グラウンドカバーで人気 ヒメツルソバの育て方と栽培の注意をご紹介します

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ヒメツルソバという草花をご存じでしょうか? 非常に生命力が強く、まめにメンテナンスをしなくても機嫌よく育ってくれる、手のかからない植物です。丸いポンポンのような淡いピンクの花が愛らしく、開花期間が長いのも魅力の一つ。這うように広がるので、グラウンドカバーとしても重宝しますよ! この記事では、ヒメツルソバについて、そのプロフィールや特徴、育て方など、幅広くご紹介していきます。
目次
ヒメツルソバとは

ヒメツルソバは、タデ科イヌタデ属(ペルシカリア属)の多年草です。ヒメツルソバのライフサイクルは次の通りです。3月下旬頃から生育期を迎え、茎葉をぐんぐん広げていきます。開花期は4〜11月ですが、夏に暑すぎる環境のもとでは花数が少なくなるようです。晩秋になると葉が赤く紅葉する姿を楽しめますよ! 冬に葉を残すこともありますが、寒さで地上部が枯れることが多く、生育が止まります。地上部が枯れても根は生きていて、越年してまた春が来ると再び新芽を出し始めるので、枯れたと思って捨てないようにしてください。
原産地はヒマラヤで、暑さ寒さに耐える丈夫な性質を持ち、暖地なら放任しても越年します。耐寒温度はマイナス5度くらいまでですが、土壌が凍結すると枯死することがあります。冷え込みが厳しい寒冷地では冬越し対策をするとよいでしょう。また乾燥に強いため、地植えで栽培するなら、よほどカラカラに乾燥しない限りは、水やりも不要です。生命力が旺盛で肥料もあまり好まず、病害虫の心配もなく放任してもよく育つ植物です。
このように丈夫でメリットの多いヒメツルソバですが、生態系被害防止外来種リストでは「その他の総合対策外来種」として指定されているため、栽培する際は庭から流出させないよう十分な注意が必要です。
ヒメツルソバの特徴

ヒメツルソバは地面を這うようにして伸びる性質を持っており、草丈は5〜10cmほどです。1つの茎(つる)を40〜50cmほど伸ばして勢力を広げているのが分かります。そのため、広い面を彩るグラウンドカバープランツとして利用するのがおすすめ。地面や石材やレンガ材などハードな資材を覆い隠して、みずみずしく見せたい場合にも重宝します。他の植物を寄せ付けないほど密に繁殖するので、雑草防止にも。非常に丈夫で、踏みつけて傷んでもすぐに回復するので、小道の脇に植えて動線まではみ出させても問題ありません。
ヒメツルソバの花色は愛らしいパステルピンク。直径1cmほどの小さな花で、ボンボンのような球体をしています。一つひとつの花は素朴な雰囲気ですが、花茎を立ち上げて多数の花を咲かせるので、開花期は見応えがあります。
ヒメツルソバの葉は、深いグリーンにV字形をした褐色の斑が入っており、カラーリーフプランツとしても活躍。なかには白い斑点が入る斑入り種もあります。晩秋になると真っ赤に紅葉する姿も魅力です。
ヒメツルソバの別名と花言葉

ヒメツルソバは、「ポリゴナム」「カピタツム」とも呼ばれています。これはヒメツルソバの旧学名Polygonum capitatumに由来。英名では「Smartweed」「Victory carpet」「Pink-head knotweed」などがあります。花言葉は、「愛らしい」「気が利く」「思いがけない出会い」など。
ヒメツルソバの育てる環境

日当たり、風通しのよい場所を選びます。半日陰でもよく育ちますが、暗い日陰には向いていません。水はけ、水もちのよい土壌を好むので、地植えする場合は植え付け前に有機質資材を投入してよく耕し、ふかふかの土づくりをしておくとよいでしょう。
夏の暑さに強いですが、暑すぎる時には花数が少なくなる傾向。寒さにも強いほうで、マイナス5℃まで耐えるため、暖地では地植えのまま越冬できます。霜に当たると地上部が枯れてしまいますが、翌年の春に生育期を迎えると再び新芽を出し始めるので、抜き取って捨てずに見守りましょう。マイナス5℃以下になる寒冷地では、鉢上げして日当たりのよい軒下などに移動するほうがよいでしょう。
丈夫でやせ地でもよく育ち、這うようにして広がる性質を生かし、ロックガーデンの隙間や隠したい資材の際、また雑草防止を目的に植えるのも一案です。
ヒメツルソバの育て方
ここまで、ヒメツルソバのプロフィールや特徴、花言葉などについてご案内してきました。ここからはガーデニングの実践編として、ヒメツルソバの育て方について解説していきます。花苗店やホームセンターなどで入手した苗の植え付けからスタートするのが一般的です。水やりや肥料、剪定などの日頃の管理、育てる上での注意点などを深掘りしていきます。
土作り

【地植え】
丈夫な性質で土壌を選びませんが、植え付ける1〜2週間前に腐葉土や堆肥などの有機質資材を投入し、よく耕してふかふかの土を作っておくとよいでしょう。このように事前に土作りをしておくことで、分解が進んで土が熟成します。
【鉢植え】
草花の栽培用に配合された園芸用培養土を利用すると便利です。
植え付け

植え付けの適期は3月中旬〜5月です。花苗店で苗を購入する際は、節間が短く茎ががっしりと締まって勢いのあるものを選びましょう。植え付けの適期以外でも、花苗店で購入できたら、すぐに植えたい場所に定植してください。
【地植え】
土作りをしておいた場所に、苗をポットから出して根鉢を崩さずに植え付けます。複数の苗を植え付ける場合は、40〜60cmの間隔を取りましょう。最後に、たっぷりと水やりします。
【鉢植え】
鉢は、購入した苗の2〜3回り大きなサイズのものを準備しましょう。這うようにして広がる性質を生かし、深めの鉢やハンギングバスケットを選ぶのもおすすめです。
用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。ヒメツルソバの苗を鉢に仮置きし、高さを決めます。苗をポットから出して根鉢を崩さずに植え付けましょう。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと水が流れ出すまで、十分に与えましょう。寄せ植えの素材として、大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。
水やり

株が蒸れるのを防ぐために株全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏は気温が上がっている昼間に水やりすると、水の温度が上がり株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。真冬は十分に気温の上がった昼間に与えてください。夕方に与えると凍結の原因になるので注意します。
【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、水切れしないように管理しましょう。根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から流れ出すまでたっぷりと与えましょう。成長期を迎えてぐんぐん茎葉を広げ、多数のつぼみが上がってくると、水を欲しがるようになります。気候や株の状態に適した水やりを心がけましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチすることが枯らさないポイントです。
特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。
肥料

【地植え】
やせ地でも旺盛に生育する性質を持っているので、植え付ける際にしっかり土作りをしておけば、追肥は不要です。肥料過多になると茎葉ばかりが茂って花がつかなくなることがあります。
【鉢植え】
旺盛に生育するので基本的には不要ですが、株姿を見て勢いがなかったり、葉や花の発色が悪かったりする場合は、液肥を与えてください。
病害虫対策
特に病害虫の心配はありません。放任しても丈夫に育ってくれます。
剪定(切り戻し)

生命力が旺盛なため、勢力を伸ばして茎葉が茂りすぎているようであれば、刈り込んで邪魔にならないようにします。どこで切ってもかまいません。
植え替え

【地植え】
冬にマイナス5℃以下にならない暖地であれば、植え替えの必要はありません。マイナス5℃以下になる寒冷地では、霜が降りる前に鉢に植え替えて、霜の当たらない軒下か明るい室内などで管理します。鉢に植え替える方法は、「植え付け」の項目を参照してください。
【鉢植え】
旺盛に生育し、植えっぱなしにしておくと根詰まりしてくるので、1〜2年に1度は植え替えます。適期は3月中旬〜5月です。基本的には「植え付け」の項目と同様に植え替えますが、鉢から出した際に根が回っていたら、根鉢をほぐして1/2から1/3くらいまで小さくするとよいでしょう。
夏越し・冬越し

【夏越し】
ヒメツルソバは夏の暑さに強い性質を持っていますが、酷暑時には花が咲かなくなる傾向にあります。だからといって取り立てて手をかける必要もなく、涼しくなれば再び開花し始めるので、この時期はカラーリーフプランツとして楽しむとよいでしょう。
【冬越し】
ヒメツルソバの耐寒温度はマイナス5℃ほどですが、霜に当たると地上部が枯れ込みます。地上部が枯れても春に生育期を迎えると再び芽吹くので心配ありませんが、冬もカラーリーフプランツとして活用したい場合は、鉢植えにして霜の当たらない軒下などで管理しましょう。マイナス5℃以下になる寒冷地では、地植えにしている場合は鉢に植え替え、明るい室内などに移動して管理します。
増やし方

【種まき】
花が咲いた後、そのままにしておくと細かい種をつけます。種を採取して保存袋に入れ、冷暗所で保存しておきましょう。種まきの適期は4月中旬頃です。種まき用のトレイに草花用の培養土を入れて種をばらまきし、薄く覆土したのち水やりをして日当たりのよい場所で管理。1週間ほどしたら発芽します。本葉が3枚ほどついたら黒ポットに培養土を入れて植え替えましょう。日当たりのよい場所で育苗し、本葉が7〜8枚ほどついたら、植えたい場所に定植します。
こぼれ種で増えるほど強健なので、それほどたくさんの苗数を必要としない場合は、こぼれ種から増えた苗を掘り上げて定植してもかまいません。
【挿し芽】
ヒメツルソバの挿し芽の適期は5〜6月か9〜10月です。若くて勢いのある新しい茎を選んで切り取ります。市販の園芸用の培養土をセルトレイなどに入れて、採取した茎を挿しておきます。直射日光の当たらない明るい場所で、水切れしないように管理を。発根したら黒ポットなどに植え替えて育成します。葉が7〜8枚ついたら、植えたい場所に定植しましょう。挿し芽で増やすメリットは、採取した株のクローンになることです。
【株分け】
越年して生育する多年草は、株分けをして増やすことができます。適期は4〜5月です。植え付けから数年経ち、大株に育って込み合っているようなら、掘り上げます。根が大きくなりすぎているようであれば、ほぐして整理し、数株に切り分けて植え直しましょう。
育てる上での注意点

ヒメツルソバの性質については、これまで繰り返し「生命力旺盛」「強健」などといった言葉を使ってきました。じつはヒメツルソバの丈夫な性質が、デメリットになることもあります。ヒメツルソバは「その他の総合対策外来種」に指定されており、栽培には規制はありませんが、栽培の際は外部に広がらないよう適切な管理が必要です。
また、生育旺盛なゆえに、繁茂しすぎて庭で育てている植物たちの調和を乱し、さらには他の植物の居場所を奪ってしまうこともあります。こぼれ種でも増えるので、「こんなところからも芽を出している!」と驚かされることもあるほど。勢力を広げすぎるようなら、まめに切り戻して草花同士の調和を保ち、生えてほしくないところから出てきた新芽は抜き取って処分しましょう。丈夫でメンテナンスのいらない反面、切り戻したり、抜き取ったりという手間はかかります。
グラウンドカバーに向いている!

ヒメツルソバは、繁殖力が強く茎葉を旺盛に伸ばして範囲を広げていくので、広い面を埋めたい時にグラウンドカバーとして重宝する植物です。雑草防止にもなりますよ! 小さな淡いピンクの花も愛らしく、長い期間にわたってたっぷりと咲いてくれるのも長所。繁茂しすぎる一面もありますが、根を浅く張る性質なので抜き取って調整しやすく、お手入れも簡単です。ただし、注意が必要な外来種なので、外部に流出させないようよく注意して栽培しましょう。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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