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自分でも育てられる! 枝豆の基本的な特徴、育て方のポイントを紹介

自分でも育てられる! 枝豆の基本的な特徴、育て方のポイントを紹介

夏のビールのお供といえば、枝豆を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。枝豆は鮮度が落ちるのが早い野菜の一つで、じつは収穫したその日のうちに食べるのが、最高の味わい方です。採れたての美味しさは、家庭栽培ならではの醍醐味。今年はぜひ枝豆を育てて、甘く風味豊かで、本来の味を楽しんでみませんか?

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枝豆とは

枝豆と大豆

枝豆は、マメ科ダイズ属の果菜類で、中国が原産地です。温暖〜冷涼な気候を好み、発芽適温は25〜30℃、生育適温は20〜25℃。4〜5月に種子を播いて育成し、7〜8月に収穫した後は枯死する一年草です。草丈は50〜80cmになります。

栽培に適しているのは、日当たり、風通しのよい場所。連作を嫌うので、前のシーズンにマメ科の植物を育てた場所での栽培は避けましょう。適した土壌酸度はpH5.5〜6.5で酸性土壌にやや弱く、酸性に傾きがちな日本の土壌では、あらかじめ苦土石灰を散布しておくとよいでしょう。マメ科の植物は、ほかの野菜よりも肥料は控えめにして育成するのがポイントです。

枝豆が属するマメ類は、未熟な状態で食べるものは「野菜」に、完熟させた状態で食べるものは「穀類」に分類されます。枝豆は大豆を若採りしたものなので、緑黄色野菜となります。一方、完熟させてから収穫する大豆は穀類。枝豆と大豆は同じ植物なんです! ちょっとややこしくなりますが、大豆だけでなく、黒豆の未熟果も枝豆と呼ばれています。

「枝豆」という名前は、莢のついた枝のまま流通したことが由来となっています。これは、枝から莢を切り離すとすぐに味が落ちてしまうため、少しでも美味しさを保とうとした先人の知恵によるものです。現在も枝つきのままスーパーや青果店に並んでいることがありますね。枝豆は鮮度が命の野菜ですから、ぜひ自身で育てて、収穫後すぐにしか得られない絶品の味わいを楽しんでください。

枝豆の歴史

枝豆

枝豆の原産地は中国ですが、前述の分類からいえば「穀類」の大豆の収穫を目的として栽培されてきました。中国東北部で分化して誕生したという説や、中国南西部が発祥地とする説など諸説あり、はっきりしたことはまだ分かっていません。しかし、古代文献によると4000年前には栽培されていたようです。日本にも古くから伝わり、遺跡からの出土によって、縄文中期から後期にかけてはすでに存在していたことが確認されています。ただし、どのようにして伝えられたのかは、今なお謎のままとなっています。

枝豆が食べられるようになったのは、江戸時代から。平和な社会が築かれて農作物の生産能力も向上し、「穀類」として重要な存在だった大豆を、若採りした「枝豆」として味わう贅沢が生まれたのです。お里である中国でも、もともと枝豆を食べる習慣はありませんでした。しかし、日本へ輸出するための枝豆栽培が始まったことによって、現地でも枝豆を食べるようになったといいます。

枝豆の品種と産地

丹波黒豆枝豆
丹波黒豆枝豆。

枝豆の品種は400種以上にものぼるとされ、品種によって性質は多様です。栽培期間は種まきから収穫まで、約85日が目安とされていますが、品種によって早生・中生・晩生があり栽培期間も異なるため、種袋でチェックしておくとよいでしょう。また、粒の大きさや莢につく産毛の色などにも違いがあります。人気の高い野菜だけに、品種改良にしのぎを削って毎年優れた品種が誕生しているのです。

ここで、地方品種について注目してみましょう。丹波地方の「丹波黒豆枝豆」や、山形県の「だだちゃ豆」が有名どころで、それぞれに香りがよくコクのある旨味で高評価を得ています。これらの「黒豆」や「茶豆」、通常の緑色の枝豆(青豆ともいいます)とを見分けるポイントがあります。豆を覆っている薄皮が、通常の枝豆は緑色をしているのに対し、黒豆や茶豆は茶色っぽいのが特徴です。黒豆や茶豆の品種は晩生がほとんどで栽培期間が長く、その分栽培が難しいともいえます。しかし、品種改良によって早生種や中生種も登場していますし、青豆と茶豆の特徴を併せ持った、栽培しやすく味のよい品種も出回るようになりました。枝豆には、奥が深い品種の世界が広がっているので、人気品種や稀少品種、地方品種の栽培にチャレンジして、味比べをしてみるのもいいですね。

枝豆は栄養価が高い

枝豆の栄養価

枝豆は、大豆に多いイソフラボンを少量含み、大豆にはないビタミンCを多く含むという、豆と野菜の両方の栄養的特徴を持っています。また栄養価が高くタンパク質、ビタミンB1、カリウム、食物繊維、鉄分なども豊富です。ビタミンB1はスタミナ不足の解消に効果があるとされ、カリウムはナトリウム(塩分)を排泄する役割があり、利尿作用があって体内の水分量の調整に役立ってくれます。鉄分はホウレンソウやコマツナよりも多く、貧血予防の効果も。また、ビールのお供として愛される枝豆は、食べ合わせの面から見ても相性抜群。枝豆に多く含まれるメチニオンという成分は、アルコールから肝臓や腎臓を守る働きがあり、ビタミンB1とビタミンCには肝臓の負担を軽くする効果があるので、ビールのパートナーとしてぴったりなのです。

枝豆の花、花言葉は?

枝豆の花が咲くのは6〜7月頃。葉の付け根あたりに、白や紫の小さな花を3〜4輪つけます。たくさんの花を咲かせるのですが、そのうち7〜8割は落花。残りの2〜3割の花に子房がついて莢をつけ、やがて胚珠が実になります。自然に落花するため、間引いて実りを充実させるための摘蕾・摘花の作業は必要ありません。むしろ残った花の数だけ実ることになるので、大切にしておきたいものです。

枝豆の花言葉は、「必ず訪れる幸福」「親睦」など。多くの実りが得られることや、花が房咲きになったのちに実が連なることから、枝豆の花のイメージに寄せた言葉のようです。

枝豆の育て方

これまで、枝豆のプロフィールや特徴などについて解説してきました。ずいぶん枝豆のキャラクターが分かってきたのではないでしょうか。ここからは、実際の栽培知識について、詳しく解説していきます。

土づくり

土作り

●地植え

連作を避けるため、前作にマメ科の植物を栽培していない場所を選びましょう。

種まき・または苗の植え付けの2〜3週間以上前に、苦土石灰を1㎡当たり100〜150g散布し、よく耕して土に混ぜ込んでおきます。さらに、種まき・苗の植え付けの1〜2週間前に、畝幅の中央に深さ15〜20㎝の溝を掘り、1㎡当たり堆肥2kg、化成肥料50gを均一にまき、埋め戻して平らにならしておきましょう。土づくりは植え付け直前ではなく、数週間前に行うことで、分解が進んで土が熟成します。

●プランター栽培

野菜用にブレンドされた市販の培養土を使うと便利です。それぞれの野菜に適した土壌酸度などは異なるので、製品の用途に「枝豆」の項目が入っているか、確認しておくとよいでしょう。

種まき・植え付け

【種まき】

種まきの適期は4〜5月です。

●地植え

土づくりをしておいた場所に、幅60cm、高さ5〜10cmの畝をつくり、表土を平らにならします。中央に20cmの間隔をとって、直径約5cm、深さ2cmほどの播き穴をあけましょう。缶詰の空き缶などを表土に押し付けると簡単です。播き穴に3粒ずつ種子を播き、土をかけたら軽く手のひらで押さえましょう。鳥による食害を防ぐため、不織布で畝全体を覆い、裾に土を盛って固定しておきます。最後にたっぷりと水を与えましょう。

発芽後、本葉が開いたら不織布をはずし、勢いのある苗2本を残し、1本間引きます。倒伏を防ぐために、周囲から土を寄せて根元を押さえておきましょう。

●プランター栽培

土が25〜30リットルは入る大型のプランターに、枝豆6株を目安に栽培します。

プランターの底穴に鉢底網を敷き、底が見えなくなるくらいまで鉢底石を入れ、その上に野菜用にブレンドされた培養土を入れます。水やりの際に水があふれ出さないように、ウォータースペースを鉢縁から2〜3cm残しておきましょう。空き缶の底などを利用して、直径約5cm、深さ2cmほどの播き穴を10〜15cm間隔であけます。種子を3粒ずつ播き、土をかけて軽く手のひらで押さえましょう。最後にジョウロにはす口をつけて、鉢底から水が流れ出すまでたっぷりと水やりします。

発芽後、本葉が開いたら勢いのある苗2本を残し、1本間引きます。倒伏を防ぐために、周囲から土を寄せて根元を押さえておきましょう。

【植え付け】

苗の植え付け適期は5月頃です。マメ科の植物は移植を好まないので、幼苗のうちに根鉢を崩さずに植え付けましょう。

●地植え

種まきの項目と同様に畝をつくり、中央に20cm間隔で植え付けて、最後にたっぷりと水やりします。

●プランター栽培

種まきの項目と同様にプランターに土を入れ、10〜15cm間隔で植え付けて、最後にたっぷりと水やりします。

水やり

水やり

●地植え

地植えの場合は、下から水が上がってくるので、天候に任せてもよく育ちます。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、莢の実入りが悪くなるので、適切に水やりをして補いましょう。

●プランター栽培

土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えます。特に梅雨明け後の高温期は乾燥しやすいので、朝夕2回の水やりを忘れずに行いましょう。高温の真昼に水やりすると、すぐにお湯状になって地温が上がり、かえって株が弱ってしまうので、必ず涼しい時間帯に与えることが大切です。

肥料

肥料

枝豆が属するマメ科の植物には、根に根粒菌が寄生するため、肥料過多に注意が必要です。根粒菌は窒素を固定する働きがあり、茎や葉を大きく育てる養分となる窒素を根に供給してくれるため、肥料をまめに与えなくても元気に育ちます。施肥量が多すぎると、かえって茎葉ばかりが茂って実がつかない「つるボケ」の状態になってしまうので注意しましょう。追肥は、花芽がついた頃に1度だけ行います。

●地植え

1㎡当たり約20gを目安に周囲にばらまき、軽く耕して土に混ぜ込み、株元にしっかり土寄せしておきます。

●プランター栽培

約10g(ひとつかみ)を目安に、株の周囲にばらまいて土になじませます。

病害虫

枝豆の病害虫

枝豆の栽培では、カメムシやマメシンクイムシが発生しやすいのでご注意を。開花直後のまだ莢が小さいうちに尖った口を差し込んで吸汁するため、実が太らなくなってしまうのです。そればかりか、葉が光合成をしてつくった養分が実に回らなくなってしまうために、茎や葉ばかりが茂ってしまう「つるボケ」の状態を引き起こします。見つけ次第捕殺することが大切。開花期に寒冷紗をかけておくのも一案です。

発生しがちな病気は「さび病」です。枯れ葉を除去して株まわりを清潔に保ち、雑草があれば抜いて風通しよく管理しましょう。

収穫

枝豆の収穫

枝豆は収穫の適期が短く、本来の味わいを楽しめるのは数日のみです。莢を押した時に中の豆が弾けて出るくらいが収穫の目安。株の下のほうから実が入るので、全体の8割程度の実が膨らんだ頃に、株ごと抜いて収穫しましょう。収穫が遅れると、莢が黄色くなって中の豆が固くなります。

種まきから収穫までの日数は品種によって異なるので、種まきした場合は、種袋に書いてある情報を頼りにするといいでしょう。

枝豆の保存方法

枝豆の保存

枝豆は、鮮度が落ちやすい野菜の一つで、「鍋に火をかけてから採りに行け」という教えがあるほど。可能ならば、収穫後すぐに茹でて自家栽培ならではの美味しさを楽しんでください。茹でる前に、莢ごと塩もみしておくと、産毛がきれいに取れますよ!

たくさん収穫できて、食べきれない場合には、冷凍保存がおすすめです。固めに茹でて室温で冷ましたのち、キッチンペーパーで水気を切って、密閉できる保存袋に入れて冷凍します。冷凍後、1カ月は美味しく食べることができます。冷凍した枝豆は、沸騰させたお湯に入れて軽く茹で直し、塩を一振りして食べるのがおすすめです。

枝豆を自分で育ててみよう

枝豆の栽培

この記事では、枝豆の特徴から育て方まで、幅広くご紹介してきました。枝豆は「買うもの」ではなく、家庭でも育てることができる野菜です。収穫したての枝豆の新鮮な味わいには、きっと驚かれる方も多いはず。一度その美味しさを知ると、毎年栽培したくなるのではないでしょうか。ぜひ自身で育てて、枝豆本来の味を確かめてみてください。

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