アオダモは、日本の山地で自生しているのをよく見かけるように、昔から日本人に親しまれてきました。丈夫で環境に馴染みやすく、管理の手間がかからないので庭木として取り入れられることが多い、人気の樹種です。この記事では、アオダモの基本情報や性質、庭への取り入れ方、管理のポイントなど、詳しくご紹介していきます。
アオダモとは?

アオダモは自然樹形で10〜15mに達し、高木に分類されています。「そんなに大きくなるんだったら、持て余してしまいそう」と、ガーデンに取り入れることにためらいを感じるかもしれませんが、これはあくまで自然の状態で、例えば山野で育った場合の最終樹高です。毎年休眠期に適切な剪定を行えば、好みの高さに抑えることができるので、ご心配なく。自然樹形が美しく、庭にナチュラルな雰囲気をもたらす、人気の高い庭木です。
アオダモは、4〜5月に花を咲かせます。花色は、清楚なピュアホワイト、またはやや黄色味を感じるアイボリーです。一つひとつの花は5〜6mmと小さいのですが、花穂を伸ばして多数の花をつけ、それが木全体を覆うように咲き誇るので、満開の時にはみずみずしいグリーンの葉全体に雪をまとったような姿となり、とても見ごたえがあります。
アオダモがシンボルツリーとして人気のある理由
アオダモは、その家の顔となるような存在感を発揮する、シンボルツリーとして選ばれることが多い樹木です。どうしてそれほどの人気があるのか、ここではアオダモの庭木としての魅力について紐解いていきます。
どんな住宅でも合わせられる
アオダモは、比較的樹高が高くなり、樹形が自然に美しく整う姿が魅力です。背丈が高くならない低木や、刈り込んで形を整えることで生け垣として魅力を発揮する樹種とは異なり、1本植えるだけで庭の主役となる風格を持っています。明るくグレーがかった幹肌はなめらかで優しく、黒肌でゴツゴツとした幹を持つ樹種のような荒々しさはありません。自然に枝を四方にバランスよく伸ばし、明るいグリーンの葉は薄くて軽やかな質感。穏やかな風にもサラサラと葉を揺らし、癒やしのひとときをもたらしてくれます。もともと日本の山野に自生する樹木なので、庭に取り入れると「フォレストガーデン」のようなナチュラルな景観づくりに一役買ってくれます。また、建物や庭のスタイルを問わず、どんな外観にもしっとりと馴染んでくれる一面も持っています。
初心者でも育てやすい
アオダモは、自然樹高が10〜15mになると前述しましたが、一気に成木となるわけではありません。比較的生育スピードが遅く、ゆっくりと成長していくので、庭木の中でも管理がしやすい樹種の一つです。落葉期に適した剪定を行えば、大きくなりすぎることもなく、「切っても切っても枝が繁茂して樹形が乱れるので管理が面倒、ゴミ出しも大変」ということにはならないでしょう。また、昔から日本に自生している植物なので環境に適合し、病害虫にも強いので、ガーデニングのビギナーにもおすすめです。
さまざまな様子を見せてくれる
アオダモは落葉樹のため、四季を通してさまざまな表情を見せてくれるのも魅力。すっかり葉を落として冬枯れた景色の中でも、枝をよく見るとふっくらとした葉芽がついていて、暖かくなるにつれ、だんだんと大きくなっていきます。3月頃にはその葉芽から新緑が吹き出し、たくましい生命力に感動せずにはいられません。初夏には白い花が雪をかぶったように株全体に咲いて、一番の見頃に。夏にはたっぷりとした緑陰が涼風を呼び込んでくれます。秋になると実をつけ、冬前には落葉。このように一年を通して姿を変えて、「またこの季節がやってきた」と四季の移ろいを強く感じさせてくれる樹木です。
アオダモの育て方について
ここまで、樹形が美しいアオダモの特性や魅力、庭での生かし方などについてご紹介してきました。ここからは、ガーデニングの実践編として、栽培に適した環境や植え付け方に始まり、水やりや肥料、病害虫対策などの日頃の管理、毎年行う剪定について解説していきます。アオダモはビギナーでも育てやすい庭木だと分かっていただけるはずですよ!
適した環境

土作り

【地植え】
植え付けの2〜3週間前に、直径、深さともに50cm程度の穴を掘りましょう。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきます。粘土質や砂質、水はけの悪い土壌であれば、腐葉土や堆肥を多めに入れるとよいでしょう。肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
樹木用にブレンドされた培養土を利用すると手軽です。赤玉土(小粒)7、腐葉土3の割合でよく混ぜ、配合土を作ってもよいでしょう。
植え方

アオダモの植え付け適期は、落葉後の休眠期で、厳寒期を除いた12月または3月頃です。
【地植え】
土作りをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘って植え付けます。しっかりと根づくまでは支柱を立てて誘引し、倒伏を防ぐとよいでしょう。最後にたっぷりと水を与えます。
【鉢植え】
鉢の大きさは、8〜10号鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから樹木用の培養土を半分くらいまで入れます。苗木をポットから取り出して鉢に仮置きし、高さを決めます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておきます。土が鉢内まで行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。しっかりと根づくまでは、支柱を立てて誘引しておくとよいでしょう。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えます。一年を通して日当たり、風通しのよい場所に置いて管理しましょう。
鉢植えで楽しむ場合は、成長とともに根詰まりしてくるので、2〜3年に1度は植え替えることが大切です。
水やり

【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをします。根づいた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、真夏に晴天が続いて乾燥しすぎる場合は水やりをして補いましょう。真夏は昼間に水やりするとすぐにお湯状になり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。
【鉢植え】
日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチすることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。真夏は気温が上がっている昼間に水やりするとすぐにお湯状になり、株が弱ってしまうので、朝夕の涼しい時間帯に行うことが大切です。一方、冬は休眠し表土も乾きにくくなるので、控えめに与えるとよいでしょう。与えた水が凍らないよう、気温が十分に上がった日中に行います。
肥料

地植え、鉢植えともに2月頃に緩効性化成肥料を与え、土によくなじませましょう。生育期を迎える前に肥料を与えることで、新芽を出すエネルギーとなり、旺盛に枝葉を広げることにつながります。
病害虫

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病気
アオダモは、ほとんど病気が発生しない丈夫な庭木の一つですが、幼木の時期には褐斑病(かっぱんびょう)が発生することがあります。葉に茶色の斑点ができ、だんだん大きくなって全体に広がっていき、やがて葉を落とします。病状が木全体に広がると、ほぼ落葉してしまい、樹勢が弱まるので注意しましょう。
5〜10月に見られる病気ですが、特に梅雨頃に多く発症するようです。アオダモは冬になると落葉しますが、その落ち葉に菌が潜んで越冬します。
発症が見られた場合は、落葉したすべての葉を掃き取って処分しましょう。また、新芽が出る頃に木全体と周辺の土壌に、適応する薬剤を散布して防除します。
木が大きく育って樹勢が強まると、病気を寄せつけにくくなります。
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害虫
アオダモにはほとんど害虫の被害は出ませんが、テッポウムシが現れることがあります。テッポウムシは、ゴマダラカミキリの幼虫です。成虫が幹などに産卵し、幼虫が木の内部を1〜2年にわたって食害するため、徐々に樹勢が弱り、枯死することも。木の周囲にオガクズが落ちていたら、内部にテッポウムシがいることが疑われます。見つけ次第、侵入したと見られる穴に適応する薬剤を注入して駆除しましょう。
剪定

アオダモの剪定適期は、休眠中の12〜2月です。
自然樹形を楽しむ庭木なので、込み合っている部分を切り取って風通しをよくする「すかし剪定」を基本にします。地際から立ち上がっている「ひこばえ」は元から切り取りましょう。木の内側に向かって伸びている「逆さ枝」、垂直に立ち上がっている「立ち枝」、勢いよく伸びすぎている「徒長枝」も元から切り取ります。
アオダモを植える前に知っておきたいこと

購入時の注意点や管理のポイントなど、アオダモを実際に植え付ける前に、知っておきたいことをピックアップしました。参考にしてください。
苗木の値段に幅がある
アオダモの苗木には、値段に幅があります。幼く小さい苗の場合は、1,000円前後で購入できます。地際から数本の幹を立ち上げる株立ちに仕立てた苗木では一気に値段が上がって、1万円以上になります。樹齢が長い苗木になるほど値段が上がるのは当然ですよね。また雑木の庭のシンボルツリーにする目的で、山に自生して自然にダイナミックな樹形を作り上げているアオダモを「山採り」して購入する場合は、大変高価になります。
幼い苗を植え、自身の手で樹形を作り上げていくか、コストはかかっても最初から樹冠を大きく広げた美しい成木を手に入れて、手っ取り早く雑木の庭のシンボルツリーにするか。それぞれご家庭の目的に応じて選ぶとよいでしょう。
放置すると巨木になる
アオダモは、自然樹形で10〜15mに達する高木です。毎年、落葉期に適した剪定をすれば樹高を抑えることができますが、手入れをせずに放任すると巨木に育って、「気づいたら手に負えなくなっていた」というケースもあります。枝葉を大きく広げるので日当たりが悪くなり、アオダモの株元には植物が育たなくなってしまった、という残念な結果にも。個人邸で地植えにする場合は、シンボルツリーにするとしても、3〜4mまでに樹高を抑えたほうがよいでしょう。大きく育ってきたら、造園業者などに剪定を依頼するのも一案です。
スペースをつくる
アオダモは自然に樹形が整うので、大きく育ててシンボルツリーとすることでその魅力を発揮できます。そのため、ある程度枝葉を伸ばしても邪魔にならないような広いスペースを確保しておきましょう。建物やカーポートなどに近い場所に植えると、大きく育った枝が軒下などにつかえて切らざるを得なくなり、のびのびと枝葉を広げた樹形の美しさを鑑賞できない、というケースもあるようです。
アオダモを育ててみよう!

Credit
写真&文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
参考文献/永井淳一『プロが教える 庭づくりと庭木の育て方』日本文芸社
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