夏にぴったりパッションフルーツ! 自分で栽培してスイーツにしてみよう
南国果実のパッションフルーツについてご存じでしょうか。じつは家庭でも育てることができ、完熟果を収穫して味わうことが可能です。この記事では、パッションフルーツの基本情報や種類、花言葉、栄養素、食べ方、育て方など、多岐にわたってご紹介します。
目次
パッションフルーツってどんな植物?
植物名:パッションフルーツ
学名:Passiflora edulis
英名:passion fruit
和名:クダモノトケイソウ
科名:トケイソウ科
属名:トケイソウ属
原産地:ブラジル
分類:つる性常緑多年草
パッションフルーツは、トケイソウ科トケイソウ属のつる性常緑多年草です。つるを5m以上も伸ばして生育するので、栽培する際にはフェンスなど、つるを誘引して支えるための園芸資材が必要です。原産地はブラジルで、生育適温は15〜30℃。暑さには強い一方で寒さには弱く、耐寒温度は3℃まで。霜の降りる地域では、冬は鉢栽培にして暖かい場所で管理する必要があります。果実を収穫して楽しめるのはもちろん、花もユニークな咲き姿を見せてくれます。
パッションフルーツの名前の由来・花言葉
パッションフルーツの「パッション」は、「情熱」という意味ではなく、「キリストの受難」という意味です。中央に突き出る大きな雌しべと雄しべは、十字架にはりつけにされたキリストを、花弁は後光を表している、として名づけられたものです。また、クダモノトケイソウという別名もあり、こちらは花の形が時計に似ていることにちなんでいます。
パッションフルーツの花言葉は、「聖なる愛」「信じる心」など。いずれも花名の由来から派生したものです。
パッションフルーツの時期
パッションフルーツの収穫適期は、8月と12月です。
パッションフルーツは、以下のようなライフサイクルをたどります。4月頃から生育期に入り、つるや葉をぐんぐん伸ばします。開花は6月と10月頃で、収穫は8月と12月頃。常緑のまま越冬しますが、生育は止まります。ただし、冬も暖かい生育適温の場所では一年を通して成長を続けるようです。春になると再び旺盛に生育を始める……という繰り返しで、ライフサイクルの長い植物といえます。
パッションフルーツの種類
パッションフルーツには、在来系の紫系統と、キイロトケイソウの黄色系統、この2系統の交雑種があります。日本で栽培されているのは紫系統で、耐寒性が強く果実が小さい特徴があります。1本植えれば果実をつける自家結実性タイプと、授粉樹として他品種をもう1本植えないと実がつかないタイプがあるので、自家結実性タイプの品種を選ぶとよいでしょう。1本で結実する品種には、1果60gほどで緑のカーテンにも向く‘エドリス’、オレンジ色の果肉で果重60〜80gほどの‘サマークイーン’があります。
パッションフルーツは栄養もたっぷり!
パッションフルーツは、果肉にβカロテンを豊富に含んでいるのが大きな特徴。ほかにカリウム、葉酸、ビタミンB6、ピタミンCなども含んでいます。
おいしいパッションフルーツの選び方
せっかく家庭で栽培するのですから、完熟果を食べましょう。甘い香りを漂わせ、表面が茶褐色になってシワが見られるようになったら食べ頃です。収穫してすぐに食べずに、しばらくおいて追熟させると酸味がやわらぎます。
パッションフルーツの食べ方
パッションフルーツは、青果店やスーパーで年中見かけるほどポピュラーなフルーツではありませんね。ここでは、収穫したパッションフルーツの美味しい食べ方についてご紹介します。
そのまま生で
収穫したパッションフルーツを半分に切り、中の果肉を種ごとスプーンですくって食べます。フレッシュな味わいを楽しんでください。
ピューレにして
パッションフルーツの果肉をスプーンで取り出し、ザルなどで漉します。鍋に漉した果肉とグラニュー糖(分量はお好みで調整してください)を入れ、中火で煮詰めます。木ベラで混ぜながら煮込み、とろみがついたら完成。冷やしてから利用します。ヨーグルトやアイスクリームにトッピングすると絶品です。
ジュースにして
好きなフルーツと一緒にミキサーにかけてミックスジュースを作るのもおすすめ。ミキサーにかけるなら種子ごと入れてもOKです。パッションフルーツの香りや風味が加わって、そのまま飲んでも美味しいですし、さらにゼリーやシャーベットに加工してもよいでしょう。
パッションフルーツを保存するには
パッションフルーツの貯蔵適温は7〜10℃。常温なら収穫して5〜10日のうちに食してください。果実をポリ袋に入れて冷蔵庫で保存すれば、1カ月ほどは大丈夫です。
パッションフルーツを栽培するポイント
ここまで、パッションフルーツの基本情報や種類、食べ方などについてご紹介してきました。ここからは、ガーデニングの実践編として、育て方について詳しく解説していきます。
適した栽培環境
日当たり、風通しのよい場所を好みます。日照が足りないとヒョロヒョロと間のびしがちで葉色が冴えず、花つきが悪くなって果実もつきにくくなるので、一年を通して日当たりのよい場所に植えてください。
水はけのよい土壌を好むので、粘土質の場合は腐葉土や堆肥を多めにすき込んで土壌改良をしておきます。また、土を盛って周囲より高くし、水はけをよくしておくとよいでしょう。
暑さには強いのですが、寒さには弱く、温暖地に向く植物です。霜が降りる地域では、地植えにしている場合は鉢に植え替えて、暖かい場所で管理してください。
土作り
【地植え】
植え付けの2〜3週間前に、直径、深さともに50cm程度の穴を掘りましょう。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきます。粘土質や砂質、水はけの悪い土壌であれば、腐葉土や堆肥を多めに入れるとよいでしょう。こうしてしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
果樹用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。
苗の植え付け
パッションフルーツは、種まきから育てようとすると果実の収穫にたどり着くまでの生育期間が長いので、花苗店で苗を購入してスタートするのが一般的です。
苗の植え付け適期は4〜6月です。苗を購入する際は、節間が短くがっしりと締まって勢いがあるものを選びましょう。
【地植え】
土作りをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘って、浅めに植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。早めに支柱やフェンス、オベリスクなどを設置し、つるが巻きつくようにしておきます。
【鉢植え】
7〜8号鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから果樹用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗をポットから取り出して鉢に仮置きし、浅植えになるように高さを決めます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えます。また、鉢栽培用のオベリスクを設置し、つるを誘引しておきましょう。
一年を通して日当たり、風通しのよい場所に置いて管理しましょう。冬は凍結しない場所に移動して寒さ対策をしておきます。
生命力旺盛で成長とともに根詰まりしてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。
水やり
茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。果実が肥大する時期は、水切れしないように管理することがポイントです。真夏は気温が上がっている昼間に水やりすると、水がすぐにぬるま湯になって株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えましょう。反対に、真冬は気温が十分に上がった日中に行います。夕方に水やりすると凍結の原因になるので避けてください。
【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、真夏に晴天が続いて乾燥している場合は水やりをして補いましょう。
【鉢植え】
日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。冬は生育が止まり、表土も乾きにくくなるので控えめに与えるとよいでしょう。
肥料
【地植え・鉢植えともに】
4〜10月の生育期に、1カ月に1度の割合で緩効性肥料を土にばらまき、よくなじませます。
病害虫
【病気】
パッションフルーツがかかりやすい病気は、炭そ病、灰色かび病などです。
炭そ病は、カビが原因で発生する病気で、葉に褐色で円形の病斑が現れるのが特徴です。比較的気温が高く、雨の多い時期に発生しやすくなります。枝葉が込み合いすぎていたらすかし剪定をし、風通しよく管理しましょう。病気が広がる前に早期に発見して、適応する殺菌剤を散布して防除します。
灰色かび病は、花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができ、やがて灰色のカビが広がっていきます。多湿で風通しが悪く、込み合いすぎていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなります。受粉後の花弁や枯れ葉などをこまめに取り、茎葉が込み合いすぎている場合は間引いて、風通しよく管理しましょう。
【害虫】
パッションフルーツに発生しやすい害虫は、アブラムシ、ハダニなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついてしまうほどに。植物の茎葉について吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目にもよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。
ハダニは、乾燥が続くと発生しやすい小さな虫で、葉裏などについて吸汁します。大発生すると株が弱るので、葉の表や裏にシャワーを勢いよくかけましょう。小さな虫なので、水の勢いで押し流すことができます。
人工授粉・収穫
【人工授粉】
花が咲いたら、筆などで花粉と柱頭を軽くなでて人工授粉すると、実つきがよくなります。
【収穫】
開花から結実まで、2〜3カ月かかります。表面が色づいて、しわが入り始めたら完熟の合図。ヘタの上で切り取って収穫します。しばらく追熟させると、より美味しくいただけます。
整枝・剪定
生育期に茎葉が茂りすぎて日陰になったり、風通しが悪くなると、実りが悪くなってしまいます。込み合いすぎている部分があれば、適宜切り取って、枝葉や果実にまんべんなく日が当たるように整枝しましょう。
一通り収穫が終わった10月上旬頃に、古いつるや伸びすぎたつる、込み合っている部分のつるなどを剪定します。
冬越し
【地植え】
霜が降りる地域では、鉢に植え替えて日当たりがよく暖かい場所に移動して管理します。植え替えの方法は、苗の植え付けの項目の【鉢植え】を参照してください。
【鉢植え】
日当たりがよく暖かい場所に移動して管理します。
増やし方
パッションフルーツは、挿し木と種まきで増やすことができます。
【挿し木】
挿し木の適期は4〜9月です。まず、春に伸びた若くて勢いのある枝を2〜3節つけて切り取り、水を入れた器に挿して十分吸水させておきましょう。園芸用培養土を育苗用トレイなどに入れて、吸水させた枝葉を挿しておきます。水切れしないように管理し、発根したら黒ポットなどに植えて育成を。大きくなったら、植えたい場所に定植します。挿し木のメリットは、採取した株のクローンになることです。
【種まき】
発芽適温は25℃前後です。4〜5月が種まきの適期で、凍結しない場所で管理します。種まきをする前に、種子を一昼夜水に浸けておきましょう。
黒ポットに市販の園芸用培養土を入れ、十分水で湿らせておきます。種を3〜4粒播いて薄く覆土し、発芽までは明るい半日陰で乾燥させないように管理しましょう。発芽後は日当たりのよい暖かい場所に置き、本葉が2〜3枚ついたら間引いて1本のみ残し、育苗します。十分に成長したら花壇や鉢に植え付けましょう。
パッションフルーツを栽培しておいしく食べよう!
つる性植物のパッションフルーツは旺盛に茎葉を伸ばすので、夏に涼しさをもたらすグリーンカーテンとしても利用できます。エキゾチックな風情の花は観賞価値が高いことでも知られており、完熟した果実を味わえるのも家庭栽培ならではのメリット。ぜひ、パッションフルーツを庭に迎えてはいかがでしょうか。
参考文献/
『決定版 はじめてでも簡単 おいしい家庭果樹づくり』 著者/大森直樹 発行/講談社 2010年11月28日第1刷発行
『はなとやさい』2014年5月号/タキイ種苗
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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