春の花木「モモ(桃)」の育て方 花の特徴や品種を徹底解説

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桃の節句と呼ばれるひな祭りの頃、花の見頃を迎える桃の木は、春の訪れを感じさせてくれる人気の高い花木です。今回は、桃の花の特徴や品種、桃の花をひな祭りに飾る由来、家庭での育て方をご紹介します。この記事を読み終わる頃には、あなたもきっと桃の木を育ててみたくなるでしょう。
目次
モモ(桃)の基本情報

植物名:ハナモモ
学名:Prunus persica
英名:Hana peach、Flowering Peach
和名:モモ(桃)、ハナモモ(花桃)
その他の名前:ゲンジグルマ(源氏車)
科名:バラ科
属名:スモモ属、サクラ属
原産地:中国
形態:落葉低木
バラ科サクラ属に分類される桃は、3〜5月に赤や白、ピンクの華やかな花が咲きます。実桃とハナモモの大きく2つに分けられ、実桃の実は食べられますが、ハナモモは花を観賞するための品種で、通常実は食べません。桃は弥生時代に中国から日本に伝わったとされ、平安時代には桃の節句に飾られるようになりました。江戸時代には、観賞用に品種改良が進み、現在でも多くの品種が残っています。
モモの花・葉・実の特徴

園芸分類:庭木・花木
開花時期:3月中旬~4月中旬
草丈・樹高:5~8m
耐寒性:強い
耐暑性:強い
花色:白、赤、ピンク、複色
ハナモモの花は、3~4月に開花します。基本種はピンク色の5弁花です。花は葉っぱが出るより先、もしくは葉が出るのと同時に咲く種類もあります。基本種は淡いピンク色ですが、ほかにも白、赤、複色があり、多数の雄しべを持つのが特徴です。

葉の形は8~12cmほどの細長い楕円状で、縁がギザギザとしているのが特徴です。ハナモモの実は食べられるものの、あまり美味しくありません。また、完熟していない実は梅同様に青酸を含むため注意が必要です。
樹姿は、立ち性、枝垂れ性、ほうき立ち性(ほうきを逆さにしたように、空に向かって枝が広がる形)の3つに大別されます。桃の木というと大きく育つイメージを持つ人も多いですが、鉢植えや盆栽として楽しむことも可能です。
ハナモモには食用の実はならない?

花を楽しむために改良された品種のハナモモにも実はなりますが、残念ながら実桃とは異なり、一般的には食用に向きません。ハナモモに実がなるのは7~8月で、大きさは5~6cm程度と小ぶりです。果実用品種は甘くなるように改良されていますが、ハナモモの実は酸味や苦みが強いといわれています。しかしハナモモを自宅で育てている方の中には、その実を果実酒にしたり、ジャムにしたり活用している人もいるようです。もし手に入ったら、一度試してみるのも面白いかもしれません。
桃の名前の由来や花言葉

モモの名前の由来には諸説あり、その中からいくつか紹介すると、実が赤く燃えているような様子から「燃実(もえみ)」、実が多くなるため「百(もも)」、実に毛が生えているため「毛々(もも)」などが挙げられます。
モモの花言葉は「私はあなたのとりこ」「気立てのよさ」「天下無敵」です。「私はあなたのとりこ」は、モモが古来より女性のシンボルとされ、敬愛の象徴とされていたことに由来しています。また、「天下無敵」は、モモには邪気を払う魔除けの力があると信じられていたことが由来です。
桃の花をひな祭りに飾る由来

ひな祭りの日である3月3日は、中国から伝わった五節句の一つで、「上巳の節句」になります。ちょうど桃の季節に当たることから、「桃の節句」とも言われています。
節句の風習は中国からの伝来後、徐々に日本独自の文化として変化していきました。日本での節句は、季節の変わり目に当たる忌み日として恐れられ、穢れを払うための行事なども行われるようになりました。ひな祭りも、元々は自分の身代わりの人形(ヒトガタ)に穢れを背負わせ、川に流して穢れを払うための風習でした。

ひな祭りには雛人形と一緒に桃を飾るのが一般的です。桃を飾る理由はいくつかありますが、その一つが、桃の実が不老長寿の願いがこめられた、縁起がよい食べ物とされていたことです。また、古事記の中で、黄泉の国で化け物に追われたイザナギノミコトが桃の実を投げつけたところ、化け物は退散したというくだりがあることから、桃には魔除けの力があると考えられていたことも理由の一つです。
さらに、中国では桃の種は漢方薬としても使われていて、女性の血流をよくする薬効が期待できるとされています。
このように、3月3日は雛人形と桃を飾ることで、災厄を遠ざけ、女の子の健やかな成長を願うための節句として定着しました。
ハナモモの代表的な種類
観賞用として愛されているハナモモには、美しい園芸品種が数多く存在します。その中から代表的な品種を一部ご紹介します。
菊桃(きくもも)

菊桃は細長い花びらが菊のように見える八重咲きのハナモモです。鮮やかな濃いピンク色の花が特徴です。江戸時代から観賞用に栽培されてきた園芸品種です。
源平(げんぺい)

源平は、ハナモモの中でも人気の高い品種で、1本の木に紅と白の花を咲かせます。紅白2色の花を咲かせることから、源氏と平家にちなんで源平という花名になりました。八重咲きで枝垂れの品種もあります。
矢口(やぐち)

矢口はひな祭りの時期に花を咲かせる早咲き品種で、ピンク色の八重咲きで、大輪の花を咲かせます。切り花にも使われることも多く、ひな祭りの飾り花として人気が高い品種です。
照手紅(てるてべに)

照手紅は、枝が横に広がらない「ほうき立ち品種」で、狭いスペースにも植えることができます。花は紅色、大輪の八重咲きです。白い花を咲かせる照手白という品種もあります。
羽衣枝垂れ(はごろもしだれ)
羽衣枝垂れは、明るいピンク色の八重咲きの枝垂れ品種です。枝垂れの品種の中でも特に枝垂れが強く、全体的に柔らかく優雅な印象のハナモモです。
桃・梅・桜を見分けるポイントは?
桃・梅・桜はどれもバラ科で、ピンク色の花を咲かせます。また、どれもが2~4月に開花し、見た目が似ているので見分けにくいという人も少なくありません。そこで、3つの見分け方をポイントごとに分けてみました。

ほかにも幹の状態、葉の形状、葉が芽吹くタイミングなど、見分けるポイントはいくつもあるので、調べてみると新たな発見が楽しめますよ。
ハナモモの栽培12カ月カレンダー

開花時期:3〜4月
肥料:2~3月
植え付け:11~12月、または2~3月
ハナモモの栽培環境

日当たり・置き場所
ハナモモは、日当たりと水はけのよい場所を好みます。土質は選ばないものの、砂利混じりの土壌が育てやすいでしょう。日陰や排水性の悪い場所に植えると花が咲きにくくなるため、注意が必要です。他の樹木とは馴染みにくい樹形であり、また強風で枝が折れることもあるため、風が当たりにくい広い場所を選び、単独で植えるのがおすすめです。また、成長が早く、大きく育つためあまり鉢植え向きではありません。
耐寒性・耐暑性
ハナモモは、耐寒性、耐暑性ともに強く、夏越しや冬越しは不要です。ただし、開花期に寒さが厳しい地域や、果実が成熟する時期に雨量が多い地域は栽培に向きません。
ハナモモの育て方

用土
ハナモモは水はけのよい用土を好みます。植え付ける際に腐葉土を混ぜ込んでおくと良いでしょう。鉢植えにする場合は、鉢底に大きめの軽石などを敷いて、水はけをよくしておき、用土の内3割程度の腐葉土を入れるようにしましょう。
水やり
ハナモモは苗木のうちは水分を好み、成長すると乾燥気味を好みます。したがって地植えの場合は、植え付け直後と真夏などの極端に乾燥する場合を除いて与える必要はありません。鉢植えの場合は、土の表面が乾いたタイミングでたっぷりと与えましょう。特に7〜9月中旬の温度が高い時期は、乾燥に注意しましょう。
肥料

肥料は1〜2月(寒肥)と花後(お礼肥)に有機肥料や緩効性化成肥料を与えます。また苗木のうちは花芽ができたあとの9月頃にも同じ肥料を与えましょう。その際、樹木は根の先端から肥料を吸収するので、株から少し離れた場所に溝を掘り肥料を埋めると効果的です。
注意する病害虫
ハナモモは食用の実桃より病害虫が少なく育てやすいといわれていますが、いくつか気を付けるポイントがあります。ハナモモにつきやすい病害虫対策をご紹介していきます。
【病気】
<縮葉病>
新葉が縮れたようになり、悪化すると白いカビに覆われ、葉が落ちてしまいます。休眠期に薬剤を散布することで予防できます。
<灰星病>
花が腐って褐色化します。見つけ次第すぐに取り除きましょう。
<せんこう細菌病>
葉に茶色の斑点ができ、悪化すると穴があいてしまいます。病斑のある葉を切り取り、薬剤を散布します。
【害虫】
<アブラムシ>
成長を阻害しウイルス病を媒介するため植物にダメージを与えます。繁殖力が強いので見つけ次第除去しましょう。粘着テープで取り除くと効果的です。
<カイガラムシ>
寄生されると必要な養分を奪われるため生育が悪くなり、数が多い場合は枝枯れを起こしてしまいます。カイガラムシはカラが硬いため、薬剤を使うよりも歯ブラシなどでこそげ落とすほうが効果的です。
ハナモモの詳しい育て方

苗の選び方
ハナモモは立ち性、枝垂れ、ほうき立ちなどの品種がありますが、いずれの場合も根が密に張り、幹が太くしっかりしていて、樹形が美しいものを選びましょう。幹の太さが同じくらいの苗であれば、枝がたくさん付いているものを選ぶとよいでしょう。
植え付け

大きく育つので、鉢植えよりも庭植えが向いていますが、注意して剪定を行えば鉢植えも可能で、植え付け時に大きめの鉢を選べば、基本的に植え替えも必要ありません。地植えの場合、植える場所は日当たりがよいところを選ばないと枝ばかり伸びて花つきが悪くなるので注意しましょう。また、土質は水はけがよければ特に選びませんが、ジメジメした場所や水はけの悪い場所では育ちませんので気をつけましょう。
植え付けは、根に負担がかかりにくい11~3月の休眠期が適期です。ただし厳寒期は根が凍ってしまう恐れがあるので避けます。また開花時期に十分に根が伸びているようにするためには、寒くなってすぐ植え付けるのがよいでしょう。深さ、幅ともに苗ポットの大きさの2倍程度の植え穴を掘り、腐葉土を植え土の1/3ほど入れて植え付けます。鉢植えの場合は鉢底に大粒の軽石などを敷き、水はけをよくしましょう。植え付けてから根づくまで2週間程度は、土が乾いたら水をたっぷり与えるようにします。
剪定

美しい樹形で花を咲かせ、また大きさを調整するために、剪定はとても重要です。また品種によって樹形が異なるので、あらかじめ成長したときの樹姿を確認しておきましょう。花芽を切ってしまうと翌年の花つきに影響するので、花後、新芽が伸び始める前の6月くらいに剪定を行うとよいでしょう。
8月以降には花芽がつくので、なるべく早めに剪定を終わらせるのが重要です。新しい枝が複数伸びるように、花の咲いた枝の基部2〜3芽を残して剪定します。また日が当たると花つきがよくなるので、込み入った部分を切り落とし、木の内部まで日が当たるようにしましょう。8月以降の剪定は花芽を切り落とさないように、枯れ枝や重なった枝などを少し切る程度にとどめておきます。また、ひこばえや主幹から芽吹いた小枝は、見つけ次第切り取りましょう。
日当たりと剪定がポイント! きれいに桃の花を咲かせよう

ハナモモは初心者でも比較的管理が簡単です。基本的に株や葉の間隔をあけて風通しをよくし、土壌が湿っぽくなりすぎないよう心がけると元気に育ちます。きれいに花を咲かせるには日当たりをよくして花芽を切らないように気をつければ、毎年可愛らしい花で春を告げてくれるでしょう。花付きの盆栽や鉢植えも販売しているので、ひな祭りに合わせてハナモモを育ててみてはいかがでしょう。
Credit
文 / 本間のぞみ
ほんま・のぞみ/福島県会津若松市生まれ。デザイン事務所のアシスタントを経てガーデニング雑誌編集部に入社。庭のある暮らしや食に関する記事をつくる中で、さまざまな食のプロに出会い魅了され、和菓子店、ベーグル店、ビストロなどで経験を積む。現在2人の子どもを育てながら、地元の母がつくった会津野菜や食品を使ったレシピを提供中。
まとめ / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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