古くは、建築デザインやテキスタイルのモチーフにも描かれた美しいフォルムを持つ植物の「アカンサス」は、大型の宿根草の一つ。丈高く成長し、初夏には花穂を伸ばすので、庭のダイナミックなアクセントになる丈夫な植物です。神奈川の自宅で25年以上ガーデニングを楽しむベテランガーデナーの遠藤昭さんに、自宅で育てるアカンサスの魅力と育て方を教えていただきます。

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アカンサスのプロフィール

アカンサス

学名:Acanthus
和名:ハアザミ(葉薊)
科名 :キツネノマゴ科
属名:ハアザミ属(アカンサス属)

庭に一株あるだけで、イングリッシュガーデン的でアーキテクチャルな雰囲気を醸し出す宿根草だ。常緑で光沢のある葉は、冬枯れの庭に潤いを与えてくれる。その存在感のあるフォルムは、古代ギリシャ時代から建築デザインにも使われ、ローマ時代は、この葉のモチーフをコリント式の柱の装飾に用いたとされる。紀元前の昔から、この美しい葉は人々に芸術創造へのインスピレーションを与えたのだろう。アカンサスはギリシャ語で棘を意味し、ギリシャの国花でもある。

アカンサス

英国旅行中、シシングハースト・カースル・ガーデンで見かけたアカンサス。イングリッシュガーデンの定番植物だ。

アカンサス装飾
フランス・ニームの古代ローマ寺院に見られるアカンサスの装飾が施された円柱。mountainpix/Shutterstock.com

冬も葉が美しいアカンサス・モリス

アカンサスの葉
冬のアカンサスは葉が美しい。写真は、12〜1月の雪の日。

地中海沿岸が原産地でポルトガル、イタリア、シチリア島、ユーゴスラビアから北アフリカで約20種見られる。日本でアカンサスと呼ばれている品種は、ポルトガルからイタリアに分布するアカンサス・モリス(Acanthus mollis)で、明治時代に渡来したようだ。従って、もともとは冬に温暖湿潤で夏に乾燥する気候で育っていた。それゆえに、冬の緑がきれいなのだ。

冬のアカンサス・モリス
真冬の2月でも新しい艶やかな葉が見える。

地中海式気候が原産地の草花は、冬は緑で、夏に休眠するものが多い。アカンサスは耐寒性も耐暑性もあるが、鉢植えや暑い地域だと夏枯れして葉を落とすこともある。しかし、秋には復活する。

アカンサス・モリス
5月の中旬にはつぼみの花茎が伸びてくる。

葉は60cmほどに伸びるので、株の直径は1m以上になる。花茎は180cmほどの高さまで伸びるので、育てる際は、ある程度のスペースの確保が必要だ。開花期は関東地方で6月。

アカンサスの迫力の姿

アカンサス・モリス
6月には花茎が背の高さほどにまで達する。カシワバアジサイなどにも負けない存在感。

アカンサスの魅力は、大きな切れ込みのある葉と共に、この巨大な花茎だ。決して鮮やかな美しい色彩ではないが、一本一本が芸術的な形で、林立するとさらにカッコイイ。細部を見ると、花はクジラが口を開けて舌をベロンと出しているような奇妙な形だ。

アカンサスの花

上のほうにクジラの頭のような淡い黒紫色グラデーションの萼(がく)が、下には棘の生えたあごのような苞があり、その間から白~ピンクの花弁がペロンと出ているようだ。この下顎の棘が、ギリシャ語のアカンサスという名前の由来なのだろう。また、この花茎は乾かしてドライフラワーにも使える。

アカンサスのつぼみ
花茎の頂上の部分で、まだ花弁が出ていない状態。

アカンサスの育て方

場所と土壌

アカンサスの育て方

育てる場所としては、日当たりがよく、肥沃で湿潤だけれども水はけのよい土を好む。日陰でも育つが、花付きが悪くなる。一度、植えて根を張ってしまうと、太い根なので、移植が難しくなる。なので植える時は、大きくなる植物ゆえに、慎重に場所を考えたほうがよい。植え付けは春か秋が適している。十分に深く大きな穴を掘り、土に堆肥や腐葉土を漉き込んでから植え付けると、その後の成長を助ける。

日頃の管理

地植えの場合は、水やりの必要はない。鉢植えの場合、成長期の春と秋に乾燥させないよう気をつける。肥料は成長期の春と秋に、発酵油粕を施す。

増やし方

アカンサスの育て方

アカンサスの株は比較的ゆっくりと成長するので、秋または春に地上部に葉芽が見える部分の根を切り取ることで株分けできる。あるいは、晩秋または初冬に、根挿し(根伏せ)で増やすことができる。10cm程度の長い太い根の部分を切り、地中に横にして植えておくと春に発芽する。我が家のこのアカンサスは、地植えで20年以上経つが、ほとんど放置状態で、時々、株が大きくならないように周りに出てくる小さな株を掘り上げて、鉢に植え、欲しい人に差し上げている。

また、実生も可能だ。アカンサスの種子を発芽させるには、1〜2日水に浸した後に、10~15℃で育てる。通常21日から25日で発芽する。ただし、開花するまでには2年以上かかるので、根気が必要だ。

アカンサス

病害虫は、ほとんど見られない。こんなに丈夫で長もち、手間いらずのアカンサス。ちょっと庭の雰囲気を変えてみたいと思っているあなたへ。アカンサスを一株植えてみませんか?

Credit


写真&文/遠藤 昭
「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー。
30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)。
ブログ「Alex’s Garden Party」http://blog.livedoor.jp/alexgarden/

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