主役に躍り出ることはないけれど、作品の完成度を大きく左右し、絶対的な信頼を寄せられている名バイプレイヤー。庭や寄せ植えの中にも、そんな底力をもつ名脇役たちがいます。それがリシマキア。ほかの植物が育ちにくい日陰でもぐんぐん育ち、暑さ寒さにも強く、黙ってきっちりいい仕事をしてくれます。なんだかいまいちシーンが決まらないなぁと思っている方は、ぜひ名バイプレーヤー「リシマキア」を庭にキャスティングしてみてはいかがでしょうか。あなたの庭や寄せ植えの完成度が確実に変わりますよ。

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リシマキアは日陰に強くて丈夫

オカトラノオ
シラカバの林床に咲くオカトラノオ。

リシマキアはサクラソウ科、オカトラノオ属の多年草または小低木です。原産地は北半球各地で世界に約200種が分布しており、日本にもオカトラノオをはじめとして15種のリシマキアが自生しています(オカトラノオの学名は、Lysimachia、つまりリシマキアです)。大きく分けると、縦に成長していくタイプと横に成長していくタイプがあり、横に成長していく「ほふく性タイプ」は、冬でも常緑(または半常緑)なため、グラウンドカバーに最適の植物として注目されています。

リシマキア
手前のブロンズ色の葉がリシマキア‘ミッドナイトサン’、奥の明るい葉がリシマキア・ヌンムラリア‘オーレア’。ヒューケラや斑入り葉のナルコユリとともに、葉の組み合わせだけで美しい風景を作る。

リシマキアは、本来日当たりの弱い山地に分布していることが多く、日光のあまり当たらない場所でも十分生育することができます。ですから、日陰の庭でも大丈夫というわけです。また、比較的水分を多く含んでいる土を好み、リシマキアの仲間には熱帯魚を育てる時の水草として育てる種類も存在するくらい。水に強いので、リシマキアを育てる際は根腐れの心配があまりありません。ほとんどの品種が耐暑性、耐寒性に優れ、日本の暑い夏を乗り切ってくれます。冬は地植えであっても霜除けがいらないほど丈夫。地下茎で増えて広がるため、手間いらずで、庭の風景を作ってくれます。

たくさんの種類があり、品種によって葉の色、花の色、花姿が変化に富んでいますので、きっとお気に入りが見つかることでしょう。

リシマキアの活用法

① グラウンドカバーとして

リシマキア
バラの足元に植えられたリシマキア・ヌンムラリア‘オーレア’。

横に成長していくタイプは、地面をカーペットのように美しく彩るグラウンドカバーとして大活躍してくれます。グラウンドカバータイプも葉の色にバリエーションがあるので、洋風の庭にも和風の庭にも取り入れることができます。鮮やかな若草色は庭をパッと明るくしてくれますし、ダークカラーは渋さを出すのにぴったり。1株植えれば自ら発根を繰り返して繁殖していき、地面を這うように茎が伸びていきます。リシマキアが広がっているだけで、手入れが行き届いているように見え、バラなど上部で咲く花の美しさをより際立たせてくれる優れた効果を発揮します。

リシマキア
散りしく花びらさえもリシマキアのカーペットが美しく見せてくれる。

② 寄せ植えとして

リシマキアの寄せ植え
鉢の縁から枝垂れるブロンズ色の葉がリシマキア‘ミッドナイトサン’。「Junk sweet Garden tef*tef*」の寄せ植え。

リシマキアは寄せ植えでも名脇役としても活躍します。鉢の縁から下垂させるように植えると、鉢と植物の一体感が生まれ、寄せ植えの完成度が格段にアップします。ハンギングバスケットでも枝垂れる葉をいっそう美しく楽しむことができます。

③ 庭の名脇役として

リシマキアとフロックス
フロックス‘チェリーキャラメル’とともに咲く穂状花のリシマキア・アトロプルプレア‘ボジョレー’。

縦に伸びるタイプのリシマキアは庭の脇役として活躍します。例えば、初夏に咲く草丈40cmほどのリシマキア・アトロプルプレア‘ボジョレー’の穂状の濃紫色の花は、小さな庭でも場所をとらず、バラの株元などにもぴったりです。また梅雨時の曇り空には、明るい黄色の星形の花をびっしりつけたリシマキア・プンクタータが似合います。つやのない赤葉を持ち、6月から8月にかけて黄色の花を咲かせるリシマキア・キリアタ‘ファイアークラッカー’も存在感があります。初夏から夏にかけて花の寂しい時に、庭の主役にはならないけれど、なくてはならない名脇役として、リシマキアをもっと利用しましょう。

ガーデン
紫のゲラニウムの前後を明るく彩る黄色の花はリシマキア・プンクタータ‘アレキサンダー’。斑入り葉が特徴。

個性豊かで多彩なリシマキアの品種

北半球に広く分布するリシマキアは多様性に富み、さまざまな種類があります。そして、品種ごとに特徴や育て方が少し違います。

「どんなリシマキアが私の庭に似合うのか?」迷ってる方に、リシマキアの品種とその特徴を詳しくご紹介します。

① リシマキア・ヌンムラリア

リシマキア・ヌンムラリア

リシマキア・ヌンムラリアは、ヨーロッパを原産とするリシマキアの代表品種です。ほふく性ですからグラウンドカバーとして、また、ハンギングバスケットでも活躍します。5月下旬から6月にかけて、小さな黄色い花を葉が見えないほど一面に咲かせてくれます。また、小さな二枚葉が季節を問わず茂り、観賞価値が高い品種です。

日当たりがよい場所でも半日陰でも、場所を選ばずよく生育します。湿り気のある土壌を好みますから、鉢植えの場合は水やりに注意しましょう。

水気を多く含んだ環境を好むことから、水草としても人気があります。

② リシマキア・ヌンムラリア‘オーレア’

リシマキア・ヌンムラリア‘オーレア’

ヌンムラリアの変種で、写真左上のようにライムグリーンの輝く葉が地面をカーペット状に覆います。周りを明るくする葉の色は、日陰の庭を生き生きと爽やかに見せてくれます。花の寂しい時も、‘オーレア’の黄金色の葉があれば少しも寂しくありません。そんなわけで、‘オーレア’は生育旺盛なグラウンドカバー植物としてとても人気があります。

特に植物が育ちにくい半日陰から日陰の庭は、湿り気の多い環境を好む‘オーレア’には、ぴったりの場所としておすすめです。日差しの強い環境では、右側の写真のように葉の黄金色がより鮮明に出て大変見応えがあります。日陰の庭では水分の影響で緑が色濃く出ますから、環境によって変わる葉の色を楽しむことも楽しいでしょう。

また、‘オーレア’の葉の色はどのような葉色とも合いますので、寄せ植えの素材としての価値が高く、寄せ植えを行いたい人々に注目を浴びています。

③ リシマキア‘ミッドナイトサン’

グラウンドカバーに向くほふく性で、丈夫で繁殖力も申し分ありません。‘ミッドナイトサン’の特徴は、上の写真のようなダークカラーの葉の色です。ブロンズ色を帯びた濃い緑色の葉は、落ち着いたシックな雰囲気を醸し出しくれます。初夏には星形の黄色い花が咲き、葉の色との対比が美しいです。その花は4つほど密集して生えてくるので、花がより大きく際立ち見る人を楽しませてくれます。

④ リシマキア‘シューティングスター’

リシマキア‘シューティングスター’
Photo/Junk sweet Garden tef*tef*

ほふく性タイプのリシマキアです。

‘シューティングスター’の特徴は、濃い緑色の葉の間に光が差すようにピンク色の斑模様が入り、可愛らしく繊細な雰囲気であること。

美しい葉の色を生かして鉢植えで楽しむ人も多い人気品種です。性質は他のリシマキア同様、暑さ寒さに強く、どんどん横に茎を伸ばし旺盛に成長していきます。初心者に育てやすく、グラウンドカバーとしても利用できる品種です。

⑤ リシマキア・プンクタータ

リシマキア・プンクタータ
Elena Masiutkina/Shutterstock.com

縦に成長するタイプで、40〜60cmほどの草丈になります。初夏に星型の黄色い花が茎につらなって一面に咲き、とても見事です。

地下茎で増え、まとまりのある姿で株立ちになるので手入れが楽です。自然風の庭にさらに野趣を添えてくれます。宿根草ガーデンやボーダーガーデンなどに向いています。

斑入り葉(アレキサンダー)の品種は寄せ植えに適しています。ただし、花は上記のプンクタータほど見事には咲かないでので、美しい葉を観賞するつもりで楽しむのがいいでしょう。

⑥ リシマキア・アトロルプレア‘ボジョレー’

リシマキア・アトロルプレア‘ボジョレー’

縦に成長するタイプで、草丈は20~40cm。深いワインレッドの穂状の花に、銀色がかった葉の取り合わせが美しく、シックでお洒落な雰囲気を醸し出します。バラの最盛期に‘ボジョレー’の花も咲くので、ローズガーデンの下草にも利用できます。淡いピンク色や白色のバラを引き立て、優雅な風景を作ってくれます。寄せ植えの花材としても人気で、動きを出して色の引き締め効果もあります。ある程度咲いたら早めに切り戻し、株を休ませると繰り返し咲きます。

⑦ リシマキア・キリアタ‘ファイアークラッカー’

リシマキア・キリアタ‘ファイアークラッカー’
OlgaOtto/Shutterstock.com

縦に成長するタイプで、草丈50~80cm。赤紫を帯びた茎、葉が美しく、7月から8月に咲く黄色の小さい花との対比が際立ちます。花が少なくなる盛夏に、ファイアークラッカーは存在感を示してくれる便利な植物です。

非常に強健で暑さ寒さ、多湿、乾燥にも強く、地下茎で広範囲に増えて群生します。広い場所に向いています。

リシマキアの育て方

それではリシマキアの株を手に入れて、実際に育てる際、どんなことに注意すればいいでしょうか? リシマキアの栽培環境をはじめ、栽培環境、水やり、肥料、注意すべき病害虫、増やし方について詳しくご紹介します。

① 栽培環境

リシマキアは丈夫な植物で、日当たりを気にせず育てることができます。しかし本来日当たりの弱い山地に自生している植物なので、夏の強い日光による葉焼けには注意が必要です。

また、水分を好む性質ですから乾燥し過ぎた場所には置かない、植えないようにします。

根腐れの心配はほとんどありません。水分を切らさないような栽培環境を整えることが大切です。

土を作る際には、腐葉土や堆肥を混ぜ込んだ柔らかく湿り気のある土を目指します。

② 水やり

鉢植えの場合は、土が乾き始めたらすぐに水やりを行い、水を切らさないことが大事です。

リシマキアは大変水分を好む植物ですから、夏は特に気をつけましょう。

地植えの場合も土が乾いたたら水を与えるようにすると、生育がよくなります。

冬に関しては、夏ほどの水分は必要ありません。土が乾燥し過ぎないように水やりをすれば十分です。

また、鉢を凍らせると植物を傷める恐れがあります。鉢の置き場所、水やりの時間などに気をつけましょう。

③ 肥料・追肥

堆肥
雑草を積んでおくと段々分解されて腐葉土になっていく。これはまだその途中。

リシマキアは腐食質の肥料を好みます。植え付ける際の用土に、腐葉土を混ぜておく方法がおすすめです。腐葉土は園芸店でも買えますが、自分で作ることも可能です。作り方は簡単です。庭の片隅に枯れ葉や雑草を積んで、1年くらいすると分解されて土のようになるので、土のような状態になった下の方から使えます。さらに月に1回から2回液体タイプの肥料を与えると、葉の色など見栄えをよくするのに効果的です。

リシマキアは生命力が強い植物なので、肥料が少なくても育つことができます。肥料の与え過ぎには注意しましょう。

④ 注意すべき病害虫はほぼなし

リシマキアは丈夫な植物ですから、基本的に病気の心配はありません。

害虫に関してもあまり気にするような虫はいないので、安心して栽培することができます。ただし、植物全般に発生するアブラムシは一度発生すると大量になりやすい害虫ですから、見つけたら駆除するようにしましょう。

⑤ 増やし方

リシマキアの植え付けは、春(3〜5月)と秋(10〜11月)の比較的気温の低い時期が最適です。

リシマキアは「株分け」と「挿し木」で増やすことができます。大きくなった株や、広くほふくした株を切り分けて、それぞれ新しい土に植えましょう。

リシマキアの挿し木のやり方も簡単です。根がついた茎を切り分け植えたい場所に挿しておくだけで成長します。また、剪定で切り取った茎や枝の切り口を水に浸しておき、根が数本出てきたら土に植え付けてください。このような方法で複数のリシマキアを育てることができます。

リシマキア

非常に生命力が強く、ひなたでも日陰でも育ちやすいリシマキアについて紹介してきました。園芸初心者にも栽培しやすく、ぐんぐん成長して可愛い花を咲かせてくれるリシマキア。

寄せ植えでも、グラウンドカバーとしても、また庭の主役であるバラを引き立てる名脇役としても、さまざまな場面での活躍が期待できます。リシマキアという名バイプレーヤーをあなたの庭にもキャスティングしてみませんか?

Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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