軽く触れるだけで、レモンのような爽やかな香りのするハーブ・レモングラスは、イネ科の多年草ハーブです。ハーブティーやお料理、お菓子、入浴剤やポプリなど、活用の幅も広いハーブなので、1株あると重宝しますよ。ここでは、レモングラスの特徴や育て方について、ガーデンセラピーを学べる教室「花音」代表の堀久恵さんに教えていただきました。丈夫なハーブなので、栽培初心者さんにもおすすめです。
目次
レモングラスの特徴
ショウガの持つスパイシーな香りと、レモンの持つ爽やかな香りが特徴のハーブです。東南アジアではとてもポピュラーなハーブで、タイの代表的スープ「トムヤムクン」の風味付けや、カレーのスパイスによく使われます。このように、料理の香り付けはもちろん、クッキーやケーキなどのお菓子にも合いますし、お茶としても楽しまれています。また、レモングラスの持つ芳香成分には、虫除けも! 詳しくご紹介していきますね。
レモングラスの見た目
まずは見た目から。
レモングラスはインドが原産のイネ科の植物。こんなススキのような、細長い葉で、真っ直ぐ、上に長く伸びます。種類によって、横に伸びたりするタイプもありますが、あまり流通はしていません。
レモングラスは大きく分けて2種類
世界中では数十種類あるといわれていますが、代表的なものは、西インド種と東インド種の2種類です。インドで、数千年にわたり人々に好まれてきたレモングラスは、第二次世界大戦がおこるまで、インドが主要な供給国だったのですが、その後は西インド諸島がメインとなった経緯があります。
西インド種は、甘いレモンのような強い香りを持ち、茎が白く、葉が上に伸びます。草丈は1mを超すほどにまで生長し、株元も肥大化します。地植えにすると、葉が茂りやすく、収穫量もたっぷり取れるのが嬉しい点です。
一方、東インド種は、茎が赤茶色で葉が横に伸びます。現地では「チューマナ・プールー」という、赤い茎を指す言葉で呼ばれるそう。熱を下げ、感染症の治療に役立つとされていました。
現在は西インド種の流通が一般的ですので、レモングラスというと西インド種を指すことが多いです。ハーブティーなど食用をメインにする場合は、西インド種であることが表記されているものを選ぶとよいでしょう。その際には、学名を確認します。東インド種はC.flexuosus、西インド種はC.citratusの記載があります。
レモングラスの活用法は?
1株あると、かなり便利に使えるのがレモングラス! 使い方をご紹介します。
●ハーブティー(お茶)にする
香りもよく、クセがないので、飲みやすくおすすめです。ハーブティーの中には、飲みにくいものや香りが独特なものもありますが、レモングラスは、私たちがいつも食べ慣れているレモンのような香りがするので、多くの人に好まれるハーブです。
レモングラスは、胃腸の働きを刺激して、消化を促す作用もあるので、食後のティーにも〇。食べすぎた時の胃もたれにも役立ちますよ。
お茶として楽しむなら、フレッシュハーブ(生葉)が断然おすすめ! 香りがとても豊かです。
夏は、レモングラスに緑茶をブレンドしてもおいしいです。
●お料理に・お菓子に使う
レモングラスは、タイの代表的スープ「トムヤムクン」の風味付けとしても有名ですね。このトムヤムクンに使うレモングラスは、葉の部分ではなく、根に近い茎の部分。10月頃になると茎が太ってくるので、それを使います。
肉や魚の風味付けにも活躍し、私はよく白身魚をアルミホイルで包んで焼く時に、レモングラスとローレル、タイム、ローズマリーなどのフレッシュハーブを入れています。ふんわりとハーブの香りがして、生臭さも消えるので気に入っています。
また、パウダー状になったレモングラスの粉も売られていますので、ジンジャーと合わせて、クッキーやスコーンに使うのもおすすめ。
●精油を利用したアロマセラピーを楽しむ
レモングラスに含まれる精油成分は、熱した水から発生する水蒸気を、芳香植物に当てることで、植物に含まれる精油を抽出する方法『水蒸気蒸留法』で採取されます。こうして植物から採油されたものを、精油(エッセンシャルオイル)と呼びます。レモングラスの葉と茎は、芳香成分を豊富に含んでいるため、アロマセラピー初心者にも、比較的手に取りやすい価格です。
■心に対する作用
レモングラスの芳香成分は、精神を高揚させ、エネルギーを充電してくれます。精神的に疲労困憊している時には、レモングラスがぴったり。心が疲れたと感じたら、レモングラスの香りでリフレッシュしてみてください。
■体に対する作用
レモングラスには、体のいろいろな機能を向上させる強壮作用があります。副交感神経の働きをバックアップし、内分泌と消化に携わる筋肉を刺激して、体の回復を助けます。食欲増進・消化促進作用も。また、筋肉痛の原因となる乳酸を除去する作用があるので、筋肉痛で痛みがある時や、立ちっぱなしで足がパンパン…という時におすすめです。
体や肌に使う場合には、ホホバオイルやオリーブオイルなどの植物油で希釈したトリートメントオイルを作り、気になる場所に塗り込みます。
■肌に対する作用
皮膚にハリを与える作用があり、開いた毛穴を引き締めてくれます。皮脂分泌のバランスを調整してくれますので、ニキビケアにも。また、水虫など真菌感染症のケアにもおすすめですよ。
そして、レモングラスの精油には昆虫忌避作用があります。蚊が嫌いな香りが豊富に含まれているので、近年虫よけの香りとして、虫よけキャンドルやスプレーによく使用されていますね。
人間はもちろんのこと、我が家では犬にもレモングラスを活用しています。ノミやダニよけとして、首輪などに精油をごく少量使用しています。
【レモングラスを使う際の注意】
・レモングラスの精油成分は、敏感な肌を刺激することがあります。希釈濃度は1%以下で使用しましょう。
・妊娠中の使用は控えてください。
レモングラスの収穫時期と収穫方法
葉が15枚くらいになったら、収穫可能です。
ポイントは、ここで全部葉を取ってしまわないこと。葉がなくなれば、光合成ができなくなり、株の生育が衰えて、その後の収穫量に影響します。1回の収穫は、全体の1/3程度にとどめましょう。そして、大きくなるのを待って、また全体の1/3を収穫…。少しずつ小分けにすることで、11月末までコンスタントに収穫ができます。7月以降、高温時は勢いよく伸びますので、そんな時には収穫量を増やせますね。
収穫の仕方は、1枚の葉を株元近くまでたどっていき、根元近くを丁寧にハサミでカットします。その際、外側から刈り取るようにしましょう。というのも、レモングラスは新芽が株の内側から伸びてくる性質があるので、次の葉になる新芽は取っておく必要があるからです。外側の葉は伸びて重くなり、折れやすくなりますので、外側から収穫していくと、取りすぎることなく、新芽にも光が当たり生長促進につながります。
また、レモングラスはフレッシュ(生葉)と、ドライ(乾燥したもの)で香りが全然違います。飲んだり食べたりするなら、断然フレッシュがおすすめ。これは、ご自身で栽培する最大のメリットかつご褒美! 一番いい状態を楽しめる幸せを、ぜひ味わってみてください。数日なら、冷蔵庫保管も可能ですよ。
もしたくさん収穫できた時には、大きめの鍋でレモングラスをぐつぐつ煮出し、その液をお風呂にいれて「レモングラス風呂」にしてみてはいかがでしょう?
乾燥させて、ポプリとして使うのもいいですね。
レモングラスの育て方
レモングラスは丈夫な性質を持っていますので、初心者さんにもおすすめのハーブです。高温多湿が得意なので、日本の夏の暑さに適しているのですが、一方で冬の寒さは苦手。そんな性質を踏まえ、レモングラスを育てる際に気をつける点や、植え付け方、水やり方法など、栽培の仕方を具体的にご紹介していきますね。
植え付け
レモングラスの苗は、5月くらいから出回り始めます。種子の入手は困難なので、苗を購入しましょう。
日当たりがよく、強い風が当たらない所がベストポジションです。
地植えの場合、土質は選びませんが、水はけがよい土を好みます。もし水はけがあまりよくない場所に植える場合には、土を山にこんもりと盛った状態(高畝といいます)を作り、そこに植えるとよいでしょう。
鉢植えの場合は、ハーブ用の培養土などを使用します。
レモングラスは草丈が1m近く、幅も50~60cmは必要です。植える場所は広めのスペースを確保しておくようにしましょう。
水やり
レモングラスは高温多湿を好むので、乾燥には注意します。梅雨時期など、雨が降っている時を除き、夏の高温期の水やりはしっかり行いましょう。水が切れると、葉に勢いがなくなって、細い株になります。地植え・鉢植え共に、株元を腐葉土やワラなどで覆う「マルチング」を行っておくと、乾燥が抑えられ、水もちがよくなります。
そうはいっても、水のやりすぎもいけません。鉢植えの場合は、基本的に土の表面が乾いていたら鉢底から水が流れ出るくらいたっぷりと与えます。毎日せっせと水やりをする必要はなく、土を乾かす日を設けることが大切です。
肥料
地植えの場合は、堆肥を鋤き込んでから植え付けるように、鉢植えの場合も、植え込む前に、土に堆肥を適量混ぜておきましょう。
レモングラスは、それほど肥料を必要としないハーブではありますが、生育が旺盛になる時期には、追肥をしましょう。その際、自分たちの口に入るものなので、有機肥料を選ぶとよいですね。ハーブ栽培に適した肥料を、説明書の指示通りの頻度で与えます。多く与えすぎると虫を呼ぶ原因にもなりますし、最悪の場合は枯れることもありますので、説明書の記載を守ってくださいね。
病気や害虫など注意点
レモングラスは、害虫に強いハーブなので、ほとんど困った事態にはなりません。
まれに「ハダニ」「メイガ」「ナメクジ」などの被害があるようですが、ハダニは乾燥しすぎていると被害に遭いやすいですし、ナメクジはジメジメしすぎている場所を狙っています。必要十分な日当たりと風通しを確保し、水や肥料の与えすぎを控え、丈夫に育てることが大事です。
レモングラスの増やし方
レモングラスは株分けで増やせます。失敗の恐れがなく、簡単にできますよ。霜の心配がなくなる4月以降が適期です。根元を傷つけないよう掘り上げ、刃物で丁寧に株を切り分けて植え付ければ完了! 根付くまでは、忘れずたっぷりと水を与えてくださいね。
レモングラスの冬越し
暑さには強いレモングラスですが、霜と寒さには弱いので、地植えの場合は、霜が降りる前に鉢上げします。私の住む埼玉県北部では、地植えのままだと、翌年出てもあまり大きくならない印象ですので、鉢上げするか、一年草だと割り切って、翌年新しい株を植えています。
鉢上げの方法は、株元を10cmほど残してカットし、掘り上げて適当なサイズの鉢に植え、室内の暖かい場所で保管します。
香りもよく、便利に使えるレモングラスを育ててみよう!
爽やかでリフレッシュできるレモンの香り…レモングラスは、楽しみ方がいっぱいあります。特にお気に入りは、フレッシュハーブティー。
おもてなしにもピッタリ! レモングラスだけではなく、ペパーミントやスペアミント、ローズゼラニウム、ローズマリーなどのハーブとブレンドしてもおいしいですよ。
私はフレッシュで摘み取れる状態を11月末くらいまでキープできるよう、栽培に気を配っています。また、増やすのが簡単なのも嬉しいですね。
お料理・お菓子にも使えますので、ぜひ、あなたの生活スタイルに合ったハーブの楽しみ方を見つけてください。
Credit
写真&文 / 堀久恵 - 花音-kanon- 代表 -
ほり・ひさえ/ガーデンセラピーナビゲーター。一般社団法人日本ガーデンセラピー協会専門講師。
生花店勤務を経て、ガーデンデザイン・ハーブ・アロマセラピー等を学び、起業。植物のある暮らしを通じて、病気になりにくい身体を作り健康寿命を延ばすことを目指した「ガーデンセラピー」に特化した講座の企画運営と庭作りを得意とする。埼玉県熊谷市の『花音の森』にて、日々植物に囲まれ、ガーデンセラピーを実践中。
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