ぶどうはフルーツの中では特に人気が高く、秋の味覚の代表といえます。じつはそのぶどうが、自宅でも栽培することができるんです! この記事では、ぶどうの特性や種類、歴史、栄養価などの基礎知識をはじめ、自宅での育て方について、詳しく解説していきます。つるを旺盛に伸ばして生育するぶどうを、ぜひ育ててみませんか?

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ぶどうとは

ブドウ
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ぶどうは、ブドウ科ブドウ属の落葉性つる植物で、原産地は中央アジア〜地中海沿岸、北アメリカなどです。寒さや暑さに強く、北海道から九州まで広い範囲で栽培できます。乾燥にも強い性質で、水はけのよい土壌が栽培適地。一方で雨には弱く、雨に当たると病害虫が発生しやすいので、雨よけ対策が必要です。また、つるを伸ばして生育するため、つるを支える棚などに仕立てて管理します。

ぶどうのライフサイクルは、以下の通りです。4月頃から新芽が出て旺盛に枝葉を伸ばし、5月中旬〜6月中旬に開花。果実の肥大、成熟が始まり、8月中旬〜9月に収穫。11月頃に落葉して休眠。一般には、一年生苗を入手して栽培をスタートすることになりますが、果樹の栽培は長い目で見守る必要があることを知っておいてください。植え付けから1〜2年は収穫を見送り、木を充実させるための管理をします。幼木のうちから果実をつけると、木に負担がかかってしまうからです。収穫は3年目以降まで待ちましょう。ただし、十分に育った成木を入手した場合は、これには当てはまりません。

ぶどうの種類

ブドウの種類
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ぶどうは、主にヨーロッパ系とアメリカ系に分けられます。

ヨーロッパ系ぶどうは、地中海の乾燥地帯が原産地のため乾燥した気候を好み、雨に弱いものが多いのが特徴。雨の多い日本では栽培が難しく、雨よけ対策が必要です。主な品種は‘マスカット・オブ・アレキサンドリア’や‘コールマン’など。

アメリカ系ぶどうは、アメリカ東部で自生していたものが多く、雨が多く寒い気候のため、日本でも比較的栽培しやすいといえます。主な品種は‘キャンベルアーリー’、‘デラウェア’、‘アーリースチューベン’など。

日本では、ヨーロッパ系ぶどうとアメリカ系ぶどうの交雑品種も多く作られています。‘巨峰’、‘ピオーネ’、‘安芸クイーン’などがよく知られ、これらはビニール被覆による雨よけで栽培できます。

ぶどうは果実の色で、黒ぶどう、赤ぶどう、青ぶどうに分類することもできます。黒ぶどうは、黒みを濃く帯びた紫色の果実で、アントシアニンが豊富。‘巨峰’、‘ピオーネ’、‘マスカットベリー’など、粒の大きい品種が揃います。香りも甘みも濃厚です。赤ぶどうは、明るい赤紫の果実が特徴で、‘竜宝’、‘安芸クイーン’、‘デラウェア’など。粒のサイズは品種によって大小さまざま。果実は酸味が少なく、糖度が高い傾向です。青ぶどうは、明るいグリーンの果実で、品種は‘シャインマスカット’、‘瀬戸ジャイアンツ’など。白ワイン用に作られていることも多く、濃厚な香りと爽やかな甘さが魅力。果皮が薄くて柔らかい品種が多く、皮ごと食べられるものもあります。

ぶどうの歴史

ブドウ棚
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ぶどうは世界各地で栽培され、生産量が最も多く、品種も多様に出回っている果樹の一つです。栽培の歴史は古く、紀元前4000年頃に古代オリエントで栽培されていた記録が残されています。ワインの醸造も古い時代から行われ、メソポタミア文明や古代エジプトではワインが珍重されていたようです。古代ギリシャの頃になるとワイン生産のためのぶどう栽培が大規模に展開され、ワインは国中に広まっていったとされています。

日本では、古くから広範囲で野生のヤマぶどうを食していたとか、奈良時代にシルクロードを経て中国から伝わったとか諸説ありますが、栽培が難しくそれほど普及しなかったようです。しかし明治以降の文明開化により、ぶどうの栽培が盛んに行われるようになりました。ワイン用、デザート用にと品種改良が進み、現在では日本産のぶどうは高い品質に至っています。

ぶどうの栄養・効能

ブドウの栄養価
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ぶどうの甘みにはブドウ糖や果糖などが多く含まれています。これらの糖は体内での代謝を経ずにそのままエネルギーになるため疲労回復効果が大きく、脳の働きを活発にして集中力を高める作用があります。またポリフェノールの一種であるアントシアニンなどを多く含み、ガンや動脈硬化の予防に効果があるようです。他にもカルシウム、カリウム、リンなどのミネラル成分も含んでいます。

ぶどうの栽培方法

これまで、ぶどうの特性や種類、歴史、栄養素などについて触れてきました。さて、ここからは実践編です。ぶどうは果樹の中でも、比較的手間をかける必要がありますが、愛情をかけた分だけ応えてくれます。ぜひぶどうの栽培にチャレンジして、完熟果の贅沢を味わってください。

栽培環境

ブドウ棚
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ぶどうは旺盛につるを伸ばして生育するため、つるを誘引する棚や支柱が必要です。栽培に当たっては、日当たりがよく、風通しのよい環境を選びましょう。また、土質は選びませんが、水はけ・水もちのよい土壌でよく育ちます。

暑さや寒さに強く、北海道から九州まで栽培可能です。ただし雨に弱いので、光を通すカーポートの下や軒下などを利用するか、ビニールを被覆して対策する必要があります。

土づくり

土作り
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【庭植え】

苗を植え付ける1カ月前に、土づくりをしておきます。100cm四方、深さ40〜50cmの植え穴を掘り、掘り上げた土に土壌の状態に合わせた牛ふん堆肥と腐葉土をよく混ぜ込みます。植え穴に戻して、少し高めに盛り上げておきましょう。1カ月ほどで分解が進んで土が熟し、植え付けに適した土壌になります。

【鉢植え】 

果樹栽培用にブレンドされた、市販の園芸用培養土を利用すると便利です。

植え付け

植え付け
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【庭植え】

植え付けの適期は、12月下旬〜3月上旬。土づくりをしておいた場所に、入手した苗の根鉢より一回り大きな植え穴を掘ります。植え穴に根を広げて苗を入れ、根の間にも土を入れて密着させるように植え付けましょう。最後にたっぷりと水やりをします。

【鉢植え】

8〜10号鉢を用意します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから果樹用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗をポットから取り出して鉢に仮置きし、高さを決めます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。

水やり

水やり
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【庭植え】

地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、梅雨明け以降、日照りが続いて乾燥する場合は水やりをして補いましょう。真夏は昼間に水やりすると水の温度が上がり株が弱ってしまうので、朝か夕の涼しい時間帯に与えることが大切です。

【鉢植え】

日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。新梢がだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。真夏は昼間に水やりすると、水の温度が上がり株が弱ってしまうので、朝夕の涼しい時間帯に行うことが大切です。冬は休眠するので、乾いたら水やりする程度の管理にします。

追肥

肥料
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【庭植え】

3月下旬〜6月、9〜10月に、堆肥などの有機質肥料と緩効性肥料を株の周囲にまき、土壌にすき込んでなじませます。

【鉢植え】

3月下旬〜10月の生育期間中は、月に1度を目安に緩効性化成肥料を施します。木の状態を見て、勢いがないようであれば、速効性の液体肥料を水やり代わりに与えて様子を見ましょう。

仕立て方と剪定

ブドウの仕立て

【庭植え】

ぶどうはつる性植物のため、庭植えの場合は棚仕立てにしましょう。長方形の棚の場合、1本の柱のそばに苗を植え付け、対角線上にある柱を目指して主枝を伸ばし、主枝から出る側枝をバランスよく棚に仕立てていきます。

一年生苗の場合は、植え付け直後に地際から約40cmの高さで切り取って摘心し、主枝を柱に誘引します。主枝が棚の天井部まで達したら棚上に主枝を出します。

1年目の冬の剪定(11〜2月)は、主枝の先端を切り取り、主枝から出た側枝はすべて付け根から切り取ります。

2年目の冬の剪定は、棚の下から発生する枝があれば、すべて付け根から切り取ります。主枝は先端を切り、主枝から出る側枝は付け根周辺にある2〜3芽を残して、その先は切り取りましょう。

3年目の春から側枝が旺盛に伸びてきたら、棚の頂部にバランスよく誘引します。6月頃に主枝、側枝ともに先端を切り取りましょう。側枝が込み合っている部分があれば、付け根から切り取って風通しをよくします。

3年目の冬は、各枝の付け根周辺にある2〜3芽を残し、その先は切り取ります。

4年目以降は、3年目の初夏と冬の剪定を繰り返します。古くなった枝があれば付け根から切り、新しく出た枝に更新するとよいでしょう。

【鉢植え】

一年生苗を植えた場合は、植え付け直後に約30cmの高さで切り取り、仮支柱を1本そばに立てて、縦方向に誘引します。

1年目の冬、主枝は10芽ほど残して先端は切り取り、側枝は2〜3芽残して切り取ります。

2年目の初夏、行灯型の支柱を鉢に設置し、リングに沿わせてつるを誘引します。

2年目の夏に、主枝から出た側枝4〜5本を垂直に伸ばし、1枝に1果実をつける樹形に仕立てます。

芽かき・ヒゲの切り取り

ブドウの芽欠き
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芽かきとは、不要な芽を摘み取ることで、4月下旬〜5月が適期です。1節に2芽以上ついている時は、1芽のみ残して、他は摘み取ります。また、主枝や側枝の節ごとにたくさんの芽が出ますが、そのうちの2〜3芽を残して、それ以外は新芽のうちに摘み取りましょう。すると伸長させたい枝に養分が行き渡り、生育が旺盛になります。

また、ぶどうは他者に絡む「ヒゲ」を伸ばしながら生育する、つる植物です。このヒゲは余分なエネルギーを消費する結果になるので、見つけたら早めに切り取り、つるは人の手で誘引していきます。

花房整形・摘房・摘粒

ブドウの摘果
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ぶどうは多数の花を咲かせて、やがて房ができます。房についた実を全て残すと、一つひとつの果実が肥大せずに、味も悪くなるため、「花房の整形」が必要です。この作業は、花がすべて落ちた後に行います。3本出ている枝のうち、両脇の2本(副穂)を付け根から切り取り、主穂の先端を1/3のところで切り取りましょう。

「摘房」は、房を間引く作業です。多くの房がついていると、それぞれの房が充実しないので、1枝に1房を目安に調整します。

「摘粒」は果実が膨らんできた頃、房についた果実を間引く作業です。果実の肥大に合わせて、込み合っている部分を切り取ります。特に大粒の品種で必要な作業となります。

袋かけ・収穫

ブドウの収穫
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ぶどうは雨に当たると病気が発生しやすくなるので、果実が大きくなってきたら袋かけをしましょう。虫や鳥の食害からも守ってくれます。市販の袋かけ用に防水加工されたものを利用すると便利です。

収穫は、栽培品種の適期に応じて行います。ぶどうは房の上部から熟してくるので、下部のほうから1粒とって味見して収穫するとよいでしょう。

病害虫

ブドウの病害虫
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ぶどうに発生しやすい病気は、うどんこ病、灰色かび病、さび病、べと病など。水はけのよい土壌に整え、風通しよく管理することを心がけましょう。雨よけや袋かけも効果的です。

害虫は、ブドウトラカミキリ、スリップス、コガネムシなどに注意。休眠期に適応する薬剤を散布して防除するとよいでしょう。

美味しいぶどうを自分で育ててみよう!

ブドウの育て方
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これまで、ぶどうの特性や種類、歴史、栄養価から始まり、実践編として庭での育て方について詳しく解説してきました。ぶどうの栽培方法について、具体的にイメージすることができたでしょうか? スーパーや青果店でおなじみのぶどうは、自宅でも栽培することができます。枝の誘引や剪定、摘果など、手をかけるポイントはいくつかありますが、その分、完熟果を収穫した時の喜びはひとしおです。ぜひ自宅でのぶどう栽培にチャレンジしてみてください。

Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

参考文献
『決定版 はじめてでも簡単 おいしい家庭果樹づくり』 著者/大森直樹 発行/講談社 2010年11月28日第1刷発行
『はなとやさい』2013年7月号、8月号/タキイ種苗

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