レモンに含まれるシトラス系の香りが漂う「レモンバーム」という植物をご存じですか? レモンバームは、ハーブの一種で、ハーブティーやお菓子や料理の香りづけなどに用いられている植物です。レモンバームはとても育てやすいハーブのひとつ! 初心者さんにもおすすめの植物なのです。そんなレモンバームを、家庭で育てるとしたらどのようなことに気を付ければよいのでしょうか? 今回は、レモンバームの育て方を中心に詳しく紹介していきます。

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レモンバームってどんな植物なの?

そもそもレモンバームは、どのような特徴を持っている植物なのでしょうか? 植物を上手く育てるには、性質や育ってきた環境など、プロフィールを知ることが大切! おうちで育てる前に、レモンバームについて知っておくと、失敗が少なく栽培ができますよ。それでは、レモンバームの基本知識や特徴について紹介していきますね。

基本情報

レモンバームはシソ科の多年草。多年草とは、冬の間は休眠していて、地上に出ている部分は枯れてしまいますが、根は生きていて、また春になると芽吹いてくる植物です。レモンバームも一旦冬場は葉がなくなりますが、春になると青々とした葉が出てきて、何年も成長し続けるので、長くお付き合いができるハーブです。

3月になるとこのように青い芽が出てきます
3月になるとこのように青い芽が出てきます。

レモンバームは、別名メリッサ。メリッサとは、ギリシャ語でミツバチを意味します。6~7月には、シソに似た白い小さな花をつけ、蜜源植物として、2000年以上にわたって栽培されてきた歴史があり、果樹のそばに植えておくと受粉を助けてくれます。和名はセイヨウヤマハッカ。原産地は、南ヨーロッパです。

草丈は30~60cm程度になります。耐寒性が強く、かなり丈夫なハーブですが、注意が必要なのは夏の暑さ。梅雨に入る前のタイミングで、枝数を減らすことと、株のサイズを一回り小さくカットする「切り戻し」という作業をして、蒸れを防ぎ、夏の高温多湿の時期を耐えることができれば、長期間に渡って、存分に楽しむことができますよ。

また、レモンバームは、ハーブの仲間。飲んだり食べたりすることができます。園芸種としては、斑入りレモンバームと呼ばれる黄色の斑入りの葉を持つ品種や、ゴールデンレモンバームと呼ばれる明るい黄緑色の葉を持つ品種があります。口にすることを目的とするなら、観賞用の園芸品種ではなく、香りの強いレモンバームを栽培するとよいですよ。

特徴

レモンバームの特徴

レモンバームの使える部分は、葉・茎・花です。この部分にレモンと共通する「シトラール」と呼ばれる香り成分が含まれていて、爽やかな香りがします。ハーブティーとして人気があり、お菓子や料理の香りづけにも利用されます。特に生葉の香りは格別! この香りが楽しめるのは、育てている人の特権ですから、存分に楽しみましょう。

とても歴史が古い薬草で、1世紀に活躍した古代ギリシャの医師・薬理学者・植物学者であった、ペダニウス・ディオスコリデスの「薬物誌」に、レモンバームはサソリや毒グモの解毒剤として有効などと書かれているそうです。薬がなかった時代には、植物が人々の病気やケガを治療するために用いられてきたことが分かりますね。

このようにレモンバームには、解毒作用・強壮作用・鎮痛作用・鎮静作用・血圧降下作用などがあり、ドイツでは、神経性不眠症などに有効とされています。

この薬効には、精油と呼ばれる芳香成分が関わっています。例えば、レモンバームには鎮静作用がありますが、精油成分を鼻から吸いこむと、脳にダイレクトに指令が伝わります。循環器系に働きかけ、高い血圧を下げ、心拍をスローダウンするよう、指令がでるのです。その結果、鎮静作用をもたらすというわけですね。

このような作用がある芳香成分が、レモンバームに含まれていますが、実はその芳香成分の量がとても少なく、精油として販売されているものは、とても高価な値が付けられています。よく、「ドライとして家庭で乾燥させたものをハーブティーにしていますが、おいしくありません」という相談を受けますが、葉を乾燥させると、この香りの成分はすぐに揮発し、なくなってしまうのです。

レモンバームは栽培しているなら、フレッシュのまま飲食に用いる方が断然香りがよく、おすすめですよ。

レモンバームの育て方

レモンバームは、栽培がとても簡単! 強くて丈夫な性質ですから、初心者さんが最初にチャレンジするハーブとしても向いています。また、日陰でも育つことができるので、日陰の花壇を明るく彩ってくれる植物でもあります。

では、実際にレモンバームを育てるとなったら、どのようなことに気を付けなければならないのでしょうか? 続いては、レモンバームの育て方について紹介していきます。

栽培環境

レモンバームは、日当たりのよい場所、湿り気を多少含んだ肥沃な土を好みます。レモンバームの葉は、強すぎる光が苦手。盛夏の直射日光が当たり過ぎると、葉が固くなり、茶色くなってチリチリになってしまいます。地植えにする場合は、木漏れ日の当たる場所など環境をコントロールして育てるといいでしょう。

逆に、レモンバームは半日陰程度でも栽培可能。花も咲きますので、日陰で重宝する植物でもあります。また、多年に渡り生長し、容易に植え替えができなくなりますので、最初に植えるべき場所はしっかり見極めましょうね。

その点、鉢での管理なら、暑いとき寒いときに移動が可能なのは有利です。その場合は24cm以上の鉢に1ポット植えましょう。背丈もすぐ40cmほどになりますので、大きめの鉢がいいですよ。

用土・水やり

レモンバームは、乾燥にはそれほど強くないので、保水性に優れた土を選ぶとよいですが、そこまで神経質になる必要もありません。プランターなどの鉢で栽培する場合は、市販されているハーブ用の培養土を購入するとよいでしょう。

上述の通り、湿り気のある土を好むので用土が乾燥しないように株元にマルチングをしましょう。マルチングとは、腐葉土やわら、もみ殻、黒ビニールなどで、株元や畝全体を覆うこと。

マルチング

こうすることで、土中の水が蒸発するのを防ぎます。結果的に水やりの回数も減らすことができメンテナンスが楽になりますよ。これはすべての植物でも同じことが言えます。ぜひお庭やプランター全体に施してくださいね。

続いては水やり。レモンバームは水を好みます。乾燥に弱いので、土が乾きすぎないうちに、水をあげるようにしましょう。かといって、やりすぎは厳禁。この加減が難しい…と感じている方へ、いくつかコツをお伝えしましょう。

まず、1回の水やりの量はたっぷりあげること。プランターであればプランターと同量を目安にします。1日2回あげなければ植物がしおれてしまう、という方は、1回にあげる量を増やしてみてください。よく「鉢底から水が出るまで」と言いますし、それが基本中の基本ですが、用土が乾ききっていたり、土の質によっては、さーっと水が下に通り抜けただけで、保水できていない…ということも起こり得ます。土全体にしっかりと水を染み渡らせ、時間をかけてじっくり水が土に浸透していく状態が理想です。

そして、この量をあげたら、今度は土を乾かす日を設けること! 水をあげない日を作ることを意識します。いつもじめじめしていると、植物は根を張ることができません。いわゆる根腐れという状態ですね。水やりの加減で、植物は生死が決まります。ぜひメリハリを大事にしてみてください。

苗を地植えにした場合は、植え付け時にたっぷりと水やりし、苗が落ち着くまで、1週間ほどは様子を見守り、2~3日に1回程度、土が乾ききる前に、水やりをします。苗が根づいたあとは、基本的に水やりの必要はありませんが、夏場のカンカン照りで乾燥が続くような時期には、水やりをします。なお、水やりは午前中の早い時間に行いましょう。

植え付け・植え替え

レモンバームの苗を購入し、植え付けを行う適期は5月上旬から6月下旬。種から育てるときには葉が5~8枚になる時期を目安に植え付けます。

庭植えの場合は、株間を30cmくらいあけて植え付け、鉢植えの場合は24cmほどの大きめな鉢を用意して、植えこみましょう。庭植えの場合は頻繁に植え替えの必要はありませんが、鉢植えの場合は、数年で鉢が窮屈になってきますので、2年ほどで一回り大きな鉢にしながら、株分けして植え直すとよいでしょう。

増やし方

レモンバームの増やし方は、種まき・挿し木・株分けの3つが代表的な方法になります。

種まきは3~5月か9~10月を目安に、育苗箱などを利用し、まき床全体に均一になるように種をバラまく「バラマキ」という方法で種まきし、軽く覆土して間引きしながら育てます。

挿し木は茎を10cmほどにカットして、先端の葉以外の葉を落とし、挿し木用の土にいれて栽培します。カットした枝を水に浸けておくと、すぐ根が出てきます。部屋の中で水耕栽培をすることもできますね。

株分けは、3月と11月の枝葉がない時期に行います。大きめに掘り取り、芽や根がついた状態で、株が自然に分かれそうな場所で引っ張って分けます。その際、無理矢理引っ張ると株が弱りますので、自然に分かれる位置で分けて、鉢に植え込みます。植え込み後はしばらく半日陰で管理し、芽が出たら定植するとよいでしょう。

難易度で言うと、レモンバームは株分けが一番簡単です。成功確立が高いので、時期を守ってチャレンジしてみてください。

摘心・切り戻し

レモンバームの管理のコツは、先端の芽を摘む摘心を行うこと。摘心すると脇芽が出てきます。脇芽がでる=枝数が増えることなので、収穫量がアップしますよ。

写真はミントですが摘心の方法は同じです。/先端の葉をカットします。摘芯・切り戻しを行った葉も使えます。
写真はミントですが摘心の方法は同じです。先端の葉をカットします。摘芯・切り戻しを行った葉も使えます。

レモンバームは旺盛に育ちます。6月頃、花が咲きだすと葉が小さくなり品質が落ちてしまうので、葉を収穫したい場合は、あまり花を咲かせないほうがおいしく使えます。

また、梅雨時期にモリモリに茂った状態になると、高温多湿で蒸れてしまい、病害虫の被害に合いやすくなってしまいます。梅雨入り前に、高さを半分ほどにカットしましょう。これを「切り戻し」と言います。 一旦寂しくなりますが、次にまた新しい芽が出てきて、収穫できるようになりますよ。

収穫

収穫

レモンバームは葉がある時期は、いつでも収穫できます。開花期が最も葉の香りや風味がよくなる時期ですので、ぜひフレッシュハーブをお楽しみください。

おいしく収穫するためには、摘心・切り戻しがとても大切。はじめは切ることが怖く感じるかもしれませんが、切ることで新しい芽・次の枝が出てきます。新しい芽に更新していくことで、柔らかい香り高い葉に出会えますよ。タネを収穫したい場合を除いて、花は咲かせず管理しましょう。私は、背丈をあまり高くせず、30cmほどをキープするようにしていますよ。

収穫したらハーブティーに

収穫したら、フレッシュハーブティーをいれてみましょう。手のひらいっぱいになるくらいの量の葉に対し、180ccのお湯を注ぎ3分蒸らせばできあがり! レモンバームだけではなく、ミントやレモングラスなど他のハーブとブレンドするとよりおいしさが増しますよ。

注意すべき病害虫

レモンバームは丈夫なハーブで、基本的に特別注意しなければならない病害虫はありません。ただ、夏の高温多湿期には、アブラムシやハダニがついてしまうことがあるので、注意深く見守りましょう。もしついてしまったら、枝ごと切り取ります。

また、すす病という葉や茎がすすをかぶったように黒くなるカビが原因の病気になることがあります。湿気の多い環境で発生しやすくなりますので、枝数を減らす・切り戻しを行うなどして、株の風通しがいいように管理しましょう。

特に、レモンバームは南ヨーロッパが原産地のハーブで、高温多湿に弱い性質があります。梅雨入り前に手入れをして、病害虫にも耐えられる環境を作ってあげましょう。

レモンバームは育てやすいので初心者にもおすすめ

レモンバームは丈夫で、日陰でも育つことができるし、比較的病害虫にも強く、育てやすい植物です。庭植えにすると、ある程度の大きさになり、明るいグリーンは庭に爽やかな彩りを加えてくれます。

そして何より、ハーブとして用途が広いので、家庭菜園やキッチンハーブ初心者さんにおすすめの植物です。 家庭菜園の入門編として、栽培を成功させてハーブティーをおいしくいただきましょう♪

ハーブティー

Credit

写真&文/堀 久恵(ほり ひさえ)

花音-kanon- 代表、ガーデンセラピーナビゲーター。一般社団法人日本ガーデンセラピー協会専門講師。

生花店勤務を経て、ガーデンデザイン・ハーブ・アロマセラピー等を学び、起業。植物のある暮らしを通じて、病気になりにくい身体を作り健康寿命を延ばすことを目指した「ガーデンセラピー」に特化した講座の企画運営と庭作りを得意とする。植物に囲まれ、日々ガーデンセラピーを実践中。埼玉県熊谷市在住。
https://kanongreen.com/

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