ルピナスの育て方 美しい花を咲かせるためのポイントも解説!

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初夏に花穂をすらりと伸ばしてカラフルな花を密に咲かせるルピナス。鈴なりに咲く生命力あふれる姿に「元気をもらえる」と感じる方も多いことでしょう。数株まとめて植えると見事な景色を作り出すので、ガーデナーに人気の草花です。この記事では、そんなルピナスの基本情報や魅力、花言葉などから、詳しい育て方まで、幅広くご紹介します。
目次
ルピナスの基本情報

植物名:ルピナス
学名:Lupinus
英名:Lupinus
和名:葉団扇豆(ハウチワマメ)
その他の名前:ノボリフジ
科名:マメ科
属名:ハウチワマメ属(ルピナス属)
原産地:北アメリカ、南アフリカ、地中海沿岸
形態:一年草・二年草・多年草 ※種類によって違いあり
ルピナスは、マメ科ハウチワマメ(ルピナス)属で200種以上が確認されており、一年草、二年草、多年草、一部低木があります。「分類が曖昧なのでは?」と混乱してしまうかもしれませんが、これは種類によって性質が多様でライフサイクルが異なっているため。買い求めたルピナスはどんなライフサイクルなのか、チェックしておくとよいでしょう。
ちなみに、本来は多年草でも暖地では夏越しが難しいため、一年草として扱われることが多いようです。一方で宿根草タイプのラッセルルピナスは、北海道などの寒冷地で根付き、毎年花を咲かせます。
ルピナスの原産地は北アメリカ、南アフリカ、地中海沿岸で、前述のように寒さに強く、マイナス5℃くらいまでなら地植えで越冬できます。一方で夏の暑さには弱く、25℃になると生育が止まってしまいます。多年草を暖地で夏越しさせたい場合は、鉢上げして涼しい環境で管理するとよいでしょう。
ルピナスの草丈は20〜150cm。種類によって矮性種〜高性種まであるため草丈の幅が広いのが特徴です。草丈を低く抑えた矮性種ならコンテナの寄せ植えに利用できますし、花穂をダイナミックに伸ばす高性種なら花壇の後方に植えて群植させるなど、用途によって選ぶ楽しみがあります。
ルピナスの花や葉の特徴

園芸分類:草花
開花時期:4月下旬~6月
草丈:20~150cm
耐寒性:強い
耐暑性:弱い
花色:白、黄、ピンク、オレンジ、赤、紫、複色
ルピナスの開花期は、4月下旬〜6月。花色は紫、赤、ピンク、オレンジ、黄色、白、複色があります。品種が多様で、色の濃淡の幅が広いのも特徴です。花茎を立ち上げてマメ科の植物らしい花をびっしりと咲かせ、その花穂は60〜70cmにもなります。「昇り藤(のぼりふじ)」の別名の通り、藤の花を逆さにしたような花姿が印象的。縦のラインを強調してガーデンに豪華な華やぎをもたらし、主役を張るインパクトがあります。カラフルでゴージャスな雰囲気から、切り花としても人気です。
ルピナスの栽培は、南北アメリカでは約6,000年前から、ヨーロッパでは約3,000年前からという、歴史の古い植物です。日本へは明治の頃に食用や緑肥用として伝わったとされ、その後観賞用として流通するようになりました。
ルピナスの名前の由来と花言葉

ルピナスの名前の由来は諸説あります。ラテン語でオオカミを意味する「ルプス」にちなむというのもその一つで、食欲旺盛なオオカミにたとえて吸肥力が強いことを表しているとされています。日本では、藤を逆さにしたような咲き姿から「昇り藤」、マメ科の植物でウチワのような葉をもっていることから「葉団扇豆(はうちわまめ)」とも呼ばれます。
ルピナスの花言葉は、「想像力」「いつも幸せ」「あなたは私の安らぎ」など。古い時代のヨーロッパでは、ルピナスを食べると「心が開放的になる」とか「安らぎを得られる」「想像力が高まる」といった言い伝えがあることから、これらの言葉が与えられたと考えられます。また、「貪欲」という花言葉もあり、これは原産地では吸肥力が強いことから生まれたようです。
ルピナスの主な品種
ラッセルルピナス

ルピナスのなかで最もポピュラーな品種の一つ。花色はさまざまで、草丈は100cmほど。穂の部分はボリュームがあり、ゴージャスな印象を与えます。
キバナルピナス

キバナルピナスは、鮮やかな黄色の花が特徴のルピナスです。草丈は50〜60cmとやや小さく、花穂も小ぶりです。切り花用としても人気があります。
カサバルピナス

葉の形が広げた傘に似ていることからカサバ(傘葉)ルピナスと名付けられた品種です。花は紫青色、葉は高温下では緑色ですが、低温下では銀白色に変化します。
ルピナス・テキセンシス

アメリカ・テキサス原産のテキセンシスは、草丈30〜40cm、花穂も小さめな品種です。青い花をつける‘ブルー・ボンネット’や赤い花をつける‘テキサス・マローン’が有名です。
「ミニギャラリー」シリーズ
草丈30~50cm、華やかな花穂をつける品種。花壇や鉢植えで扱いやすく、寄せ植えでも人気です。赤色、青色、白色、黄色などさまざまな花色があります。
「ピクシーデライト」シリーズ
分枝性に優れ、たくさんの花を咲かせる品種です。草丈40cmほどに20cmほどの花穂をつけます。低温が開花条件ではないため、暖かい地域で春に種まきができるのも特徴です。
‘リリアン’
4月下旬に開花期を迎える早咲きの品種です。草丈50cmほど、藤の花を逆さにしたような花穂をつけることから「のぼりふじ」の別名を持ちます。多彩な花色があるのも魅力です。
ルピナスの栽培12カ月カレンダー

開花時期:4月下旬〜6月
肥料:3月~6月上旬(元肥+追肥)、10月~11月中旬(元肥)
ポット苗の入手時期:春頃
植え付け:3月、10月~11月中旬
種まき:一年草の品種は9月上旬、多年草の品種は6月
ルピナスの栽培環境

日当たり・置き場所
ルピナスの置き場所は、日当たり・風通しがよい環境を選びましょう。
半日陰でも枯れることはありませんが、日当たりのよい場所に比べて生育が劣ることがあります。元気な花を咲かせたいなら、日当たりを考慮しましょう。
また、ルピナスは過湿を嫌うので、乾燥ぎみに保てる場所が適しています。
耐寒性・耐暑性
ルピナスは寒さに強く、マイナス5℃程度までは耐えられる植物です。ただし土が凍結すると根が傷むため、寒さが厳しくなってきたら、株元を敷きわらやバークチップで覆うなどの対策をしておきましょう。
一方で暑さには弱く、気温が25℃を超えると生育が止まってしまうため、一般的に冷涼な地域以外での夏越しは難しいとされています。
夏越しをさせたい場合は、鉢やプランターを半日陰や室内など涼しい場所に移動しましょう。ただし高湿に弱いため、移動先でも通気性を確保することが重要です。
ルピナスの育て方のポイント

ここまでは、ルピナスのプロフィールや基本的な性質、品種、花言葉など、幅広くご紹介してきました。だんだんルピナスのことが分かってきて「育ててみたいな」と興味を持っていただけたのではないでしょうか。ここからは、ガーデニングの実践編として、ルピナスの育て方について詳しく解説します。
用土

【地植え】
植え付ける1〜2週間前に、酸性土壌を改善するために苦土石灰をまき、さらに腐葉土や堆肥などの有機質資材を投入し、よく耕してふかふかの土を作っておきましょう。土壌改良資材や肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
草花用に配合された培養土を利用すると便利です。
水やり

株が蒸れるのを防ぐために、茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてましょう。
【地植え】
根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理しますが、多湿を嫌う性質なので、与えすぎに注意します。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチすることが、枯らさないポイントです。
肥料

【地植え】
あまり多肥を好まないため、植え付け時に十分な土づくりをしていれば、肥料は不要です。
【鉢植え】
晩秋〜冬に植え付けた場合は、生育が盛んになる少し前の3月上旬頃に、緩効性化成肥料を施すとよいでしょう。春に植え付けた場合は、元肥を施してあれば十分です。ただし、生育が悪いようなら速効性のある液肥を与えて様子を見ましょう。
注意する病害虫
ルピナスは、健全に育てていれば、ほとんど病害虫の心配はありません。ただし、多湿を嫌うため、いつもジメジメとした土壌の環境にしていると、根腐れしたり、病気を招いたりすることがあるので注意。苗が突然枯れてしまう「立ち枯れ病」は多湿によって病気を招くケースの一つで、水はけのよい土壌づくりをしておけば回避できます。
ルピナスの詳しい育て方

苗の選び方
ルピナスの苗を選ぶ際は、葉の色や茂り方、花穂がついているかどうかなどが判断ポイントです。葉の色がよく、株元からよく葉が茂っている苗を選びましょう。咲く前の花穂がついているかどうかも大切です。
種まき

ルピナスは、ビギナーでも種まきから育てられますよ! 種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がなく、環境に馴染みやすいことです。
フラワーショップなどで花が咲き始めた頃の苗を入手して、手軽に植え付けからスタートしたい場合は、次項へ進んでください。
ルピナスの発芽適温は15〜20℃で、種まきの適期は温暖地で9月下旬〜10月頃です。
マメ科の植物なので、根は太く長く伸びる「直根性」と呼ばれるタイプです。この根が折れたり傷んだりすると、その後の生育が悪くなる性質ため、できるだけ移植をせずにすむように、花壇に直接播くか、黒ポットで間引きながら育苗するとよいでしょう。また、ルピナスのタネは皮が硬いので、前日の仕込みが必要です。水を張った容器に一晩入れて吸水させ、やわらかくしておきましょう。
花壇に直接タネを播く場合は、土作りをしておいた花壇に25〜30cmの間隔を取って、1カ所に2〜3粒ずつ播き、タネのサイズの2個分ほどの土をかぶせます。最後に、たっぷりと水を与えます。はす口をつけたジョウロで高い場所から水やりをしますが、タネが流れ出さないように軽い水流で行うのがポイントです。また、播いた場所が分からなくなるのを防ぐために、名前を書いたラベルを立てておくと便利。発芽したら生育のよい苗を1本残し、ほかは間引きましょう。
黒ポットにタネを播く場合は、市販の草花用培養土を入れた黒ポットに2〜3粒播き、タネのサイズの2個分ほどの土をかぶせます。最後にたっぷりと水を与えましょう。日当たりのよい場所で管理し、発芽したら生育のよい苗を1本残して、ほかは間引きます。本葉が5〜6枚出揃うのを目安に育苗し、その後は土作りをした場所に植え付けます。
ここでは、一般的なルピナスの種まきについてご紹介しました。ルピナスは種類によってタネのサイズに差があり、種まきの適期が異なることや、種まきから開花まで2年かかることもあります。タネ袋には種類に応じた詳しい種まきの方法が明記されているので、その情報を確認するとよいでしょう。
植え付け

秋に種まきして育苗した場合、植え付けの適期は温暖地で10〜11月です。フラワーショップで苗を購入してスタートする場合は、春先まで苗が出回っているので、手に入り次第、植え付けます。
【地植え】
土作りをしておいた場所に、苗を植え付けます。ルピナスの根は「直根性」で移植を嫌うので、根鉢を崩さずにポットから出し、そのまま植え付けることがポイントです。複数の苗を植え付ける場合は、25〜30cmの間隔を取っておきましょう。植え付けた後に、たっぷりと水やりします。
【鉢植え】
鉢の大きさは、入手した苗の2回りほど大きいものを準備します。底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。ルピナスの苗を鉢に仮置きし、高さを決めます。ルピナスの根は「直根性」で移植を嫌うので、根鉢を崩さずにポットから出し、そのまま植え付けることがポイントです。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。寄せ植えの素材として、大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。
日頃のお手入れ

【花がら摘み】
ルピナスは、花茎を立ち上げて次々に開花していきます。花穂が咲き終わったら、花茎の付け根で切り取りましょう。すると、脇から二番花、三番花の花茎が立ち上がってきます。いつまでも終わった花を残しておくと、タネをつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなるので注意。早めに終わった花穂を摘み取ると、次世代を残そうとして長く咲き続けてくれます。株周りを清潔に保つことで、病害虫の抑制にもつながります。
タネの収穫

ルピナスは、花後にタネを採取することができます。タネを採取する場合は、一通り開花を楽しんで「もう開花期も終わる頃かな」というタイミングで、花穂を切り取らずに残しておきましょう。ルピナスはマメ科の植物なので、数粒の種が入った莢をつけます。茶色くなって莢がはじける前に収穫し、種まきの適期まで、乾燥剤とともに密閉できる袋に入れて保存します。
ただし、ルピナスはタネを自家採種しても、発芽率が低いことを覚えておきましょう。確実に多数の苗を確保したい場合は、市販のタネを購入して播くほうがよいでしょう。
増やし方
ルピナスの増やし方は、種まき一択です。詳しくは前述の種まきの項目を参照してください。
ルピナスを育てる際の注意点
ルピナスは全草、特に種子にルピニンという有毒なアルカロイドの一種を含んでいます。
犬や猫がルピナスを食べると、嘔吐や腹痛、呼吸不全、心臓麻痺など重大な健康被害を引き起こします。ペットを飼育しているエリアにルピナスを置かない、ペットが近づけないようにルピナスの周囲に柵を作るなどの対策をして、誤食を防ぎましょう。
万が一、ペットがルピナスを食べてしまった場合は、すぐに獣医の診察を受けて胃洗浄や催吐処置などを行います。
なお、ルピナスを食用している国もありますが、園芸植物のルピナスは食用に向きません。食中毒になる恐れがあるので、人間も絶対に食べないでください。
注目のスーパーフード! ルパン豆

園芸植物のルピナスは食べられませんが、食用に品種改良されたルピナスの種子「ルパン豆」は、次世代のスーパーフードとして世界で注目を集めています。
ルパン豆は、あらゆる植物のなかでタンパク質や食物繊維が群を抜いて高いのが特徴です。また、ミネラル分やプロバイオティクス(人間によい影響を与える微生物)も含んでいます。一方で炭水化物や脂質の含有量は低く、食欲を抑制する効果があります。
さらに、ルパン豆は大豆よりも栽培時のCO2排出量が少ないため、環境負荷の点からも優れた食材です。
諸外国では、ルパン豆の発酵食品や、加工して牛乳や肉の代用にした食品を開発しています。現代に適した「奇跡の豆」ルパン豆が、日常的に食卓に並ぶ未来も近いかもしれません。
美しいルピナスを育てて日常風景に彩りを!

この記事では、ルピナスのプロフィールや魅力、品種、育て方など、多岐にわたってご紹介してきました。縦の空間を見事に彩るゴージャスな咲き姿に、「一度は育ててみたい」と憧れるガーデナーは多いもの。この大人気のルピナスをぜひガーデンで育ててみてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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