春になるとピンク色のつぼみを株いっぱいに立ち上げ、まるで雪をかぶったように白い花が満開になる姿を楽しめるハゴロモジャスミン。その魅力は、なんといっても甘くて濃い香りでしょう。「香りのよい植物を庭に取り入れたい」という方におすすめです。この記事では、ハゴロモジャスミンのプロフィールや魅力、品種、花言葉、詳しい育て方など、有用なガーデニング情報をお届けします。
目次
ハゴロモジャスミンの特徴について
ハゴロモジャスミンは、モクセイ科ソケイ属の半常緑性つる植物。ジャスミンティーなどに利用されるマツリカなどと同じジャスミンの仲間です。原産地は中国南部で、暑さには強いものの寒さにはやや弱い性質です。暖地では地植えにしても越冬しますが、冬に0℃以下になる地域では、鉢栽培にするか、地植えにしても冬は鉢上げして日当たりがよく暖かい場所で管理するとよいでしょう。
ハゴロモジャスミンは、つるを絡ませながら旺盛に生育します。つるの長さは2mほどになるので、植え付ける際は、支柱やフェンス、アーチ、オベリスクなど、つるを絡ませるための構造物を用意しておきましょう。
ハゴロモジャスミンの見た目と特徴
ハゴロモジャスミンの花色は白。ピンクまたは白のつぼみを立ち上げ、純白の5弁花が咲きます。花径は1〜2cmと小さいのですが、花数が多く一斉に開花するので、つるを伸ばした面を覆い尽くし、大変見ごたえがあります。花が咲くと甘い香りが辺りに漂うのも魅力。上品な芳香ではありますが、かなり強く香るので、敏感な方は気分が悪くなってしまうこともあるようです。
開花期には小花が煙るように咲いて、それは見事な景色を作り出しますが、じつは葉のフォルムも繊細で美しく、開花期以外の葉姿にも観賞価値があります。庭で育った花を花瓶などに活ける際には、飾り葉として利用しても素敵ですよ!
ハゴロモジャスミンの代表的な種類
ハゴロモジャスミンには、いくつかの品種が出回っています。‘ミルキーウェイ’は、葉を縁取るようにミルキーカラーの斑が入る品種です。開花していない時期は、カラーリーフプランツとして存在感を発揮します。‘レッドスター’は、つぼみが赤いのが特徴で、開花した白い花とのコントラストが美しい品種です。
ハゴロモジャスミンの名前の由来
ハゴロモジャスミンは、淡いピンクのつぼみから咲き進んで、やわらかな質感の白い花が咲くことから、昔から日本で言い伝えられている羽衣伝説の「天女の羽衣」をイメージして名前がつけられたとされています。
ジャスミンは、「Jasmine」と書き、「神様からの贈り物」という意味のペルシャ語「ヤーサマン(ヤースミーン)」が語源となっているようです。
ハゴロモジャスミンの香り
ハゴロモジャスミンは「香りの王様」と表現されるほど、強い芳香を持っています。フローラル系の甘い香りで、「姿は見えないけれど、どこかにハゴロモジャスミンが咲いている気配がある」といわれるほど広範囲に存在感をアピールします。じつはハゴロモジャスミンは虫媒花で、受粉を虫に頼っているため、強い香りを放って虫を誘い出しているのです。特に夜になると香りが濃くなるのが特徴です。
ハゴロモジャスミンの花言葉
ハゴロモジャスミンの花言葉は、「誘惑」「官能的な愛」「優しさを集めて」など。芳醇な香りを放って魅了することに由来するようです。「あなたは私のもの」という花言葉もあり、これは恋人から贈られたハゴロモジャスミンの花を女性の髪に編み込むインドの風習にちなんだものとされています。
ハゴロモジャスミンが咲く時期と見頃
ハゴロモジャスミンの開花期は、4〜5月です。地域によって幅がありますが、最盛期は4月中旬頃となります。
ハゴロモジャスミンは、一度植え付ければ毎年開花する、コストパフォーマンスの高い植物。常緑性で、開花しない時期もみずみずしいグリーンの葉をキープします。ただし、寒い地域では冬に葉を落とすことがあるようですが、春になれば再び新芽を出して旺盛に生育します。
ハゴロモジャスミンの育て方
ここまで、ハゴロモジャスミンのプロフィールや特性、種類、花言葉など、多面的にご紹介してきました。ここからはガーデニングの実践編として、ハゴロモジャスミンの育て方について取り上げます。植え付けから始まって、水やりや肥料、花がら摘み、剪定などの日頃の管理や、注意したい害虫などについて詳しく解説していきますよ!
栽培環境
【地植え】
ハゴロモジャスミンは、日当たり、風通しのよい場所を好みます。一般地では暑さ寒さに耐えて戸外で越年しますが、寒さにはやや弱く、耐寒温度は0℃くらいまで。地植えにする場合は北風が吹きつける場所を避け、寒冷地では鉢に植え替えて日当たりのよい室内などに取り入れて冬越しさせるとよいでしょう。水はけ、水もちがよく、腐植質に富んだ肥沃な土壌を好みます。
【鉢植え】
日当たり、風通しのよい場所で管理します。冬は暖かい陽だまりに移動するとよいでしょう。
植え付けの適期は、3月下旬〜4月、または10月です。これ以外の時期に開花株を入手した場合は、早めに植え付けましょう。
植え付け
【地植え】
植え付けの2〜3週間前に、直径、深さともに30〜40cm程度の穴を掘り、掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきます。粘土質や砂質、水はけの悪い土壌であれば、腐葉土や堆肥を多めに入れるとよいでしょう。肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
土作りをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘って植え付けます。つるを伸ばして生育するので、フェンスやオベリスクなどの構造物に誘引しておきましょう。最後にたっぷりと水を与えます。
【鉢植え】
草花用培養土を利用すると手軽です。赤玉土(小粒)7、腐葉土3の割合でよく混ぜ、配合土を作ってもよいでしょう。
鉢の大きさは、8〜10号鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。苗木をポットから取り出して鉢に仮置きし、高さを決めます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。つるを伸ばして生育するので、支柱やオベリスクなどの構造物を鉢に設置し、誘引しておきましょう。フェンスの前やアーチの脚元などに鉢を置き、つるを伸ばしたい方向に誘引してもかまいません。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えます。一年を通して日当たり、風通しのよい場所に置いて管理しましょう。
水やり
【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、真夏に晴天が続いて乾燥しすぎる場合は水やりをして補いましょう。真夏は昼間に水やりするとすぐにぬるま湯になり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。
【鉢植え】
日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチすることが、枯らさないポイントです。
また、真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないようにします。真夏は気温が上がっている昼間に水やりするとすぐにぬるま湯になり、株が弱ってしまうので、朝夕の涼しい時間帯に行うことが大切です。冬は鉢内が乾きにくくなるので、水やりを控えめにして管理します。
肥料
庭植え、鉢植えともに、2月上旬〜3月下旬に緩効性化成肥料を株周りに施し、土によくなじませます。春からの生育期を迎える前に肥料を与えることで、新芽を出すエネルギーとなり、旺盛に枝葉を広げることにつながります。
また、地植え、鉢植えともに5月下旬〜6月下旬頃、開花が終わったら緩効性化成肥料を与え、土によくなじませます。これは花を咲かせてエネルギーを消耗した植物に、体力を回復させる目的で与える肥料で、「お礼肥(おれいごえ)」といいます。「たくさん花を咲かせてくれてありがとう」という気持ちを込めて与えましょう。
花がら摘み
ハゴロモジャスミンは、花が終わっても花弁を地面に散らすことがなく、茶色く枯れ込んで枝葉にそのまま残ります。放置すると見た目が悪いので、終わった花はまめに摘み取りましょう。ハサミを使う必要はなく、花弁を手でつまむとポロリと取れるのが特徴です。株周りを清潔に保つことで病害虫を抑制することができ、また株の勢いが保たれて、次から次へと花が上がってきます。
剪定
ハゴロモジャスミンの剪定の適期は、花が終わった後です。
つるが旺盛に茂りすぎて樹形を乱していたり、勢力を伸ばしすぎてほかの植物に悪い影響を及ぼすようであれば、株全体の2/3くらいまでを目処に切り戻してかまいません。剪定後もバランスを崩しているようであれば、込みすぎている場所を適宜間引くようにして切り取り、風通しをよくします。
ハゴロモジャスミンの花芽は、成長が止まった後の晩秋から冬にかけて形成されます。それ以降に剪定すると花数が少なくなってしまうので、注意しましょう。
植え替え
【地植え】
一般地では、一度根づいたら植え替える必要はありません。
寒冷地で冬の寒さが厳しく0℃以下になる場合は、10月頃に掘り上げて鉢に植え替え、室内の日当たりのよい場所などで管理しましょう。越年して春になり、遅霜の心配がなくなった頃に、再び庭に植え付けます。
【鉢植え】
根詰まりしてきたら、生育が悪くなるので植え替えます。植え替えの適期は、開花が終わった後です。
支柱やフェンスなどの資材につるを誘引している場合は、枝先から出ている枝を切り取ってつるを丁寧にはずします。根鉢を1/3くらいまで崩して、一回り大きな鉢に植え替えましょう。詳しくは、前述の「植え付け」の項目を参照してください。鉢に支柱などをしつらえて、つるを仕立て直します。
増やし方
ハゴロモジャスミンは、挿し木で増やすことができます。挿し木の適期は9月頃です。春から伸びた若くて勢いのある枝を選び、2〜3節つけて切り取ります。水を入れたコップなどに挿して水揚げした後、草花用培養土を育苗用トレイなどに入れて、採取した枝葉を挿しておきます。直射日光の当たらない明るい場所で、水切れしないように管理しましょう。発根したら黒ポットなどに植え替えて育成します。大きく育ったら、植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、採取した株のクローンになることです。
病気や害虫など注意点
【病気】
発生の心配はほとんどありません。
【害虫】
4〜10月にアブラムシが発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせてしまいます。見た目も悪いので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、シャワーではじき落としたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒剤を利用するのがおすすめです。
家庭でハゴロモジャスミンを育ててみよう
開花期には一気に満開になり、強く芳醇な香りを放つため「春がきた!」と強く感じることのできるハゴロモジャスミン。咲き姿も香りも素晴らしく、ガーデナーに人気の植物です。ぜひハゴロモジャスミンを庭に迎え入れてはいかがでしょうか。
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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