手間いらずで、園芸初心者でも育てられる! 芝桜(シバザクラ)で明るい庭をつくろう
春爛漫の季節、ピンクの絨毯を敷き詰めたような景観をつくる芝桜。北海道や富士山周辺など、観光名所として知られるスポットが全国各地にあります。地面を覆い尽くすように密生する性質は、庭のグラウンドカバーにも最適。丈夫で育てやすいので、園芸初心者にもおすすめの植物です。植え付けに適した時期や管理方法など、ちょっとしたコツをおさえて、春の庭を鮮やかに彩ってみませんか。
目次
芝桜とは?
芝生のように地面に広がり、桜に似たピンク色の花をつけることから「芝桜(シバザクラ)」と呼ばれる春に咲く植物です。山の斜面や丘陵といった広大な面積を、ピンクに染め上げる様子は、いまや日本の春の風物詩。桜前線の後を追うように、日本列島の名所を北上していきます。
目を引くのは4~5月の花の時期ですが、じつは常緑の多年草です。まずは、どんな植物なのか、その特徴を見てみましょう。
芝桜の特徴
地上を這う茎の節から発根して増え、草丈10cm程のマット状になる芝桜は、北アメリカ東部原産。ハナシノブ科フロックス属の多年草です。現在は多数の園芸品種があり、花色も濃い桃色から、淡いピンク、白、パープルとバラエティに富んでいます。桜が散った後に、地面を覆い尽くすようにピンクの可憐な花が咲くことから、日本では「芝桜」という名前で愛されています。そのほか「モスフロックス」や「ハナツメクサ」という別名もあります。
密生した枝には、披針(ひしん)形または針状の硬い小さい葉が付き、4月上旬から5月(地域によって異なる)に直径2cmほどの5弁花が茎葉を覆い隠すように咲きます。
観光地では花の時期のみ注目が集まりますが、じつは常緑。グラウンドカバーはもちろん、土の流失を防いでくれるため、斜面や花壇の縁取り、石垣などの植栽に活用されています。
日向で、水はけが良い土壌を好むので、傾斜地や石垣のような水が溜まりにくい場所は、芝桜にとっても適した環境。耐寒性があり、病害虫もほとんど発生しないので、手間がかからないのも魅力です。
芝桜の種類
“桜”の字がつく名前から、桃色をイメージしがちな芝桜ですが、品種改良が進み、近年では桃色系だけでなく、白や紫、ブルー系、覆輪など、いろいろな花色があり、花の大きさや、花びらの形など見た目の印象もさまざまで、バラエティに富んでいます。ここでは、代表的な品種をご紹介しましょう。
‘ダニエルクッション’
濃桃色の大きな花が葉を覆い隠すように付くので、開花シーズンにはピンク一色のマット状に。病気や暑さ、寒さに強く、冬場にも濃い緑色の葉が残ります。
‘リトルドット’
やや小さめながら、純白の花を付ける強健種。成長はやや遅めですが、密集したマット状に育ちます。
‘スカーレットフレーム’
赤系の代表品種。花びらが細身でやや小さめの花ですが、中心が赤桃色で、可憐な印象に。蒸れにやや弱いので、夏場の管理に注意が必要。
‘多摩の流れ’(白とピンクの縞)
「キャンディ ストライプ」の別名が示すように、明るいピンクの花弁に白の斑が入る覆輪の品種。
アトロプルプレア
紫がかった薄い桃色の花を付け、開花期間が比較的長いのが特徴。成長が早く、茎は立ち上がらず、地面をしっかり覆ってくれます。
芝桜の植え方は?
日当たりと水はけがよい環境であれば、植える場所を選ばない芝桜。庭植えはもちろん、プランターや鉢植えでも十分に楽しめますが、植える場所によって、用意するものやテクニックが若干異なります。長く楽しむために、上手な植え方をアドバイスします。
直植え
芝桜を元気に茂らせて、花付きをよくするためのポイントは、“日当たり”と“水はけ”です。乾燥に強い芝桜は、高温多湿の環境が苦手。水はけの悪い土壌に植えると、根がしっかり張らないだけでなく、夏場の蒸し暑さで枯れやすくなります。おすすめの場所は、石垣や傾斜地のような水が溜まらない環境。植えたい場所の水はけが不安なときは、パーライトや軽石、腐葉土などをよくすき込んでおきます。
また、日照不足になると茎が間延びして、花つきの悪い貧相な株になってしまいます。一年を通して、日光がよく当たるかを確認することも大切。踏みつけには強くないので、人が通る場所は向きません。
植え付けの適期は、春と秋の2回。春なら3月下旬から6月、秋なら9月下旬から11月中旬くらいまでに。植える場所が決まったら、まずは雑草の除去を。芝桜がしっかりと根を張るように、雑草の根を残さず取り除いておきます。その後、よく耕します。このときに、パーライトや軽石、赤玉土、腐葉土、バーク堆肥などを混ぜておくと、水はけのよい有機質に富んだ土壌になります。匍匐して広がっていくことを考慮して、苗を植え付ける間隔は20~25cmを目安に。根土がすっぽり入る程度に穴を掘り、植え付けていきます。苗をポットから取り出したときに、根がグルグル巻きになっているようなら根鉢をくずしておくと、その後の根の成長を促します。穴に土を入れたら、根と土が密着するように指で軽く押さえ、最後に水をたっぷりかけます。
プランター
庭がなくても、マンション住まいでも、あきらめずに。ちょっとしたコツを押さえれば、プランターや植木鉢でも芝桜を育てることができます。
地植えの場合、数年で径50~60cm程度になる生育旺盛な植物なので、まずは余裕のある大きさの容器を準備。横長のプランターなら、株間が20cm程度確保できるように植える株数を決めます。
土は市販の培養土を使うと、肥料を足す必要がなく便利。庭や畑の土を用いる場合は、固まって水はけが悪くならないように、パーライトやバーク堆肥、腐葉土などを混ぜるとよいでしょう。鉢内は蒸れやすいので水やりは控えめに、表面の土をチェックして、乾いていたらたっぷりとやりましょう。乾燥しやすい素焼き鉢は、水やりの頻度がやや多めになります。花付きをよくするには肥料を与えますが、土の容積が決まっている鉢栽培の場合、与えすぎはかえって植物を傷めることに。緩効性の肥料か、濃度を調整できる液体肥料がおすすめです。数年は植えたままで大丈夫ですが、“葉が付いていない茎が目立つ”、“花付きが極度に悪くなる”という症状が出たら、根詰まりをおこしているので植え替えます。
きれいな芝桜を育てるポイントは?
せっかく芝桜を育てるなら、あふれんばかりに花を付けた姿に仕立てたいですね。水やりや肥料の施し方はどうしたらよいのでしょう? 剪定や株分けのタイミングは? ここからは、見事に咲かせるためのテクニックをご紹介します。
水やり
ジメジメした環境を嫌うため、過度の水やりは厳禁。植え付けの後、きちんと根づくまでは、土が乾き始めたらたっぷりと水やりをします。育てやすい品種の場合、晩秋以降にも植え付けることができますが、秋冬は意外と乾燥する季節なので、植え付け後2週間程度は、土が乾燥しないように注意しましょう。庭植えの場合、一度根づいてしまえば、その後は自然の降雨にまかせてしまって大丈夫。
一方、鉢植えは、鉢土が乾いたタイミングで、鉢底から流れ出るくらいたっぷりと水やりをします。鉢皿を当てている場合、余分な水が溜まっていると根腐れの原因になるので、水やりの度に捨てることを忘れずに。高温多湿を嫌うので、庭植え・鉢植えともに、夏場の水やりは気温が高くない朝方か日暮れ後に。寒冷地の場合、冬場は凍結する恐れがあるため、水やりは気温が高い昼間に行いましょう。
剪定
株が大きくなり枝が密生してくると、蒸れた部分が茶色く枯れてきます。大きなマット状に育っても、部分的に剥げてしまっては台無しに。花が咲き終わった後には、風通しをよくするため剪定を行いましょう。花がおおかた咲き終わり、花がらが目立ってきたら刈り込み作業のタイミング。茶色くなった枝先を取り除くように、剪定鋏や刈り鋏で剪定していきますが、株元まで切ってしまうと芽が出てこなくなるので、刈り込みすぎには気をつけて。1カ月もすると、青々とした新芽が吹いてきます。梅雨の時期までにやっておくと、蒸れによる枯死の予防にもなります。若芽が密に茂れば、雑草が生える隙間もなくなるので、除草の手間も減らせます。
肥料
堆肥や腐葉土を混ぜ込んだ土壌に植えていれば、特に肥料を与えなくても芝桜は育ちますが、緩効性の化成肥料を基肥として混ぜておけば効果的。また、花芽ができる2~3月頃に、追肥として緩効性化成肥料を置肥しておくと、花をたくさん咲かせてくれるでしょう。数週間に一度、液体肥料を与える方法もありますが、速効性肥料は肥料焼けを起こすこともあるので、規定の濃度をしっかりと守ります。また、花が終わる初夏に少量施すのもよいでしょう。窒素分が高い肥料を与えると、葉ばかり茂って花つきが悪くなるので、リン酸含有量が高めの“花栽培用”の肥料を選びましょう。
目土
地植えの場合、同じ場所で長い間育てるのであれば、植えたままの株の上から、細かい土をかけてならしていく「目土(めつち)」を行いましょう。茎が浮き上がって、地面との間にすき間が見えてきたら、目土を施すタイミング。茎の節から新しい根を出す性質のある芝桜は、茎が地面に接していると新しい根の発根が促進されます。さらに目土には、乾燥から植物を守る効果もあり、一石二鳥。“茎の下半分が土に埋まるくらい”を目安に、年に1、2回行うとよいでしょう。
病害虫対策
強健な品種が多い芝桜は、病害虫の心配があまりない植物といえます。「元気がない?」「茶色くなってきた?」という心配の原因も、多湿による根腐れや、蒸れによるものがほとんどです。高温多湿の状態では、土壌にセンチュウが発生しやすくなるので、水はけの良し悪しには特に気を付けましょう。
一方、春から夏の乾燥する時期に発生するのがハダニです。目に見えないほど小さいハダニは、葉や茎に付着して植物の養分を吸い取ります。白っぽく変色した葉を裏返すと、びっしりと付着しているのが分かります。放っておくと株全体に広がり、枯れてしまうこともあるので、早めの対処を。高温乾燥で発生するので、涼しい時間帯に、株全体にしっかりと水をかける“葉水”を行うことで防止できます。すでに発生していたら、被害のひどい枝を切り取り、殺ダニ剤を散布します。ほかにも、コガネムシやナメクジなどによる食害にも注意が必要です。
芝桜の増やし方は?
グラウンドカバーやロックガーデン、鉢植えなど、いろいろな場所に植えて楽しめる芝桜。ボリュームを出すためには、上手に増やしたいですね。芝桜は種子ができにくいため、増やす方法は株分けや挿し芽が一般的です。繁殖力が旺盛な植物なので、園芸ビギナーでも簡単に増やせますよ。
芝桜は挿し木や株分けで数を増やすことができます。
繁殖力が旺盛な芝桜。地面に接した茎から発根して増えていくので、手でちぎった株を埋めておくだけで、勝手に根付くこともあります。株分けの適期は、暑さがおさまってくる9~10月頃です。花が咲き終わる6月頃もできますが、暑くなりすぎると発根しにくくなります。大きくなった株の一部を切り取り、なるべく根を残すように注意しながら掘り上げます。大きさの目安は、1株が3号ポットに収まる程度。余分な土や、枯れた枝葉を整理して、ビニールポットなどに植えます。乾燥に強い芝桜ですが、新しい根が生え揃うまでは乾燥させないよう注意が必要。十分に水をやって根を活着させましょう。ポットから抜いて、全体に根が回っていれば移植できます。
挿し芽
芝桜は挿し芽で増やすこともできます。根付きの状態で増やす株分けに比べて、多少時間がかかりますが、少ない株からでもたくさんの苗がとれますし、プラグ苗のような小型の苗が作れます。
芝桜の発根適温は15~20℃といわれているので、挿し芽の適期は4~5月。高温になりすぎると根が出にくくなるので、6月頃までに。剪定のときに出る多量の茎を利用してもいいですね。
挿し穂に向くのは、新しい葉が付いた元気な茎です。まずは、長さ5~6cm程度に切り揃え、土に挿す部分(切り口から数cm程度)に付いている葉を取り除き、鋭利な刃物で切り口を斜めにカット。きれいな水に挿して吸水させておきます。このときメネデールなどの発根剤を溶かしておくと、根が出やすくなります。
その後、あらかじめ吸水させておいた用土(肥料分を含まない小粒の赤玉土など)に、数本をまとめて挿せば完了。発根するまでは、乾燥させないようにこまめに給水しましょう。気温など条件にもよりますが、1カ月程度で発根するので、その後、植え付けます。春に植えたい場合は、秋(9~11月上旬)に挿し芽をすることもできますが、幼苗は霜に弱いので、寒冷地では屋外での越冬は難しいでしょう。
芝桜は蒸れ対策が重要! きれいな花を咲かせよう
可憐な花をあふれるように咲かせる芝桜は、春の庭を華やかに演出してくれること間違いなし! 水はけと蒸れに注意してあげれば、丈夫で、管理もしやすく、増やすのも簡単。石垣やロックガーデン、花壇や鉢植えと、魅せ方の幅も広がる芝桜を、ガーデニングプランに組み込んでみてはいかがでしょう。
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