梅雨の季節を明るく彩ってくれるアジサイ。華やかな西洋アジサイが近年は多く見られますが、山野草に分類されるヤマアジサイ(山紫陽花)のことをご存じでしょうか。古くから日本に自生してきた野生種のアジサイで、楚々とした佇まいが魅力です。この記事では、そんなヤマアジサイの基本情報や特徴、詳しい育て方について取り上げます。

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ヤマアジサイとは?

ヤマアジサイ(山紫陽花)は、古くから日本の山野に自生してきた花木。気候に馴染みやすいために育てやすく、ビギナーにもおすすめです。ここでは、ヤマアジサイの自生地やライフサイクルなどの基本情報や木姿の特徴について、詳しく解説していきます。

ヤマアジサイの基本情報

ヤマアジサイ

和名、ヤマアジサイは、アジサイ科アジサイ属の落葉性花木です。樹高は1〜2mで、低木に分類されています。原産地は日本で、福島県以南の太平洋側。寒さにはやや弱く、温暖な気候を好みます。別の名前として、サワアジサイとも呼ばれ、山野の湿った林の中や沢沿いに自生してきた植物です。豪華な西洋アジサイとは異なり、野趣あふれる花姿に趣があります。

ヤマアジサイのライフサイクルは、次の通りです。春から生育し始めて新芽を旺盛に伸ばし、茎葉を大きく広げます。その後に花芽が上がってきて6〜7月に開花。10月頃には翌年に咲く花芽が付きます。晩秋には落葉しますが、枯れたのではなく休眠しているだけです。翌春には再び新芽を出して生育し始める…という繰り返しです。一度植え付ければ長い期間にわたって毎年の開花を楽しめる、コストパフォーマンスの高い植物です。

ヤマアジサイの特徴

ヤマアジサイ

ヤマアジサイは、枝の頂部に多数の小さな両性花を咲かせます。中央から咲き始めて徐々に外側まで咲き進み、花縁に萼片が発達した装飾花が数個つくのが特徴。ガクアジサイと同様の咲き方です。葉は西洋アジサイよりもやや小さくて細長く、厚みが薄く、野生味があって人気があります。

ヤマアジサイの花色は白、青、ピンク、赤、紫など。花姿は、一重咲きと、複数の花弁が重なる八重咲きがあります。昔から愛好家が多く、園芸品種も多数出回っているので、選ぶ楽しみも魅力の一つです。白に淡いブルーの絞りが入る‘日向絞り’、淡い青紫で八重咲きの‘奏音の星’、発色の美しい紅色が高く評価されている‘紅’、八重咲きで白地にベビーピンクの糸覆輪が入る‘羽衣の舞’などがあります。また、変種にアマチャ(甘茶)、アマギアマチャ(天城甘茶)、装飾花の萼片が重なり合うシチダンカ(七段花)、装飾花が紅色に染まるベニガク(紅額)などもあります。

ヤマアジサイの育て方は?

ここまで、ヤマアジサイの基本情報や特徴について解説してきました。ここからはガーデニングの実践編として、詳しい育て方について深掘りしていきます。苗木の植え付けからスタートし、水やりや肥料、注意したい病害虫など日頃の管理、年に1度はケアしておきたい剪定方法や、株の増やし方などについても詳しくご紹介しましょう。

ヤマアジサイの適した栽培環境

ヤマアジサイ

もともと半日陰で湿り気のある山野や沢沿いなどに自生してきた植物なので、年間を通して半日陰の環境を好みます。午前中のみ日が差し、午後からは直射日光が当たらなくなるような東側で、風通しのよい場所が好適。真夏は特に直射日光を当てないことが大切です。

ヤマアジサイの原産地は東北南部以南の太平洋側なので、寒さが苦手な傾向にあります。雪が降る地域では、積雪によって枝が折れないようにしてください。耐寒性が弱いので、寒冷地では冬は鉢に植え替えて、暖かい場所で冬越しさせるのが無難です。

ヤマアジサイの土作り

土

【地植え】

庭植えの場合、植え付けの2〜3週間前に、直径、深さともに50cm程度の穴を掘りましょう。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきます。肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。

【鉢植え】

硬質鹿沼土小粒3、軽石小粒3、赤玉土小粒2、腐葉土2の割合でブレンドした配合土がおすすめ。山野草用にブレンドされた培養土を利用すると手軽です。

ヤマアジサイの植え付け

ガーデニング

ヤマアジサイの植え付けの適期は、3月中旬〜4月上旬、または9月中旬〜10月中旬です。これ以外の時期でも、例えば花苗店で開花株を購入した場合、ポット苗の場合は早めに根鉢を崩さずに植木鉢に植え替えましょう。ギフト用の花鉢の場合は、一通り開花を楽しんだ後、適期に植え替えるとよいでしょう。

【地植え】

土作りをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘って植え付けます。しっかり根づくまでは支柱を立てて誘引し、倒伏を防ぐとよいでしょう。最後にたっぷりと水を与えます。

【鉢植え】

5〜6号の深鉢を準備します。

用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れます。元肥としてあらかじめ緩効性肥料を混ぜておいた培養土を半分くらいまで入れましょう。ヤマアジサイの苗木をポットから取り出して鉢に仮置きし、高さを決めます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内まで行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。しっかりと根づくまでは、支柱を立てて誘引しておきましょう。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えます。

一年を通して午前中のみ光が差す東側で、風通しのよい場所に置いて管理しましょう。冬は凍結しない場所に移動して寒さ対策をしておきます。

根の生育が旺盛で成長とともに根詰まりしてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替えた直後は、株が落ち着くまで明るい日陰・強風の吹きつけない場所で管理し、2週間ほどしたら元の場所に移動します。

ヤマアジサイの水やり

水やり

木の幹や枝葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。真夏は気温が上がっている昼間に水やりすると、水がすぐにぬるま湯になって株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。反対に、真冬は気温が十分に上がった日中に行います。夕方に水やりすると凍結の原因になるので避けてください。

【地植え】

植え付け後にしっかり根づいて茎葉がぐんぐん伸びるようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は、下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、真夏に晴天が続いて乾燥している場合は水やりをして補いましょう。

【鉢植え】

日頃から水やりを忘れずに管理します。ヤマアジサイは、根の生育が旺盛で盛んに水分を吸い上げます。葉が薄いこともあって乾燥に弱いので、鉢植えの場合は特に、水切れに注意してください。

土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がややだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチすることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。真夏に水切れすると葉焼けしやすくなり、落葉することもあります。そうなると花芽の形成にも影響し、翌年の花つきが悪くなります。さらに水切れの症状がひどい場合は枯れてしまうこともあるので気を付けましょう。

冬は落葉して生育が止まり、表土も乾きにくくなるので、控えめに与えるとよいでしょう。

ヤマアジサイに与える肥料 時期:2月下旬〜3月・5月

肥料

【地植え】

芽吹き始める前の2月下旬〜3月に緩効性化成肥料を施します。また、開花前の5月頃にも同様に追肥しましょう。

【鉢植え】

芽吹き始める前の2月下旬〜3月に緩効性化成肥料を施します。また、開花前の4〜5月頃と初秋の9〜10月に、株の状態を見て液体肥料を与え、樹勢を保ちましょう。

ヤマアジサイの剪定

剪定

翌年の花芽は10月頃に新梢の頂部にできます。この花芽を切ると翌年の花数が少なくなるので、剪定は8〜9月までに終えましょう。枝にある節を3〜5個残し、節の上2〜3cmのところでカットして切り戻し、樹高を小さくします。古くなっている枝があれば、元から切り取って新しい枝に更新するとよいでしょう。

ヤマアジサイの増やし方

ガーデニング

ヤマアジサイは、株分けか挿し木で増やすことができます。

【株分け】

株分けとは、大きく育った株を掘り上げて根を切り分け、数株に増やす方法です。ヤマアジサイの株分け適期は、3月中旬〜4月上旬、または9月中旬〜10月中旬。4〜5芽つけて根を切り分け、植え直しましょう。株分けは、大株に育った植物の老化を防いで若返らせる目的もあります。ヤマアジサイは根の生育が旺盛で根詰まりしやすいので、鉢植えで育てている場合は1〜2年ごとに株分けしてリフレッシュを図りましょう。

【挿し木】

挿し木とは、枝を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。たくましいですね! 植物の中には挿し木できないものもありますが、ヤマアジサイは容易に挿し木で増やせます。

ヤマアジサイの挿し木の適期は、5月中旬〜7月です。その年に伸びた新しい枝を2節以上つけて、切り口が斜めになるように切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を2〜3枚取り、残す葉は1/2~1/3ほど切り取ります。3号くらいの鉢を用意してゴロ土(鉢底石など)を入れ、新しい培養土を入れて水で十分に湿らせておきます。培養土に3カ所の植え穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。約20日ほどで発根するので、それまでは明るい日陰に置いて管理します。その後は親株と同じ場所で管理し、9月か3〜4月に庭か大鉢に植え替えましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。

ヤマアジサイの注意すべき病害虫

噴霧器

【病気】

ヤマアジサイの栽培で注意したい病気は、うどんこ病、炭そ病などです。

うどんこ病は、葉の表面に白い粉が吹いたようなカビが発生し、光合成を阻害されたり、葉から養分を吸収されたりして、生育が悪くなります。放任してひどくなると枯れてしまうこともあるので注意。病気の兆候が見られたら早期に殺菌剤などを散布して対処しましょう。茎葉が込みすぎている場合は適宜すかし剪定をして、風通しよく管理することも病気を回避するポイントです。

炭そ病は、カビが原因で発生する病気で、葉に褐色で円形の病斑が現れるのが特徴です。比較的気温が高く、雨の多い時期に発生しやすくなります。枝葉が込み合いすぎていたらすかし剪定をし、風通しよく管理しましょう。病気が広がる前に、早期に発見して適応する殺菌剤を散布して防除します。

【害虫】

ヤマアジサイの栽培で注意したい害虫は、アブラムシ、カイガラムシなどです。

アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が強く、茎葉について吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目も悪いので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒剤を利用するのがおすすめです。

カイガラムシは、ほとんどの庭木に発生しやすい害虫です。枝や幹などについて吸汁し、だんだんと木を弱らせていきます。硬い殻に覆われて薬剤の効果があまり期待できないので、ハブラシなどでこすり落として駆除するとよいでしょう。

控えめながらも存在感のあるヤマアジサイを上手に育てよう

ヤマアジサイ

野趣と清涼感あふれるヤマアジサイは、雨期を迎えて花数が少なくなる時期の庭を明るく彩ってくれる山野草です。半日陰の場所を好むので、やや日当たりの悪いシェードガーデンで活躍します。また、株が小型の種類もあるので小さな庭で栽培するのもおすすめです。品種の数が多く、花色や花姿も多様なので、数種類を植え込んで、庭に華やぎをもたらしてはいかがでしょうか。

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Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

参考文献
『NHK 趣味の園芸ガーデニング21 育ててみたい山野草 夏・秋』監修/久志博信(日本放送協会出版)

Photo/ 1) Flower_Garden 2) Bankiras 3) H.Tanaka 4) Edita Medeina 5) DedovStock 6) Jurga Jot 7) Afanasiev Andrii 8) New Africa 9) Andrii Zastrozhnov 10) Cautivante.co 11) Happy_Nati 12) Edita Medeina/Shutterstock.com

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