サクラは万葉集や古今和歌集にも謳われるほど古くから日本で愛され続けてきた花です。サクラといえば日本をイメージする人が多いほど、今や世界でも有名になりましたが、じつは北半球の温帯地域に広く分布し、花が美しい種類から実を収穫するための種類、常緑の種類などさまざまなサクラが見られます。今回は美しい花が楽しめる、日本のサクラの種類について詳しく解説します。

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サクラの種類はどれくらいあるか知っていますか?

福島県二本松市「合戦場のしだれ桜」
福島県二本松市「合戦場のしだれ桜」。

サクラはバラ科サクラ亜科サクラ属(Prunus subg. Cerasus)の落葉高木または低木の樹木です。日本ではヤマザクラ、オオヤマザクラ、カスミザクラ、オオシマザクラ、エドヒガン、チョウジザクラ、マメザクラ、タカネザクラ、ミヤマザクラの9種を基本にして、変種をあわせると100以上のサクラが自生しており、沖縄には野生化したといわれるカンヒザクラがあります。また、これらから育成された園芸品種は200以上もあり、一重咲きや華やかな八重咲き、枝垂れ咲きなど品種によって多様な咲き姿や色合いを楽しむことができるのも魅力です。

サクラの主な種類

サクラといっても公園や街路樹として植えられる大きな品種から個人の庭に植える中木程度の樹高になる種類までさまざまです。そこで、日本で見られる代表的な種類をご紹介しましょう。

ソメイヨシノ(染井吉野)

ソメイヨシノ(染井吉野)

開花時期:3〜4月
落葉高木

ソメイヨシノは日本で最も有名な桜であり、日本固有の桜とされています。江戸末期~明治初期頃から園芸品種として栽培されている品種で、当時の染井村の植木職人や造園師がオオシマサクラとエドヒガンを交配させてつくられたとされています。花弁は5枚あり、咲き始めは淡い赤色で、満開になると白色に近い色になります。日本で栽培されているソメイヨシノのすべてはクローン(挿し木や接ぎ木などでの繁殖)で増やされたため、気温の違う地域でも一斉に開花するという特徴があり、サクラの開花日を予想する「桜前線」もソメイヨシノの開花を基準にしています。

桜の開花情報 https://tenki.jp/sakura/

エドヒガンザクラ(江戸彼岸桜)

エドヒガンザクラ(江戸彼岸桜)
zzz555zzz /Shutterstock.com

開花時期:3月下旬(他よりも10日ほど早い)
落葉高木

エドヒガンザクラは、本州・四国・九州の山地でよく見られる品種で、樹高は15~25mで楕円形の葉が特徴的です。花弁は5枚で一重、色は薄紅色から白に変わります。丈夫で花が多く咲くため多くの品種の母種として使われ、ソメイヨシノの片親としても有名です。このサクラの寿命は長く、日本の三大サクラと謳われる山梨県・北巨摩郡武川村の山高神代桜(やまたかじんだいざくら)は樹齢2,000年以上、岐阜県・本巣市の根尾谷淡墨桜(ねおだにうすずみざくら)は樹齢1,500年以上、福島県田村郡・三春町の三春滝桜(みはるたきざくら)樹齢1,000年以上とされています。これらは国の天然記念物に指定され、世界中から多くの観光客が見物に訪れます。

福島県郡山市三春町の「三春滝桜」
福島県郡山市三春町の「三春滝桜」は樹齢千年以上と推定されており、国の天然記念物に指定されている。Youtubeのライブ中継で開花を見ることができる。 Find!三春ホームページ http://miharukoma.com
写真提供/福島県観光復興推進委員会

マメザクラ(豆桜)

マメザクラ(豆桜)

開花時期:3月下旬〜5月上旬(自生地)、3月下旬〜4月上旬(東京)
落葉小高木または低木

マメザクラは箱根や伊豆、富士山の標高1,500m以下の低山地から丘陵帯に咲く自生種で、別名「フジザクラ」と呼ばれています  。樹の高さは他の種類と比べて低く、岩石地に生えているものは1m以下の高さでも花をつけます。また花も1~2cmと小さく、花弁は5枚、白色から淡紅色で下向きに花が咲くのが特徴です。花後に伏毛のある葉が生え、直径8mm程で甘みのある黒い果実がなります。挿し木でも育てられるため、家庭の庭でも育てられます。

ヤマザクラ(山桜)

ヤマザクラ(山桜)
traction/Shutterstock.com

開花時期:3月中旬〜下旬(鹿児島)、3月下旬(対馬)、4月上旬〜中旬(京都、東京) 、4月下旬(松島)
落葉高木

ヤマザクラは日本で最も代表的な種類で、古くから詩や歌に詠まれ親しまれてきました。山地に広く自生し、関東、中部から南の地域によく見られます。花と同時に葉が出るのが特徴で、花弁は5枚で淡紅色の花を咲かせますが、色の変異が多く白色や先端だけ色が濃い花を咲かせる場合もあります。葉の色は赤紫色や褐色などさまざまな色に変化します。樹皮は暗褐色から灰褐色をしており、丈夫なので木材としての利用もされています。

吉野山のサクラ
サクラの名所として有名な吉野山のサクラは650年頃から修験者たちが植えたものといわれており、ヤマザクラを中心に約200種3万本のサクラが密集している。
吉野山観光協会 http://www.yoshinoyama-sakura.jp/sakura.php

オオヤマザクラ(大山桜)

オオヤマザクラ(大山桜)

開花時期:4月中旬〜5月上旬(日光)、4月中旬(東京)
落葉高木

オオヤマザクラはヤマザクラより花や葉が大きいことから名付けられました。寒さに強く、北海道の山地によく見られることから別名「エゾヤマザクラ(蝦夷山桜)」とも呼ばれています。花は直径で3~4.5cmになり花柄はほとんどなく、ソメイヨシノなどの品種と比べて濃いピンク色の花を咲かせます。樹の高さは7~15mですが、20m程度まで成長することもあります。夏になると小さな黒紫色の実をつけ、鳥たちがその実を食べにきます。

カンヒザクラ(寒緋桜)

カンヒザクラ(寒緋桜)

開花時期:1月下旬〜2月下旬(沖縄)、3月中旬(東京)
落葉高木または亜高木

カンヒザクラは沖縄でよく見られる品種で、早咲きとして有名なカワヅザクラの片親です。花の色は名前の「緋」からも分かるような赤紫色が一般的ですが、ときに白色や色の淡いものなど個体によって異なります。花は釣り鐘のように垂れ下がっていき、最後は花びらがついた状態で落ちます。花の大きさは小ぶりで樹高も他と比べて約5mと低いのが特徴です。寒さに弱く寒冷地ではあまり育ちませんが耐暑性があります。別名がいくつかあり「ヒカンザクラ」や九州南部では「ガンジツザクラ(元日桜)」、「サツマヒザクラ(薩摩緋桜)」と呼ばれることもあります。

オオシマザクラ(大島桜)

オオシマザクラ(大島桜)

開花時期:3月下旬(伊豆半島、南伊豆) 、4月上旬(東京)
落葉高木

伊豆七島、伊豆半島でよく見られるサクラで、伊豆大島北東部にある本種の株は天然記念物に指定されています。樹形、花の形や色、果実の味まで個体によって変異が多く見られますが、ふつう花弁は5枚で白色が多く淡い香りがして、また葉の成長と一緒に花をつけ、丈夫で成長が早いという特徴があります。葉の長さは5~10cmで先端が尖っており、桜餅を包む塩漬けの葉はこのオオシマザクラの葉が使われています。オオシマザクラは多くの園芸品種を生み出しており、ソメイヨシノやカワヅザクラの片親としても有名です。

カワヅザクラ(河津桜)

カワヅザクラ(河津桜)

開花時期:3月上旬〜中旬(伊豆半島)
落葉高木

花は直径約3cmのピンク色または淡い紅色で、花序は散房状で4〜5花からなり、樹皮は紫褐色で光沢があります。原木が野生で発見され、カンヒザクラとオオシマザクラの自然交雑種と見られています。のちに静岡県河津町に移植されたことから「カワヅザクラ」と名付けられました。早咲きのサクラとして有名で、サクラの季節になると静岡県河津町に毎年多くの観光客が訪れます。開花時期は1カ月と他のサクラと比べて長いという特徴があります。

河津町観光協会 http://www.kawazu-onsen.com/sakura/

日本の歴史と深い関わりのあるサクラの種類

日本の桜
Shawn.ccf /Shutterstock.com

古代のサクラは御神木として大事にされ、開花はその年の作柄を教えてくれるものとして、人々は豊作を占うために花見をしてきました。昔から行われている花見は山に咲くヤマザクラを見るのが主流で、後に宮人や貴族の「花の宴」へと移り、8代将軍・徳川吉宗によって現在のお花見の風習が確立しました。

日本の桜を代表するソメイヨシノは約80%を占めるといわれていますが、世間に登場したのは意外と遅く、明治に入ってからです。その頃はまだ交通が不便な時代だったため「東京にいながら吉野山の桜が見られる」という宣伝文句と、また葉より花が先に咲き乱れるという特性が評判を呼び、関東を中心にあっという間に人気が広がったといわれています。その後全国に広がるソメイヨシノとは逆に、文明開化の名の下、昔からあったサクラは封建時代のシンボルとして伐採されてしまいました。この際、日本の名花の大半は絶滅したといわれています。さらに昭和初期になると、ソメイヨシノの特徴である「パっと咲いてパっと散る」咲き方が軍人の心意気を示すとし、軍国主義の兵舎や小学校にどんどん植えられていきました。第二次世界対戦の敗戦時には、食糧増産のためソメイヨシノも伐採されてしましますが、戦後復興に再び植樹され、50年以上経った今ではお花見も盛んに行われるようになりました。

いろいろなサクラの種類を見つけて楽しもう!

桜

サクラは種類によって樹形から花の大きさや数、花色がさまざまに違います。庭にサクラを植えたいと考えている方はぜひ、好みの種類を見つけて育てることをおすすめします。また全国のサクラの名所では、直接花見に来られない人のために、ライブ配信や動画を使って美しい開花の様子を紹介したり、サクラの写真集やボタニカルアート、サクラを使ったお菓子やグッズの販売など、さまざまな楽しみ方を提案しています。みなさんもぜひ、色々なスタイルでお花見を楽しんでみてください。

Credit

文&写真(*)/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

参考文献:
『桜ブック』/草土出版
日本さくらの会 https://www.sakuranokai.or.jp

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