カンパニュラ・メディウムという草花をご存じでしょうか。花茎を長く立ち上げて5〜6cmほどの壺形の花をたわわに咲かせる姿は庭の主役となる風格があり、ぜひ初夏のガーデンに取り入れたい草花の一つです。この記事では、そんなカンパニュラ・メディウムについて、その特性や魅力、育て方まで余すことなくご紹介していきます。
目次
カンパニュラ・メディウムについて知ろう
ベル形の花を鈴なりに咲かせるカンパニュラはダイナミックな存在間で、よく「一度は育ててみたい」といわれるガーデナーの憧れの草花。ここでは、カンパニュラ・メディウムの花姿や基本情報、品種などについてご紹介していきます。
カンパニュラ・メディウムってどんな花?
カンパニュラ・メディウムの開花期は、5〜7月です。花色は淡いピンク、白、紫など。草丈は50〜100cmになり、花穂を長く立ち上げて、5〜6cmほどのベル形の花を次から次に咲かせます。大変華やかな印象ながら茎葉は細くて繊細なイメージも併せ持ち、和にも洋にも合う花姿です。
基本情報
カンパニュラ・メディウムは、キキョウ科ホフルブクロ属の一年草または二年草です。原産地は南ヨーロッパで、寒さに強く高温多湿に弱い性質を持っています。そのため日本の酷暑を乗り切ることができず、夏前には枯死してしまいます。
草丈は50〜100cmになるため、支柱を立てて倒伏を防ぐとよいでしょう。花壇では中段〜後段がよく、草丈の低い草花と低木や中高木のつなぎ役にもなります。
カンパニュラ・メディウムの学名はCampanula mediumと表記。「カンパニュラ」はラテン語で「鐘」を意味しており、花姿から連想して名付けられたようです。日本には明治時代に伝えられ、風鈴草(フウリンソウ)または釣鐘草(ツリガネソウ)の名前で親しまれてきました。花言葉は、「感謝」「誠実」「節操」など。カンパニュラ・メディウムの花姿を教会の鐘に見立てて、教会での教えを連想させる言葉が与えられました。
カンパニュラ・メディウムの品種
カンパニュラ・メディウムは園芸品種も多く出回っています。二年草を一年草に改良し、タネを秋に播いたら翌年の春に咲く「メイ」シリーズが初心者にはおすすめ。花径3cmほどの小輪種が愛らしい「チャイム」シリーズや、花弁が二重になる‘カップアンドソーサー’、草丈が40〜50cmの矮性種でコンテナにも向く「タキオン」系などもあります。
カンパニュラ・メディウムの栽培環境
カンパニュラ・メディウムの栽培には、どんな環境が適しているのでしょうか? 暑さに強い? それとも寒さに強い? 日照条件や土壌条件は? 最初に性質を把握しておくと、庭のどこで育てればいいのかが見えてくるはずです。ここでは、適した栽培環境についてご紹介します。
適した栽培環境
カンパニュラ・メディウムは日当たりがよく、風通しのよい場所を好みます。日当たりが悪い場所では、花つきが悪くなったり、ヒョロヒョロとか弱い茎葉が茂って草姿が間のびしたりします。
涼しい気候を好み、日本の真夏の高温多湿の環境を大変苦手とするので、二年草を種まきから育苗する場合は、風通しがよく涼しい場所で管理しましょう。
一方で寒さには強く、戸外で越冬できます。低温にあわないと花がつかなくなるので、室内には入れないようにしましょう。寒さが厳しい地域では、株元をバークチップなどでマルチングし、防寒対策を。鉢栽培では日当たりのよい軒下など、凍らない屋外で管理します。
また、酸性に傾いた土壌を嫌う性質があるので、植え付け前に苦土石灰をまいて土壌改良しておくとよいでしょう。多湿に弱いので、地植えの場合は盛り土をするなど、水はけのよい土壌づくりが大切です。
用土
【地植え】
植え付ける1〜2週間前に、酸性土壌を改善するために苦土石灰をまき、さらに腐葉土や堆肥などの有機質資材を投入し、よく耕してふかふかの土を作っておきましょう。土壌改良資材や肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
草花の栽培用に配合された園芸用培養土を利用すると便利です。
カンパニュラ・メディウムの育て方
ここまで、カンパニュラ・メディウムの基本情報や種類、適した栽培環境などについて触れてきました。ここからはガーデニングの実践編として、育て方について詳しく解説していきます。ぜひ参考にしてください。
種まき・育苗
カンパニュラ・メディウムは、ビギナーでも種まきから育てられます。種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広く、たくさんの苗を植え付けたい場合は、コストカットにもなりますね。
1〜2株が手に入れば十分という方は、フラワーショップなどで花が咲き始めた頃の苗を入手して、手軽に植え付けからスタートするのがおすすめです。次項へ進んでください。
カンパニュラ・メディウムの発芽適温は20℃前後。種まきの適期は、二年草タイプは5〜6月頃で、一年草タイプは8月下旬〜9月中旬頃です。
種まき用のトレイを準備して市販の草花用の培養土を入れ、種が重ならないように均一にばらまきます。カンパニュラ・メディウムは「好光性種子」といって発芽に光が必要な性質なので、土をかぶせないことがポイントです。トレイよりも一回り大きな容器に水を浅く張り、種を播いたトレイを入れて下から吸水させましょう。発芽までは表土に新聞紙をかけて、雨の当たらない風通しのよい場所に置き、乾燥させないように管理。種まきから10日前後で発芽が揃います。
発芽したら、暑さが苦手なため風通しがよく涼しい半日陰の場所に置き、込み合っている部分があれば適宜間引いて間隔をあけます。その際は勢いのある苗を残し、ヒョロヒョロと徒長して弱々しい苗を引き抜くとよいでしょう。
本葉が出始めたら、トレイから抜いて鉢上げします。黒ポットまたはセルトレイに草花用の培養土を入れて、苗を周りの土ごと抜き取って植え付けましょう。根を傷めないように、丁寧に取り扱うことがポイントです。暑さが一段落して過ごしやすくなったら日当たりのよい場所に置き、多湿にならないように、表土が乾いたら水やりして育成します。7〜10日に1度を目安に、液肥を与えて生育を促しましょう。苗が充実したら、9月下旬〜10月中旬頃に植えたい場所へ定植します。
苗の植え付け
種まきして育苗した場合、二年草タイプ、一年草タイプともに植え付けの適期は温暖地で9月下旬〜10月中旬頃です。冬が来る前に定植する場所に植え付けてしっかり根が張るように育成し、寒さを乗り越えられるように株を充実させておきます。
フラワーショップで苗を購入してスタートする場合は、春から苗が出回り始めるので、入手次第植え付けます。購入の際は、節間が詰まってがっしりと締まった、勢いのある苗を選びましょう。
【地植え】
土作りをしておいた場所に、根を傷めないようにポットから苗を出し、深植えにならないように植え付けます。複数の苗を植え付ける場合は、20〜25cmの間隔を取っておきましょう。植え付けた後に、たっぷりと水やりします。草丈が高くなるので支柱を立てておき、丈が伸びてきたら誘引して倒伏を防ぎましょう。
【鉢植え】
鉢の大きさは、6号以上のものを準備します。底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。苗を鉢に仮置きして高さを決めてから、根を傷めないようにポットから出して植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。草丈が高くなるので、支柱を立てておき、伸びてきたら誘引して倒伏を防ぎましょう。寄せ植えの素材として、大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。
水やり
株が蒸れるのを防ぐために、茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
【地植え】
根づいた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理しますが、多湿を嫌う性質なので、水の与えすぎに注意します。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチすることが、枯らさないポイントです。冬は乾きにくいので水やりは控えめにし、気温の上がる昼頃に与えるようにします。
肥料
●元肥
苗を植え付ける際に施す肥料が、元肥です。元肥は苗の初期生育を助け、茎葉をしっかり茂らせることにつながります。
【地植え】
植え付ける前に腐葉土や堆肥などの有機質肥料を施しておきましょう。
【鉢植え】
鉢植えの場合、市販の培養土には肥料が含まれていることが多いので、元肥を施す必要があるかどうか確認し、必要な場合は緩効性化成肥料を与えます。
●追肥
植え付けた苗が順調に生育し、元肥の効き目が切れた頃に与えるのが追肥です。
【地植え】
秋に植え付けた場合は、生育が盛んになる少し前の3月上旬頃に、緩効性化成肥料を施すとよいでしょう。春に植え付けた場合は、元肥を施してあれば十分。あまり与えすぎると、茎葉ばかりが旺盛に茂り、かえって花つきが悪くなることもあるので注意します。ただし生育が悪いようなら、速効性のある液肥を与えて様子を見ましょう。
【鉢植え】
鉢栽培の場合は、水やりとともに肥料成分が流亡しやすいので、追肥をして株の勢いを保つようにします。春から生育が盛んになるので、3月頃に緩効性化成肥料を表土にばらまき、軽く土になじませます。開花期には、10日に1度を目安に速効性のある液肥を与えてて株の勢いを保ちましょう。開花促進の効果がある、リン酸やカリ分などを多く含んだ液肥を選ぶと花つきがよくなります。
花がら摘み
花が終わったら、早めに摘み取りましょう。株周りを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながります。また、いつまでも終わった花を残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなるので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして長く咲き続けてくれます。
病害虫
【病気】
カンパニュラ・メディウムに発生しやすい病気は、菌核病、灰色かび病などです。
菌核病は気温が低い時期に、多湿の状態になると発症しやすい傾向にあります。地際の部分に発生しやすいので、株に元気がない場合は注目してみてください。初期は小さな斑点が現れ、次第に大きくなって灰色の病斑になります。ひどくなると枯死し、周りの株にも病気を広めてしまうので注意。病株を発見したら、抜き取って処分し、周囲の草花に蔓延しないようにします。
灰色かび病は、花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。多湿で風通しが悪く、込み合っていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなります。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込みすぎている場合は間引いて風通しよく管理しましょう。
【害虫】
カンパニュラ・メディウムに発生しやすい害虫は、アブラムシ、ヨトウムシなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、茎葉について吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
ヨトウムシは蛾の幼虫で、夜に活動して葉を食い荒らします。食欲旺盛で、一晩のうちに丸裸にされてしまうことも。葉の裏に卵が産み付けられるので、孵化直後の幼齢のうちに退治するのがポイントです。または、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するタイプの殺虫粒剤を利用してもよいでしょう。
楽しくカンパニュラ・メディウムを育てよう!
この記事では、カンパニュラ・メディウムの基本情報や品種、育て方まで、多岐にわたってご紹介してきました。花茎をすらりと伸ばして、ベル形の花を横向きにびっしりとつける咲き姿は艶やかで、育てる喜びを与えてくれます。初心者でも気軽に育てられるので、ぜひガーデンに迎えてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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