大きな葉が存在感バツグン! ギボウシ(ホスタ)の種類と育て方のコツ
放射状に大きな葉を広げるギボウシは、庭に存在感を与えてくれます。主にみずみずしいグリーンの葉を観賞する植物で、その品種は多岐にわたっています。逆に品種が豊富すぎて「どれを選んだらいいか分からない」という悩みも。ここでは、その特性やバラエティー豊かな品種とそれぞれの魅力、育て方のコツも含め、ギボウシについてさまざまな角度からご紹介します。自邸の庭にはどんなギボウシを選べばいいのか、ヒントにしてください。
目次
ギボウシ(ホスタ)の特徴
ギボウシは、ガーデナーに愛されているポピュラーな植物で、主に世界の温帯地域で広く栽培されています。原産地は日本、または東アジアで、約20〜40種類が確認されています。日本に古くから自生してきたものなので、気候や環境に馴染みやすく、ビギナーにとって育てやすい植物といえます。
ギボウシは、イギリスやアメリカなど海外では属名のホスタと呼ばれることがほとんどで、日本でもその名前で流通することも多くなっています。ちなみにホスタ(Hosta)という名は、オーストラリアの2人の植物学者、N.T.HostとJ.Hostの名前に由来しています。
ギボウシの花言葉は「落ち着き」、「冷静」など。大きな葉を放射状に伸ばし、まっすぐに伸びた花茎の先に涼しげな白や紫の花を咲かせる、凛とした佇まいから連想されたのかもしれません。
ギボウシの楽しみ方
ギボウシは、大きなグリーンの葉を広げるダイナミックな株姿が目を引き、葉の観賞価値が高い植物です。また、もともと日本や東アジアに自生する植物で、オリエンタルな雰囲気を持っています。そのため、鉢で栽培するなら草姿がコンパクトにまとまる小型種を選び、和の陶器鉢に植え込んで、アイキャッチとして飾ってはいかがでしょうか。半日陰を好む性質を生かし、床の間や縁側、テーブルを飾るインテリアグリーンとして利用するのもいいでしょう。
地植えにする場合は、大きな葉を旺盛に広げる骨格のしっかりしたフォルムを生かして、ダイナミックな印象を強調するのもいいでしょう。大株に育つと、その分葉も大きく広げ、空間をグリーンで埋めるのに役立ちます。また、半日陰を好む性質を生かし、日当たりが悪くて寂しくなりがちな大きな樹木の株元を彩るのにも向いています。葉色は青系、黄色系、斑入りなど多様に出回っているので、比較的暗い場所には黄色葉や斑入り葉を選ベば、明るく見せる効果も期待できます。
ギボウシの種類
ギボウシはガーデニング愛好家にコレクションされるほど人気の植物であることから、品種改良の歴史が古く、その多様な品種から奥深い世界をのぞくことができます。大型種、中型種、小型種などサイズによって分類されるほか、葉色も青系、黄色系、斑入りなど多彩です。ここでは、ギボウシの種類についてご紹介します。
大型種
ギボウシの大型種は、葉の長さが30〜40cmになります。したがって、株幅は60〜80cm以上になり、庭に地植えすると大きな存在感を放ちます。イギリスやアメリカでは、庭が広いこともあってか、この大型種が好まれているようです。大型種の主な品種は、楕円や円形の大きな葉をつけるオオバギボウシ、香りがよく白い花を咲かせるマルバタマノカンザシ、中国原産種のタマノカンザシなどがあります。
大型種は立派な大株に成長するまで、3年ぐらいはかかるので、じっくり育てるのがポイントです。3年経ってもあまり大きく育ってくれないようであれば、環境に合っていないことも考えられるので、より日陰で湿り気のある場所に植え替えるのも一案。葉が大きいと水分が蒸散しやすく、株が疲れやすいので、大型種は特に土壌の湿り具合に配慮したいものです。
中型種
ギボウシの中型種は、葉の長さが20cm程度になります。したがって株幅は40〜50cm以上となり、コンパクトな庭の地植えに向くタイプです。主な中型種には、細長い葉に白や黄色の斑が入るスジギボウシ、紫色の花を咲かせるムラサキギボウシ、複数の花茎を伸ばして花を咲かせるサクハナギボウシがあります。
中型種は大株に育つまで、1〜2年かかります。ポット苗を植え付けた後に、それほど大きく成長しない場合は環境に合っていないことが考えられるので、より日陰で湿り気のある場所に植え替えてみましょう。息の長い植物なので、機嫌よく育ってくれる場所が見つかるまで、試行錯誤するのもガーデニングの醍醐味です。
小型種
ギボウシの小型種は、葉の長さは15cm程度です。したがって、株幅は30cm以上となり、コンパクトにまとまります。狭いスペースやコンテナ栽培などに向く種類です。主な小型種には、比較的湿地を好むコバギボウシ、韓国原産で葉の長さは5〜10cmと最も小型といわれるオトメギボウシや、ギボウシ‘パンドラ・ボックス’などがあります。
小型種は成株になるまでが早いので、環境に合っているかどうか、見極めやすいといえます。なかなか大株に育たない場合は、より日陰で湿り気のある場所を探して、早めに植え替えましょう。
園芸品種(変異種)
ギボウシは、日本では古くから観賞用として庭に植栽され、愛されてきました。江戸時代中期から後期には、園芸ブームですでに品種改良が行われていたとされています。シーボルトによってヨーロッパにもたらされ、フォルムの美しさから人気が高まり、浸透していきました。1990年代のガーデニングブームの頃、海外の庭園でギボウシが大胆に用いられていることが紹介されると、日本でも再注目されて現在のように人気の植物となっています。
ギボウシは異なる種同士の交配によって雑種が生まれやすく、その品種数は数え切れないほど。アメリカホスタ協会では、毎年優れた品種には「ホスタ・オブ・ザ・イヤー」が与えられ、毎年新しい品種が多数生まれています。
代表的な品種は‘サガエ’や‘ハルシオン’、‘ウンジュラータ’など。‘サガエ’は灰色がかった青みの強い葉の縁に、クリーム色の斑が入ります。‘ハルシオン’はシルバーがかった青みの強い葉を持ち、葉の表面がなめらかで美しい人気品種です。夏に薄紫がかった白い花が咲きます。‘ウンジュラータ’は、スジギボウシとも呼ばれ、日本に古くからある品種です。明るいグリーンの葉はややねじれて、中央に白い斑が入ります。花は淡い紫色です。
ギボウシの生育時期
ギボウシは、多年草(宿根草)に分類されています。春に新芽を吹いて生育し、初夏から花茎を立ち上げて開花。冬になると葉を落とし、地上部は枯れて休眠するというライフサイクルをたどります。毎年春に芽吹いて生育するので、冬に地上部が枯れたからといって処分しないようにしてください。
観賞時期は、葉が3月から11月にかけてで、花は7月から8月です。花は1日で萎む一日花で、株元から花茎を長く伸ばした先に、下から上へと次々に花を咲かせます。
ギボウシは食べられる!
ギボウシは、ウルイなどとも呼ばれ、春の山菜として昔から親しまれてきました。ウルイの収穫を目的に育てたい場合は、収穫に向く品種を選んで庭に植栽するといいでしょう。ここでは、収穫のタイミングや美味しい食べ方にも注目します。
ギボウシを食用として楽しむには
ギボウシはウルイ、ギンボ、ウリッパ、アナマなどとも呼ばれ、若い新芽を食べる春の山菜としても親しまれています。アクがないので、アク抜きの手間もなく、普通の野菜感覚で調理できる、手軽な山菜です。4月下旬〜5月にずんぐりとした白い茎を収穫します。筒状に巻いている姿はネギに似ており、歯ざわりがよく、茹でるとぬめりが出ます。
さっと茹でて、酢味噌和えにすると爽やかな風味で美味しくいただけます。ほかにサラダ、浅漬け、味噌汁やスープの具、炒め物、天ぷらなどにもおすすめです。
ギボウシを食べる時の注意
4月下旬〜5月が収穫の適期で、20〜25cmに伸びた若い芽を地際から摘み取ります。ギボウシは、毒草のバイケイソウと似ているため、自然採取する場合には間違えないように注意しましょう。バイケイソウを誤って食べてしまうと、吐き気や下痢、めまい、手足のしびれを引き起こし、最悪には死に至るケースもあります。バイケイソウは、葉っぱと茎の間をつなぐ部分(葉柄)がなく、葉っぱが折りたたまれた状態になっているのが、見分け方のコツです。山菜として楽しみたい場合は、収穫に向く品種を選んで庭の片隅に植え、名札をつけて見分けられるようにしておくとよいでしょう。
ギボウシを育てるポイント
ギボウシは、もともと古くから日本に自生していたものなので、環境になじみやすく育てやすい植物です。比較的放任しても生育しますが、ここでは好む環境や日々の手入れ、増やし方など、管理のポイントを分かりやすく解説します。
置き場所
ギボウシは、もともと森林の樹木の足元などに自生する植物なので、日当たりのよい場所は苦手です。明るい日陰や、午前中のみ日が差す東側などが適地。真夏に強い日差しが照りつける場所に植えると、葉焼けして観賞価値が落ちてしまうことがあります。品種によって日照条件は異なる傾向があり、青みが強く出る葉は日陰を好み、黄色がかる葉は明るい日陰、斑が入る葉はその中間といったところ。いずれも日当たりのよい場所よりは、やや暗めの場所で育てたほうが、葉色が濃く出るようです。また、適度に湿り気のある環境を好むため、乾燥しやすい場所も避けましょう。
ギボウシが生育する温度
ギボウシは暑さ、寒さに強く、生命力旺盛で管理がしやすい植物です。真夏でも成長が止まることなくよく育ち、冬はマイナス10℃の環境でも耐えてくれるので、地植えしたままで夏越し、冬越しができます。ただし、積雪したり、凍結したりする地域では、根元をバークチップや腐葉土などでマルチングして、寒さ対策をしておくとよいでしょう。
ギボウシの水やり
鉢植えで育てる場合は、表土が白く乾いたら、鉢底から流れ出るまでたっぷりと水をやります。乾燥を嫌う性質があるので、梅雨明け後、気温が高くて乾燥しやすくなる7〜8月は、朝と夕の2回を目安に、忘れずに水やりをして株が消耗するのを防ぎましょう。冬になると休眠するので、12月以降は水やりの回数を減らし、土が乾いてから数日後に与える程で構いません。
地植えの場合、植え付けた後は根付くまでは水やりをしますが、その後はほとんど不要です。夏場の生育期に雨が降らず、乾燥が続くような時には水やりをします。株の状態を見て、しんなりとして元気がないようであれば、水を欲しがっているサインです。
ギボウシに施す肥料
鉢植えで育てる場合は、3月と9月に緩効性肥料を表土に均一にばらまき、スコップで軽く耕して土に混ぜ込みます。地植えの場合はほとんど不要ですが、株に勢いがない場合は、緩効性肥料を施して様子を見ましょう。
ギボウシの増やし方
植え付けた後は、そのまま植えっ放しにして構いませんが、4〜5年経って大株に育ったら、株の更新も兼ねて、株分けして増やしましょう。適期は早めの春か、葉を落とし始めた秋で、生育期に行うのは避けたいものです。まず、株を掘り上げて根鉢の土を落とし、2〜3芽つけて切り分けます。すぐに半日陰の場所に植え直し、根づいて生育し始めるまでは、水切れに注意して管理しましょう。
ギボウシは、種まきからでも増やせます。花が咲いた後に花がら摘みをせず、そのまま残しておくと、秋に鞘ができます。黄色く色づいたら採取して、種子を取り出して保存容器に入れ、冷暗所で保存しておきましょう。3月頃に、草花用培養土を黒ポットに入れて種子を播き、育苗します。
ギボウシの病気や害虫
ギボウシは病害虫には比較的強い植物です。しかし、生育期には、アブラムシが若い葉や花茎、つぼみなどについて吸汁します。見た目が悪いばかりか、ウイルスを媒介することもあるので、用土にアブラムシ適用の薬剤を混ぜ込んで防除します。ナメクジの食害に遭うこともあり、せっかく育った葉の観賞価値を低くしてしまうので、見つけ次第捕殺を。主に、夜に徘徊することが多いです。
病気ではウイルス病にかかることがあります。葉にまだら模様が入ったり、萎縮して縮れてしまったりしたら発病の疑いあり。病気を広げないためにも、発見したらただちに株を抜き取り、隔離して別の場所で処分します。
存在感のある葉が楽しいギボウシを家に迎えよう!
ギボウシは日本に古くから自生してきたもので、放任してもよく育つビギナー向けの植物です。葉のフォルムが美しく、大型・中型・小型種とサイズに違いがあるほか、青系、黄色系、斑入りなど葉色が多様で、品種も豊富に揃います。用途やイメージに合う品種を見つけて、庭をシックに彩ってはいかがでしょうか。
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
Photo/1)SDeming 2)Vladimir Shulikovskiy 3)Jacquie Klose
4)Irina Kvyatkovskaya 5)Asetta 6)ahmydaria 7)Irina Borsuchenko 8)Derek Harris Photography 9)funny face 10)Tommy YUN 11)photoPOU 12)Hank Erdmann 13)TMsara 14)Pawel Beres 15)photoPOU 16)devil79sd 17)aceshot1 /Shutterstock.com
参考文献:『日陰でよかった! ポール・スミザーのシェードガーデン』ポール・スミザー/日乃詩歩子 宝島社 2008年6月25日 第1刷
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