夏を代表する草花といえば、サルビアをイメージする方も多いのではないでしょうか。暑さに大変強く、日本の猛暑の中にあっても元気に咲いてくれるので、夏の花壇や寄せ植えで大活躍します。そして花色が豊富で、とてもカラフルな花姿が魅力です。この記事では、サルビアの特性や育て方などについて、詳しく解説していきます。
目次
サルビアとは
サルビアは、シソ科サルビア属(アキギリ属)の非耐寒性多年草で、原産地は南米など。本来は多年草ですが、寒さに弱く、日本の厳しい冬を乗り越えられないので、国内では一年草として扱われています。セージとも呼ばれ、その種類は900種以上に及び、ハーブや観賞用として利用されるものなど、じつに多様です。それら全てをご紹介するとなると紙幅が尽きるので、ここでは日本で観賞用の園芸種として広く普及しているサルビアに絞ってご紹介していきます。日本で主に流通しているのは、赤花で最もポピュラーなスプレンデンス、ブルーサルビアの名称で知られるファリナセア、長い穂状の花が咲き続けるコクシネアなどです。
名前の由来
サルビアの名前は、ラテン語で「健康でよい状態」という意味の「salvas(サルバス)」が由来となっています。それというのも、サルビアにはヘビの噛み傷に効くなど、さまざまな薬効があるとされ、ローマ時代から一部のサルビアが薬草として用いられてきたからです。現在、日本ではサルビアとセージの名前が入り混じって、どうにもややこしくなっていますね。それは「salvas」がフランスに渡って「sauge(ソージュ)」と呼ばれるようになり、さらにイギリスに伝えられると「sage(セージ)」の名で普及したため。国によって名前が異なっているものの同じ植物で、日本では種類によってサルビアと呼ばれたり、セージとして利用されたりしています。
どんな花を咲かせる?
サルビア・スプレンデンスは、赤が最もポピュラーですが、園芸品種が多く、オレンジ、ピンク、紫、白など多様です。花穂が立ち、下から順に咲き上がっていきます。
ブルーサルビアの名前で親しまれているサルビア・ファリナセアは、ラベンダーに似た青い花穂を多数つける姿が魅力。白花や2色咲きの品種もあります。
トロピカルセージとも呼ばれるサルビア・コクシネアは、花色に赤、ピンク、白などがあります。やや長めの穂を上げて咲き、開花期間が長いのが特徴です。
サルビアの花言葉
サルビア全般の花言葉は、「尊敬」「知恵」「良い家庭」「家族愛」など。サルビアの一部は、古くから薬用として利用されてきたことから、使いこなせる人を思い浮かべて「知恵」や「尊敬」という言葉を重ねたのかもしれません。「良い家庭」「家族愛」はサルビアを手元に置くことで、体調不良時やケガへの備えとなることからでしょうか。
それぞれの花色に限定した花言葉としては、赤花はその情熱的な花姿のイメージから「燃える思い」、青や紫の花は「尊敬」「永遠にあなたのもの」などです。
サルビアの見頃はいつ?
サルビアの開花期は6〜11月です。開花期が初夏から晩秋までと長いのが特徴で、花が少なくなりがちな真夏も元気に乗り切ってくれます。昼夜の気温差が大きくなる秋には、花色が深く冴え冴えとし始め、その表情の変化も楽しめます。真夏に草姿が乱れてきたら、草丈の半分くらいまで切り戻してもOK。再び茎葉を伸ばして、秋に充実した花姿を見せてくれます。
サルビアは幻覚を見せる?
数あるサルビアの種類の中には、幻覚作用を持つものも含まれていることをご存じでしょうか? メキシコ原産種の中には、標高300〜1,800mの限られた地域で生育する「幻覚性サルビア」(Salvia divinorum)と呼ばれる種類があります。これには人間の脳の中枢に働きかける「サルビノリン・A」という成分が含まれており、摂取すると浮遊感、幻聴、めまいなどの症状が現れ、幻覚を見せる作用があるそうです。メキシコの先住民は、このサルビアを宗教的儀式に使用していたとされています。ただし、日本で一般にホームセンターや花苗店で出回っている園芸用サルビア品種には、このような成分が含まれているものはないので、安心してくださいね。
サルビアの育て方
これまで、サルビアの特性や魅力について触れてきました。では、ここからは育て方の実践編です。ビギナーでも分かりやすいように、庭植え・鉢植えの管理の仕方について、詳しく解説していきます。
栽培環境
日当たりがよく、風通しのよい場所を好み、水はけ・水もちのよい、ふかふかとした土壌でよく育ちます。弱酸性で有機質肥料を施した肥沃な土壌が理想です。
生育適温は15〜25℃。暑さに強い一方で、寒さに弱い性質です。本来は多年草ですが、日本ではうまく冬越しできないために、一年草として扱われています。ただし、霜や凍結にあわない5℃以上の環境であれば冬越しが可能です。気に入った品種があれば、抜き取って処分せずに草丈の半分くらいまで切り戻して鉢に植え替え、日当たりのよいベランダの軒下や、室内の日当たりのよい窓辺などで管理してみましょう。翌春の成長期を迎えると、再び生育し始めます。
土づくり
【庭植え】
サルビアは丈夫な性質で土壌を選びませんが、植え付け前に腐葉土や堆肥などの有機質資材を植え場所に投入し、よく耕してふかふかの土をつくっておくとよいでしょう。
【鉢植え】
草花の栽培用にブレンドされた、市販の園芸用培養土を使うと便利です。
種まき
コンテナやハンギングバスケットに寄せ植えとして少し植える程度なら、花苗店で苗を購入するのがおすすめですが、広い敷地にたくさん植えたい場合は、種まきからスタートすると経済的です。
種まきの適期は、4月下旬〜6月中旬。サルビアの発芽適温は20〜25℃と高温性なので、十分気温が上がった頃に行うと失敗が少なくなります。まず、種まき用のトレイに、赤玉土とピートモスを同量ずつブレンドした土(草花用にブレンドされた培養土を使ってもOK)を入れましょう。サルビアのタネを条まきか、ばらまきにし、培養土を厚み5mmくらいかけて軽く押さえます。最後に霧吹きで水やりしましょう。種まきから10日前後すると発芽します。
発芽後は日当たりのよい場所で管理。込んでいる場所があれば、苗が徒長しないように間引きます。本葉が出始めた頃に、一度液肥を少量混ぜて水やりをし、生育を促しましょう。
本葉が2〜4枚ついたら、鉢上げのタイミングです。直径6cmの黒ポットを準備し、赤玉土とピートモスを同量ずつブレンドした土(草花用にブレンドされた培養土を使ってもOK)を入れましょう。種まき用のトレイから苗の根鉢を崩さないように取り出して、ポットに植え付けます。緩効性肥料を置き肥し、最後にたっぷり水やりを。その後は、1週間に1度を目安に液肥を施して育苗します。
植え付け
サルビアの苗の植え付け適期は、6月中旬〜7月中旬です。タネから育てている場合は、鉢上げした黒ポットの底まで根が回った頃が、定植に適したタイミングです。花苗店で苗を購入した場合は、早めに定植しましょう。
【庭植え】
腐葉土や堆肥などの有機質資材を投入して土づくりをしておいた場所に、植え付けます。草丈が20〜30cmのスプレンデンスなどは、株間を約25cm取り、ファリナセアやコクシネアなど80〜150cmに及ぶ種類は、30cm以上は取りましょう。植え付け後は、たっぷりと水やりします。
【鉢植え】
草花の栽培用に配合された園芸用培養土を利用すると便利です。鉢の大きさは、5〜7号鉢に1株を目安にするとよいでしょう。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。サルビアの苗をポットから取り出して鉢に仮置きし、高さを決めます。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。寄せ植えの素材として、大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。
水やり
【庭植え】
植え付け後にしっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、水切れしないように管理しましょう。根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、水やりをして補います。真夏は朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。真夏は昼間に水やりすると水の温度が上がり株が弱ってしまうので、涼しい時間帯に行うことが大切です。
肥料
ビギナーの場合、緩効性化成肥料を常備しておくのがおすすめです。植物への汎用性が高く、ニオイがしないため扱いやすいのがメリット。開花期に与える液肥は、開花促進を目的とした配合の製品を選ぶのがおすすめです。
庭植え、鉢植えともに、5〜7月と9月〜11月中旬の期間は、定期的に緩効性化成肥料を株の周囲にまいて株の勢いを保ちます。鉢植えの場合は、花茎が上がってきた頃から開花が終わるまで、10日に1度を目安に液肥を与えるとよいでしょう。夏の高温期に肥料成分が残ると株が弱ることがあるので、夏は肥料を切らして管理するのがポイントです。
病害虫
成長期には、アブラムシやヨトウムシがつきやすくなります。早期の対策が大切で、定植する際に土中に混ぜる粒剤タイプの薬剤を使うと効果的です。用法・用量を守って使うようにしましょう。また、真夏の乾燥期はハダニが発生しやすくなります。乾燥が続く時は、葉裏など全体に水を噴霧して防除するとよいでしょう。雑草が繁茂していたり、花がらや枯れ葉をそのまま放置したりしていると、病害虫が発生しやすくなります。こまめにメンテナンスをして、株まわりを清潔に保ちましょう。また、成長とともに茎葉が茂って込み合いすぎると、風通しが悪くなって病害虫が発生しやすくなるので、適宜枝葉を間引いてスマートな姿を保つことも予防のポイントです。
きちんとメンテナンスをしていれば、病気が発生する心配はほとんどありません。
増やし方
サルビアは、挿し芽で増やすことが可能です。挿し芽の適期は6月か9月。勢いのある茎葉を切り取り、清潔な挿し木用の培養土を育苗用トレイなどに入れて、採取した茎葉(挿し穂)を挿しておきます。摘心したり、切り戻す際に切り取った茎葉を使ってもOKです。水切れしないように管理すると、しばらくして発根するので、黒ポットなどに植え替えて育苗しましょう。株が大きくなったら、植えたい場所に定植します。挿し芽のメリットは、採取した株のクローンになることです。
タネを採取して保存しておき、翌シーズンに種まきして増やすこともできます。ただし、タネをつけると株が消耗して次々と花を咲かせなくなるので、開花期前半は花がら摘みをして長く楽しみ、そろそろ終わりを迎える頃に花がら摘みをやめて、タネをつけさせるとよいでしょう。種がはじける頃に莢ごと採取して、よく乾燥させてからタネを取り出します。密封容器に入れて、花名と採取した日を書き入れたラベルをつけ、次の種まきシーズンまで冷暗所で保存しましょう。
サルビアの寄せ植えを楽しもう!
ここまで、サルビアの特性や育て方について、細かく解説してきました。サルビアの魅力について分かっていただけたでしょうか? 花色や花姿の豊富さが魅力のサルビアは、夏の暑さに強く、初心者でも簡単に育てられる草花です。さまざまな種類のサルビアを組み合わせて、初夏から秋まで長く楽しめる寄せ植えを作ってみてはいかがでしょうか。
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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