私たちにとって最も身近な食材の一つ、ナス。家庭での栽培も簡単で、庭の一角またはベランダの鉢栽培でも育てることができます。夏野菜の代表ともいえるナスの栽培の適期はゴールデンウィーク頃から。この夏、自身で育てた美味しいナスを味わってみませんか? この記事では、ナスの基本情報から種類、育て方まで詳しく解説していきます。

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ナスの特徴

ナスの花
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ナスは、ナス科ナス属の果菜類です。原産地はインドと推定されており、発芽適温や生育適温は20〜30℃。蒸し暑い日本の夏の気候を好む性質をもっており、育てやすい野菜の一つです。一般家庭で栽培するなら、十分に気温が上がった頃のゴールデンウィーク頃に苗を購入して植え付けます。すると6月頃から開花が始まり、7月頃から収穫が可能に。最も暑くなる7月下旬〜8月上旬に切り戻して休ませると、涼しくなる頃から再び株が勢いを取り戻して、秋ナスの収穫ができます。寒くなると枯死するので、一通り収穫を終えたら早めに掘り上げて処分する、というライフサイクルをたどります。連作を嫌う性質があるので、一度植えた場所では、4〜5年はナス科の植物を栽培しないようにしましょう。

ナスの栄養素について

なす料理
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ナスは汁物、煮浸し、揚げ物、炒め物など調理の幅が広く、日本の食卓には欠かせない存在ですね。ナスは水分が約94%で糖質約3%、食物繊維約1%を含み、100g当たりのカロリーは22キロカロリー。カリウム、β-カロテンなどを含むほか、ナスの果皮の黒みを帯びた紫色は、アントシアニンの一種のナスニンと呼ばれる色素によるもので、強い抗酸化作用があるとされています。

ナスの品種

ナスの種類
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ナスは、日本には奈良時代に中国からもたらされ、古くから栽培されてきただけに地方品種が多様で、170種にも及ぶとされています。形でいえば長卵形が最もポピュラーですが、長ナス、丸ナス、小ナスなどもあります。色でいえばナス紺色がよく知られていますが、真っ白な白ナス、黄緑色の青ナスがあるほか、外国産では黄色やマダラ模様が入るものも。ほかに水分を豊富に含んで、握ると汁が滴る水ナスもよく知られていますね。ここでは、数あるナスの種類の中でも、よく流通している品種についてご紹介します。

長卵品種

【千両二号】
ツヤツヤとした濃黒紫色が美しい、定番人気の品種。果実の揃いがよく、果皮が柔らかくて調理しやすいのも特徴です。

【とげなし千両二号】
植物全体にトゲがなく、メンテナンスや収穫時はもちろん、調理の際にも扱いやすいのが特長。果実の揃いもよく、果皮が柔らかです。

【竜馬】
やや小さめの実がつく超極早生種で、着果に優れる性質があります。草丈がコンパクトにまとまるので、管理がしやすいのも美点。

長ナス品種

【築陽】
従来の長ナスよりも肉質がきめ細かく、やや太め。品質に優れ、奇形果の発生が少ないのも特長。草勢旺盛で、生育期後半までスタミナを保ちます。

【黒陽】
生育初期からたくさん収穫できる性質の長ナス。やや太めの果実で重量感があります。果揃いがよくて、品質がよい人気の品種です。

【長者】
極早生の品種で分枝が早く、旺盛に茂って早いうちから収穫できます。ツヤツヤとした濃い黒紫色で、実つきがよくたくさんの収穫を楽しめます。

【長岡長】
長さは20cmほどで、ヘタの部分が小さく色ツヤがいい実姿をしています。耐暑性が強く、草勢旺盛でたくさんの収穫が可能です。果皮と果肉が柔らか。

その他の品種

【早生大丸】
皮が柔らかく、ふっくらとした実姿の丸ナス。肉質が緻密でよくしまり、食感がいい品種です。田楽や煮ナスなどにおすすめ。

【くろわし】
短めの長卵形の米ナスで、緻密な肉質。収穫適期は350gほどで、ずっしり感があります。少々とり遅れても肉質が低下しづらいのも長所。

【庄屋大長】
果実の長さは35〜40cmにもなる大長ナス。果肉は特に柔らかく、極上の品質です。焼きナスにするのがおすすめ。耐暑性があり、作りやすいナスです。

【緑美】
果実の色が黄緑色で、果実の長さは30cmほどまでに達します。果肉が柔らかく、甘みも感じられ、焼きナスや天ぷらにすると美味しくいただけます。

【下町美人】
果実の色が白で、ヘタの部分は明るい緑色で目を引く大長ナス。果実の長さは26〜27cmになり、曲がらないストレートな実姿をしています。

育て方

ここまで、ナスのプロフィールから基本情報、含まれる栄養素、種類などについてご紹介してきました。では、ここからは実践編として、菜園で育てる方法をご紹介していきます。ベランダやテラスでも栽培できるように、鉢栽培の方法も明記しました。ナスを種まきするには、加温して管理する必要があるので、一般家庭では苗の植え付けからスタートします。植え付け方法や水やり、追肥などの日々の管理、仕立て方や病害虫対策など、細かく解説していきますよ!

土づくり

土づくり
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【菜園】

日当たり、風通しのよい場所を選びましょう。また、同じ科の野菜を続けて同じ場所で育てると、連作障害が出て生育が悪くなるので、4〜5年はナス科の植物を栽培していない場所にします。

植え付けの2〜3週間以上前、植え付ける場所に苦土石灰を1㎡当たり約150g散布し、よく耕して土に混ぜ込んでおきます。

さらに植え付けの1〜2週間前に、元肥を施します。畝幅を約60cm取り、その中央に深さ20〜30cmほどの溝を掘り、1㎡当たり堆肥約2㎏、緩効性化成肥料(N-P-K=8-8-8)100gを均一になるように散布し、溝を埋め戻しましょう。高さ10cm程度の畝を作り、黒のマルチフィルムを畝全体にピンと張り、周囲の土を盛って風で飛ばされないように固定しておきます。黒マルチを張ることにより、地温が上がる効果があり、また雑草の予防にもなります。畝の長さは、場所や植え付ける株数によって調整してください。

土づくりは植え付け直前ではなく、数週間前に行っておくことで、分解が進んで土が熟成します。

【鉢植え】

野菜用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると便利です。

苗の植え付け

ナス栽培
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夏野菜のナスは寒さが苦手なので、遅霜の心配がなくなるゴールデンウィーク頃が植え付けの適期です。苗は、ホームセンターや花苗店で購入します。茎が太くて節間が詰まってがっしりとした勢いのある苗を選びましょう。家庭で栽培するなら、ちょっとお高くなりますが、病気の出にくい接木苗を選ぶと、成功体験を得やすくなりますよ! ちなみに、収穫量の目標は1株当たり約15〜20個です。「たくさんの苗を植え付けたために家族で食べきれない」という困った事態を防ぐためにも、どれくらいの苗数を購入すればよいかの目安にしてください。

【菜園】

黒のマルチフィルムに60cm間隔で穴をあけ、さらに苗を植える穴を掘ります。その穴にジョウロで十分に水を注ぎましょう。水が引いたら、苗をポットから取り出し、根鉢を崩さずに植え付けます。苗が幼いうちは、仮支柱として竹ひごなどの細い棒を苗から10cmほど離した場所にさして、麻ヒモなどで8の字がけにして茎を誘引し、ぐらつかないようにしておきましょう。

【鉢植え】

ナスの苗を購入する際はほんの小さい状態なので、それに合わせて小さな鉢を選んでしまいがちなのが、ビギナーが陥りやすい失敗ポイントです。ナスは、成長して実をつける頃になると、人の背丈ほどに大きくなります。ですから、10号以上の大鉢に1株を目安にしてください。

底穴に鉢底網を敷き、底が見えなくなるくらいまで鉢底石を入れます。野菜用にブレンドされた培養土10ℓ当たり、苦土石灰10g、緩効性化成肥料(N-P-K=8-8-8)大さじ2ほどを混ぜ込んで、鉢に半分ほど入れましょう。ナスの苗を鉢に仮置きし、高さを決めます。苗をポットから出して根鉢を崩さずに植え付けましょう。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取ります。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと水が流れ出すまで、十分に水を与えましょう。

苗が幼いうちは、仮支柱として竹ひごなどの細い棒を苗から10cmほど離した場所にさして、麻ヒモなどで8の字がけにして茎を誘引し、ぐらつかないようにしておきます。

水やり

水やり
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【菜園】

根づいた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、真夏の収穫期を迎えた頃に水分不足になると、生育不良の原因になるので、晴天が続いて乾燥が続く場合は水やりをして補いましょう。真夏は昼間に水やりすると水の温度が上がってすぐお湯になってしまうので、朝か夕の涼しい時間帯に与えることが大切です。

【鉢植え】

日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。真夏は気温が上がっている昼間に水やりすると、水がすぐにぬるま湯になって株が弱ってしまうので、朝夕の涼しい時間帯に行うことが大切です。

支柱の設置と誘引

ナス栽培
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【菜園・鉢栽培ともに】

草丈が30〜40cmになったら、仮支柱を抜き取り、本支柱を設置します。園芸用の太い支柱を茎の近くに、地中深く30〜40cmほどまで差し込みましょう。主枝を麻ひもで8の字結びにして誘引し、草丈が高くなるほどに同じ作業を繰り返します。ナスはたわわに実をつけるため、支柱でしっかり支えてあげなければその重みに耐えきれずに倒れてしまうので、支柱の設置と枝の誘引は欠かせさない作業です。

わき芽かき

【菜園・鉢植えともに】

支柱の設置とともに、わき芽かきを行いましょう。主枝につく葉の付け根から新たに出る芽を、わき芽といいます。ナスの一番花が咲いたら、そのすぐ下の葉と、その下の葉から出るわき芽2本を残し、主枝とわき芽2本の計3本仕立てにします。したがって、それよりも下の葉から出ているわき芽はすべてかき取ります。

追肥

肥料
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【菜園】

収穫し始める頃から、2週間に1度を目安に追肥を繰り返し、株の勢いを保ちます。黒のマルチフィルムの裾をめくり、1㎡当たり緩効性化成肥料(N-P-K=8-8-8)を約30gほどまいて軽く耕して土に混ぜ込み、畝側に土を寄せておきます。株元に与えずに畝の周囲に施すのは、この頃になると地中に新しく伸びているナスの根の先端は畝の周囲あたりまで達しているからです。ナスは次々と実をつけるため肥料を好みます。花のサイズが小さくなったり、葉色が悪く全体に勢いがなくなっていたりしたら、肥料が不足しているサインです。

【鉢栽培】

10日に1度を目安に、野菜用の液体肥料を施して、株の勢いを保ちます。

収穫

ナスの収穫
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【菜園・鉢栽培ともに】

中長品種で、10〜15cmほどに育ったら、ヘタの部分で切り取って収穫します。あまり長く置いておくと種が入ってかたくなり、株も消耗するので適期を逃さずにまめに収穫していきましょう。

秋ナス収穫のための更新剪定

剪定
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【菜園・鉢栽培ともに】

秋ナスを収穫したい場合は、株を少し休ませてあげましょう。7月末〜8月上旬頃になると、一通り収穫を終えてナスもちょっと間のびした状態になっているはずです。この時期に、3本仕立てにした各枝を、全体の2/3~1/2の長さまで切り取ります。

菜園では、同時に黒のマルチフィルムをはがして、株から30cmほど離れたところにスコップの刃を差し込んで根切りし、1㎡当たり緩効性化成肥料(N-P-K=8-8-8)を約30gほどまいて軽く耕して土に混ぜ込み、畝側に土を寄せておきます。

鉢栽培の場合は、液肥の追肥を続けます。

これらの作業をすることで、疲れた株が再び盛り返して新しい枝や根を伸ばし、秋に再びの実りをもたらしてくれます。

病害虫

アブラムシ
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【病気】

ナスの栽培で注意したい病気はうどんこ病です。

多湿で風通しが悪い環境で発生しやすくなります。葉の表面が白く粉を吹いたような状態になり、放任するとどんどん広がるので注意。対処せずにそのままにしておくと光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。発症したら病気の葉を摘み取って処分し、適用する殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。

【害虫】

ナスの栽培で注意したい病害虫は、アブラムシ、ハダニなどです。

アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついてしまうほどに。植物の茎葉について吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目にも不愉快なので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。

ハダニは、乾燥が続くと発生しやすい小さな虫で、葉裏などについて吸汁します。大発生すると株が弱るので、葉の表や裏にシャワーを勢いよくかけましょう。小さな虫なので、水の勢いで押し流すことができます。

ナスの栽培を楽しもう!

ナス栽培
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この記事では夏野菜の定番、ナスの基本情報や種類、含まれる栄養など、詳しく解説してきました。特に育て方については、菜園や貸し農園などなくても、庭の片隅での栽培やベランダやテラスでのコンテナ栽培など、一般家庭でもスタートしやすい方法を網羅しています。この夏のナスの収穫を夢見て、ぜひ苗の植え付けから始めてみませんか?

Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

参考文献/
『やさしい家庭菜園』 監修者/藤田智、加藤義松 発行/家の光協会 2006年3月1日第1刷
『別冊やさい畑 野菜づくり名人 虎の巻』発行/家の光協会 2009年2月1日発行
『はじめての野菜づくり コンテナ菜園を楽しもう』著者/藤田智 発行/日本放送出版協会 2007年5月25日発行
『わが家の片隅でおいしい野菜をつくる』監修/藤田智 発行/日本放送出版協会 2008年2月10日第5刷発行

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