里芋(サトイモ)の育て方! 栄養や効能から栽培のポイントまで、すべて教えます

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里芋はさまざまな調理法があることから、人気の食材の一つです。適度に粘度があり、ほくほくとした食感の里芋は、じつは自身で育てることができますよ! この記事では、里芋の基本情報や栄養価、食べ方、保存方法、育て方まで、多岐にわたってご紹介していきます。
目次
里芋の基本情報!
ここでは、里芋のプロフィールや特性、種類や栄養価などについて、幅広くご紹介していきます。
里芋ってどんな野菜?

里芋は、サトイモ科サトイモ属の根菜類で、原産地は東南アジアです。日本で食されてきた歴史は古く、縄文時代に中国から伝わり、江戸時代まで芋類の主役だったとされています。東北地方では晩秋になると各地で「芋煮会」が開かれ、具材の主役として昔から愛されてきました。
里芋は掘りたてが一番美味しく、シンプルな味付けにすると素材のよさが引き立ちます。また、収穫時に掘り上げてみると、大きくなった親イモに子イモが、さらに孫イモが多数ついていることが分かります。そのため、子孫繁栄のシンボルとして正月料理にも使われ、縁起食として古くから親しまれてきました。
里芋の種類

里芋は日本で古くから食されてきただけに、さまざまな地方品種が出回っています。里芋は、子イモを食べるもの、親イモと子イモの両方を食べるもの、親イモを食べるもの、葉柄のずいきを収穫するものの4つの系統に分類することができます。ここではイモを収穫するもののみに注目して説明します。子イモを食べるのは「土垂(どだれ)」「石川早生(いしかわわせ)」、親イモと子イモを食べるのは「セレベス」「八頭(やつがしら)」、親イモを食べるのは「筍芋(たけのこいも)」「田芋(たいも)」など。里芋は地方品種がたくさんありますが、地元に昔から伝わるタネイモの種類を手に入れると、比較的順調に育ちます。
里芋に含まれている栄養素

里芋の主な成分はデンプンとタンパク質です。他に食物繊維、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB6、葉酸、カリウムなどを含んでいます。また、里芋はイモ類の中でも低カロリーで、100g当たり58kcalです。
里芋の効能

里芋に含まれるぬめりには、消化を助け、免疫力を高める効果があります。中でもぬめり成分のガラクタンは血糖値やコレステロールを下げることで知られています。
調理するときのポイント
里芋は、皮をむくとぬめりが出て扱いにくく、手がかゆくなってしまうこともありますね。皮をむいた後に塩もみし、2〜3分下ゆでして水にとり、さっと洗って調理するのがおすすめです。また、調理する前に、手に塩か重曹をつけておくと、かゆくならずにすみます。里芋はさまざまに調理できる野菜で、煮物、揚げ物、汁物、蒸し物、コロッケなどにしておいしくいただけます。
ところで、里芋は寒さに弱く、乾燥を嫌う性質があるので、保存の際に冷蔵庫に入れるのはNGだと知っていましたか? 土を落とすと乾燥しやすいので、泥つきのものはそのまま新聞紙などにくるんで常温で保存します。皮をむいて固めに茹で、使う分ごとに小分けにして冷凍してもOKです。
里芋栽培の基本知識
「里芋はスーパーでいつでも手に入るけれど、旬の時期っていつだろう?」と改めて向き合ってみると、答えられない方も多いのではないでしょうか。ここでは、菜園での里芋の栽培スケジュールや、好む環境などについてご紹介します。
栽培時期

里芋の栽培スケジュールは、関東以西の平地を基準にすると、以下の通りです。
3月下旬頃に土作りをし、4月下旬〜5月上旬にタネイモを植え付けます。6月頃から追肥と土寄せを繰り返して地下のイモを太らせ、11月頃に収穫します。植え付けから収穫まで半年以上かかるため、葉物野菜に比べれば生育期間が長い野菜だといえます。菜園を長く占拠することになるので、どこに植えるか、しっかり計画しておきたいですね。
栽培環境

里芋は、熱帯地域が原産地で、生育適温は25〜30℃。夏の暑さには強いのですが、寒さに弱く、霜が降り始めると、葉がすぐに傷んでくるので、その前に収穫しましょう。また、乾燥が大の苦手で、水もちのよい土壌を好みます。植え付け時はマルチフィルムを張って地温を上げる対策をし、夏の乾燥期は株元に敷きワラをするなど対策を講じるのがポイントです。
栽培の適地は、日当たりがよく、風通しのよい場所です。半日陰の環境でも育ちます。また、水はけ、水もちがよく、有機質に富んでふかふかとした土壌を好みます。連作を嫌うので、一度栽培したら3〜4年は同じ場所に植えないようにしましょう。
詳しい栽培方法を知ろう
ここまで、里芋のプロフィールや基本情報、種類、調理方法、栄養面などについて幅広くご紹介してきました。ここからは、菜園ライフの実践編として、里芋の育て方について深く掘り下げます。植え付け方、水やりや追肥・土寄せなど日頃の管理、気をつけたい病害虫など、具体的に解説していきます。
タネイモ準備

里芋の栽培は、タネイモの植え付けからスタートします。植え付け適期に、ホームセンターや花苗店などに出回るタネイモを入手するとよいでしょう。ジャガイモが必ずウイルスフリーのタネイモを利用しなければならないのと違って、里芋は土つきのものであれば青果店やスーパーで購入したものをタネイモにすることもできます。前年に収穫した里芋を保存しておき、タネイモとして利用してもOK。タネイモはふっくらと充実して、芽がついているものを選びましょう。カビや傷のあるものは避けてください。
催芽(芽出し)
タネイモをそのまま菜園やコンテナに植え付けてもいいのですが、催芽のひと手間をかけておくと成功率がアップします。催芽のメリットは、植え付けた後に腐ってしまうリスクを防げること、成長が揃いやすくて管理しやすいこと、初期生育が順調に進むこと、イモの太りがよくなることです。
催芽の方法は、プランターや黒ポットにタネイモを仮植えし、暖かい場所に置き、乾いたら水やりします。発芽したら、菜園などに定植します。
土作り

【菜園】
幅約70〜80cm、高さ約10cmの畝を作ります。畝の長さは収穫したい量や広さに応じて自由に決めてかまいません。畝の中央に、深さ約30cmの溝をクワで掘り、1㎡当たり堆肥2〜3kg、化成肥料(N-P-K=8-8-8)約200gを均一に入れて混ぜ込み、溝を埋め戻して畝の表土を平らにならします。畝には黒のマルチフィルムをピンと張って、周囲の土を盛ってしっかり固定しましょう。マルチフィルムを張ることで保温効果が得られ、寒さが苦手な里芋の生育を促します。
【コンテナ栽培】
野菜用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると便利です。
植え付け

植え付けの適期は、4月下旬〜5月上旬です。タネイモを準備して植え付けます。
【菜園】
畝の中央に、株間が30〜40cmになるようにマルチフィルムに穴をあけます。ホームセンターなどで、菜園グッズとしてマルチの穴あけ器が販売されているので、それを利用すると便利です。マルチフィルムにあけた穴の下を深さ10cmほど掘り、タネイモの芽が出ているほうを上にして置き、5cmほど土を盛る程度の浅植えにします。あらかじめ催芽をしておいた場合は、芽を傷めないように植え付けます。
【コンテナ栽培】
里芋は草丈が1〜1.5mになります。1株につき土の容量が40〜50ℓ必要なので、幅、高さともに40cm以上の大容量コンテナを用意します。鉢の号数でいえば、12号以上を準備するといいでしょう。
用意したコンテナの底穴にネットを敷き、底が見えなくなるくらいまで鉢底石を入れ、その上に野菜用にブレンドされた培養土を入れます。成長とともに増し土(培養土を足す)をするので、コンテナの縁から10cmほどの空間を残しておきましょう。深さ10cmほどの穴を掘り、芽が出ているほうを上にして5cmほど土を盛る程度の浅植えにします。あらかじめ催芽をしておいた場合は、芽を傷めないように植え付けます。
最後にジョウロにはす口をつけて、底穴から流れ出すまでたっぷりと水やりしましょう。日当たりのよい場所に置いて管理してください。
水やり

【菜園】
根づいた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、真夏に雨が降らず乾燥が続く場合は水やりをして補いましょう。真夏は昼間に水やりすると水の温度が上がり株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。
【コンテナ栽培】
日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、底穴から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチすることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。真夏は気温が上がっている昼間に水やりすると、水の温度が上がり株が弱ってしまうので、朝夕の涼しい時間帯に行うことが大切です。
芽かき
【菜園・コンテナ栽培ともに】
植え付けから1カ月ほど経った頃、2本以上の芽が出てきたら、勢いのある芽を1本のみ残して、他の新芽はすべて引き抜きます。親イモを植えた場合は必ず複数本の芽が出てくるので、早めに1本のみを残しましょう。この芽かきの作業をすることで、株が充実します。芽かきは1回のみにし、この後から出る芽はそのまま生かしてください。
追肥・土寄せ

【菜園】
気温が十分上がった6月頃に、黒いマルチフィルムをはずし、1回目の追肥と土寄せをします。株の周囲に1㎡当たり化成肥料(N-P-K=8-8-8)約200gをばらまき、クワで軽く土に混ぜ込んでから株元に土を寄せて畝を高くします。
2回目の土寄せは7月頃、3回目の土寄せは8月頃が適期で、1回目と同様の分量で追肥をして土寄せをします。少しずつ畝を高く盛り上げて、イモを太らせます。
【コンテナ栽培】
6〜7月に、2回に分けて追肥と増し土をします。
6月頃、1鉢につき化成肥料(N-P-K=8-8-8)約5gをばらまきして土になじませ、野菜用の培養土を厚み5cmほど追加します。7月頃に、同様に追肥と増し土をします。
真夏の乾燥対策

【菜園・コンテナ栽培ともに】
里芋は乾燥に弱い性質を持っています。真夏は特に乾燥しやすいので、株元に敷きワラなどを施して乾燥対策をしておきましょう。一度乾燥させると株が弱り、収穫量が少なくなってしまうので注意。また、イモが肥大する時期に乾燥させてしまうと、イモにひび割れが入ることがあります。
病害虫

【病気】
ほとんど心配ありません。
【害虫】
アブラムシ、ハスモンヨトウが発生することがあります。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で、繁殖力が大変強く、茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目にも悪いので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。
ハスモンヨトウは蛾の一種で、里芋を食害するのは幼虫です。6月頃から幼虫が葉を食い荒らし、サイズは大きめで4cmほどになるため見つけやすい害虫です。見つけ次第捕殺して被害が広がらないようにしましょう。
家庭菜園では薬剤散布を減らすために、木酢液を散布して病害虫対策をすることがありますが、里芋に関しては葉が酸性に弱い性質があるので、使用しないようにしてください。
収穫

里芋は寒さに弱く、霜が降り始めると地上部が枯れてきます。霜が降りる前の11月中旬頃が収穫のタイミングです。まず、地上部の茎葉を地際で刈り取っておくと作業がしやすくなります。少し離れたところからスコップの刃を差し込んで、イモを掘り上げると、大きくなった親イモの周囲に、たくさんの子イモがついています。
里芋栽培を楽しもう!
この記事では、里芋のプロフィールから基本情報、種類、食べ方や栄養素に始まり、菜園での詳しい育て方に至るまで、徹底解説しました。晩秋に収穫する里芋は、粘りのあるホクホクとした食感が人気、栄養価も高いのでおすすめの野菜です。この記事を参考に、ぜひ家庭での栽培にチャレンジしてはいかがでしょうか。
Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
参考文献/
『別冊やさい畑 野菜づくり名人 虎の巻』発行/家の光協会 2009年2月1日発行
『わが家の片隅でおいしい野菜をつくる』監修/藤田智 発行/日本放送出版協会 2008年2月10日発行第5刷
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