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小さいけれど強い植物! スズランの特徴や種類・育て方をご紹介

小さいけれど強い植物! スズランの特徴や種類・育て方をご紹介

manabun/Shutterstock.com

秋植え球根のスズランは、春に小さなベル形の白い花を咲かせ、清楚な雰囲気をまとっています。庭や鉢に植えてガーデニングを楽しむほか、花束をプレゼントしても喜ばれる人気の花です。この記事では、そんなスズランの特性や基本情報、種類、育て方、取り扱いに注意すべきことなど、幅広くご紹介していきます。

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スズランってどんな花?

春にうつむき加減に咲く小さな花が魅力のスズランについて、特性やライフサイクルなど、基本情報をご紹介しましょう。

スズランの見た目

スズランの花
Agata Buczek/Shutterstock.com

スズランの草丈は15〜20cm程度と小ぶりですが、環境に合えば50cmほどの大株になることもあります。花茎を伸ばした先に、白いベル形の花が咲きます。一つの花は1cmに満たないほど小さく可憐ですが、花茎には10個ほどの花が連なり、清楚な華やかさが持ち味。花色は白がポピュラーですが、ピンクの品種もあります。

スズランの特徴

スズラン
Suriya Wattanalee/Shutterstock.com

スズランは、キジカクシ科スズラン属の多年草です。原産地はヨーロッパ、東アジア、北アジア。夏の暑さに弱い一方で、寒さには大変強く、北海道を代表する花となっています。

スズランのライフサイクルは、以下の通りです。4月頃に新芽が動き始めて葉を展開し、4〜5月に開花。6月頃に赤い実をつけます。そのまま葉を広げて秋までは青々としていますが、晩秋になると地上部を枯らして休眠します。ただし、枯れたと判断して掘り上げて捨てないでください。冬を越せば、また春に新芽を出して生育期に入ります。このように、一度植え付ければ毎年開花を楽しませてくれる、コストパフォーマンスに優れる植物です。

一つ注意していただきたいのは、スズランは全草に毒を含有していること。詳しくは後の項目で触れますが、取り扱いには十分注意してください。毒を持っているために病害虫がつきにくいというメリットもあります。

スズランの種類

スズランの種類
mizy/Shutterstock.com

スズランは、ヨーロッパ原産のドイツスズランが一般的に流通していますが、日本原産のスズランもあります。

ドイツスズランは、葉が大きく艶やかなのが特徴で、開花する位置が高く、花には芳香があります。可愛らしいピンク色の花を咲かせるピンクスズランや、大きめの花が咲く‘ドリーン’が人気。葉にストライプ状に黄色い斑が入るアルボストリアタは、花が咲かない時期もカラーリーフプランツとして楽しめます。

日本原産のスズランは本州中部以北に自生しており、寒さには強いものの高温多湿には弱く、山野草として流通しています。開花する位置が低く、葉に隠れるようにして咲く楚々とした風情が魅力です。

スズランの育て方は?

ここまで、スズランの特性や基本情報、種類についてご紹介してきました。ここからは実践編として、育て方について解説。適した環境や植え付け方、水やりや肥料の与え方といった日頃の管理など、詳しく掘り下げていきます。

スズランの育て方1. 適した環境

スズランの育て方
Shutova Elena/Shutterstock.com

【地植え】

スズランは日当たり、風通しのよい場所を好みます。真夏の猛暑を嫌うので、冬は葉を落として日当たりがよく、初夏からは半日陰になるような落葉樹の足元がおすすめ。午前中のみ日が差す、東側の土地でもかまいません。そのような環境がなければ、夏前に掘り上げて鉢植えにし、風通しがよく涼しい場所で夏越しさせてもよいでしょう。寒さには強く、地植えのままにして越冬できます。

また、スズランは多湿を嫌い、水はけのよい土壌を好みます。植え付けの際は腐葉土や堆肥など有機質資材を土壌にすき込んでふかふかの土作りをし、やや盛り土をしておきましょう。

【鉢植え】

基本的には日当たり、風通しのよい場所で管理します。ただし夏の暑さに弱いので、真夏は半日陰の涼しい場所に移動しましょう。一方で、寒さには強いので、特に防寒対策は必要ありません。

用土は、草花用にブレンドされた園芸用培養土を使うと便利です。

スズランの育て方2. 植え付け

ガーデニング
Peter Kniez/Shutterstock.com

スズランの植え付けは、3月か11月〜12月上旬が適期です。花苗店などで開花株を買い求めた場合は、植えたい場所へ早めに定植します。

【地植え】

土づくりをしておいた場所に、入手した苗の根鉢より1〜2回り大きな穴を掘って、植え付けましょう。複数株を植え付ける場合は、約20cmの間隔を取っておきます。最後にたっぷりと水やりをしておきましょう。

【鉢植え】

鉢の大きさは、5〜6号鉢に1株を目安にするとよいでしょう。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。スズランの苗をポットから取り出して鉢に仮置きし、高さを決めます。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら用土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。寄せ植えの素材として、大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。

スズランの育て方3. 水やり

水やり
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【地植え】

植え付け後にしっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、晴天が続いて乾燥しすぎる場合は水やりをして補いましょう。真夏は昼間に水やりするとすぐにお湯状になり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。

【鉢植え】

日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。

また、真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、直射日光が当たらない半日陰の場所で管理し、朝夕2回の水やりを欠かさないようにします。真夏は気温が上がっている昼間に水やりすると、すぐにお湯状になり、株が弱ってしまうので、朝夕の涼しい時間帯に行うことが大切です。冬は休眠していますが、水やりをやめずに控えめに与えて管理します。

スズランの育て方4. 肥料

肥料
Singkham/Shutterstock.com

スズランは、一度植え付ければ毎年花を咲かせる息の長い植物なので、肥料を補って株の勢いを保ちましょう。地植え、鉢植えともに、新芽が吹き出す前の3月〜4月上旬と、開花後の6月頃が適期です。

【地植え】

牛糞堆肥などの有機質肥料を株の周りにまいて、軽く耕して土にすき込みます。

【鉢植え】

においが発生しない緩効性化成肥料を使うと便利です。鉢栽培では水やりのたびに肥料成分が流れ出すので、開花期にはリン酸分を多めに配合した液体肥料を補うと、花数が多くなります。製品に書かれている希釈倍率や用法を守って与えるようにしましょう。

スズランの育て方5. 花がら摘み

スズランの花殻
FunFamilyRu/Shutterstock.com

スズランは、花茎を立ち上げて花を咲かせるので、つぼみがつかなくなったら花茎の元から切り取ります。タネを採取しないのであれば、花がらはまめに取り、株まわりを清潔に保っておきましょう。いつまでも終わった花を残しておくと、タネをつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。

スズランの育て方6. 病害虫対策

見た目は可憐なスズランですが、意外と病害虫が発生しにくい植物なんです! 特に虫が苦手な方には、庭やベランダに迎え入れるのに、おすすめの植物といえます。

スズランの育て方7. 植え替え

ガーデニングツール
Nataly Studio/Shutterstock.com

スズランを植え替える際は、3月か11月〜12月上旬が適期です。

【地植え】

一度植え付けたら、3〜5年は植えっぱなしにしてもかまいません。しかし、大株に育って地下茎が込んでくると生育が衰えるので、掘り上げて株分けし、植え替えましょう。

【鉢植え】

1〜2年に1度を目安に植え替えます。根が鉢底からはみ出して根詰まりし、生育が鈍くなっているようなら、植え替えましょう。鉢から株を出して根をほぐし、1〜2回り大きな鉢に植え替えます。大株にしたくない場合は、4〜5芽つけて株を切り分ける「株分け」をし、数鉢に植え直すとよいでしょう。

スズランの育て方8. 増やし方

【株分け】

植え替える際に大株に育っていたら、4〜5芽つけて根を切り分ける「株分け」をし、植え直します。株の若返りにもつながり、切り分けた分だけ株を増やすことができます。株分けのメリットは、同じ花が見られるクローンが増えることです。スズランは全草に毒を含むため、作業の際にはゴム手袋をはめておきましょう。

【種まき】

スズランのタネはほとんど流通していないので、種まきをする場合は花がら摘みをせずに実をつけさせてタネを採取します。スズランは全草に毒を持っているので、作業の際には必ずゴム手袋をはめましょう。グリーンの実が熟れて赤くなった頃に、実を採取して皮をむき、果肉からタネを取り出しましょう。タネが乾燥しないうちに、種まき用のトレイに用土を入れて播き、半日陰に置いて水やりを忘れないように管理します。翌年の春頃に発芽し、本葉が数枚ついたら黒ポットに鉢上げして育苗しましょう。種まきから発芽までかなり時間がかかるので、ビギナーさんなら苗を園芸店で購入するか、株分けして増やす方法がおすすめです。

スズランの毒に気をつけよう!

スズランに病害虫が発生しにくいのは、全草に毒を持っているからです。スズランに含まれる有毒成分は30種を超えるとされ、摂取すると頭痛や嘔吐、めまいや不整脈、血圧低下などの症状が現れます。中でもスズランに含まれる強い有毒成分のコンバラトキシンは致死量が約18mg前後ですから、微量を摂取しても死を招く危険性があります。実際に、スズランをコップに活けておいたところ、そのコップの水を幼児が誤飲して、死亡した例もあるほど。花粉にも毒を含むため食卓に飾るのは厳禁ですし、ペットや幼児のいる家庭では、手の届かない場所に置くなどの注意が必要です。ガーデニングをする際も、必ずゴム手袋をして取り扱いましょう。

スズランは水栽培で育てることもできる

ガラスの花瓶
Dzha33/Shutterstock.com

スズランは、ヒヤシンスのように水栽培をすることが可能です。日当たりのよい室内で育てることができ、身近なところで日々成長する様子を楽しめます。土を使わないため手軽で、小さな瓶を利用して水栽培すれば、場所を取らず、移動も簡単。液肥を正しく用いて養分をサポートすれば、順調に生育しますよ! ただし、前述のように全草に毒を持っているので、置き場所や取り扱いには注意しましょう。

来年も花を咲かせるためのコツは?

スズランは多年草なので、一度植え付ければ、春には毎年開花を楽しめます。しかし、「1年目は開花してくれたのに、気づいたら消えていた、なぜ !?」という声がよく聞かれます。そこで、スズランを毎年咲かせるためのポイントをまとめました。

【暑い夏を乗り切る】

スズランは、日本の暑い夏が大の苦手。夏をうまくしのぐことが最大のポイントといえるでしょう。真夏は直射日光にさらされるのを防ぐ以外に、風通しがよく涼しい場所で管理するのがポイント。いっそのこと鉢植えにして、クーラーのきいた部屋に取り込み、レースカーテン越しの日が入るような場所で管理するのも一案です。その場合、水は乾燥させない程度に、蒸れないように控えめに与えるとよいでしょう。

【地下茎を育成する】

スズランは地下茎にエネルギーを溜めて、翌年の開花に備えます。花が咲き終わったあとは株が消耗しているので、必ず肥料を与えることが大切です。これを「花を咲かせてくれてありがとう、来年もよろしくね」という目的で施す「お礼肥(おれいごえ)」といいます。葉が光合成をして地下茎にしっかりとエネルギーを蓄えられるように、邪魔になるからといって茎葉を紐などで束ねることも厳禁です。

スズランは小さくても丈夫!
夏はしっかり管理しよう

スズラン
Prilutskiy/Shutterstock.com

春先に見せてくれる花姿は可憐で、人気が高いスズラン。病害虫がつきにくく、ガーデニングのビギナーでも育てやすい植物です。暑さに弱い性質がキーポイントになりますが、夏越しさえできれば、生命力が強くてよく増え、毎年開花してくれます。ぜひガーデンやベランダに迎え入れて、スズランを愛でてはいかがでしょうか。

Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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