歌に詠まれたり、工芸品や服飾、和菓子などのモチーフとして取り入れられたりと、秋を彩る植物として昔から日本人に愛されてきたモミジ。そんな馴染み深い樹木ですが、家庭で簡単に育てることができるのをご存じでしょうか? この記事では、モミジのプロフィールや特性、豆知識、育て方の詳細まで、幅広くご紹介していきます。

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モミジの基本情報

モミジといえば、秋の紅葉の象徴として、昔から親しまれてきた樹木です。ここでは、そのプロフィールや種類などについてご紹介します。

モミジとは

モミジ
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モミジはムクロジ科カエデ属の落葉高木で、カエデの仲間です。

モミジの種類は、大きく分けてイロハモミジ、ヤマモミジ、オオモミジの3種があり、一般的にはイロハモミジを指すことが多いようです。園芸文化が開花した江戸時代から品種改良の歴史は脈々と続いており、変異が多く区別が難しくなっています。

カエデとの違いは?

モミジとカエデ
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じつのところ、モミジとカエデは植物の分類学上では同じで、カエデはモミジを含めたこの仲間の総称です。しかし、昔からの慣例として、葉の切れ込みが深いものを「モミジ」、葉の切れ込みが浅いものを「カエデ」と呼んでいるようです。モミジの名前の由来は、秋に植物が黄色や赤に変色する様子を表現する「もみず(黄葉ず・紅葉ず)」「もみつ(黄葉つ・紅葉つ)」という動詞から。カエデの名前は、葉の形がカエルの手の形に似ていることから。古くは「かへるで」と呼ばれており、時代が下ってカエデになりました。

モミジの種類

モミジの種類
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前述の通り、モミジには品種改良によってさまざまな園芸品種が生まれています。ここでは、中でも主だったものをご紹介しましょう。

‘青枝垂(あおしだれ)’は濃いグリーンの葉で深い切れ込みが入り、枝垂れる樹形が魅力。‘出猩々(でしょうじょう)’は新芽が鮮やかな紅色で、やがて赤みを含んだグリーンへと変化し、秋には紅葉を楽しめます。‘桂(かつら)’は新芽はオレンジ色に赤い覆輪が入り、やがてグリーンへと変化し、秋には紅葉します。‘胡蝶の舞(こちょうのまい)’は、グリーンの葉に白やピンクの斑が入ります。‘燕換(えんかん)’は、切れ込みの入った葉がやや枝垂れ、新芽から落葉まで、深い赤色をしています。

花言葉・豆知識

モミジの花
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モミジの花言葉は、「節制」「遠慮」「自制」「大切な思い出」「美しい変化」など。「節制」「遠慮」「自制」は、目立たない小さな花から。「大切な思い出」は、紅葉を観賞しに山へ出かけるのがレジャーとなっていることから。「美しい変化」は、新緑、開花、結実、紅葉、落葉と、四季が巡るごとに変化していく様子からとされています。

ところで、「紅葉狩り」という言葉がありますね。鹿やイノシシなどの動物や野鳥を捕らえること、果実を採取することを「狩り」といいますが、モミジを採取することはないのに、なぜ「狩り」というのでしょう。一説には、狩りをしない貴族が狩猟や植物採取と同様に、わざわざ深い山へ入って紅葉を観賞することから「狩り」といい、一種の言葉遊びから発生したといわれています。

モミジの園芸用データ

モミジ
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モミジは、北半球の温帯(日本・中国・北アメリカ・ヨーロッパ・北アフリカ)地域に幅広く分布しています。約150種が確認されており、日本で自生しているのは、約20種です。

耐寒性はありますが、暑いのがやや苦手で、真夏の強光線によって葉焼けすることもあるので注意。適度に水はけ、水もちのよい土壌を好み、乾燥を嫌います。もともと日本に自生してきた樹木なので環境に馴染みやすく、初心者でも育てやすい庭木の一つです。

自然樹高は5〜25mにも達する高木です。「そんなに高くなるのなら、庭木として取り入れるのは難しいのでは?」と及び腰になってしまいそうですが、毎年きちんと剪定をすれば、樹高や樹形をコントロールすることができます。

モミジのライフサイクルは、以下の通りです。3月頃から新芽が動き出し、暖かくなると旺盛に展開していきます。4月中旬〜5月上旬に、小さな赤い花がたくさん開花。11月頃にプロペラのような形をしたタネをつけ、11月下旬頃に紅葉した後、すべての葉を落として休眠します。休眠の期間は短く、1月には樹液が動き出しますが、外からの見た目では分かりません。そして3月下旬頃には新芽を再び展開し始めます。一度根づけば、長い期間にわたって楽しめる植物です。

モミジは、四季の移ろいとともにはっきりと表情を変えていくので、季節感を感じるシンボルツリーとして庭に取り入れるのがおすすめ。芽吹き始めの新緑は美しく、春には小さな赤い花を咲かせます。夏に葉をたっぷりと茂らせ、緑陰を広げて涼風を誘う効果も。秋には実を結ぶとともに、燃えるような紅葉を楽しめ、冬にはすっかり落葉します。たっぷりと枝葉を伸ばすので、スペースを確保できる場所を選びましょう。デメリットとしては、落葉期には一気に葉を落とすため掃除が大変で、この時期はゴミを出す量も増えてしまいます。

また、地植えで楽しむイメージが強いのですが、鉢栽培もできます。盆栽にしてミニマムな世界を楽しむのも一興です。

モミジの育て方

ここまで、モミジのプロフィールや特性、豆知識などをご紹介してきました。ここからは、実践編としてモミジの育て方について。栽培に適した環境や植え付け方、水やりや施肥など日頃の管理、剪定、病害虫対策や増やし方まで、多岐にわたって詳しく解説していきます。鉢栽培の方法もご案内していきますよ!

栽培に適した環境

モミジ
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日当たり、風通しのよい場所を好みます。日当たりの悪い場所では成長が遅く、紅葉も美しく発色しなくなるので注意。乾燥がやや苦手で、適度に水はけ・水もちのよい土壌づくりをすることが大切です。乾燥対策として、根元をバークチップなどで覆うマルチングを施しておくとよいでしょう。

日本の寒さ、暑さには適応しますが、栽培の北限は北海道南部くらいまで。冬は寒風の吹きさらしにならない場所を選んでください。

土づくり

土作り
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【地植え】

まず、一年を通して日当たり、風通しのよい場所を選びましょう。植え付けの2〜3週間前に、直径、深さともに50cm程度の穴を掘ります。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきましょう。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。

【鉢植え】

樹木用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。

植え付け

植え付け
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モミジ(苗木)の植え付け適期は12〜3月頃です。

【地植え】

土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘って植え付けます。しっかりと根づくまでは、支柱を立てて誘引し、倒伏を防ぐとよいでしょう。最後にたっぷりと水を与えます。

【鉢植え】

鉢で栽培する場合は、入手した苗よりも1〜2回り大きな鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから樹木用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗をポットから取り出して鉢に仮置きし、高さを決めます。水やりの際にあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下までを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。

水やり

水やり
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【地植え】

地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、真夏に晴天が続いて乾燥しすぎる場合は水やりをして補いましょう。水分が不足すると、葉が萎れたり、葉焼けしたりします。真夏は昼間に水やりすると水の温度が上がり株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。

【鉢植え】

成長期は、日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。新梢や葉がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。真夏は気温が上がっている昼間に水やりすると水の温度が上がり株が弱ってしまうので、朝夕の涼しい時間帯に行うことが大切です。冬は落葉するので、水やりは控えめにしますが、まったく水を与えずに土をカラカラに乾燥させたままにすると、枯れてしまうのでご注意を。

追肥

追肥
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【地植え】

落葉してすぐの12月頃に、寒肥として有機質肥料を木の周囲にまき、土になじませます。

【鉢植え】

4〜5月、9〜10月、12月に緩効性化成肥料をまき、土になじませます。生育期に、木に勢いがなく成長が止まっているようなら、速効性のある液体肥料を水やり代わりに与えるとよいでしょう。

剪定

剪定
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落葉樹は、葉を落とした後の休眠期ならいつでも剪定してよいのですが、モミジは休眠期が短く、1月には樹液が動いているので、剪定は早めの12月までに済ませるのがポイントです。

モミジの仲間の多くは、樹形が左右対称にはならず幹も真っ直ぐには伸びず不定形に成長します。自然な樹形のバランスを保ちながら、すかしていく剪定を心がけるとよいでしょう。幹と競合するような勢いの強い立ち枝や、地際近くから伸びて樹形を乱している枝、内側に向かって伸びている逆さ枝、他の枝に絡んで邪魔になっている絡み枝、地際から出ているひこばえなどは、根元から切り取ります。また、枝が込み合いすぎている部分があれば、風通しをよくするために邪魔な枝を付け根から切りましょう。ただし、モミジの仲間は真夏に強い日差しが幹に当たると焼けてしまうことがあるので、すかしすぎないよう、葉が程よく茂るように剪定します。

あまり大きくなりすぎないように、樹高を抑えたい場合は、幹を外側に向かう枝の少し上で切りましょう。

植え替え

植え替え
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【地植え】

しっかり根付いて順調に生育していれば、植え替えの必要はありません。

【鉢植え】

鉢植えで楽しんでいる場合は、放置していると根詰まりしてくるので、2〜3年に1度を目安に植え替えましょう。植え替えの適期は2〜3月頃です。

植え替えの前に、水やりを控えて鉢内の土を乾燥させておきましょう。鉢から株を取り出し、根鉢を少しずつ崩していきます。不要な根を切り取り、根鉢を軽くほぐしましょう。これ以上大きくしたくない場合は同じ鉢に、もう少し大きくしたい場合は二回りくらい大きな鉢に植え替えます。手順は「植え付け」の項目を参考にしてください。

増やし方

種まき
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モミジは、挿し木や種まきの方法で増やすことができます。

挿し木の適期は6〜7月頃。春に伸びた若くて勢いのある枝を選んで10cmほど切り取ります。葉を2〜3枚残して、1時間ほど水を張った容器に挿して水あげしておきましょう。採取した枝葉の切り口に発根促進剤を塗り、市販の園芸用培養土を入れた育苗用トレイに挿しておきます。直射日光の当たらない明るい場所で、水切れしないように管理を。発根したら黒ポットなどに植え替えて育成します。大きく育ったら、植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、採取した株のクローンになることです。

種まきの適期は11月頃。プロペラのような形をした実を採取し、乾燥しないうちに園芸用培養土を入れた育苗トレイにタネを播きます。春になると発芽するので、本葉が3〜4枚ついたら黒ポットに鉢上げします。乾燥しないように管理し、成長とともに鉢増ししながら育成します。

病害虫

病虫害
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病気は、葉に白く粉を吹いたような症状が現れるうどんこ病、葉が黒いすすで覆われたような症状が出るすす病、葉に円形の病斑が現れる炭疽病などに注意。風通しが悪いと発生しやすくなるので、枝が込み合っている部分の不要な枝を選んで、付け根から切り取る間引き剪定をするとよいでしょう。それぞれの症状が現れたら、早めに適応する薬剤を散布して対処します。

害虫は、アブラムシ、カイガラムシ、アザミウマ、ハダニ、ミノムシ、ケムシなどが発生しがちです。放任すると木が弱るので、見つけ次第適応する薬剤を散布して、駆除しましょう。

モミジを育てて紅葉を楽しもう!

モミジ
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ここまで、モミジの特性や種類、豆知識、育て方に至るまで、多岐にわたってご紹介してきました。古くから日本に自生してきたモミジは、環境に馴染みやすく、ビギナーでも育てられる樹木です。新緑から紅葉まで、季節によって表情を変えていくモミジを、わが家のシンボルツリーとして植栽してはいかがでしょう。

Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

参考文献/
上条祐一郎『切るナビ! 庭木の剪定がわかる本』NHK出版 (2017年第17刷)

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