夏の節電対策に! グリーンカーテンにもなるフウセンカズラを上手に育てよう

Shirosuna_m/Shutterstock.com
可愛い名称で、夏の風物詩ともいえる「フウセンカズラ」。風に揺れる青い実が涼を感じさせてくれる、つる植物です。種子からでも育てやすく、丈夫で、栽培方法も簡単。初夏から秋口にかけてぐんぐん伸びる特性をいかせば、天然の日よけ“グリーンカーテン”に仕立てることもできます。上手に育てるコツをつかんで、この夏は、エコなガーデニングを楽しんでみませんか。
フウセンカズラってどんな植物?

風船状にふくらんだ淡緑色の果実が美しいフウセンカズラ(Cardiospermum halicacabum)は、ムクロジ科フウセンカズラ属のつる性植物。十数種がアメリカ大陸を中心とする熱帯に分布しています。ムクロジ科の植物は、その果皮にサポニンを含むものが多く、魚毒や石鹸として使われてきました。また熱帯や亜熱帯で果物として食用にされるレイシやリュウガン、ランブータンなども同じ科になります。木本が多いムクロジ科の中で、フウセンカズラは少数派の草本植物。熱帯では多年草として生育していますが、寒さに弱いため日本では一年草として扱われています。
風船の中には、ハート模様の黒い種子

長さ数メートルにも伸びる茎に、モミジのような深い切れ込みのある柔らかな葉。その葉の付け根から出る細長い茎の先には、数ミリほどの小さい花と細い巻きひげがついています。このひげで他のものに絡みついて、よじ登りながら成長していくのです。7月頃になると、4枚花弁の3mmほどの小花が咲き始めます。花が終わると、子房の膜が膨らみ始めて、直径3cmほどの中空の実に。ぷっくりと膨らんだ実が風に揺れる様子から、和名は「フウセンカズラ」、英名でも「Balloon Vine」と呼ばれています。

風船のような実の中から現れる3粒の種子は、黒熟した腹面に白いハート形が。属名のCardiospermumは、ギリシア語の「cardia(心臓)」と「sperma(種子)」が語源となっています。また、英語では「Heart Pea」「Heart Seed Vine」という別名もあります。
そして花言葉は「一緒に飛びたい」。風船のように飛んでいきそうな実のイメージにぴったりですね。

フウセンカズラだけじゃない。ぷっくり膨らむ実を愛でる植物たち。

花後につく実の形状がユニークな植物は、開花期よりも実をつけた状態で切り花やドライフラワーとして楽しまれます。なかには、フウセンカズラのように膨らんだ実をつけるものもあります。代表的なものをあげてみましょう。
ニゲラ

キンポウゲ科・クロタネソウ属のニゲラ(Nigella)。薄紫やピンク、白などの花も美しいですが、花後に膨らむ果実はドライフラワーにしても楽しめます。
ホオズキ

日本原産のホオズキ(鬼灯、鬼燈、酸漿)はナス科の一年草。萼(がく)の部分が果実を包んで袋状になります。
フウセントウワタ

怒ったときのハリセンボンのようなトゲつきの実をつけるのは、アフリカ原産のガガイモ科(キョウチクトウ科)の一年草、フウセントウワタです。切り口から出る白い汁は毒性があるので注意を。
春まきのつる性植物で省エネ対策の「グリーンカーテン」を

夏の強い日差しを遮るように、壁面や窓の外側に張ったネットに、つる性の植物を這わせてつくる天然の日除け、いわゆる“緑のカーテン(グリーンカーテン)”。その効果は、日陰をつくってくれるだけでなく、「建物に熱を蓄積させない」「蒸散により葉から空中に放出された水分が周囲の熱を下げ、涼風を室内に運ぶ」など。自然の力を利用した夏の省エネ対策です。
●緑のカーテンの詳しい記事はこちら
『夏に緑の涼を演出しよう!「グリーンカーテン」を美しく仕立てるトレリス』
酷暑に備えて早めの準備! 緑のカーテンを目指した栽培計画

夏場に成長が旺盛になるつる性の植物であれば、たいていのものは“緑のカーテン”に利用できます。花を楽しむのであれば、アサガオやユウガオ、トケイソウ、ルコウソウ、ツンベルギアなど。収穫も楽しみたいのであれば、ゴーヤやヘチマ、オカワカメ、ツルムラサキなどがよいでしょう。細い茎、淡い葉色のフウセンカズラでつくったカーテンは、やや繊細なイメージですが、ゴーヤやヘチマのように重い実がなる植物に比べて、ネットや留め具にかかる負担も少なく、初めて挑戦する人にもおすすめです。ここからは、暑さが本格化する前に立派な日除けとなってくれるよう、種まきからスタートする栽培方法をご紹介します。
フウセンカズラが好む環境

熱帯エリアに広く分布するフウセンカズラは、日当たりがよく、水はけのよい、肥沃な土壌を好みます。暑さにも強いので、夏の直射日光が当たる場所でも大丈夫。庭植え、鉢植えともに可能です。
種まき・植え付け

発芽適温は20~25℃。目安は「八重桜が咲く頃」、関東以西であれば5月の連休以降が種まきの適期です。移植を嫌うので、直まきするか、移植ポットを用いるとよいでしょう。種子は吸水しにくい硬実のため、刃物やヤスリなどで表面に傷をつけ、一晩水につけておくと発芽が揃いやすくなります。水はけがよく、通気性のある土壌を好むので、赤玉土と腐葉を6:4で配合するか、市販の草花用培養土を使ってもよいでしょう。直まきする場合は、深さ30cm程度耕し、腐葉土や完熟堆肥をすきこんでおきましょう。移植ポットの場合は、本葉が4~5枚出たら植え替えを。鉢やプランターは深さが十分にあるタイプを用意します。地植え、鉢植えともに、株間が20~30cmになるように植え付けます。

肥料
肥料を多く欲しがるので、土壌や用土には、元肥として緩効性化成肥料を混ぜておきましょう。ただし、チッ素分の与えすぎは葉だけが茂り果実を落とす原因に。追肥には、リン酸分とカリ分が多めの緩効性肥料を置き肥にするか、1~2週間に1度液体肥料を施すとよいでしょう。
水やり
暑い季節が成長期にあたるため、梅雨時期を除いては、土の表面が乾いたらたっぷりと水やりを。鉢植えやプランター植えの場合は、鉢底から水が出てくるまで十分に与えます。夏場は、日中に水やりをすると蒸れてしまうので、朝や夕方など涼しい時間に与えます。緑のカーテンとして植えるような直射日光が当たる場所では、吸水がより活発になるので、早朝と夕方、1日2回与えるくらいの頻度がよいでしょう。
病気と害虫
病害虫の心配はほとんどありませんが、高温・乾燥下の環境ではハダニが発生することがあります。葉のツヤがなくなり、茶色くなって枯れてしまうのはハダニが増殖している合図。ハダニがつきやすい葉の裏側に、こまめに散水すると予防になりますが、変色した葉が多くなったら殺ダニ剤を散布して駆除しましょう。
摘心と誘引

本葉が5~7枚展開したタイミングで、茎の先端を摘み取る摘心を行うと、脇芽が伸びてボリュームのある株に育ちます。脇目が伸びてきたら、適宜その先端を摘心すれば、枝葉が広がり美しいカーテンに。アサガオのように茎自体がくるくると巻きついて登っていくのとは違い、フウセンカズラは細い“巻きひげ”が絡みついてよじ登るスタイル。そのため支柱やフェンスなど棒状のものにそのまま絡みつくのは苦手です。ネットを張るか、柵やトレリスなどには、棒と棒の間に麻ひもなどを渡すと巻きひげが絡みやすくなります。行灯仕立ても同様に、支柱と支柱の間にネットや紐を張るときれいに仕上がります。軒下などにネットを吊すときは、フウセンカズラの背面にネットを張るように。伸ばしたい方向に茎を誘引するのもよいでしょう。
採種

暑さの盛りを迎えると、緑色だった実が茶色く色づいてきます。1つの実に3つ入っている種子も緑色から真っ黒に熟し、収穫のタイミングです。9月に入ると葉が落ち始めるので、ネットをはずして撤去するとともに、来年用の種子を採取しておきましょう。大きく成長した株からは200個以上の種子が採れることも。白いハート模様の真っ黒な硬い種子は、かなり個性的。クラフト素材にしたり、瓶に詰めて飾ったりすると、とても可愛いですよ。



フウセンカズラで涼を呼び込むガーデニングを

酷暑ともいえる日本の夏にも負けないで、すくすくと伸びるフウセンカズラ。その丈夫さとは裏腹に、ほっそりとした草姿に可愛らしい実をつける様がなんとも涼し気です。緑のカーテンに、行灯仕立てにと、アレンジの幅があるのも魅力。自家採種で毎年更新できるので、育ててみてはいかがでしょう。
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