フリチラリアは、個性的な見た目が特徴的で人気が高い一方で、「育てるには難易度の高い植物」というイメージを持たれがち。でも、基本をしっかり押さえて、その性質にあった管理をすれば、毎年開花を楽しめる息の長い植物です。この記事では、フリチラリアの特徴や基本情報、育て方など、幅広く解説していきます。

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フリチラリアとはどんな花?

チューリップやヒヤシンスなど、人気の球根植物に比べると、フリチラリアはややマイナーな存在かもしれませんね。名前を聞いても、どんな花姿をしているか、ピンとこない方も多いのではないでしょうか。ここでは、そんなフリチラリアの特徴について、詳しく解説していきます。

フリチラリアの見た目

フリチラリア
Maleo/Shutterstock.com

フリチラリアは、北半球の温帯に100種類ほどが確認されており、その花姿は多様です。日本では黒い花を咲かせるクロユリ、ごく淡いグリーンの花色の内側に網目模様が入るバイモなどが古くから自生し、茶花として利用されてきた馴染みのある植物です。

数ある種類のうち、ガーデニングでフリチラリアとして代表的な存在となっているのが、フリチラリア・インペリアリスです。逆に「フリチラリアって100種類もあるの!?」と驚く方もいるかもしれません。全てに言及すると枚挙に暇がないので、ここでは最もポピュラーなインペリアリスの見た目についてご紹介しましょう。

インペリアスは、4月中旬〜5月中旬に開花します。花色は、目を引く鮮やかな黄色かオレンジ。太い花茎を長く立ち上げた頂部に5輪ほどのベル型の花がうつむいて咲きます。これらの花の上にも葉がつき、まるでパイナップルのようなユニークな姿をしています。草丈は60〜100cmくらいになり、ビビッドカラーの黄色やオレンジの愛らしい花姿は大変目を引くので、春のガーデンに個性を演出したい時におすすめです。

フリチラリアの特徴

フリチラリア
Pawel Graczyk/Shutterstock.com

フリチラリアは、ユリ科バイモ属の球根植物で、前述の通り北半球の温帯地域に100種類ほどが分布しています。

ここでも、紙幅を考慮してガーデニングで最も親しまれているインペリアリスに絞ってご紹介しましょう。インペリアリスの原産地はトルコ、イランなどの中近東で、耐寒性には強いものの、暑さに弱い性質があります。特に高温多湿が大の苦手です。ライフサイクルとしては、10〜11月頃に球根を植えて、寒さにあわせて越年させます。3月下旬頃から成育が著しくなり、4月中旬〜5月中旬に開花。開花後も茎葉を茂らせますが、6月頃になると地上部の茎葉が黄色く枯れ込んで落葉します。地上部が枯れたからといって枯死したわけではなく、球根は休眠しているだけです。秋になると再び芽が動き出して春には再び開花するという、一度植え付ければ毎年開花してくれる、息の長い植物です。ただし、植えっぱなしにしてよいわけではなく、前述のように高温多湿な日本の夏が大の苦手とする性質を持っているので、地上部が枯れ込んだら球根を掘り上げて保管するという一手間がかかることを知っておいてください。

フリチラリアの種類は?

フリチラリアの種類は北半球を中心に100種以上が見つかっていますが、インペリアリスのほかにも、メレアグリス、クロユリ、バイモなどもガーデニングで球根や苗などが流通しています。それぞれの特性についてご紹介しましょう。

【フリチラリア・メレアグリス】

フリチラリア・メレアグリス
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ヨーロッパ〜西アジアの高原地などが原産。草丈は20〜30cmほど。花色は深い赤紫で、網目模様が入るのが特徴的です。細めの花茎を数本長く伸ばした先に、ベル型の花を1輪咲かせます。白花の‘アルバ’、紫×白のモザイク模様になる‘アルテミス’などの園芸品種もあります。

【クロユリ】

クロユリ
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北日本、サハリン、カムチャッカ半島が原産地。高山植物で、やや湿り気のある土壌を好みます。6〜8月頃、直立した茎の頂部に黒いベル型の花をうつむき気味に咲かせます。花には独特のにおいがあり、英語では「Skunk Lilly(スカンクユリ)」と呼ばれるほどです。

【バイモ】

バイモ
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中国が原産地。日本には江戸時代に伝わり、「アミガサユリ」とも呼ばれ、薬草として用いられていたようです。草丈は40〜60cmくらい。開花期は4〜5月で、ごく淡いグリーンの花弁の内側に、黒い網目模様が入るのが特徴。細い花茎を伸ばした頂部にややうつむいて咲く姿が可憐で、山野草の趣があります。

フリチラリアの育て方は?

ここまで、フリチラリアの特性や種類などについて、ご紹介してきました。ここからは、実践編としてフリチラリアの育て方について、詳しく解説していきます。

フリチラリアの育て方1. 球根の植え付け

土作り
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球根植物に分類されるフリチラリアは、球根を入手して植え付けます。球根の植え付け適期は10〜11月です。

花苗店などで開花株を買い求めた場合は、植えたい場所へ早めに定植します。植え付けの際は根鉢を崩さずに作業しましょう。

【地植え】

フリチラリアを植える場所は、直射日光が強く当たりすぎない半日陰で、風通しのよい環境を選びます。植え付ける1〜2週間前に、腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで耕し、土作りをしておきましょう。あらかじめ土作りをしておくと、ゆっくりと分解が進んで熟成し、植え付ける頃には適した土壌になっています。水はけのよい土壌を好むので、水はけの悪い環境では盛り土をして対策をしておくとよいでしょう。

土作りをしておいた場所に、インペリアリスのように大型に育つ種類は深さ10〜12cmの穴を掘って球根を植え付け、複数球を植える場合は約30cmの間隔を開けます。小型のサイズの種類は、深さを6〜10cmにし、間隔約15cmを取って植え付けましょう。最後にたっぷり水を与えます。

【鉢植え】

鉢で栽培する場合は、草花用にブレンドされた市販の培養土を利用すると便利です。鉢のサイズは、インペリアリスなど大型に育つ種類は、6〜7号鉢に1球を目安にします。小型に育つ種類は5〜6号鉢に4〜5球を目安にするとよいでしょう。

用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を入れます。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。フリチラリアの球根は、大型の種類、小型の種類ともに深さ約5cmを目安に植え付けます。最後に、鉢底からたっぷりと水が流れ出すまで、十分に水を与えましょう。寄せ植えの素材として、大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。

フリチラリアの育て方2. 日常の管理

水やり
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  • 水やり【地植え】

水やりは、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、晴天が続いて乾燥が続く場合は、水やりをして補いましょう。

【鉢植え】

水やりは、日頃から忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。球根を掘り上げずに鉢に植えたままにして休眠期を過ごす場合は、水やりを控えめにしますが、カラカラに乾かさないように時々水やりをしましょう。

  • 支柱の設置

インペリアスなど大型に育つ種類には、支柱を立ててビニタイや麻ひもなどで茎をくくりつけて誘引し、倒伏を防ぎます。

  • 開花期のケア

開花期に日当たりがよすぎる環境のもとでは開花期間が短くなる傾向にあります。朝だけ日が差し込む東側や、木漏れ日がチラチラと差す半日陰の場所で育てるのが一番ですが、そのような環境ではない場合は、日よけのケアをしてあげましょう。

【地植え】

日当たりがよすぎる場所では、花が咲く頃に寒冷紗などを張って遮光し、シェードを作ります。

【鉢植え】

朝だけ日が差す東側や、チラチラと光が差す程度の緑陰のもとなど、明るい半日陰の場所に移動して管理します。

  • 切り花として楽しむ

バイモユリやクロユリなどは茶花として利用されてきたこともあり、ガーデンで咲いた花を摘み取って、インテリアに飾っても素敵です。ただしインペリアリスなどのように、種類によっては、独特のにおいを放つものもあるので、ご注意を。

咲いた花を切り取るタイミングは、昼間のように植物が水分を発散していない朝か夕方にします。水に浸る葉があれば取り除いて、水が腐りやすくならないようにしましょう。

  • 花がら摘み

花が咲き終わったら花首で切り取り、株周りを清潔に保っておきましょう。

フリチラリアの育て方3. 開花後の管理

フリチラリアの球根
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  • 水やり

開花後、茎葉がみずみずしいグリーンの状態の時期は、日常の管理の項目で説明したように、地植えまたは鉢植えに適した水やりをします。

  • 球根の掘り上げ

6月頃には葉が黄色く枯れ込んで、休眠の準備に入るので、球根を掘り上げて貯蔵します。高温多湿の環境を嫌うので、梅雨前には済ませておくとよいでしょう。

球根を傷つけないように掘り起こし、地上部の茎葉を切り取ります。球根が増えている場合は、分球してもかまいません。ベンレートなど殺菌剤を溶かした水溶液にしばらく浸した後にやや表面を乾かします。やや湿り気のあるおがくずやバーミキュライトなどに埋め込んで、涼しい場所で保管しましょう。秋の植え付け適期がやってきたら、再び植え付けます。

フリチラリアの育て方4. 肥料

肥料
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  • 元肥

元肥は、球根を植え付ける時に施す肥料です。植え付ける前に土壌を肥沃にしておくことで、成育するパワーの源となります。

地植えの場合は腐葉土や堆肥、有機質の緩効性肥料を施しておきます。鉢植えの場合、市販の草花用にブレンドされた培養土には、あらかじめ元肥が配合されたものが多いので、肥料過多にならないように元肥が必要か確認しましょう。元肥が必要な場合は、緩効性化成肥料を使うとにおいがなく手軽に利用できます。

  • 追肥

追肥は、元肥のパワーを使い終えた頃に追加として与える肥料です。越年して春めいた後、3〜5月にぐんぐん成育する時期に与えます。庭植え、鉢植えともに緩効性化成肥料を表土にばらまいてなじませるとよいでしょう。

鉢栽培の場合、株に元気がないようであれば速効性のある液肥を与えてもOKです。開花期に10日に1度を目安に液肥を与えて株の勢いを保ってもよいでしょう。

  • お礼肥

開花が終わった後に、株が花を咲かせたことによって体力を消耗した状態になっているのを回復させるためと、球根を充実させるために与える肥料をお礼肥といいます。開花後でも茎葉が青々としている間は株の勢いを保ち、養分をしっかりと球根に溜め込むように肥料を与えておきましょう。緩効性化成肥料を表土にばらまいて土によくなじませておきます。

フリチラリアの育て方5. 病害虫対策

アブラムシ
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フリチラリアは、3月下旬頃からアブラムシが発生しやすくなります。土壌に混ぜ込むタイプの粒剤を施すと対策できます。また、ナメクジが発生して茎葉などを食害することがあります。ナメクジは夜に活動するので、日が落ちた頃にパトロールして見つけ次第捕殺しましょう。大量に発生しているようなら、ナメクジを駆除するための薬剤を利用するのも一案です。

また、フリチラリアは病気が発生しにくいほうですが、球根を掘り上げた時に柔らかくなっていたり、黒ずんだりしていたら、腐っている可能性があるので、病気が蔓延するのを防ぐためにも、ただちに処分しましょう。

フリチラリアは園芸初心者には難しい?
休眠期間がポイント

ビギナーにとって、フリチラリアの栽培はハードルが高いとよくいわれます。枯らしてしまいがちな注意すべきポイントがいくつかあるので、ご紹介します。

水やり

水やりを忘れてしまい、乾燥させると根が傷んでしまいます。すると根から水分を吸収する力が弱くなってしまうので注意を。フリチラリアは乾燥に弱いので、水の管理に気を配りましょう。ただし水をたっぷり与えればいいというものでもなく、適度に湿度を保った土壌に保つことが大切です。また、開花後も茎葉がグリーンを保っている間も水やりを続けます。地上部の葉が黄色く枯れ込む休眠期を迎えるまでは、忘れずに水やりをしましょう。

球根の管理

地上部の葉が黄色く枯れ込んで休眠期に入ったら、球根を掘り上げて貯蔵することがポイント。フリチラリアは高温多湿の環境を嫌うので、掘り上げて涼しい場所で管理するとよいでしょう。

同じ理由から、植え付けの際は残暑が残った時期に球根を植えるのは厳禁。十分涼しくなってから植え付けるようにします。また、一定の寒さにあわないと開花しないので、寒くなる前に植え付け、鉢栽培の場合は戸外で管理することも大切です。

また、数年の栽培に成功して球根が充実した状態なのに、分球せずに植え付けると茎葉が込み合い過ぎる密集状態になって、うまく育たなくなってしまうこともあります。球根が分球できる状態に太っていたら、掘り上げた際に増えた球根をはずして分球するとよいでしょう。

インパクトが大きいフリチラリアの花!
休眠期間の管理を大切に

フリチラリアの花
Edita Medeina/Shutterstock.com

フリチラリアは、インパクトのある咲き姿が魅力の植物です。元々は一度植え付ければ何年も咲いてくれる息の長い植物ですが、枯らさずに何年も楽しむためには、花が終わった後の休眠期間の管理がポイントになります。基本を押さえればうまく栽培できるので、庭に個性を発揮してくれるフリチラリアを迎え入れてはいかがでしょうか。

Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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