日本の野山に自生し、古くから和紙の原料として利用されてきたミツマタ。春早くにポンポンのような花が木の先端に咲く落葉樹です。古くから育てられ、和紙の原料でもあるミツマタは、庭木としても育てやすく日本人にとって馴染み深い植物の一つ。そのミツマタの特徴や性質、育て方をご紹介します。

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ミツマタの特徴

ミツマタ

ミツマタは早春に枝の先に花が咲き、その後に同じ場所から3本の枝が伸びます。そのため、ミツマタの枝は常に3本セットで先端が3つに枝分かれしています。この独特の枝振りから「ミツマタ」の名がついたといわれています。

秋になると葉を落とす落葉性の樹木で、大きく育っても1~2mとコンパクトサイズで育てることができ、よく枝分かれするため丸い樹形に育ちます。

ミツマタの花

早春に咲く花は蜂の巣のような独特な花姿で、下を向いて咲くところにも風情があります。花芽は前年の秋に枝の先端にでき、暖かくなるとともに咲き始めます。

樹形がまとまりやすく、花の観賞価値も高いため、庭植えだけではなく鉢植えや盆栽などでも広く人気がある樹木です。

ミツマタの用途

ミツマタと和紙

ミツマタは高級和紙の原料として利用されています。紙の原料として使われるのは、ミツマタの樹皮です。和紙の原料として使われるものとしては、ミツマタのほかにもコウゾ、ガンピなどがありますが、ミツマタで作られた和紙はこれらに比べてより丈夫で、紙の表面に光沢があるため、より高級感のある紙を作ることができます。

日常生活で使う紙幣もミツマタを原料として作られているため、繰り返しの仕様や、水濡れにも強いのです。

ミツマタの生産は高知県で盛んで、そのためもあってか四国の野山にはミツマタの自生が多く見られます。また、九州でも里山などでよく見かける樹種となっています。

ミツマタがその名で初めて文献に登場するのは16世紀とされ、その頃に中国から伝来したという説があります。

その一方で、奈良時代(710〜794年)の末期に成立したとされる『萬葉集』には「サキクサ(三枝)」と記されている植物があり、これがミツマタであるという説もあります。

樹皮を利用する際には、枝を切って収穫し、樹皮以外は焚き木などに使われていましたが、近年はこれを炭に加工したり、ミツマタの炭を使った石けんなどの材料にも使われています。

ミツマタの育て方

植え付け

ミツマタは日なたから日陰まで、さまざまな場所で育てることができる樹木です。

自然界では、花が咲いたあとにできたタネは、ほかの植物の陰で育つため、幼苗のうちはあまり光が当たらない場所でもよく育ちます。

十分に大きく成長してからは、しっかりと日が当たる場所のほうが花がよく咲きますが、高温期に西日が当たるような場所は苦手です。

終日明るい木漏れ日が当たる場所、朝からお昼過ぎくらいまではよく日が当たるけれど西日が当たらない場所などが、植え場所・置き場所として適切です。

水が滞留するような環境は苦手なので、水はけがよく、肥沃な土壌に植え付けましょう。

植え方

植え付け

落葉性の樹木ですので、落葉期であれば植えつけや植替えをおこなうことができますが、最適期は春になって暖かくなってきた頃です。月でいえば3〜4月ですが、ミツマタが開花している時期がそれに当たります。

水はけがよい場所を好むので、雨が降ると水たまりができてなかなか水が引かないような場所は適しません。また、根が土の浅い部分に広く広がるので、常に土が乾いてしまっているような場所も好みません。

自然界でいえば、地面が落ち葉で覆われていて土が常に適度な湿り気を持っているけれど、雨が降っても水が滞留しない斜面のような場所です。

庭であれば、雨水が流れ込まず、落ち葉や腐葉土、バークチップなどで地面が覆われているような環境がよいでしょう。

庭植えにするときは、こうした場所の土に桐生砂や軽石などを同量混ぜ込み、高植えにします。

鉢植えの場合は庭土か中粒赤玉土に桐生砂や軽石を等量混ぜたものに、完熟堆肥や腐葉土などの有機質を混ぜ合わせた用土を使います。

ミツマタは根が弱いので、植え付けの際に根をいじりすぎるのは禁物です。苗がポットなどに植えられている場合は、根鉢を崩さないように丁寧にポットをはずして植え付けましょう。

根が弱いため、移植も嫌います。鉢植えであれば開花期に根をくずさないで植え替えたり鉢増しをすることができますが、庭植えの場合は、移植はできないものと考えたほうがよいでしょう。

水やりと肥料

水やり

鉢植えは通年、鉢土の表面が乾いたら、底から水が抜けるまでたっぷりと水やりをします。

庭植えは植えつけてから1年の間は、植え場所の土が乾いたら水やりをします。ミツマタは土が乾きすぎると根が傷んでしまうので、植えつけたばかりの株や、鉢植えの株、特に暑い時期は水切れさせないように注意しましょう。

肥料は落葉期に、春の芽吹き前に施します。

庭植えは、枝が広がっている範囲の地面に緩効性の固形肥料を規定量、数カ所に分けて埋めておきます。

鉢植えは鉢土の表面に緩効性の固形肥料を規定量置きます。鉢植えは花後に化成肥料を「お礼肥」として与えてもよいでしょう。

花後にあまりたくさん肥料を施しすぎると、花芽がつきにくくなるので、規定量よりやや控えめな量を施します。

剪定の時期

剪定

ミツマタは早春に花が咲き、花が終わると枝の先端から3本の枝を伸ばします。この、花後に伸びる枝の先端に、翌年花が咲く花芽をつけます。

剪定の適期は落葉している秋から冬ですが、このときにはすでに花芽ができています。

木が大きくなりすぎたからいって、枝の先端を刈り込むような剪定を行うと、花芽を切り落とすことになってしまいます。

伸びすぎた枝の剪定をする場合は、幹から生えているつけ根で切るようにします。

花が終わると枝が伸び始めますが、新しい枝が伸びる前に、枝が伸びる芽の数を減らすこともできます。

一カ所から3本出ている枝のうち、真ん中の1本をつけ根で切って枝数を減らすと、新しく伸びる枝の数を減らすことができます。

太い枝を切るような思い切った剪定は樹木に大きな負担を掛けるため、落葉している休眠期に行います。花後の剪定では、細い枝を切る程度にとどめておいたほうがよいでしょう。

ミツマタの増やし方

ミツマタは実生(種まき)、挿し木、接ぎ木で増やすことができます。

梅雨入り前になると実ができるので、収穫して中のタネを取ることができます。

タネの周りには発芽抑制物質がついていて、そのまま播いても発芽しにくいので、固めのスポンジなどで揉むようにして洗ったり、砂とタネを混ぜたものを手のひらの上でこすり合わせたりして取り除きましょう。

タネはすぐに取り播きにしてもよいのですが、発芽は翌年の春になります。

また、発芽まではタネが乾燥しないように水やりを行います。

発芽までは何もない鉢に水やりをすることになり、水やりも忘れがちです。

タネを取って洗ったら、湿らせた砂と一緒にビニール袋などに入れて冷蔵庫で保存し、翌年の春になってから播いてもよいでしょう。

タネ播きは4〜5月が適期です。

播く前に念のため再度タネを洗いましょう。このときに、水をためたバケツにタネを入れてみて、沈むものだけを播きます。水に浮いてしまうものは発芽しません。

挿し木

実生(種まき)で作った株は性質にバラつきがあり、採種した親株の性質を完全に受け継ぐとは限りません。

葉に斑入りの模様が入っていたり、花に特徴がある株の場合は、種まきで増やしても同じ性質のものが生まれるとは限りません。

親の性質を受け継いだ株を作りたいのであれば、挿し木や接ぎ木が適しています。

挿し木は前年伸びた枝を20cmほどに切って水あげし、肥料分を含まない清潔な用土に挿します。

接ぎ木は、実生などで作った台木に、増やしたい株の枝を接ぎます。

挿し木、接ぎ木ともに、適期は2〜7月ですが、花が咲いている間は成功しにくいので避けましょう。

ミツマタの害虫

害虫はあまりつきませんが、テッポウムシ(カミキリムシの幼虫)が幹を食害することがあります。

株元におがくずのようなものが落ちていれば、テッポウムシがいる可能性があります。

幹肌をよく観察して、テッポウムシが入っている穴があいている場所を探しましょう。穴から樹液が垂れていることもあります。

テッポウムシの穴を見つけたら、やや硬めの針金などを穴に突き入れて捕殺します。

ミツマタを育てるときの注意点

ミツマタは比較的育てやすい樹木ですが、いくつかポイントを抑えることで、より丈夫で健康に育てることができます。

育てる際のポイントを解説します。

使用する土に注意する

土

ミツマタは水はけがよい肥沃な土壌を好み、水がたまってしまうような粘土質の土壌や、窪地は嫌います。また、肥沃な土壌を好むので、庭植えであれば植え場所の土に腐葉土や完熟堆肥などをよく混ぜます。

さらに水はけをよくするために小粒の軽石や桐生砂を土と同量混ぜ合わせます。川砂などでもよいのですが、粒が小さいと土が締まってしまうことがあるため、粒の直径が5mm程度あるものがよいでしょう。

鉢植えであれば小粒の赤玉土と軽石、腐葉土または堆肥などを混ぜ合わせた用土でよいでしょう。鉢植えは用土の量が少なく乾きやすいので、乾きすぎるようであれば軽石の量を減らしたり、水もちのよいピートモスを加えてもよいでしょう。

庭植え、鉢植えのいずれも、乾きすぎるようであれば、土の表面に腐葉土やバークチップなどを敷いてマルチングして、乾燥を防ぎます。

山の傾斜地のような、水がすぐに流れて出てしまうような場所は稲作ができませんが、ミツマタはそうした場所でもよく育つことから、古くから山間部での栽培が行われてきました。

そのような場所を好む植物なので、水がある環境なら、石垣の植えや宅地の法面などでもよく育ちます。

移植を嫌う

植え替え

ミツマタの根は太くてあまり細かく枝分かれせず、傷めてしまうと新しい根が出にくい性質があります。

あまり根が張っていない幼木のうちであれば、根を傷めないように丁寧に掘り上げることで移植することができますが、植えつけて数年経ち、樹高が1.5mを越えるほどに育ってしまった株は移植が難しくなります。

なので、植えたらその場所でずっと育てる前提で、植え場所は慎重に決めましょう。

鉢植えを植え替えたり鉢増したりする際、あるいはポット植えの苗を植えつける際も、できるだけ根の周りの土を落とさず、根鉢をくずさずに植えます。

植木苗として売られているものには、根の周りに麻布を、巻いた「根巻き苗」もあります。根巻き苗の場合は、麻布はつけたまま植え付けます。その麻布は数年経つと腐植して無くなってしまいます。

剪定は最小限にする

ミツマタは育てやすく管理しやすい樹木ですが、あまり剪定がいらないというのもよいところです。

基本的に枝先で花が咲いたあとから新しい枝が出て、しかも新しい枝は強く伸びて徒長枝になりにくい性質があります。

そのため、剪定をしなくてもある程度樹形がまとまりやすい樹木です。

庭のレイアウトや、スペースの都合で枝の長さを整えるほかは、あまり剪定する必要がありませんし、むしろ強い剪定はしないほうがよいといえます。

生け垣に使う樹木や、ツツジなどは刈り込めば切り口の近くからすぐに芽吹き、新しい枝を伸ばします。

しかし、ミツマタは枝先以外からは新しい枝が出にくいので、あまり頻繁に剪定しない方がよいでしょう。

枝を切る場合は、節(枝分かれしている部分)の間で切らず、節のすぐ上で切ると枝がすんなりと伸びる印象になります。

ミツマタを育てて楽しもう

ミツマタの花

ミツマタは古くから人の暮らしの近くで栽培され、親しまれてきた樹木です。古来から紙の原料として利用され、日本では名前をよく知られている樹木でもあります。早春に咲く独特の花は、見た目に美しいだけでなく、香りも楽しむことができます。

枝振りや葉の風情も美しいミツマタを、ぜひ育ててみてはいかがでしょうか。

Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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