美しいドライフラワーが人気! スターチスの花の特徴・育て方とは?

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スターチスという植物をご存じでしょうか。花もちがよいのでフラワーアレンジで活躍し、ドライフラワーにしても褪色しにくいので、インテリアに長く飾って楽しめる花材としても人気の植物です。そんなスターチス、「買うもの」として認識していませんか? スターチスは一般家庭の庭やベランダでも育てることができ、ガーデニングの花材としても活躍しますよ! この記事では、そのスターチスについて基本情報や育て方について詳しくご紹介していきます。
目次
スターチスとは?

スターチスは、イソマツ科イソマツ属の植物です。世界中に150種以上があるとされ、一・二年草、多年草、半低木と、種類によってそのライフサイクルはさまざま。日本でスターチスとして広く普及しているのは、学名でいえばリモニウム・ツアヌツムです。原産地は地中海〜小アジアで、本来は多年草ですが、日本では開花後、夏の暑さに耐えられずに枯死してしまうので一年草として扱われています。しかし、寒冷地などでは、気候に馴染んで越年し、毎年開花することもあるようです。
スターチスは花色が豊富なのが特徴で、赤、ピンク、白、黄色、紫などがあります。華やかな花に見える部分は萼(がく)で、実際の花は萼の中に咲きます。一つひとつは小さい花ですが、まとまって咲くので見映えがよく、フラワーアレンジの添え役として人気があり、切り花店などでは一年中店頭に並んでいます。またドライフラワーにしても色が褪色しづらく、長く飾って楽しめるのも長所の一つです。スターチスの草丈は60〜80cmほどで、花壇では中段〜後段に向いています。
スターチスの花名の由来

スターチスの花の名前は、ギリシャ語の「statizo」が語源です。「止める」という意味があり、これは下痢の症状をやわらげる薬草として利用されてきたからとされています。和名は「花浜匙(はなはまさじ)」。海の近くに自生し、花姿が匙の形に似ていることから名付けられました。
また、スターチスの学名は、リモニウム・ツアヌツム(Limonium sinuatum)で、最近ではリモニウムという名前で流通することもあるようです。
スターチスの花言葉

スターチスの花言葉は、「変わらぬ心」「途絶えぬ記憶」「変わらない誓い」など。これは花もちがよく、ドライフラワーにしても褪色しないことに由来します。花色別の花言葉もあり、紫のスターチスは「しとやか」「上品」、黄色は「愛の喜び」「誠実」、ピンクは「永久不変」とされています。花色ごとに花言葉があることから、いかに人気の高い花であるかが分かります。花言葉に合わせて切り花を贈ってみてはいかがでしょうか。
スターチスの見頃

スターチスの開花期は、5〜7月。ライフサイクルは以下の通りです。
9月下旬〜10月にタネをトレイに播きます。本葉が2〜3枚展開したら、黒ポットに鉢上げして育苗。10〜11月に育った苗を庭やコンテナなど定植します。冬には生育が止まるのでそのまま越年させると、3〜4月頃から成長期に入って茎葉をどんどん伸ばし始めます。初夏の5〜7月には開花して見頃に。花が一通り終わった後は、日本の夏の暑さに耐えられずに枯死するので、引き抜いて処分します。ただし、寒冷地では夏を越して毎年開花することもあるようです。
ドライフラワーがおすすめ

スターチスの花に見える部分は、じつは萼だということを前述しましたが、触ってみるとカサカサとした質感で、ほとんど水分を含んでいないことがわかります。そのため、ドライフラワーに向いており、初心者でも簡単にドライにできるので、ぜひチャレンジしましょう!
花が咲いたら茎を長めにカットし、紐で縛って風通しのよい場所に花を下に、茎を上にして吊り下げます。2週間ほどしてカラカラに乾いたら出来上がり。フラワーベースやバスケットなどに飾って、インテリアに彩りを添えましょう。スターチスは特に花色が褪せにくいので、長く楽しめます。
スターチスの育て方
ここまで、スターチスのプロフィールや性質、種類、見頃、花言葉や利用の仕方などについてご紹介してきました。ここからはガーデニングの実践編として、スターチスの育て方についてじっくりと解説していきます。植え付けから始まり、水やりや肥料、花がら摘みなど日頃の管理、増やし方や気をつけたい病害虫まで、深く掘り下げていきますよ!
適した環境

スターチスは日当たりがよく、風通しのよい場所を好みます。日当たりが悪い場所では、花つきが悪くなったり、ヒョロヒョロとか弱い茎葉が茂って草姿が間のびしたりします。
寒さにはやや弱く、耐寒温度は4〜5℃ほど。暖地なら地植えして越冬できますが、霜が降りない場所または霜柱ができない場所で管理し、株元に寒さ対策としてマルチングを施しておきます。日当たりのよい室内の暖かい場所で越冬させるよりは、ある程度寒さにあわせたほうが丈夫な株になり、越年して春を迎えてからの生育が旺盛になります。寒さが厳しい地域では春まで待ってからタネを播くか、苗を植え付けるほうが無難です。スターチスは夏の高温多湿の気候には弱いので暖地では夏越しできず、夏前にライフサイクルを終えて枯死してしまうことが多く、原産地では多年草でも日本では一年草として扱われる傾向にあります。ただし、寒冷地では越年して毎年開花することもあるようです。また、種類によって耐暑性に差があります。
スターチスは、酸性に傾いた土壌を嫌う性質があるので、植え付け前に苦土石灰をまいて土壌改良しておくとよいでしょう。多湿に弱く、乾燥を好む傾向にあります。
土づくり

【庭植え】
植え付ける1〜2週間前に、酸性土壌を改善するために苦土石灰をまき、さらに腐葉土や堆肥などの有機質資材を植え場所に投入し、よく耕してふかふかの土をつくっておきましょう。土に土壌改良資材や肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
草花の栽培用に配合された園芸用培養土を利用すると便利です。
植え付け

秋に種まきして育苗した場合、植え付けの適期は温暖地で10〜11月頃です。フラワーショップで苗を購入してスタートする場合は、苗を入手したらすぐに植え付けます。
【庭植え】
土づくりをしておいた場所に、根を傷めないようにポットから苗を出し、植え付けます。複数の苗を植え付ける場合は、25〜30cmの間隔を取っておきましょう。植え付けた後に、たっぷりと水やりします。草丈が高くなる品種には支柱を立てておき、丈が伸びてきたら誘引して倒伏を防ぎましょう。
【鉢植え】
鉢の大きさは、6〜7号鉢を準備します。鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。スターチスの苗を鉢に仮置きして高さを決めてから、根を傷めないように苗をポットから出して植え付けます。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと水が流れ出すまで、十分に水を与えましょう。草丈が高くなる品種には支柱を立てておき、丈が伸びてきたら誘引して倒伏を防ぎましょう。寄せ植えの素材として、大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。
水やり

株が蒸れるのを防ぐために、茎葉株全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
【地植え】
根づいた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理しますが、多湿を嫌う性質なので、水の与えすぎに注意します。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。冬はあまり乾きにくいので控えめにし、気温の上がる昼頃に与えるようにします。
肥料

【庭植え】
あまり多肥を好まないため、植え付け時に十分な土作づくりをしていれば、追肥は不要です。逆に与えすぎると徒長して倒れやすくなり、病害虫も発生しやすくなります。
【鉢植え】
晩秋〜冬に植え付けた場合は、生育が盛んになる少し前の3月上旬頃に、緩効性化成肥料を施すとよいでしょう。春に植え付けた場合は、元肥を施してあれば十分です。ただし、生育が悪いようなら速効性のある液肥を与えて様子を見ましょう。
花がら摘み

終わった花があれば早めに花茎の元から切り取りましょう。株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながります。また、いつまでも終わった花を残しておくと、タネをつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして長く咲き続けてくれます。
病害虫

【病気】
スターチスに発生しやすい病気は、立ち枯れ病、灰色かび病です。
立ち枯れ病は土壌から感染しやすい病気です。根や地際の茎から発症しやすく、黄色く枯れ込んできて、放置すると茎葉全体が茶色く変色し、やがて立ち枯れてしまいます。多湿の環境で発生しやすい病気です。
灰色かび病は、花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。多湿で風通しが悪く、込み合いすぎていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなります。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合いすぎている場合は間引いて風通しよく管理しましょう。
【害虫】
スターチスに発生しやすい害虫は、アブラムシです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついてしまうほどに。植物の茎葉について吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目にも不愉快なので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
増やし方

スターチスは、種まきで増やすことができます。
スターチスの発芽適温は20℃前後です。種まきの適期は、温暖な地域では9月下旬〜10月頃。寒い地域では、4月頃にタネを播いて、7〜8月頃に開花させるとよいでしょう。
スターチスのタネは細かい毛に覆われており、そのまま播くと水を吸水しにくく、発芽率が落ちてしまいます。タネと砂を混ぜてよく揉み、毛を落とす処理をしてから播くとよいでしょう。市販のタネには、あらかじめ毛の除去処分をしてあるものもあります。
スターチスは種まき用のトレイを準備し、市販の草花用の培養土を入れてタネをばらまきます。2mm程度土をかぶせ、たっぷりと水やりをしましょう。発芽までは新聞紙などをかぶせておき、乾燥させないようにしておきます。発芽したら日当たり、風通しのよい場所に置き、多湿にならないように水の管理をしましょう。本葉が2〜3枚ついたら、トレイから抜いて鉢上げします。黒ポットに草花用の培養土を入れて、苗を周りの土ごと抜き取って植え付けましょう。根を傷めないように、丁寧に取り扱うことがポイントです。日当たりのよい場所に置き、多湿にならないように、表土が乾いたら水やりして育成します。1週間〜10日に1度を目安に、液肥を与えて生育を促しましょう。苗が充実したら、10〜11月頃に植えたい場所へ定植します。
美しいドライフラワーを作ろう!

この記事では、花色が豊富に揃うスターチスについて、その特性や魅力、種類などの基本情報や、庭での育て方などについて、つまびらかにご紹介してきました。一般家庭でも気軽に栽培できるので、ぜひガーデニングの素材として庭やベランダに美しい彩りを添えてはいかがでしょうか。花が咲いたら早めに摘み取って、切り花やドライフラワーにアレンジして、インテリアにも飾ってみてください。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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