常的なケア、また花がら摘みや剪定など、美観を保つためのガーデニングのテクニックについても具体的に解説します。
栽培環境

日当たり、風通しのよい場所を好みます。日当たりがよくないと花つきが悪くなったり、ヒョロヒョロとか弱い茎葉が茂って草姿が間のびしたりするので注意。
土壌は、水はけ、水もちがよく、有機質に富んだ状態を好みます。じめじめとした環境を嫌うので、水はけの悪い場所では土壌改良資材を施したのち、盛り土をして周囲よりも高くし、水はけのよい環境に整えるとよいでしょう。
アブチロンは暑さには強いのですが、寒さに弱い性質をもっています。0℃までは耐えるとされていますが、霜が降りたり、凍結したりする環境では耐えきれずに枯れてしまうので注意してください。庭に植えて楽しみたい場合は、4〜10月までは地植えにし、寒くなる前の11月頃に鉢に植え替えて、霜の当たらない軒下や日当たりのよい室内などに移動して管理しましょう。霜や凍結の心配がない暖地では、庭植えのまま越冬させてもかまいません。ただし、いつも寒風にさらされるような環境は避けてください。
土作り

【地植え】
植え付けの1〜2週間前に腐葉土や堆肥などの有機質資材を投入し、よく耕してふかふかの土を作っておきます。このように事前に土作りをしておくことで、分解が進んで土が熟成します。
【鉢植え】
草花の栽培用に配合された園芸用培養土を利用すると便利です。
植え付け

アブチロンの植え付けの適期は4〜6月か9月ですが、この時期以外でも花苗店で苗を入手できます。購入する際は、節間が短く茎ががっしりと締まって丈夫なものを選んでください。苗を入手したら、すぐに植え付けましょう。
【地植え】
土作りをしておいた場所に苗よりも一回り大きなを穴を掘り、根鉢を崩さずに植え付けます。複数の苗を植え付ける場合は、1〜1.5mほどの間隔を取りましょう。最後に、たっぷりと水やりします。
【鉢植え】
鉢の大きさは、8〜10号鉢を準備しましょう。
用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。アブチロンの苗を鉢に仮置きし、高さを決めます。苗をポットから出し、やや根鉢を崩して植え付けましょう。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
生育旺盛で根詰まりしやすく、長くそのままにしておくと株が弱ってくるので、1〜2年に1度は植え替えます。根鉢をくずして古い根を整理し、地上部の枝葉も切り戻して植え直します。
水やり

株が蒸れるのを防ぐために株全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。真夏は気温が上がっている昼間に水やりすると、水がすぐにぬるま湯になって株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。冬は十分気温が上がった昼頃に与えてください。夕方に水やりすると凍結の原因になり、株が弱るので避けましょう。
アブチロンは多湿を嫌うので、水の与えすぎには注意します。バランスのよい水の管理が大切です。
【地植え】
しっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、水切れしないように管理しましょう。根付いた後は、地植えの場合は地中から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続いて乾燥するようなら、水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。成長期を迎えてぐんぐん茎葉を広げ出すと、水を欲しがるようになります。気候や株の状態に適した水やりを心がけましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。
肥料

4〜10月の生育期間中は、株の勢いが衰えないように定期的に肥料を施します。冬は生育が止まるので控えますが、暖地で冬も花が咲き続ける環境であれば、施肥を続けます。
【地植え】
株の勢いがないようであれば、緩効性化成肥料を株の周囲に均一にばらまき、土によく馴染ませましょう。
【鉢植え】
株の状態を見て、定期的に緩効性化成肥料を与えます。花が咲いている時期には、2週間に1度を目安に、開花促進用の液肥を与えてもよいでしょう。
花がら摘み・剪定

【花がら摘み】
アブチロンは花つきがよいので、終わった花は早めに摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも花がらを残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなるので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
【剪定】
生育期の4〜10月の期間なら、いつ剪定してもかまいません。繁茂しすぎて持て余すようであれば、樹高の半分から1/3くらいまで切り戻しましょう。再び新芽を伸ばしてくるので、他の植物との調和を保つ程度に、切り戻しを繰り返してかまいません。ただし、葉がまったくなくなるほど切ってしまうと光合成ができずに枯れてしまうので注意してください。
病害虫

【病気】
アブチロンがかかりやすい病気は、立ち枯れ病です。
土壌から感染しやすい病気で、根や地際の茎から発症しやすく、黄色く枯れ込んできて、放置すると茎葉全体が茶色く変色し、やがて立ち枯れてしまいます。多湿の環境で発生しやすいので注意しましょう。
【害虫】
アブチロンにつきやすい害虫は、アブラムシ、ハダニ、ハマキムシなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると植物の茎葉について吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目も悪いので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒剤を利用するのがおすすめです。
ハダニは、乾燥が続くと発生しやすい小さな虫で、葉裏などについて吸汁します。大発生すると株が弱るので、葉の表や裏にシャワーを勢いよくかけましょう。小さな虫なので、水の勢いで押し流すことができます。
ハマキムシは蛾の幼虫で、葉をくるくると巻いたり、重ね合わせたりした中に生息して葉や花を食害します。見た目にもよくないので、見つけ次第駆除しましょう。特にアブチロンが属するアオイ科の植物を好みます。
冬越し

アブチロンを庭植えで楽しんでいる場合は、寒くなる前の11月頃に鉢に植え替えましょう。枝葉が伸びすぎているようなら半分くらいまで切り戻します。軒下や日当たりのよい室内などに置いて、冬越しさせます。越年して、霜の心配がなくなる5月頃に再び庭に植え直しましょう。
霜や凍結の心配がない暖地では、地植えにしたままでも越冬できますが、寒さ対策としてバークチップなどを株元に施すマルチングをしてください。
増やし方

【挿し木】
挿し木とは、茎葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。たくましいですね! 植物の中には挿し木ができないものもありますが、アブチロンは挿し木で増やせます。
アブチロンの挿し木の適期は、4〜6月です。新しく伸びた枝を2節以上つけて切り口が斜めになるように切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、水の吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を2〜3枚取ります。3号くらいの鉢を用意してゴロ土を入れ、新しい培養土を入れ、水で十分に湿らせておきます。培養土に3カ所の植え穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。十分に育ったら、植えたい場所へ定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
多湿に気をつけてアブチロンを育てよう

ここまで、アブチロンについて特徴から育て方まで、詳しく解説してきました。最後まで読んでくださった方は、アブチロンに対して親しみを感じていただけたのではないでしょうか。多湿に気をつければアブチロンは丈夫で育てやすく、ビギナーでも気軽に育てられる植物です。開花期間が長く、愛らしい花姿が魅力のアブチロンをぜひガーデンに取り入れてはいかがでしょうか?
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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