庭の彩りが少なくなる冬から早春までに赤や緑の実やつぼみが彩りとして活躍する花木で近年、人気急上昇の「スキミア」は、11月中旬から本格的に苗の販売が始まります。1m以下のコンパクトな株に常緑のつややかな葉を茂らせ、プチプチとした可愛いつぼみをつけるので、クリスマスやお正月など冬の寄せ植えや花壇のアクセントとして効果的です。近年、品種のバリエーションが増えているスキミアの基本情報から使い方、年間の育て方のコツをプロが解説します。
目次
スキミアの基本情報

植物名:スキミア
学名:Skimmia japonica
英名: Skimmia
和名:ミヤマシキミ
科名:ミカン科
属名:ミヤマシキミ(スキミア)属
原産地:日本、台湾
分類:常緑低木

スキミアは、ミカン科ミヤマシキミ(スキミア)属の常緑低木。晩秋から冬にかけてプチプチとしたつぼみや赤い実をつけた可愛い姿を保ち、春になると花が咲く植物で、冬から春にかけての花壇や寄せ植えで活躍してくれるガーデンプランツです。

スキミア、という名前ではピンとこなくても、ミヤマシキミといえば馴染みがある方も多いかもしれませんね。じつはスキミアは、日本原産のミヤマシキミが、ヨーロッパに渡って品種改良されたもの。スキミアという名前も、和名のミヤマシキミから付けられたものだそうで、シキミアと呼ばれることもよくあります。時々、シキミと呼ばれることもありますが、スキミアとシキミはじつは別種の植物です。シキミはイリシウム(Ilicium anisatum)の和名、スキミアは学名のカナ読みです。

海外ではガーデンプランツとして高い人気があるスキミア。近年は冬に活躍する植物として日本でも注目されるようになり、園芸店などで販売される苗数も増えてきました。日本で販売されている苗の多くは、オランダなどの海外から輸入されたもので、少々値段が高く、やや植え場所にも気を使うところがあります。しかし、スキミアは観賞期間が長く、育てやすさから寄せ植えや花壇に人気の花木として人気が高まっています。

樹高は80~100cmほどとコンパクトに生育するので、花壇やコンテナガーデンに取り入れやすい植物です。花期は春の3月頃ですが、11月頃に花芽ができはじめ、冬はつぼみのまま全く変わらない姿を観賞でき、手をかけなくてもきれいな姿を保つことができるのが嬉しいところ。つぼみがついた枝を切れば、クリスマスやお正月の花飾りにも活用できます。

実をつける雌株か、つぼみ&花を楽しむ雄株どっちを選ぶ?

園芸分類:花木
開花時期:3月
樹高:80~100cm
耐寒温度:マイナス5℃
耐暑性:弱い
花色:白(つぼみの外側の色は白、ピンク、薄黄色、薄緑、いぶし銀な茶色など)
スキミアには、大きく分けて実をつけるタイプと花を咲かせるタイプがありますが、どちらも冬の庭に鮮やかな彩りを添えてくれます。
実をつけるのは雌株で、代表的な品種に、スキミア‘リーベシアーナ’と、より実が大きい‘テンプテイション’の2品種があります。ツヤツヤした鮮やかな赤い実はクリスマスやお正月の雰囲気を演出するのにもオススメ。11月頃から鉢植えが出回り始めますが、翌年以降も実をつけるには受粉が必要なので、実つきタイプのものを選ぶ際は後ほど説明する花の咲く雄株も合わせて入手しましょう。一方、晩秋から冬にかけてプチプチとしたつぼみをつけ、春になると花が咲くのは雄株です。

雌株は別名ハナスキミアとも呼ばれ、赤や緑のつぼみなど品種が豊富にあります。
代表的な品種は、鮮やかな赤いつぼみが美しい‘ルベラ’、爽やかなグリーンのつぼみをつける‘フィンチー’があります。春には白や薄ピンクの花が株全体を覆うようにふんわり咲いて、まるで衣替えをしたようにイメージが一変します。

近年では寄せ植えに使いやすい矮性(わいせい)種が人気で、赤いつぼみの‘レッドドワーフ’、緑のつぼみの‘ホワイトグローブ’や、クリスマスに合わせてつぼみの色がグリーンからピンクに遷り変わりする‘マジックマルロー’などシーンや使い方に合わせた品種が選べるのも魅力です。
違いを楽しむスキミアの品種解説

スキミアには、つぼみの形状で「ルベラタイプ」と「ドワーフタイプ」に分けられます。
ルベラタイプとは、つぼみの房(集合体)が比較的大きく、粒々したつぼみが散状になります。このタイプにあたる品種には、ルベラ、フィンチー、ペローサが代表的です。

ドワーフタイプとは、つぼみの房がギュッと詰まっているので、つぼみがボール状に集合した姿になります。このタイプにあたる品種には、レッドドワーフ、ホワイトグローブ、マジックマルローがあり、セレブレーションはドアーフタイプの中でもキャンドル系と呼ばれ、つぼみがキャンドル(ロウソク)状に集まっている特殊な品種です。

近くで眺めるような寄せ植えなどには、ドワーフタイプを、花壇や景観に使う場合は、ルベラタイプが向いています。また、ドワーフタイプの葉はルベラタイプに比べて短いため、つぼみが隠れないところからも、寄せ植えの花材に向いています。
スキミアの品種バリエーション
代表的品種「ルベラ(Rubella)」

スキミアのなかで最も人気が高く、一番入手しやすい品種。赤と緑を貴重としたカラーリングで、クリスマスやお正月の飾りとして季節感を演出するのにピッタリ。
グリーンのつぼみ「フィンチー(Finchy)」

クリスマスの新しい雰囲気をプラスできる演出用花材として、フローリストを中心に人気がある品種。つぼみの形はルベラタイプ。爽やかなグリーンのつぼみが、他の植物との色合わせのしやすさから、近年爆発的な人気に。花は白からクリーム色。
斑入り葉の「ペローサ(Perosa)」

大柄なマーブル模様とアンティークカラーの葉が他にはないスペシャルな印象があるスキミア。つぼみの形はルベラタイプ。ピンクのつぼみと斑入り模様の葉が新鮮な印象をプラスする花材として、新しい使い方で花業界に注目されています。
コンパクトな「レッドドワーフ(Red Dwarf)」

代表的品種のルベラに比べて、樹高は半分ほどと低く、つぼみが上向きの矮性種。つぼみの集まり具合がほどよく、プリッとした花房が特徴的。ルベラより主張の強い鮮やかさがあり、メリハリのあるカラーリング。
緑色のコンパクト種「ホワイトグローブ(White Globe)」

レッドドアーフと同様に、ルベラに比べて半分ほどの草丈でつぼみが上向きにに咲く矮性種。つぼみの集まり具合がほどよく、レッドドワーフと同様にプリッとした花房が特徴的。つぼみの色もフィンチーの緑とは異なる主張の強い鮮やかさで美しい。
色変わりが魅力の「マジックマルロー(Magic Marlot)」

くっきりと白く縁取られる斑入り葉を茂らせながら、つぼみが色変わりするという特別な個性をもつ品種。クリーミー系のライトグリーンのつぼみが、徐々に寒さを感じながらピンクに移り変わり、楽しみが多い魅力的なスキミアです。
花付きがよい新品種「セレブレーション(Celebrations)」

つぼみがボール状に集合するドワーフタイプでありながら、レッドドワーフやホワイトグローブとは異なるつぼみの形状。なんといっても、花付きが倍以上優れているので、今までにないスキミアの使い方が期待できる、2023年に試験輸入をスタートしたばかりの新品種。
スキミア5つの魅力

スキミアは彩りの美しさ以外にも、育てる上で嬉しい点がいくつもあります。5つのポイントに絞ってスキミアの魅力をご紹介します。
① 一年中緑
スキミアはミカン科の常緑低木。一年中美しい緑を庭に提供してくれます。
② 鑑賞期間が長い
11月頃からつぼみが膨らみ始め、桜が咲きはじめる少し前に開花するまで、半年以上もつぼみの状態のままで楽しめます。彩りの変化も魅力です。常に美しく保っておきたい玄関先などの鉢植えにもおすすめ。
③ 管理が楽
特に注意しなければならない病害虫はなく、生育はとてもゆっくりなので、特別な手入れの必要がありません。花がらは自然に風でポロっと落ちるので、花がら摘みの必要もなく、数年放置していても、株姿が極端に暴れないので管理しやすいです。
④ 日陰で活躍
周囲に障害物のない明るい日陰に植えるとよいでしょう。スキミアは日本原産の植物ですが、近年の日本の猛暑と強い日差しは大敵です。西日が長く差し込む場所や直射日光の当たりやすい場所では葉焼けになりやすく、かといって、鬱蒼とした日陰では、つぼみがつきづらくなります。そのため、夏は、明るい日陰を選んで鉢を移動したり、植え場所を選ぶようにしましょう。
スキミアは地表近くにも根を張るので、暑さ対策としてバークチップなどを株元に2〜3cmの厚さで敷き詰めると夏越ししやすくなります。
⑤ ドーム状に仕立てて、単体で楽しむ
最大樹高は1mほどとコンパクトです。周囲に障害物がなく日陰具合が均等であれば、枝が放射状に伸び、株を取り囲むようにつぼみがついて、ドーム状に株姿が整います。そのように自然樹形を楽しみたい場合は、単体で地植えにすることをおすすめします。
スキミアの育て方のコツ

栽培環境
スキミアは苗から育てるのが一般的。スキミアの苗が園芸店に出回る時期は、主に11~12月です。この時期に苗を入手したら、植え付けをします。植え付けの際には、植え場所の確認をすることが大切です。スキミアは元々山の中で育つような植物なので、日陰を好みます。その反面、夏の暑さや直射日光が苦手なので、地植えにする場合は風通しのよい明るい日陰の環境に植えましょう。寒冷地では、極端な寒さに当たらないように鉢植えにして移動できるようにするのもよいでしょう。

植え付けの注意
植え付けの際には、根を傷つけないように注意します。スキミアは成長が遅いため、根を傷つけてしまうとダメージが大きくなることがあります。苗をポットから出したら、根をいじらないように、土を落とさずにそのまま植え付けましょう。
用土
スキミアは水はけのよい、やや酸性(pH5.5-6.5)の土壌を好みます。日本の土は基本的に酸性に傾くため、地植えの際は用土は特に気にしないでも大丈夫ですが、コンクリートの近くでは土がアルカリ性に傾きやすいので、中和剤として、酸性土である鹿沼土などで酸度調整をするとよいでしょう。
水やり
地植えの場合は基本的には水やりは必要ありません。夏場の乾燥に注意し、雨が降らない日が続いた時はたっぷりと水を与えましょう。
乾燥に強いイメージがあるスキミアですが、極端な過湿と乾燥の繰り返しはよくありません。スキミアにとって日本の夏は気温が高く、表土が高温かつ乾きやすくなるので、保湿の目的として、株元を完熟たい肥やバークチップなどで覆うようにするとよいでしょう。
肥料
スキミアは、あまり肥料を必要としない植物ですが、足りなすぎたり、施しすぎないように注意が必要です。スキミアの生育期は3~6月です。生育期間中の過度な施肥は、花が咲かなかったり、肥料やけを起こして枯れてしまうこともあります。また、“葉の黄化”は肥料の欠乏が原因なので、肥料が生育期に切れると葉が黄化します。しかし、肥料が多すぎると肥大、徒長などを引き起こすので、与えすぎないように気をつけましょう。
増やし方
スキミアは、挿し木と種まき(実生)で増やすことができます。挿し木で増やす場合は、5~6月に元気そうな枝を切り、下葉を取って吸水させ、鹿沼土に挿して乾かないように管理します。根が出て成長を始めるまで時間がかかるので、根気よく育てましょう。切り口に発根促進剤を塗ると成功率が上がります。
種まきで育てる場合は、雌株につく実からタネを取って播きます。この実は有毒なので、絶対に口にしないように注意してください。発芽率はそれほど悪くなく、こぼれ種から芽が出ることもあります。
スキミアが枯れる原因とは
スキミアは調子が悪くなると、葉が黄色くなったり落ちたりというように、葉に変調が現れます。スキミアが枯れてしまう原因として、よく考えられるのは、肥料が多すぎて肥料やけを起こしている場合や、強い日や暑さに当たって弱ってしまった場合、水のやりすぎで土の中が常に湿っている場合など。いずれの場合も、スキミアの葉の状態をよく観察して早めに不調に気づき、管理する場所を変えたり、土をしっかり乾かしたりなどの対処をすることが大切です。
監修&写真協力:江口政喜(えぐちナーセリー)

Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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