最近、ガーデニングで大人気の樹木といえば、ジューンベリー。春に白い花が満開になる姿は見応えがあり、6月になると真っ赤な実をたわわにつけます。この実、摘み取ってそのまま食べても甘くて美味しいんです! この記事では、そんなジューンベリーの基本情報や育て方などについて、詳しくご紹介します。
目次
ジューンベリーの特徴について
ジューンベリーは持て余すほどに大きくはならず、ほどよいサイズのシンボルツリーとしておすすめの樹木です。和風、洋風、どちらの庭にも馴染みやすい樹姿をしています。春には白い花が満開になり、初夏には赤い実をたわわにつけ、秋が深まると紅葉し、季節の移ろいを感じられる落葉樹です。ここでは、ジューンベリーの特性や品種などについて解説していきます。
ジューンベリーの樹姿と特徴
ジューンベリーの原産地は北アメリカで、バラ科ザイフリボク属の落葉中高木です。近年、家庭果樹として大変人気が高まっています。春の芽吹きの頃に白い5弁花が咲き、一つ一つの花は小さいのですが、花つきがいいので満開時にはとても見応えがあります。ジューンベリーの名の通り、果実が熟すのは6月頃。小さな赤い実がたわわにつき、庭に彩りをもたらしてくれます。完熟の目安は、赤い実が黒みがかって触れると落ちる頃で、甘みがあって生食してもおいしくいただけます。野鳥が大好きな実なので、庭に鳥を呼びたいならぜひ植えてみてください。夏には緑陰をもたらし、秋には紅葉するので、一年を通して楽しめる庭木です。
ジューンベリーの主な品種
ジューンベリーの代表的な系統はカナデンシスで、最も多く流通しています。ジューンベリーは種間交雑や品種改良が盛んで、分類が難しくなっている樹種です。そんな中で、おすすめの品種は、他品種に比べて大きな実が魅力の‘バレリーナ’、咲き始めはごく淡いピンクでやがて白花になる‘ロビンヒル’、株立ちの樹形に向く‘ラマルキー’などです。
ジューンベリーはシンボルツリーにおすすめ
ジューンベリーは、シンボルツリーにとしてもほどよい樹高で、十分な存在感があります。自然樹高は5mほどとやや高めですが、毎年の剪定によって3mほどに抑えることが可能です。新緑、開花、結実、紅葉と、季節が巡るにつれ表情を変えていくので、大きく育ててシンボルツリーとして楽しむのにおすすめ。特に、6月に誕生日が来る家族がいれば記念樹としてうってつけ。ジューンベリーから毎年実りのプレゼントがありますよ!
ジューンベリーはジャムや果実酒におすすめ
ジューンベリーの果実は生食できるほか、加工して楽しむのにもおすすめです。
【ジューンベリージャム】
ジューンベリーの実を収穫したら、よく洗って軽く水気を切ります。砂糖は、収穫した量の30%を目安に、好みの甘さに調節するとよいでしょう。鍋に果実と砂糖を入れ、中火にかけます。煮立ってきたらレモン汁を加えて弱火にし、好みのとろみ感に調節します。出来上がったら、煮沸消毒しておいた保存瓶に入れて冷蔵庫で保存。ヨーグルトやアイスクリーム、パンケーキなどに添えておいしくいただけます。
【果実酒】
収穫したジューンベリー600gに対し、氷砂糖100g、ホワイトリカー1,000mlを準備します。果実はよく水洗いして、しっかり水気を拭き取ります。煮沸消毒、またはアルコール消毒しておいた保存容器に、材料を全て入れて保存。2カ月ほど経ったら、中の実を取り出します。3カ月ほど経ったら飲み頃です。
ジューンベリーの実がなる時期
ジューンベリーは、5月頃から実をつけ始めます。最初は真っ赤な色ですが、6月頃になると熟してやや黒ずんできます。触れてぽろっと実がはずれたら食べ頃です。鳥も大好きな実で、目ざとく集まって食べ尽くしてしまいます。収穫を目的にしたい場合は、熟した順にまめに収穫するか、防鳥ネットを張るなど、対策を講じるとよいでしょう。
ジューンベリーの育て方
ここまで、ジューンベリーの特性や品種、庭での取り入れ方、果実の利用の仕方などについて、ご紹介してきました。ではここからは、ガーデニングの実践編として、ジューンベリーの育て方について掘り下げていきましょう。苗木の植え付けから始まり、水やりや肥料、剪定などの管理の仕方、注意したい害虫などについて、ビギナーにも分かりやすく解説していきます。
栽培環境
地植えに向いていますが、鉢で栽培することも可能です。日当たりのよい場所を好みますが、半日陰でも生育します。水はけ、水持ちがよい土壌を好み、極端に乾燥しやすい環境は苦手な傾向。寒さや暑さに強く、暖地では戸外で越冬できます。
植え付け
ジューンベリーの植え付け適期は、落葉したのちの休眠期にあたる12〜3月です。
【地植え】
日当たりと風通しがよい場所を選びます。また、水はけ、水もちがよく腐植質に富んだ肥沃な土壌を好みます。
植え付けの2〜3週間前に、直径、深さともに50cm程度の穴を掘りましょう。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきます。粘土質や砂質、水はけの悪い土壌であれば、腐葉土や堆肥を多めに入れるとよいでしょう。肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
土作りをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘って植え付けます。しっかりと根づくまでは、支柱を立てて誘引し、倒伏を防ぐとよいでしょう。最後にたっぷりと水を与えます。
【鉢植え】
樹木用にブレンドされた培養土を利用すると手軽です。赤玉土(小粒)7、腐葉土3の割合でよく混ぜ、配合土をつくってもよいでしょう。
鉢の大きさは、8〜10号鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから樹木用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗木をポットから取り出して鉢に仮置きし、高さを決めます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。しっかりと根づくまでは、支柱を立てて誘引しておくとよいでしょう。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えます。一年を通して日当たり、風通しのよい場所に置いて管理しましょう。
鉢植えで楽しむ場合は、成長とともに根詰まりしてくるので、2〜3年に1度は植え替えることが大切です。
水やり
【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、真夏に雨が降らず乾燥が続く場合は水やりをして補いましょう。真夏は昼間に水やりすると水の温度が上がり、株が弱ってしますので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。
【鉢植え】
日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチすることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。真夏は気温が上がっている昼間に水やりすると、水の温度が上がり、株が弱ってしまうので、朝夕の涼しい時間帯に行うことが大切です。冬は休眠し、表土も乾きにくくなるので控えめに与えるとよいでしょう。与える際は、気温が十分に上がった日中に行います。
肥料
地植え、鉢植えともに2月頃に緩効性肥料を与え、土によくなじませましょう。生育期を迎える前に肥料を与えることで、新芽を出すエネルギーとなり旺盛に枝葉を広げることにつながります。
肥料はそれほど欲しがるタイプではありませんが、鉢植えの場合は水やりとともに肥料成分が流亡しやすいので、株に勢いがないようであれば、緩効性肥料を追肥するとよいでしょう。
剪定
ジューンベリーの剪定適期は、休眠中の12〜2月です。
【主幹仕立て】
購入した苗木が1本の主幹のみが出ているタイプは、卵形の樹形に仕立てます。ジューンベリーは、比較的自然に樹形が整うので、剪定はしやすいほうです。枝が込み合いすぎると光が奥まで通らず花や実がつきにくくなるので、すかし剪定を基本にします。木の内側に向かって伸びている「逆さ枝」、垂直に立ち上がっている「立ち枝」、勢いよく伸びすぎている「徒長枝」も元から切り取ります。地際から立ち上がっている「ひこばえ」が発生しやすい傾向にあるので、これらは元から切り取りましょう。
【株立ち仕立て】
地際から数本の細い幹を立ち上げるように仕立てられた樹形を「株立ち」といいます。株立ちの樹形は細い幹姿が魅力なので、この樹形を保つ剪定が必要です。地際から出ている幹の数は、5本くらいを目安にします。2〜3年実をつけた幹は枝の部分が込み合ってくるので、枝元の分岐点から切り取りましょう。新しく元から出てくる若い枝に更新します。
また、数年経った幹のうち、上部で込み合っている部分があれば、枝を何本か切り取るすかし剪定をして、内側まで光が差し込むようにしましょう。
病気や害虫など注意点
【病気】
ほとんど病気の発生はなく、心配の必要はありません。
【害虫】
ジューンベリーにつきやすい虫は、アブラムシ、テッポウムシなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせてしまいます。見た目にも悪いので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒剤を利用する方法もあります。しかし、果実の収穫を楽しみたい場合は、薬剤の散布は控えましょう。
テッポウムシは、ゴマダラカミキリの幼虫です。成虫が幹などに産卵し、幼虫は1〜2年にわたって木の内部を食害するので、徐々に樹勢が弱り、枯死することも。木の周囲にオガクズが落ちていたら、内部にテッポウムシがいることが疑われます。発見次第、侵入したと見られる穴に薬剤を注入して駆除しましょう。薬剤を使用する場合は、実の収穫をあきらめて翌年に期待しましょう。
【鳥害】
ジューンベリーの実は、野鳥も大好きなんです! バードウォッチングが目的でジューンベリーを植栽し、鳥が食べにやって来る姿を楽しみにしている方には「鳥害」なんてどうでもいいかもしれません。しかし、毎年果実の収穫を楽しみたい方にとっては、やっかいな競争相手になることに間違いありません。そんな方には、園芸店で取り扱っている「防鳥ネット」をおすすめします。収穫シーズンに入ったら、目の細かいネットを木全体にふわっとかけて、物理的についばめない状態にしておくとよいでしょう。
増やし方
ジューンベリーは、挿し木と種まきで増やすことができます。
【挿し木】
挿し木の適期は6月下旬〜7月頃です。春に伸びた若くて勢いのある枝を選んで切り取ります。市販の園芸用の培養土を育苗用トレイなどに入れて、採取した枝葉を挿しておきます。直射日光の当たらない明るい場所で、水切れしないように管理を。発根したら黒ポットなどに植え替えて育成します。大きく育ったら、植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、採取した株のクローンになることです。
【種まき】
種まきの適期は6月下旬〜7月頃です。果実を採取したら、中からタネを取り出しましょう。よく水洗いをして果肉を落とし、園芸用培養土を入れたトレイに種まきすると、翌年の春に発芽します。成長とともに、鉢増ししながら育成するとよいでしょう。
家庭でジューンベリーを育ててみよう
暑さ寒さに強く、育てやすいジューンベリーは、シンボルツリーとしても大変人気の庭木です。和風・洋風どちらの庭にも馴染みやすく、なんといっても果実を収穫してジャムなどに利用できるのが嬉しいですね。新緑・開花・結実・紅葉と、季節が巡るごとに表情の変化を楽しめるジューンベリーを、ぜひ庭に植栽してみてはいかがでしょうか。
参考文献/
上条祐一郎『切るナビ! 庭木の剪定がわかる本』NHK出版 (2017年第17刷)
『はなとやさい』2018年5月号 タキイ種苗
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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