スキミアの魅力と育て方〜真冬&日陰に最適な植物〜

数ある植物の中から今、注目の植物をピックアップするシリーズ「Now blooming」。ガーデナーや育種家、ナーセリーなど、植物の達人たちへの取材を元に編集部がセレクトした植え時・買い時・咲き時のオススメ植物をご紹介します。今回は冬の庭に貴重な彩りを提供してくれるスキミアをピックアップ。
スキミアとは

スキミアという植物をご存じでしょうか? 晩秋から冬にかけてプチプチとしたつぼみや赤い実をつけた可愛い姿を保ち、春になると花が咲く植物で、冬から春にかけての花壇や寄せ植えで活躍してくれるガーデンプランツです。スキミア、という名前ではピンとこなくても、ミヤマシキミといえば馴染みがある方も多いかもしれませんね。じつはスキミアは、日本原産のミヤマシキミが、ヨーロッパに渡って品種改良されたもの。スキミアという名前も、和名のミヤマシキミから付けられたものだそうで、シキミアと呼ばれることもよくあります。時々、シキミと呼ばれることもありますが、スキミアとシキミはじつは別種の植物です。
海外ではガーデンプランツとして高い人気があり、近年は日本でも注目されつつあり、園芸店などで販売されている姿を見かけることも増えてきました。日本で販売されている苗の多くは、オランダなどの海外から輸入されたもので、少々お値段が高いのが難点。また、やや植え場所にも気を使うところがあります。しかし、スキミアは値段の高さなどを考えても、とても魅力的な植物なのです。
ここでは、そんなスキミアの種類や魅力、育て方についてご紹介します。
実を楽しむタイプと、花を楽しむタイプ
それぞれの違いとスキミアの品種
冬の新たなガーデン素材として近年、注目を集めているスキミア。スキミアには、大きく分けて実をつけるタイプと花を咲かせるタイプがありますが、どちらも冬の庭に鮮やかな彩りを添えてくれます。
実をつけるのは雌株で、代表的な品種に、スキミア‘リーベシアーナ’と、より実が大きい‘テンプテイション’の2品種があります。ツヤツヤした鮮やかな赤い実はクリスマスやお正月の雰囲気を演出するのにもオススメ。10月頃から鉢植えが出回り始めますが、翌年以降も実をつけるには受粉が必要なので、実つきタイプのものを選ぶ際は花の咲く雄株も合わせて入手しましょう。

一方、晩秋から冬にかけてプチプチとしたつぼみをつけ、春になると花が咲くのは雄株です。鮮やかな赤いつぼみが美しい‘ルベラ’、コンパクトに育つ‘レッドドワーフ’などの品種が代表的。赤いつぼみだけでなく、爽やかなグリーンのつぼみをつけるものもあり、‘ホワイトグローブ’や‘キューグリーン’などの品種があります。‘ルベラ’は実をつける雌株との受粉にも最適な品種。春には白や薄ピンクの花が株全体を覆うようにふんわり咲いて、まるで衣替えをしたようにイメージが一変します。

さらには、つぼみの色が寒さとともにライムグリーンから赤色に変化する‘マルロー’や、その斑入り葉の‘マジック・マルロー’、ライムグリーンからブロンズ色へと変化するシックな’スパイダー’など魅力的な色変わりの品種もあります。


春に開花したスキミアの花。白い小花が房状になって咲きます。
スキミアの5つの魅力と育て方のポイント
スキミアは彩りの美しさ以外にも、育てる上で嬉しい点がいくつもあります。5つのポイントに絞ってスキミアの魅力をご紹介します。
① 一年中緑
スキミアはミカン科の常緑低木。一年中美しい緑を庭に提供してくれます。
② 鑑賞期間が長い
10月のつぼみから4月の開花まで、半年以上も楽しめます。彩りの変化も魅力です。常に美しく保っておきたい玄関先などの鉢植えにもオススメ。
③ 管理が楽
生育はとてもゆっくりなので、植栽してから3年ほどは剪定の必要はありません。また、花後の茎は勝手にポロっと落ちるため、花がら摘みの必要もなし。スーパーローメンテナンスな植物です。
④ 日陰で活躍
スキミアは日陰が好き。まったく日が差さない場所では生育できませんが、北向きの庭や軒下、樹木の下など日陰になりがちな場所の彩りに重宝します。逆に真夏の強い日差しと暑さには弱いので、場所によっては移動できるよう鉢植えで育てた方がよい場合もあります。スキミアは地表近くにも根を張るので、暑さ対策としてバークチップなどを株元に2〜3cmの厚さで敷き詰めると夏越ししやすくなるでしょう。
⑤ 草花の背景に
最大樹高は80cm程度。草丈の低い春の球根花やクリスマスローズの背景としても相性抜群です。

赤い実をつけるタイプのスキミアに似合いそうな早春の球根花、スノードロップ。

早春に咲く宿根草、クリスマスローズ。スキミア同様日陰を好みます。
スキミアの育て方

耐寒性の常緑低木であるスキミア。成長が遅く、成長しても80~100cmほどとコンパクトに生育するので、花壇やコンテナガーデンに取り入れやすい植物です。花期は春の3月頃ですが、10月頃に花芽ができはじめ、冬はつぼみのまま全く変わらない姿を観賞でき、手をかけなくてもきれいな姿を保つことができるのが嬉しいところ。つぼみを切って切り花にすれば、クリスマスやお正月の花飾りにもぴったりです。そんなスキミアの育て方について解説します。
植え付けと植え替え
スキミアは苗から育てるのが一般的。スキミアの苗が園芸店に出回る時期は、主に10~12月頃です。この時期に苗を入手したら、植え付けをします。植え付けの際には、植え場所の確認をすることが大切です。スキミアは元々山の中で育つような植物なので、耐寒性があり、日陰を好みます。その反面、夏の暑さや直射日光が苦手なので、地植えにする場合は風通しのよい半日陰の環境に植えましょう。暖地や寒冷地では、鉢植えにして移動できるようにするのもよいでしょう。耐寒性はありますが、寒冷地では冬は室内に取り込んだほうが安全です。また、苗が小さいうちは霜に当たらないようにしましょう。
スキミアは水はけのよい、やや酸性の土壌を好みます。日本の土は基本的に酸性に傾くため、地植えの際は用土は特に気にしないでも大丈夫ですが、アルカリ性の苦土石灰などを入れないようにしましょう。また、コンクリートの近くでは土がアルカリ性に傾きやすいので、酸性の土である鹿沼土などで酸度調整をするとよいでしょう。鉢植えでの栽培の場合は、鹿沼土を主体とする用土や、シャクナゲ用の培養土などを使うとよいでしょう。
植え付けの際には、根を傷つけないように注意します。スキミアは成長が遅いため、根を傷つけてしまうとダメージが大きくなってしまうことがあります。苗をポットから出したら、根をいじらないよう土を落とさずにそのまま植え付けましょう。
スキミアは成長が遅く、植え替えや剪定は基本的にさほど必要ではありません。移植を嫌うので、地植えにした場合はそのまま育てるとよいでしょう。鉢植えの場合は根詰まりしたら一回り大きな鉢に植え替えますが、その際も根はいじらないように注意しましょう。
水やりと肥料
地植えの場合は基本的には水やりは必要ありません。夏場の乾燥に注意し、雨が降らない日が続いた時はたっぷりと水を与えましょう。乾燥や暑さ対策に、バークチップなどでマルチングするのもよい方法です。鉢植えの場合は、土の表面が乾いたらたっぷりと与えます。乾燥には注意が必要ですが、常に土が湿っていると根腐れを起こすことがあります。根を傷めると回復は難しいので、水を与えた後は、しっかり土を乾燥させることが大切です。
スキミアはあまり肥料を必要としない植物です。肥料が多すぎると花芽が葉芽に変わってしまい、花を咲かせなかったり、肥料やけを起こして枯れてしまうこともあるので、与えすぎには注意が必要。肥料は年に1回程度、春または秋に控えめに与えましょう。
増やし方
スキミアは、挿し木と種まき(実生)で増やすことができます。挿し木で増やす場合は、5~6月頃に元気そうな枝を切り、下葉を取って吸水させ、鹿沼土に挿して乾かないように管理します。根が出て成長を始めるまで時間がかかるので、根気よく育てましょう。切り口に発根促進剤を塗ると成功率が上がります。
種まきで育てる場合は、雌株につく実からタネを取って播きます。この実は有毒なので、絶対に口にしないように注意してください。発芽率はそれほど悪くなく、こぼれ種から芽が出ることもあります。
スキミアが枯れる時は
スキミアは調子が悪くなると、葉が黄色くなったり落ちたりというように、葉に変調が現れます。スキミアが枯れてしまう原因として、よく考えられるのは、肥料が多すぎて肥料やけを起こしている場合や、強い日や暑さに当たって弱ってしまった場合、水のやりすぎで土の中が常に湿っている場合など。いずれの場合も、スキミアの葉の状態をよく観察して早めに不調に気づき、管理する場所を変えたり、土をしっかり乾かしたりなどの対処をすることが大切です。
参考:「ショウタロウブログ」https://shotaroblog.net/
Credit
写真&文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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