観賞用に品種改良された桃は、春の訪れを感じさせてくれる、人気の高い花木です。今回は桃の花の特徴や品種、家庭での育て方をご紹介していきます。この記事を読み終わる頃には、あなたもきっと桃の木を育ててみたくなるでしょう。
目次
桃ってどんな花?
ひな祭りの頃、フラワーショップには桃の花が並びます。ふんわりとしたピンクの可愛らしい咲き姿は、まるでお姫様のドレスのようです。店頭でよく見かけるのは華やかな八重の切り花ですが、これに実はなるのでしょうか? 今回は桃の花の特徴や品種について詳しくご紹介します。
桃の花の特徴
桃は大きく分けて2種類あり、食用の実桃と園芸品種のハナモモに分けられます。桃というとまず思い浮かべるのはフルーツのほうですが、私たちがひな祭りに飾る桃の花は、花を観賞するための品種で「ハナモモ」と呼び、食用の実桃とは性質が異なります。
桃はバラ科サクラ属に分類され、3〜5月頃に赤や白、ピンクの華やかな花が咲きます。樹姿は、立ち性、枝垂れ性、ほうき立ち性(ほうきを逆さにしたように、空に向かって枝が広がる形)の3つに大別されます。桃の木というと大きく育つイメージを持つ人も多いですが、鉢植えや盆栽として楽しむことも可能です。
日本で桃の歴史は古く、弥生時代に中国から日本に伝わったとされています。古事記にも桃の花の記載があり、平安時代には桃の節句に飾られるようになりました。観賞用に品種改良が進んだのは江戸時代で、さまざまな園芸品種が生み出され、現在も当時の品種が多く残っています。また大正時代には「赤、白、ピンク」の3色が入り混じった品種が登場します。この華やかな品種は、福沢諭吉の娘婿にあたる福沢桃介氏がドイツ・ミュンヘンから持ち帰り、長野県・阿智村で定植させました。現在は約5,000本のハナモモが並ぶ「日本一の桃源郷」として有名な観光スポットになっています。
ハナモモには食用の実はならない?
花を楽しむために改良された品種のハナモモにも実はなりますが、残念ながら実桃とは異なり、一般的には食用に向きません。ハナモモに実がなるのは7~8月で、大きさは5~6cm程度と小ぶりです。果実用品種は甘くなるように改良されていますが、ハナモモの実は酸味や苦みが強いといわれています。しかしハナモモを自宅で育てている方の中には、その実を果実酒にしたり、ジャムにしたり活用している人もいるようです。もし手に入ったら、一度試してみるのも面白いかもしれません。
桃・梅・桜を見分けるポイントは?
桃・梅・桜はどれもバラ科で、ピンク色の花を咲かせます。また、どれもが2~4月に開花し、見た目が似ているので見分けにくいという人も少なくありません。そこで、3つの見分け方をポイントごとに分けてみました。
ほかにも幹の状態、葉の形状、葉が芽吹くタイミングなど、見分けるポイントはいくつもあるので、調べてみると新たな発見が楽しめますよ。
ハナモモの育て方をご紹介
華やかなハナモモが自宅で育てられたら、もっと春が待ち遠しくなると思いませんか。古くから日本で育てられてきたハナモモは耐寒性、耐暑性に優れているため、初心者でも育てやすい花木です。その育て方のポイントを見ていきましょう。
1.植え付け
大きく育つので、鉢植えよりも庭植えが向いていますが、注意して剪定を行えば鉢植えも可能で、植え付け時に大きめの鉢を選べば、基本的に植え替えも必要ありません。地植えの場合、植える場所は日当たりがよいところを選ばないと枝ばかり伸びて花つきが悪くなるので注意しましょう。また、土質は水はけがよければ特に選びませんが、ジメジメした場所や水はけの悪い場所では育ちませんので気をつけましょう。植え付けは、根に負担がかかりにくい11~3月頃の休眠期が適期です。ただし厳寒期は根が凍ってしまう恐れがあるので避けます。また開花時期に十分に根が伸びているようにするためには、寒くなってすぐ植え付けるのがよいでしょう。深さ、幅ともに苗ポットの大きさの2倍程度の植え穴を掘り、腐葉土を植え土の1/3ほど入れて植え付けます。鉢植えの場合は鉢底に大粒の軽石などを敷き、水はけをよくしましょう。植え付けてから根づくまで約2週間程度は、土が乾いたら水をたっぷり与えるようにします。
2.水やりと肥料
ハナモモは苗木のうちは水分を好み、生長すると乾燥気味を好みます。したがって地植えの場合は、植え付け直後と真夏などの極端に乾燥する場合を除いて与える必要はありません。鉢植えの場合は、土の表面が乾いたタイミングでたっぷりと与えましょう。特に7〜9月中旬の温度が高い時期は、乾燥に注意しましょう。
肥料は1〜2月(寒肥)と花後(お礼肥)に有機肥料や緩効性化成肥料を与えます。また苗木のうちは花芽ができたあとの9月頃にも同じ肥料を与えましょう。その際、樹木は根の先端から肥料を吸収するので、株から少し離れた場所に溝を掘り肥料を埋めると効果的です。
3.剪定
美しい樹形で花を咲かせ、また大きさを調整するために、剪定はとても重要です。また品種によって樹形が異なるので、あらかじめ生長したときの形を確認しておきましょう。花芽を切ってしまうと翌年の花つきに影響するので、花後、新芽が伸び始める前の6月くらいに剪定を行うとよいでしょう。8月以降には花芽がつくので、なるべく早めに剪定を終わらせるのが重要です。新しい枝が複数伸びるように、花の咲いた枝の基部2〜3芽を残して剪定します。また日が当たると花つきがよくなるので、込み入った部分を切り落とし、木の内部まで日が当たるようにしましょう。8月以降の剪定は花芽を切り落とさないように、枯れ枝や重なった枝などを少し切る程度にとどめておきます。また、ひこばえや主幹から芽吹いた小枝は、見つけ次第切り取りましょう。
ハナモモの病害虫対策は?
ハナモモは食用の実桃より病害虫が少なく育てやすいといわれていますが、いくつか気を付けるポイントがあります。ハナモモにつきやすい病害虫対策をご紹介していきます。
【病気】
<縮葉病>
新葉が縮れたようになり、悪化すると白いカビに覆われ、葉が落ちてしまいます。休眠期に薬剤を散布することで予防できます。
<灰星病>
花が腐って褐色化します。見つけ次第すぐに取り除きましょう。
<せんこう細菌病>
葉に茶色の斑点ができ、悪化すると穴があいてしまいます。病斑のある葉を切り取り、薬剤を散布します。
【害虫】
<アブラムシ>
成長を阻害しウイルス病を媒介するため植物にダメージを与えます。繁殖力が強いので見つけ次第除去しましょう。粘着テープで取り除くと効果的です。
<カイガラムシ>
寄生されると必要な養分を奪われるため生育が悪くなり、数が多い場合は枝枯れを起こしてしまいます。カイガラムシはカラが硬いため、薬剤を使うよりも歯ブラシなどでこそげ落とすほうが効果的です。
日当たりと剪定がポイント! きれいに桃の花を咲かせよう
ハナモモは初心者でも比較的管理が簡単です。基本的に株や葉の間隔をあけて風通しをよくし、土壌が湿っぽくなりすぎないよう心がけると元気に育ちます。きれいに花を咲かせるには日当たりをよくして花芽を切らないように気をつければ、毎年可愛らしい花で春を告げてくれるでしょう。花付きの盆栽や鉢植えも販売しているので、ひな祭りに合わせてハナモモを育ててみてはいかがでしょう。
参考資料 日本一の花桃の里 南信州 阿智村 http://hirugamionsen.jp/activity/hanamomo
Credit
文 / 本間のぞみ
ほんま・のぞみ/福島県会津若松市生まれ。デザイン事務所のアシスタントを経てガーデニング雑誌編集部に入社。庭のある暮らしや食に関する記事をつくる中で、さまざまな食のプロに出会い魅了され、和菓子店、ベーグル店、ビストロなどで経験を積む。現在2人の子どもを育てながら、地元の母がつくった会津野菜や食品を使ったレシピを提供中。
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