インパチェンスはカラフルな花が魅力の夏花! 特徴や花言葉、育て方について詳しく解説

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暑さに負けずにたっぷり花を咲かせ、夏の草花の代表ともいえるインパチェンス。日本では、アフリカホウセンカの別名を持つワレリアナ種が、インパチェンスとして流通しています。この記事ではワレリアナ種に絞って、その特性から育て方、豆知識まで多岐にわたって解説していきます。
目次
インパチェンスの基本情報

植物名:インパチェンス
学名:Impatiens walleriana
英名:busy Lizzie、balsam、sultana、impatiens
和名:アフリカホウセンカ
その他の名前:インパチエンス
科名:ツリフネソウ科
属名:ツリフネソウ属(インパチェンス属)
原産地:熱帯アフリカ
分類:一年草
インパチェンスは、ツリフネソウ科ツリフネソウ属(インパチェンス属)の一年草です。草丈は10〜40cm程度とやや低く、こんもりと茂るので夏花壇の前段〜中段に向いています。コンテナやハンギングバスケットなど寄せ植えの素材として使うと、主役にも脇役にもなる中堅どころといった存在です。初夏から秋までと開花期間が長く、多くの草花が苦手とする半日陰の場所でも育てられます。
インパチェンスのライフサイクルは次の通り。4月下旬〜6月にタネを播くと、10日前後で発芽して、茎葉を旺盛に伸ばします。開花は5〜11月で、期間が長いのが特徴。暑い時期もよく開花し、夏の庭を色彩豊かに彩ってくれます。寒さに弱い性質で、晩秋には枯死します。
インパチェンスの花や葉の特徴

園芸分類:草花
開花時期:5〜11月
草丈:10〜40cm
耐寒性:弱い
耐暑性:やや弱い
花色:赤、ピンク、オレンジ、白
花のサイズは3〜4cmで、やや小さめ。花つきがよく、株いっぱいに咲くと色のかたまりとなってよく映えます。花色は、赤、ピンク(濃淡揃う)、オレンジ、白など、カラフルな色調が特徴です。花姿は一重咲きや八重咲きがあり、後ろに突き出た距(きょ)が特徴です。一重咲き品種は庭植えや夏花壇に向きますが、八重咲き品種は雨に弱いものが多いので、鉢植えで育てるのがおすすめです。卵形から楕円形の葉は先がやや尖り、縁にはギザギザがあります。斑入り品種もあります。
インパチェンスの名前の由来と花言葉

インパチェンスの名前は、ラテン語の「impatient」に由来し、「我慢できない」という意味です。これは、インパチェンスの熟した莢に触れると、弾けてタネが広範囲に散らばるためで、その様子を「我慢できない」と表現しているのです。和名は、アフリカホウセンカといい、「アフリカからもたらされたホウセンカ」という意味でつけられました。

インパチェンスの花言葉は、「鮮やかな人」「強い個性」「私に触れないで」など。「鮮やかな人」はビビッドな花色をそのまま表現したのでしょう。「強い個性」も同様に、パッと目を引く存在感から与えられたと考えられます。
インパチェンスの代表的な種類

花つきがよく、ポップなカラーが魅力の「F1ロリポップシリーズ」、八重咲きでバラのような咲き姿を見せる「カリフォルニアローズ・フィエスタシリーズ」、ハイブリッド(交雑種)で栽培難易度が低く育てやすい「スマイルサンシリーズ」や「サンパチェンスシリーズ」などがあります。
F1ロリポップシリーズ
多花性で花径4~5cmほどの花がたくさん咲きます。開花の揃いがよく、株もよく分枝してコンパクトにまとまりやすい品種。
カリフォルニアローズ・フィエスタシリーズ
名前の通り、まるで小さなバラのような咲き姿のバラ咲きインパチェンスのシリーズ。こんもりと茂って花付きよく咲き、花色のバリエーションも楽しめます。
サンパチェンス
暑さや強い日差しにも耐え、過酷な日本の夏でも次々と咲かせる丈夫な品種。生育旺盛で大きく育ち、長期間楽しめます。
インパチェンスの歴史と分布

インパチェンスの仲間は、アジアやアフリカに500種以上が分布しています。日本でインパチェンスとして流通しているのは、インパチェンス・ワレリアナ種で、その交雑種も含まれています。
ワレリアナ種はアフリカ東部の熱帯が原産地で、湿り気のある日陰〜半日陰に自生する植物です。19世紀にヨーロッパに渡り、オランダを中心にヨーロッパ、アメリカなどで品種改良が進んで、園芸品種として人気が高まりました。現在では、その品種は2,000を超すといわれています。
インパチェンスの栽培12カ月カレンダー

開花時期:5~11月
植え付け:5月〜7月中旬
肥料:5月〜7月中旬、9月下旬〜10月
種まき:4月下旬~6月
インパチェンスの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たりがよく、風通しのよい場所を好みます。日向のほうが花つきはよくなりますが、半日陰〜日陰でも育ち、品種によっては真夏は強い直射日光により傷むことがあります。
【日当たり/屋内】屋外で栽培します。ただし、冬越しに挑戦する場合は、冬は室内の日当たりのよい窓辺などで管理しましょう。
【置き場所】水はけ、水もちのよいフカフカとした土壌でよく育ちます。有機質肥料を施した肥沃な土壌が理想です。
夏に咲く性質ではありますが、日本でも温暖化が進んで、35℃以上になる猛暑日が多くなってきました。サンパチェンスなど暑さに強い品種以外では「近年の強烈な日差しには耐えられない」という報告もありますので、真夏は午前中に光が差して、午後は直射日光を受けない東側で管理するのが無難です。
耐寒性・耐暑性
インパチェンスは本来は多年草ですが、寒さに弱くうまく冬越しできないために、日本では一年草として扱われています。ただし、霜や凍結にあわない環境であれば、冬越しが可能です。気に入った品種があれば鉢植えにして、室内の日当たりのよい窓辺などで管理してみましょう。上手に冬越しができれば、翌春に成長期を迎えると、再び生育し始めます。
耐暑性はある程度ありますが、近年の強い直射日光や真夏の暑さには弱いので、真夏は暑さ対策をするとよいでしょう。
インパチェンスの育て方のポイント
用土

【地植え】
インパチェンスは丈夫な性質で土壌を選びませんが、植え付け前に腐葉土や堆肥などの有機質資材を植え場所に投入し、よく耕してフカフカの土をつくっておくとよいでしょう。
【鉢植え】
草花の栽培用にブレンドされた、市販の園芸用培養土を使うと便利です。
水やり

【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、水切れしないように管理しましょう。根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、水やりをして補います。真夏は朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。真夏は昼間に水やりすると水の温度が上がり株が弱ってしまうので、涼しい時間帯に行うことが大切です。
肥料

ビギナーの場合、緩効性化成肥料を常備しておくのがおすすめです。植物への汎用性が高く、ニオイがしないため扱いやすいのがメリット。開花期に与える液肥は、開花促進を目的とした配合の製品を選ぶのがおすすめです。
地植え、鉢植えともに、5月〜7月中旬と9月下旬〜10月の期間は、月に1度を目安に緩効性化成肥料を株の周囲にまいて株の勢いを保ちます。鉢植えの場合は、花茎が上がってきた頃から開花が終わるまで、10日に1回を目安に液肥を与えるとよいでしょう。開花期は適切な追肥が必要ですが、夏の高温期に肥料成分が残ると株が弱ることがあるので、夏は肥料を切らして管理するのがポイントです。
注意する病害虫

【病気】
インパチェンスに発生しやすい病気は、灰色かび病です。梅雨時など多湿になると発生しやすいので、茂りすぎて蒸れやすくなったら、適宜茎葉を切り取って風通しをよくしましょう。また、枯れ葉や終わった花をまめに除去すると、予防できます。
【害虫】
インパチェンスにつきやすい害虫は、アブラムシ、ハダニなどです。アブラムシは、土に混ぜておくタイプの適応薬剤で予防できます。
インパチェンスの詳しい育て方
苗の選び方
インパチェンスの苗を購入するときは、ヒョロヒョロと徒長したものや病害虫の痕があるものは避け、葉色が濃く、つぼみが多い苗を選ぶとよいでしょう。
植え付け

苗の場合、植え付け適期は、5月〜7月中旬です。タネを播いて育てた場合は、鉢上げした黒ポットの底まで根が回った頃が、定植に適したタイミングです。インパチェンスは開花期間が長いので、園芸店で7月中旬以降も販売している場合があります。その際は、早めに定植しましょう。
【地植え】
腐葉土や堆肥などの有機質資材を投入して、あらかじめ土づくりをしておいた場所に植え付けます。こんもりと茂るので、株間を20〜30cm取っておきましょう。植え付けた後に、たっぷりと水やりします。
【鉢植え】
草花の栽培用に配合された園芸用培養土を利用すると便利です。鉢の大きさは、5〜7号鉢(直径15〜21cm)に1株を目安にするとよいでしょう。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから、培養土を半分くらいまで入れましょう。インパチェンスの苗をポットから取り出して鉢に仮置きし、高さを決めます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下までを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内や根の間までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、水を鉢底から流れ出すまで十分に与えましょう。寄せ植えの素材として、大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。
摘心

植え付け後、幼苗のうちに茎の先端を切り取る「摘心」を繰り返すと、脇芽が出てこんもりとした株姿に成長し、花数も多くなります。
花がら摘み

インパチェンスは次から次へと花が咲くので、終わった花は早めに摘み取りましょう。株周りを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながります。また、いつまでも終わった花を残しておくと、タネをつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
剪定・切り戻し

苗が出回り始める5月頃に植え付けた場合、真夏を迎える頃に草姿が乱れてきたら、草丈の半分くらいまでを目安に全体を刈り込む「切り戻し」をするとよいでしょう。真夏を過ぎた頃に、再び株が盛り返して勢いよく生育し、秋にはたっぷりと咲く花姿を楽しめます。
ただし、遅めに苗を入手して草姿が乱れていない場合や、真夏も花を楽しみたい場合は、切り戻さずにそのままにしておいてもかまいません。
増やし方

【種まき】
広い庭があり、インパチェンスロードや花畑をつくりたい時は、種まきをしてたくさんの苗をつくるとコストを抑えることができます。
種まきの適期は、4月下旬〜6月。インパチェンスの発芽適温は20〜25℃で高温性なので、十分気温が上がった頃に行うと失敗が少なくなります。まず、種まき用のトレイに、赤玉土とピートモスを同量ずつブレンドした土(草花用にブレンドされた培養土を使ってもOK)を入れましょう。インパチェンスのタネを播き、タネが隠れる程度に薄く土をかけます。霧吹きで水やりするか、水を張った容器にトレイを入れて下から給水させましょう。種まきから10日前後で発芽します。
発芽後は明るい半日陰で管理。込んでいる場所があれば、苗が徒長しないように間引きます。本葉が出始めた頃に、一度液肥を少量混ぜて水やりをし、生育を促しましょう。
本葉が4〜6枚ついたら、鉢上げのタイミングです。直径6cmのビニールポットを準備し、赤玉土とピートモスを同量ずつブレンドした土(草花用にブレンドされた培養土を使ってもOK)を入れましょう。種まき用のトレイから苗の根鉢を崩さないように取り出して、ポットに植え付けます。表土には緩効性肥料を置き肥し、最後にたっぷり水やりを。その後は、1週間に1回を目安に液肥を施して育苗します。
【挿し芽】
インパチェンスは、挿し芽で増やすことが可能です。挿し芽の適期は6月か9月下旬。勢いのある茎葉を切り取り、清潔な挿し木用の培養土を育苗用トレイなどに入れて、採取した茎葉(挿し穂)を挿しておきます。摘心したり、切り戻して切り取った茎葉を使ってもOKです。水切れしないように管理すると、しばらくして発根するので、黒ポットなどに植え替えて育苗しましょう。株が大きくなったら、植えたい場所に定植します。挿し芽のメリットは、採取した株のクローンになることです。
インパチェンスはビギナーにおすすめ

インパチェンスは、丈夫で放任してもよく育つので、ビギナーにおすすめの草花。限られたスペースやベランダ、寄せ植えの素材として利用するなら、園芸店やガーデンセンターで苗を購入して植え付けるとよいでしょう。広い敷地でたっぷりと植栽したい場合は、種まきしても容易に育てることができます。また、日陰でも育つので、暗めの場所を明るく彩ってくれる、嬉しい草花です。
ニューギニア・インパチェンスとの違い

ニューギニア・インパチェンスは、インパチェンスの仲間ですが、熱帯アフリカを原産とするインパチェンスに対し、ニューギニアの高冷地に自生する原種をもとに育成された園芸品種グループです。インパチェンスよりも生育旺盛で、株や葉、花などが大きく、よりエキゾチックな印象です。
家庭でインパチェンスを育ててみよう

日陰でも育つインパチェンスは、夏を代表する草花としてガーデニングでの人気が高いことから、年々品種改良が進んでいます。育てやすさが追求されているのはもちろん、花色のバラエティーが豊かになり、花のサイズが大小あるほか、バラのように花びらを多数重ねるものなど、個性豊かなラインナップが揃います。お気に入りの品種を見つけて、初夏から秋までインパチェンスを楽しんではいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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