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甘い香りを放つ カロライナジャスミンの危険な誘惑

甘い香りを放つ カロライナジャスミンの危険な誘惑

花つきがよく、株全体に鈴なりに花をつけるカロライナジャスミンは、ガーデンの構造物を覆うのにぴったりの植物。

植物といえば、花の美しさや緑の木陰など、私たちにとって心地よい面ばかりが注目されがちです。しかし、時に危険な秘密のほうが人を惹きつけるもの。ここでは身近に見られるガーデンプランツの中から、人を死に至らしめるほどの毒性を持つ植物を紹介します。妖しい魅力を放つ毒草の世界を堪能してください。

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禁帯出 ガーデン毒草図鑑 カロライナジャスミン

By Franz Eugen Köhler, Köhler’s Medizinal-Pflanzen (List of Koehler Images) , via Wikimedia Commons

カロライナジャスミン 植物データ

名称:カロライナジャスミン

英名・別名:イエロージャスミン Carolina jasmine

学名:Gelsemium sempervirens

科:マチン科

有毒部位:全草、特に根、蜜

有毒成分:ゲルセミン、ゲルセミシン、センペルビリンなどのインドールアルカロイド

満開に咲く花から一輪を摘み取って、あどけない子どもが口に含んで蜜を吸う―。思わず目を細めてしまうような愛らしい光景です。ですが、時にその仕草が悲劇を招くこともあるのです。以前には、甘い香りを漂わせるスイカズラの花の茂みに手を伸ばした子どもが、中毒症状を起こして死亡するという事件が発生しました。実は、この花は無害なスイカズラなどではなく、恐ろしい毒を持った、まったく別種の花だったのです。

この悲劇を引き起こした誘惑者の名前は、カロライナジャスミン。輝くような黄色い花に甘く周囲に漂う香り。絡まり合いながらつるを長く伸ばし、春にあふれるほどの花をつけるカロライナジャスミンは、ガーデナーにとってとても魅惑的な植物です。ガーデンのアーチやフェンスなどに絡め、滝のような豪華な花つきを楽しむ人もいるでしょう。しかしながら、この花の蜜はただ甘美なだけの液体ではありません。アルカロイド系の成分を含む、危険な毒物なのです。

カロライナジャスミンは、「ジャスミン」という名を持ってはいますが、ジャスミンティーなどに利用するモクセイ科のジャスミンとはあくまでも別種。どちらも香りがよいことから名づけられたといわれます。このジャスミンという名から、誤ってハーブティーに利用してしまうケースもあります。しかしながら、カロライナジャスミンには中枢神経に作用するゲルセミンという毒性の高い成分が含まれており、口にすると脈拍増加や呼吸麻痺、血圧降下、心機能障害などの中毒症状を引き起こします。日本でも2006年に、家庭で観賞用に栽培していたこの植物の花をハーブティーとして使用し、中毒症状を起こした事例が報告されています。ちなみに、カロライナジャスミンの属するマチン科には有毒植物が多く、マチンは南米などでは狩猟の際の矢毒として利用されてきました。古来よりその毒の存在が人類に知られ、利用されてきたほどの強力な有毒植物なのです。

アメリカ・カロライナ州の州花であるカロライナジャスミンは、ガーデナーにとっても人気の高い花。しかしながら、その甘い香りに見合わない強い毒も併せ持っています。あなたもジャスミンという名前に油断することのないように、くれぐれもご注意を。

花つきがよく、株いっぱいに咲くカロライナジャスミンは、ガーデンの構造物を覆うのにぴったりの植物。
甘い香りを漂わせる黄花。この花の蜜ばかりを集めた場合、ミツバチにとっても有毒になりうるという説もあります。

カロライナジャスミンの育て方

カロライナジャスミン
Stanley Ford/Shutterstock.com

カロライナジャスミンは、病害虫の被害も少なく、育てやすいつる植物。開花期の4~6月頃には、明るい黄色の花を株いっぱいに咲かせた姿が、ガーデンでよく見られます。毒性はありますが、口にしなければ問題はほとんどありません。剪定の際には、ビニールの手袋などで肌に直接樹液がつかないようにすると安心です。そんなカロライナジャスミンの基本の手入れ方法や仕立て方を解説します。

植え付け

カロライナジャスミンは、苗から育てるのが一般的です。苗の植え付け時期は、春か秋。4月頃または9月頃が植え付けの適期です。地植えでも鉢植えでも育てることができますが、鉢植えにした場合は、根詰まりを防ぐために1~2年に1回程度植え替えをするとよいでしょう。葉が黄色くなって落ちる時は、根詰まりを起こしている可能性がありますので早めに植え替えましょう。

土質はあまり選びませんが、水はけのよいやや乾いた土を好みます。植え付けの前に、あらかじめ堆肥や元肥を混ぜ込んでおきましょう。

日当たりを好み、日光が不足すると花つきが悪くなりやすいため、日陰を避けて日当たりのよい場所で育てます。耐寒性は-5℃程度とあまり強くなく、寒冷地での栽培には向きません。関東以西では地植えでの栽培ができますが、寒冷地では鉢植えにして、冬は室内の日当たりのよい場所に取り込んで管理したほうがよいでしょう。また、屋外で冬越しさせる場合にも、霜や寒風の当たる場所は避けたほうが無難です。

水やりと肥料

カロライナジャスミンの水やりは、鉢植えの場合は鉢土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。開花時期の春と、夏は乾かしすぎないように水やりの回数はやや多めにし、冬は乾かし気味に管理しましょう。地植えの場合は、水やりはほとんど必要ありませんが、雨が降らない日が続くようであればたっぷりと水を与えましょう。

肥料はあまり必要としませんが、冬に有機質肥料を与え、花後の秋に追肥を控えめに与えるとよいでしょう。

仕立て方と剪定

つる性の植物であるカロライナジャスミンは、誘引をして仕立てることで、より美しい咲き姿を楽しむことができます。生育が旺盛で、つるの長さは3~7mほどにもなるので、フェンスやパーゴラ、アーチ、支柱などの構造物や、樹木に絡ませると、開花期には見事な景色をつくってくれます。誘引は簡単で、つるを構造物などに絡ませるようにすると、自然に巻きつきながら伸びていきます。コンパクトに生育する鉢植えの場合は、アサガオの栽培などと同じくあんどん仕立てにすると、ボリュームのある咲き姿が楽しめますよ。枝が柔らかいので、いつでも誘引することができます。ただ、特に誘引や仕立てをしなくても、株が暴れることは少なく、放任でも栽培できます。

剪定は花後に行います。つるを整理して株姿を整える際には、花後につるを全体の1/3程度切り戻して、新しい枝の発生を促します。夏に花芽が形成されるため、夏を過ぎてから枝を切ってしまうと花芽を落としてしまい、翌年花が咲かなくなってしまうことがあります。夏以降は枝を切ることは避けて摘心程度にとどめ、徒長枝のみを切るようにしましょう。

Photo/ 2)pilialoha/ 3)KPG_Payless/ 4)alybaba/ 5)Skyprayer2005/ Shutterstock.com

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