個性的な花を咲かせるトケイソウを育ててみよう! 育て方を詳しくご紹介

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夏から秋にかけて繰り返しよく咲く、トケイソウをご存じでしょうか。南国をルーツにするつる植物で、トロピカルな雰囲気を持つ個性的な花姿に人気があります。この記事では、トケイソウの基本情報や特徴、詳しい育て方について、幅広くご紹介していきます。
目次
トケイソウの基本情報

トケイソウは、トケイソウ科トケイソウ属(パッシフロラ属)の常緑性多年草。熱帯アメリカ、アジア、オーストラリア原産の熱帯植物で、暑さには強い一方で寒さに弱い性質です。他者につるを絡ませながら成長していくつる性植物で、3m以上伸びるので、フェンスや壁面、オベリスクなどに仕立てると映えるでしょう。開花期は5〜10月で、花色は白、赤、ピンク、黄色、紫、複色などがあります。
トケイソウの名前の由来

トケイソウの名前の由来は、花の形が時計に似ていることから。また、別名のパッションフラワーの「パッション」は、「情熱」ではなく、「キリストの受難」という意味です。中央に突き出る大きな雌しべと雄しべを十字架にはりつけにされたキリストに、花弁を後光に見立てて名づけられたものです。
トケイソウの花の特徴は?

トケイソウは、ユニークな花姿が魅力ですよね! 花は萼片、花弁、副花冠、雌しべ、雄しべからなり、花弁の内側にある、もう一つの花弁のように見える副花冠の形状は、種類によってさまざま。針のように細く放射状につくものや、縮れた糸のように広がるもの、筒状になるものなどがあります。
果実を楽しめる品種もあるほど種類が豊富なトケイソウ

トケイソウの品種は、400〜500種が確認されています。また園芸品種として作出されたものも多数あり、選ぶ楽しみがある花です。それにトロピカルフルーツのパッションフルーツも、じつはトケイソウの一種なんですよ! 初心者でも育てやすい、耐寒性のある品種として国内で主に流通しているのは、カエルレア種(Passiflora caerulea L.)、チャボトケイソウ(インカルナータ種P.incarnata)などです。
トケイソウを上手に育てるには?
ここまで、トケイソウの基本情報や名前の由来、特徴、種類などについてご紹介してきました。ここからは、ガーデニングの実践編として、詳しい育て方について、地植え、鉢植えともに掘り下げて解説していきます。
トケイソウの栽培に適した環境

日当たり、風通しのよい場所を好みます。日当たりが悪いとヒョロヒョロと間のびしがちで葉色が冴えず、花つきも悪くなるので、一年を通して日当たりのよい場所を選んで植えてください。
水はけのよい土壌を好むので、粘土質の場合は腐葉土や堆肥を多めにすき込んで土壌改良をしておきます。また、土を盛って周囲より高くし、水はけをよくしておくとよいでしょう。
基本的に暑さには強い一方で寒さには弱く、温暖地に向く植物です。霜が降りる地域で地植えにしている場合は、寒くなる前に鉢に植え替え、日当たりのよい暖かい場所で管理してください。ただし、種類によってはマイナス5℃まで耐えるものもあるので、購入時に耐寒性についてラベルなどで確認しておきましょう。
トケイソウを育てるのに適した土

【地植え】
植え付けの2〜3週間前に、直径、深さともに30〜40cm程度の穴を掘りましょう。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきます。粘土質や砂質、水はけの悪い土壌であれば、腐葉土や堆肥を多めに入れるとよいでしょう。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
草花用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。
トケイソウの植え付けに適した時期と方法

トケイソウは、花苗店やホームセンターなどで苗を購入してスタートするのが一般的です。苗の植え付け適期は、4〜6月。苗を購入する際は、節間が短くがっしりと締まって、勢いがあるものを選びましょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘って、浅めに植え付けます。最後にたっぷりと水を与えます。早めに支柱やフェンス、オベリスクなどを設置し、つるが巻きつくようにしておきます。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、7〜8号の鉢を準備します。用意した鉢の底穴にネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから果樹用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗をポットから取り出して鉢に仮置きし、浅植えになるように高さを決めます。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えます。また、鉢栽培用のオベリスクを設置し、つるを誘引しておきましょう。
一年を通して日当たり、風通しのよい場所に置いて管理しましょう。冬は凍結しない場所に移動して寒さ対策をしておきます。
鉢植えで楽しむ場合は、生命力旺盛で成長とともに根詰まりしてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。
トケイソウに水やりをするコツ

茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。開花する時期は、水切れしないように管理することがポイントです。真夏は気温が上がっている昼間に水やりすると、土中で水の温度が上がり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えましょう。反対に、真冬は気温が十分に上がった日中に行います。夕方に水やりすると凍結の原因になるので避けてください。また、冬は生育が止まるので、水やりの頻度を控えめにするとよいでしょう。
【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は、地植えの場合は地中から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、真夏に晴天が続いて乾燥している場合は水やりをして補いましょう。
【鉢植え】
日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチすることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。
トケイソウに肥料を与える時期と方法

【地植え・鉢植えともに】
4〜10月の生育期に、1カ月に1度を目安に緩効性肥料を株の周囲にばらまき、土によくなじませます。
成長期のトケイソウは剪定や管理が必要

【整枝・剪定】
生育期に茎葉が茂りすぎて日陰になったり、風通しが悪くなったりすると、花つきが悪くなります。込み合いすぎている部分があれば、適宜切り取って枝葉や花に日が当たるように整枝しましょう。
一通り開花が終わった10月頃に、古いつるや伸びすぎているつる、込み合っている部分のつるなどを剪定します。
【花がら摘み】
トケイソウは次から次へと花が咲くので、終わった花は早めに摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株周りを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも終わった花を残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
トケイソウの栽培で気をつけたい病気と害虫

【病気】
トケイソウがかかりやすい病気は、炭そ病、灰色かび病などです。
炭そ病はカビが原因で、葉に褐色で円形の病斑が現れるのが特徴です。比較的気温が高く、雨の多い時期に発生しやすくなります。枝葉が込み合いすぎていたらすかし剪定をし、風通しよく管理しましょう。病気が広がる前に、早期に発見して適応する殺菌剤を散布して防除します。
灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができ、やがて灰色のカビが広がっていきます。多湿で風通しが悪く、込み合いすぎていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなります。花がらなどはこまめに取り、茎葉が込み合いすぎている場合は間引いて風通しよく管理しましょう。
【害虫】
トケイソウに発生しやすい害虫は、アブラムシ、ハダニなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目も悪いので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。
ハダニは、乾燥が続くと発生しやすい小さな虫で、葉裏などについて吸汁します。大発生すると株が弱るので、葉の表や裏にシャワーを勢いよくかけましょう。小さな虫なので、水の勢いで押し流すことができます。
冬越し

トケイソウは寒さに弱い植物です。一部耐寒性の強い種類以外は、鉢植えにして冬越しさせましょう。
【地植え】
霜が降りる地域では、鉢に植え替えて、日当たりがよく暖かい場所に移動して管理します。植え替えの方法は、苗の植え付けの項目の【鉢植え】を参照してください。
【鉢植え】
日当たりがよく暖かい場所に移動して管理します。
トケイソウの植え替え時期と方法

【地植え】
冬前の鉢上げ以外は必要ありません。
【鉢植え】
トケイソウは生命力旺盛で成長とともに根詰まりしてくるので、1〜2 年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出してみて、根が詰まっていたら、根鉢をくずして古い根などを切り取りましょう。根鉢を1/2〜1/3くらいまで小さくして、元の鉢に新しい培養土を使って植え直します。根からの水分の吸収と、葉からの水分の蒸散のバランスを保つために、根を小さくしたら地上部の枝葉も切り戻しておきましょう。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢を崩す程度にして植え替えてください。
トケイソウは挿し木で簡単に増やせる

挿し木とは、枝を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物の中には挿し木できないものもありますが、トケイソウは挿し木で増やすことができます。
挿し木の適期は4〜9月です。まず、春に伸びた若くて勢いのある枝を2〜3節つけて切り取り、水を入れた器に挿して十分吸水させておきましょう。草花用の培養土を育苗用トレイなどに入れて、採取した枝葉を挿しておきます。水切れしないように管理し、発根したら黒ポットなどに植え替えて育成を。大きくなったら、植えたい場所に定植します。挿し木のメリットは、採取した株のクローンになることです。
トケイソウの楽しみ方

トケイソウは、つるを絡ませながら、3m以上成長する植物です。生育初期につるを伸ばしたい方向へ誘引しておけば、その後は自然に枝葉を絡ませて旺盛に伸びていきます。その性質を生かし、フェンスや塀、パーゴラなど広い面を覆うように仕立てると、迫力のある演出ができますよ! 夏の暑さに強いので、グリーンカーテンとして利用してもよいでしょう。ただし、はびこりすぎて他の植物の邪魔になるようなら、適宜カットして全体の調和を図ってください。
鉢植えでは、大鉢に植え込み、デザイン性に優れる鉢栽培用のオベリスクをしつらえてつるを誘引し、アイキャッチにしても素敵です。トケイソウは葉の形が愛らしく花姿もユニークなので、カットして花瓶に挿し、室内に飾って楽しむのもおすすめです。
特徴的なトケイソウの花! よく伸びるつるも生かして育ててみよう

ユニークな花姿が魅力的なトケイソウは、暑さにも負けずに元気に咲き続け、グリーンカーテンにも利用できるつる植物です。この記事では、その基本情報や種類、地植え・鉢植えでの育て方など、多岐にわたってご紹介してきました。庭や塀まわりを個性的に演出してくれるトケイソウを、ぜひ迎え入れてはいかがでしょうか?
Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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