オキザリスは丈夫で増えて育てやすい! 特徴と育て方を解説
「オキザリス」の名で流通している球根植物をご存じですか? オキザリスという名前にピンとこない人でも、和名の「カタバミ(片喰・酢漿草)」と聞けば思い当たるはず。ガーデナーにとってはやっかいな存在である、あの雑草の仲間です。けれども、よく見ると、やや光沢のある5弁花を太陽に向けて精いっぱい開く様は、なかなか可憐。そんなオキザリスの仲間には、ガーデンで活躍する園芸品種などもあります。ここでは、数年間は植えっぱなしで大丈夫な、ビギナーにもおすすめの球根植物「オキザリス」の育て方や品種バリエなどについてご紹介します。
目次
オキザリスとは、どんな植物?
カタバミ科カタバミ属(Oxalis属)の植物の総称で、おもに熱帯アメリカや南アフリカ原産の球根性の種類が園芸的に流通しています。
日本では、耕地や道端に生える山里植物として知られるカタバミ(Oxalis corniculata)が全土に分布しています。匍匐性の茎は、よく分枝して広がり、花後につく蒴果(さくか)は成熟するとはじけて勢いよく種子を飛ばします。発芽も早いため、繁殖力は極めて旺盛。「駆除しにくい雑草」として扱われますが、この繁殖力にあやかって、特徴的な葉の形が家紋のモチーフになるなど、日本人にとっては親しみのある植物の一つです。
属名はギリシャ語で「酸い」を意味するオクシス(oxys)に由来。葉や茎にシュウ酸を含み、噛むと酸味を感じるためです。前出のカタバミにも、「鏡草(鏡を磨いたことから)」「スイモノグサ」「ショッパグサ」といった別名があります。
オキザリスの花言葉は?
オキザリスにはいくつかの花言葉があります。
まずは、「輝く心」。古代に、シュウ酸を含む葉や茎で金属の鏡や神具を磨いていたことに由来します。復活祭の時期に咲くことから、スペインやフランスなどではカタバミのことを「ハレルヤ」(キリスト教で「主をほめたたえよ」の意味)と呼ぶことも。そこから「喜び」「母の優しさ」という花言葉が派生したようです。一方で、丈夫で庭に植えるとどんどん増える生命力の強さから「決してあなたを捨てません」という花言葉もあります。
花色も姿もバラエティー豊富で、集めたくなる!
南アフリカや南中米を中心に、世界中に800種類以上が分布しているオキザリスの仲間。多くは宿根草ですが、それらの形状は、草本、ロゼット状になるもの、地中に球根をつくるもの、木質化するもの、多肉植物に近いものなどさまざまです。花色も、桃、黄、橙、紫、白と豊富で、日の光を浴び咲き揃う姿はとても華やか。特徴的な筒状の花は、日が陰ると閉じてしまいますが、くるくると傘を畳むように回旋した姿もご愛敬。葉はハート形の3つ葉が一般的ですが、細葉や卵形、短い毛が生えていたり、多肉質だったりとじつに多様で、コレクター心がくすぐられます。
ここでは、栽培品種として流通しているものを中心にご紹介します。
ハナカタバミ
Oxalis bowiei
長い花茎に大きなピンク色の花が特徴的なハナカタバミは、南アフリカのケープ地方原産。江戸時代末に観賞用に輸入され、庭植え用に広く普及しています。寒冷地以外は路地植えで越冬するため、河原などで野生化したものも見かけます。
ミヤマカタバミ
Oxalis griffithii
低山帯の林床に生えるため、湿り気のある、半日陰の環境を好みます。本州の東北南部から中国、四国地方まで広く分布。白もしくは淡いピンクの花弁に赤紫の条が入った花を、花茎の先に一輪ずつつけます。
イモカタバミ
Oxalis articulate
南アメリカの標高の高いエリアを中心に広域で分布。日本には第二次世界大戦後に観賞用として持ち込まれて以降、全国に帰化しています。花色は紫桃色からピンク、淡いピンク、白など。ムラサキカタバミと似ていますが、イモカタバミはイモのような塊茎で増えます。
オキザリス・バーシカラー
Oxalis versicolor
南アフリカのケープ地方原産。裏側に赤~濃ピンク色の縁取りが入る覆輪の白花が特徴。つぼみや、花が閉じた状態のときに、紅白の縞模様が現れる姿が、理容室の看板やクリスマスツリーに飾られるキャンディを連想させます。
‘桃の輝き’
Oxalis glabra‘Momono-Kagayaki’
O.glabraの園芸品種。秋から冬にかけて、中心部が黄色の桃花を咲かせます。春に地上部が枯れて、夏場は休眠、秋に再び芽を出します。丈夫で寒さにも強く、地下茎が伸びて爆発的に増えるので鉢植えがおすすめ。
‘スプリング・チャーム’
Oxalis comosa ‘Spring Charm’
O. comosaの園芸品種でピンク、オレンジ、黄などいろいろな花色があります。早春から花をつけ、大輪の多花性なので開花期はとても華やか。
オキザリス・トライアングラリス
Oxalis triangularis
南アメリカ原産。濃い紫色で大きな三角形の葉が特徴。別名「紫の舞」。春から秋にかけて、淡いピンク色の花をつけます。
オキザリス・プルプレア(フヨウカタバミ)
Oxalis purpurea
南アフリカ原産。明治時代中頃に観賞用として導入され、日本各地に逸出しています。花は直径4cmほどでカタバミ属の中ではやや大輪。紫紅色、ピンク、白、藤色、紫色、黄色など花色も豊富。
うまく組み合わせれば一年中楽しむことができる
オキザリスは多くの種類が出回っているため、それぞれの開花時期は異なります。春夏秋冬それぞれに咲くものがあるほか、長い期間楽しめる四季咲き種もあり、上手に集めると一年中楽しむことができます。
栽培環境
それなりに合う環境であれば、むしろ“増えすぎて困るほど”に生育旺盛なオキザリス。乾燥に強く、日当たりと水はけのよい環境を好みます。とくに夏場に休眠する種類の場合、過湿や多肥は、球根が腐りやすくなる要因に。多くは耐寒性もあり、寒冷地でなければ屋外で越冬が可能です。日当たりが悪い環境では、花つきが悪くなりますが、夏の直射日光や西日は嫌うので配慮を。夜間や曇天時には花を閉じてしまいますが、機嫌を損ねたようにくるくるとすぼんだ様子も可愛いものです。
用土
オキザリスが好むのは、水はけのよい土。基本的には丈夫で繁殖力が旺盛なものが多いので、地植えの場合はあまり気にしなくても OK。水はけが悪い場所ならば、植え付ける前に腐葉土や堆肥、赤玉土などを混ぜ込んで耕しておくとよいでしょう。
鉢植えにするならば、赤玉土7に腐葉土3程度を混ぜた土か、市販の草花用培養土を使うこともできます。山野草として扱われるものは、鹿沼土や山砂などを加えるとよいでしょう。
植え付け方法
オキザリスは苗か球根で入手します。花がついた状態で鉢に植えられているものは1~2シーズン程度そのまま栽培してもOK。ポット苗は庭植えや1回り大きめの鉢に植え付けを。プランターなど大きめの鉢に複数の株を植えるときは、成長後のスペースを考えて、20cm以上株間をとるようにしましょう。
オキザリスの球根は、春植えのものと秋植えのものがあり、春植えなら3~4月、秋植えなら8~9月が植え付けの適期です。1年目はあまりボリュームが出ず花数も少ないので、地植えよりは鉢やポットで養生するのをおすすめします。間隔を2~4cm程度とり、深さは1~2cmで植えるようにしましょう。4号鉢なら小球で2~3球、大きい球根なら1球のみで植えます。
水やり・肥料
過湿になると球根が腐りやすくなるため、水やりは用土が完全に乾いてから。表面の土が乾いてから1、2日経ったタイミングがよいでしょう。与えるときは鉢底から余分な水が出るくらいに、たっぷりと。休眠期のある種は、茎葉が枯れて地上部が完全になくなった後は水を与えません。春植え球根は冬に休眠、秋植え球根は夏に休眠します。
肥料はあまり必要とせず、多肥になると根腐れを起こし成長が悪くなることも。植え付けのときに緩効性肥料を施しておく程度で十分です。
病害虫
病害虫の心配もほとんどありませんが、高温時には葉の裏にダニがつくことも。防除するには、葉の裏に水をかけるように。増えてしまったときには殺ダニ剤を散布します。鉢植えでは、地下部にネコナカイガラムシがつきやすいので、オルトランDXなどの粒剤をまいておくとよいでしょう。
増やし方
オキザリスの球根は自然に分球して増えるため、鉢植えの場合、窮屈になり地上部の生育が悪くなることも。2~3年に1度は、植え替えを兼ねて、株分けをしてあげましょう。球根の状態で保管するなら、休眠期に入ってから掘り上げ、土を落として、ネットなどに入れて風通しのよい冷暗所に吊しておきます。
さまざまな種類のオキザリスを楽しもう!
太陽の光を浴びてご機嫌な様子で開くパラソル形の花が可愛らしいオキザリス。カラーリーフが楽しめる品種もあり、花壇や鉢植えはもちろん、寄せ植えに使ってもアレンジの幅が広がるはず。丈夫で手間いらずのものが多いので、花色や草姿、性質の違いなどを楽しみながら、いろいろ育ててみてはいかがでしょうか。
Photo/ 1) ry0_803 2) Iva Villi 3) aryunet 5) Sunwand24 6) Teresa Design Room 7) Wiert nieuman 8) R. Maximiliane 9) Iva Villi 10) KPG Payless2 13) Fenlin 14) Teresa Design Room 15) RukiMedia 16) ChetnaC 17) Jacomo 18) Khaled El-Ashra 19) RYBAK NADEZHDA 20) Carlos Huang 21) Wattlebird 22) Molly Shannon /Shutterstock.com
Credit
写真&文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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