皆さんはカシワバアジサイという植物をご存じでしょうか? 一般的なアジサイとは異なる一風変わった花姿で、非常に綺麗なボリュームのある花を咲かせます。丈夫な性質の落葉樹で、ガーデニングの初心者にもおすすめの植物です。この記事では、カシワバアジサイの特徴から詳しい育て方までをご紹介します。
目次
カシワバアジサイとは
カシワバアジサイはアジサイ科アジサイ属の一種で、冬になると葉が落ちる落葉低木です。
アジサイ科は、16属190種がある双子葉植物のグループの一つで、その中にはアジサイ(ガクアジサイ、ヤマアジサイ)やノリウツギ、アメリカノリノキ(‘アナベル’)などが含まれます。
カシワバアジサイは白い装飾花で人気の「アナベル」と同じアメリカ原産のアジサイで、アメリカ南東部のルイジアナ州、テネシー州、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州、アラバマ州、フロリダ州に自生します。
自生している環境は、落葉樹林や渓谷、河川流域の崖などです。
その名の通り、深い切れ込みのあるカシワに似た葉が特徴で、綺麗な花を咲かせます。他のアジサイとは異なり、葉っぱの質感はごわごわとしてしっかりとしています。花もさることながら、秋の紅葉も美しい植物です。
花名の由来
カシワバアジサイの学名はHydrangea quercifoliaです。これはラテン語で「コナラ属のような葉のアジサイ」という意味です。
ヨーロッパではヨーロッパナラ(コモンオーク)がポピュラーですが、ナラとはいいながら、日本のコナラやミズナラよりも切れ込みの多い葉で、ちょうど柏餅に使うカシワの葉によく似ています。
そのため、日本では「カシワバアジサイ」という名前がつけられました。
アジサイ属を示す、属名の「Hydrangea」の語源は「hydro(=水)」 + 「angeion (=容器)」 という意味ですが、これは果実の形が水瓶に似ていることに由来するとされています。
カシワバアジサイの花言葉
カシワバアジサイの花言葉は「慈愛」「清純な心」「美」「魅力ある人」「元気な女性」など、よい印象の言葉が並んでいます。どれも花の姿に由来するとされ、女性に嬉しい花言葉が多いため、女性への贈り物におすすめの植物です。
どんな花を咲かせる?
カシワバアジサイの特徴である美しい花についてご紹介します。
カシワバアジサイの花は、丸いフォルムの普通のアジサイとは異なり、花房が円錐形になるのが一番の特徴です。円錐形にまとまった、白色の一重の装飾花を咲かせるタイプがもっともポピュラーです。
開花後、花がらを切らずにそのままにしておくと、花色が白からピンクや緑色へ変化していく様子を楽しむこともできます。
たくさんの花をつけた花房は、自重で枝ごとうつむくこともあります。
八重咲きの品種では、特に雨を含むとずっしりと重そうにたわむ様子を見せます。花がまっすぐ上へと伸びる姿も美しいですが、枝をたわませ、うつむく姿もまた優雅ですよ。
装飾花とは?
先ほどの説明の中に「装飾花」という言葉が出てきましたが、これはアジサイの仲間の特徴的な構造です。
よく目立つ、花のように見える白く綺麗な部分は「装飾花」と呼ばれる器官です。
花びらのように見えるのはがく片と呼ばれ、真ん中に小さな花弁を持ちますが、めしべが退化しており種子を作ることはできません。
装飾花は文字通り、花粉を運ぶ昆虫を誘引するために見た目だけが発達した器官です。
カシワバアジサイの花の本体は、花房の中心部に見える緑のつぼみのような点の部分で、これは「両性花」と呼ばれます。
とても小さい花ですが、がく、花弁(花びら)、めしべ、おしべを持っており種子を作ることができます。
カシワバアジサイの見頃は?
カシワバアジサイの花が咲くのは、日本のアジサイと同じ5~7月です。
咲き始めたときから段々と花の色を変えながら、長く綺麗な花姿を多もします。また、形を保ったまま茶色くなっていくという美しい枯れ姿も見せてくれます。
さらに、花だけではなく紅葉も楽しめるという特徴もあります。大きく綺麗な形の葉は晩秋になると深みのある赤に色づき、庭を彩ってくれます。
カシワバアジサイの育て方
ここまでカシワバアジサイの特徴についてご紹介しました。観賞ポイントが多い花木ですが、ここからは、その育て方について徹底解説します。
栽培環境
カシワバアジサイを育てる環境は、半日陰~日なたがよいでしょう。
日陰でも育ちますが、光量が足りないと花付きが悪くなったり、日光を求めて間のびして樹形が乱れることがあります。
光が必要な一方、夏は強い日差しで葉焼けを起こすことがあるので、午後は日陰になるような半日陰の場所で育てることをおすすめします。
鉢植え、または地植えのどちらでも栽培は可能です。しかし、大きくなる植物なので、できれば地植えで管理するほうがよいでしょう。
地植えにする場合は、乾燥しすぎるような場所は避けましょう。
土作り
カシワバアジサイをうまく育てるための土を作るには、保水性と排水性のバランスをとるのがコツです。
そのために使用する土は、腐葉土3、赤玉土(小粒)4、鹿沼土3といった配合がおすすめです。市販の花の土やアジサイ専用の土でもよいでしょう。
すでにある土を生かして地植えにする場合は、直径40cm、深さ30cm程度の植え穴を掘り、掘り上げた土の3割程度の腐葉土を混ぜ込みます。腐葉土の半分程度を牛ふん堆肥にしてもよいでしょう。
植え付けの時期
カシワバアジサイを植える時期は3~4月の葉が出る直前がベストです。秋であれば、9月下旬~10月中旬のまだ暖かさが残る頃がよいでしょう。
地植えにする場合は、あらかじめ腐葉土や堆肥を混ぜ込んで土壌改良してから植え付けます。
大きくなる植物なので地植えが適していますが、大きな鉢に植えて玄関などのシンボルフラワーにしても素敵ですよ。
生育旺盛なので、鉢植えにする場合は根詰まりしないよう、数年に1度、植え替え(新しい土を入れ古い根を取る作業)や鉢増し(一回り大きな鉢に植え替える)をしましょう。
水やり・肥料
カシワバアジサイは乾燥を嫌う植物で、乾燥させてしまうと途端に元気がなくなってしまいます。地植えの場合、水やりは特に必要なく自然の雨で十分です。真夏など土の乾きが早い時だけ、早朝や夕方など涼しい時間帯に水やりをします。
鉢植えの場合は、土の表面が乾いたらたっぷりと水をやります。カシワバアジサイは葉が大きいので蒸散量も多く、水切れを起こしやすい植物です。夏場の高温期などは特に乾燥に注意してください。冬は休眠期のため水やりは不要です。
肥料は、基本的には1~2月と6~8月に緩効性化成肥料を与えます。地植えの場合は、土が肥えていれば特に肥料を与えなくても毎年開花します。
カシワバアジサイの病害虫
カシワバアジサイがかかりやすい病気や害虫をご紹介します。
うどんこ病は、葉に白いカビが発生し、そのまま放っておくとうどん粉がついたようになって、どんどん広がってしまいます。対処法は、病気をできるだけ早く見つけ、白くなった葉を取り除き適応する薬剤を散布します。風通しが悪いと発生する確率が上がるため、適度に枝を剪定して風通しをよくしたり、鉢植えなら置き場を変えるなども有効です。
また害虫は、春から秋にかけて、葉にハダニやコナジラミがつくことがあります。葉が茶色くなり、ひどい時には落葉してしまうので、増えてしまう前に早めに薬剤を散布しましょう。
ハダニは乾燥しすぎていると発生しやすくなります。雨が少ない夏場などは、水やりのついでに葉の裏にも水をかけ、株全体を濡らすようにするとよいでしょう。
株が大きくなると株元にテッポウムシ(カミキリムシの幼虫)が見られることもあります(地面に木屑が落ちていたら幼虫が幹に侵入している可能性があります)。こちらも見つけたら早めに駆除します。
剪定
病気の予防にも大切な剪定についてご説明します。
カシワバアジサイの剪定をするタイミングは2回あります。それぞれの時期で剪定する理由が異なりますので、目的に応じて行いましょう。
まずは、形を整える剪定です。
カシワバアジサイは剪定せずに育てると、枝分かれせず幹が一本立ちになってしまいます。ですので、まだ株が大きくならないうちに低いところで剪定すると、芽の数が増えてこんもりとした株姿になります。
目安としては、地面から20〜30cmほどのところの芽の上で剪定します。芽は葉のつけ根にあるので、確認して剪定してみてください。
枝分かれさせるための剪定はいつ行ってもかまいませんが、秋〜冬に剪定すると、すでにできている花芽を切ってしまうことになるので注意してください。
次に、花が咲いた後に行う花後の剪定です。
カシワバアジサイは一般的なアジサイ同様、夏以降にできた花芽が翌年開花します。
ですので、剪定もアジサイと同じように、花が咲き終わったら行います。時期としては、7月いっぱいに行うのが目安です。
増やし方
カシワバアジサイは、挿し木で増やします。
挿し木を行う時期は6~7月です。枝が長さ8cm程度になるように切り、赤玉土か市販の挿し木・種まき用土に挿しておくと発根します。この時、用土に肥料を加えないのがポイントです。
挿した苗は日陰に置き、こまめに水を与えて乾燥しないように管理します。
発根には3週間から1カ月程度かかります。
植物活力剤の「メネデール」を100倍に希釈したものを与えて、発根をサポートするのもおすすめです。
頻繁に移動したり、常に風が当たっている場所だと発根しにくいので、挿し木をしたらあまりいじらず、強い風が通らない場所で管理しましょう。
カシワバアジサイの美しい姿を楽しもう!
この記事では、カシワバアジサイの特徴から育て方までを解説しました。
カシワバアジサイは美しい姿が魅力的な植物で、とても旺盛に育つため栽培初心者の方にもおすすめです。花が咲いたら庭で咲き姿を鑑賞するだけでなく、切り花にしたり、ドライフラワーやリース作りなどに活用することもできます。
ぜひ自分の手で育てて、その花姿を身近に楽しんでください!
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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